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総合商社の決算比較2026|三菱商事は自社株買い1兆円、配当の約束と商社株の今後を5社で確かめる

※この記事は、三菱商事(8058)・三井物産(8031)・伊藤忠商事(8001)・丸紅(8002)・住友商事(8053)の決算短信・決算説明資料・適時開示をもとにした情報の整理です。特定の銘柄の売買をすすめるものではありません。

※株価・指数は2026年11月4日(水)終値です(株探)。配当は、株式分割のあとの金額にそろえています。

総合商社5社の中間決算(4〜9月)が出そろいました。住友商事が11月2日、丸紅・三井物産・伊藤忠商事・三菱商事が11月4日の発表です。

5社とも累進配当(るいしんはいとう)の会社です。持っている人が最初に知りたいのは「配当の約束は守られたか」、次に「5社でどこが一番よかったか」だと思います。

先に言うと、約束は5社とも守られています。ところが、発表のあとに株価が上がったのは、今回配当予想を上げなかった三菱商事だけでした。配当予想を上げた丸紅と住友商事は下げています。

この記事では、会社の資料を使って、この結果を順番に確かめます。

1. まず結論

  1. 配当の約束は5社とも守られている。年間配当の予想は5社とも前の期より多い。まだ予想なので、確定ではない
  2. 今回配当予想を上げたのは丸紅と住友商事の2社だけ。三菱商事・三井物産・伊藤忠商事は据え置き
  3. 発表後の最初の終値で上がったのは三菱商事だけ(+7.88%)。同じ発表で、上限1兆円の自社株買いと純利益予想の上方修正を出した。今期の総還元性向(そうかんげんせいこう)は121%で、利益の1.2倍を株主に返す計算
  4. 一番よかったのは三菱商事。純利益の伸び、臨時の利益を除いた伸び、資源価格と為替の分も除いた伸び(私の計算)の3つとも1位。ただし、臨時の利益を除いて増えた分の約半分は資源価格と為替
  5. 資源価格と為替の分の割合が一番小さいのは伊藤忠商事(約2割)、一番大きいのは三井物産(約8割)(私の計算)
  6. 5社とも配当利回りは3%未満。三井物産と丸紅は、2026年の高値から25%前後低い

つまり、約束を守ったかどうかでは差がつかず、大きく動いたのは約束の外で桁の違う話を出した1社だけでした。

2. 5社の発表と数字を一覧で

発表の日時は次のとおりです(TDnet)。11月3日は祝日です。

会社 発表 発表後の最初の終値
住友商事 11月2日 13:00 11月2日
丸紅 11月4日 11:00 11月4日
三井物産 11月4日 12:00 11月4日
伊藤忠商事 11月4日 13:00 11月4日
三菱商事 11月4日 14:00 11月4日

5社とも3月決算、IFRS(国際会計基準)、連結の数字です。この記事の「純利益」は、株主の取り分にあたる利益(親会社の所有者または当社株主に帰属する利益)です。

会社 中間の純利益 増減 1年の純利益予想 進み具合(私の計算)
三菱商事 3,558→6,197億円 +74.2% 11,000→12,000億円 52%
三井物産 4,237→5,749億円 +35.7% 9,200→10,500億円 55%
伊藤忠商事 5,003→5,805億円 +16.0% 9,500億円(変更なし) 61%
住友商事 3,012→3,479億円 +15.5% 6,300→6,700億円 52%
丸紅 3,055→3,380億円 +10.6% 5,800→6,300億円 54%

4社が予想を上げ、伊藤忠商事だけが変えませんでした。三菱商事の1兆2,000億円は、会社が「史上最高益」と書いている見込みです。

予想を上げた理由は、各社の資料にこう書いてあります。

  • 三菱商事:「市況の追い風をとらえたエネルギー&パワーソリューションや金属資源セグメントなどでの増益」
  • 三井物産:化学品、イノベーション&コーポレートディベロップメントを中心に進み具合が高く、5つのセグメントで上方修正。資産リサイクルの見込みも+690億円→+1,070億円に増えた
  • 丸紅:「エネルギー・化学品における石油化学品取引による増益及び金属におけるチリ銅事業の増益を見込むことを主因」
  • 住友商事:「為替・資源価格、及び中東情勢による影響額の期初予想比の改善に加え、総じて力強い基礎的収益の伸長」

3. 配当の約束は、書き方が5社で違う

5社とも累進配当ですが、書き方は同じではありません。今回の資料の言葉を並べます。

会社 会社の書き方 期間の言葉
三井物産 「配当維持または増配を行う累進配当を継続」「中経2029期間中は140円/株以上の累進配当」 2029年3月期まで
丸紅 「中長期的な利益成長に合わせて増配していく累進配当を実施」 2028年3月期まで
三菱商事 「累進配当を継続」。増配は「更なる利益水準向上を見極めた上で判断」 経営戦略2027の基本方針。「いつまで」とは書いていない
伊藤忠商事 「総還元性向40%以上」「累進配当」。今期は「1株当たり44円以上」 今回の資料に期間の言葉なし
住友商事 「総還元性向40%以上+累進配当」(配当維持または増配) 今回の資料に期間の言葉なし

総還元性向は、もうけのうち、配当と自社株買いを合わせて株主に返す割合です。

期間と金額の両方を書いているのは、5社で三井物産だけです。丸紅は期間を書いていますが、金額はありません。

三菱商事の「見極めた上で判断」は、あとで出てくる1兆円の話と合わせて見ると大事なところです。累進配当なので下げないとは書いていますが、次の増配を約束しているわけではありません。

4. 約束は守られたか:5社とも前の期より多い予想

答えは「今の予想の段階では、5社とも守られている」です。

会社 前の期 今期の予想 増配率(私の計算) 今回の変更
三井物産 115円 140円 +21.7% なし
住友商事 37.5円 44円 +17.3% 40円→44円
丸紅 107.5円 125円 +16.3% 115円→125円
三菱商事 110円 125円 +13.6% なし
伊藤忠商事 42円 44円 +4.8% なし

伊藤忠商事は2026年1月1日に1株を5株に、住友商事は2026年7月1日に1株を4株に分けました。表はどちらも分割後の金額です。

今回さらに上げたのは丸紅と住友商事の2社です。どちらも、1年の純利益予想を上げたことを理由に挙げています。

  • 丸紅:純利益予想を5,800億円→6,300億円に修正した結果、「上記の基本方針に基づき」125円に修正(配当予想の修正のお知らせ)。資料には、株主還元(配当)に200億円を追加配分すると書いている
  • 住友商事:「通期見通し6,700億円への上方修正を踏まえ」44円に増額。上乗せ分は約190億円(配当総額2,080億円から私が計算)

残りの3社は今回の変更なしです。ただし、三菱商事の125円は5月に110円から15円上げると決めた金額なので、前の期と比べれば増配の予想です。「配当を上げなかった」と言うのは、あくまで今回の11月の発表の話です。

5. 三菱商事の1兆円の自社株買い

ここが今回の決算で一番大きな話です。三菱商事は、中間決算と同じ11月4日14時に、自社株買いを発表しました。

項目 内容
金額 1兆円が上限
株数 4億2,000万株が上限。発行済株式(自己株式を除く)の約6%分(11月2日の終値で買うと仮定した会社の計算)
期間 2026年11月5日〜2027年7月31日
買い方 東京証券取引所の市場で買う
買ったあと すべて2027年8月31日に消却(しょうきゃく)

会社の説明は「キャッシュフロー動向を精緻化した結果、適時の規律ある資本調整として総額1兆円の自己株式取得を決定」です。3年間の計画の自社株買いも「1.0兆円〜」から「2.0兆円〜」に変えました。

今期の総還元性向は121%です。配当総額が約4,500億円、自社株買いの枠が1兆円で、1年の純利益予想1兆2,000億円を上回ります。前の期は176%、その前の期は42%でした。

注意点が1つあります。会社の注にあるとおり、自社株買いの額は枠の上限で、その年度に実際に買う額とは異なります。全額を買うとは限りませんし、期間は来期にまたがります。

5社の株主還元を並べると、こうなります。

会社 自社株買い 総還元性向(今期の見通し)
三菱商事 上限1兆円(11月4日決定) 121%
伊藤忠商事 3,000億円以上(8月3日決定) 64%
丸紅 1,450億円(5月1日に450億円、8月3日に1,000億円) 55%
住友商事 800億円(5月公表、9月3日完了。今期分は700億円) 41.5%
三井物産 2,000億円(8月4日公表、2027年1月29日まで) 会社は出していない(目標は3年の基礎営業キャッシュフローの50%超)

三井物産の総還元性向は、配当総額3,970億円と自社株買い2,000億円で計算すると約57%です(私の計算)。

上乗せの大きさは桁が違います。丸紅の配当の追加が200億円、住友商事が約190億円。三菱商事の自社株買いは上限1兆円です。

6. 発表のあとの株価

では、株価です。発表後の最初の終値で比べます。

前の取引日の終値 発表後の最初の終値 騰落
三菱商事 4,772円 5,148円 +7.88%
伊藤忠商事 2,271.0円 2,271.0円 0.00%
三井物産 4,917円 4,900円 △0.35%
住友商事(11月2日) 1,684.0円 1,664.5円 △1.16%
丸紅 4,821円 4,754円 △1.39%
日経平均(11月4日) 63,081.86 62,188.63 △1.42%
TOPIX(11月4日) 3,930.28 3,895.38 △0.89%
日経平均(11月2日) 63,290.11 63,081.86 △0.33%
TOPIX(11月2日) 3,965.07 3,930.28 △0.88%

上がったのは三菱商事だけです。伊藤忠商事と三井物産は、日経平均・TOPIXの下げより小さく済みました。配当予想を上げた2社は下げています。ただ、丸紅の下げは同じ日の日経平均とほぼ同じです。住友商事は同じ日の日経平均・TOPIXより下げました。

5社を同じ期間(10月30日→11月4日)で比べても、上がったのが三菱商事だけという点は同じです(私の計算)。残り4社は順番が入れ替わり、住友商事の下げは日経平均・TOPIXとほぼ同じになります。伊藤忠商事は11月2日に下げた分が入ります。

10月30日 11月4日 騰落
三菱商事 4,805円 5,148円 +7.14%
住友商事 1,684.0円 1,654.0円 △1.78%
三井物産 5,006円 4,900円 △2.12%
伊藤忠商事 2,326.5円 2,271.0円 △2.39%
丸紅 4,929円 4,754円 △3.55%
日経平均 63,290.11 62,188.63 △1.74%
TOPIX 3,965.07 3,895.38 △1.76%

もう1つ、発表の直前からその日の終値までを見ます。5分ごとの値はYahoo!ファイナンスのデータで、一次資料ではないので補助として見てください。三井物産は昼休みの発表なので、午前の終わりの値から比べています。

発表の直前 終値まで 同じ間の日経平均
三菱商事 4,597円 +12.0% +2.0%
伊藤忠商事 2,219円 +2.3% +3.0%
三井物産 4,797円 +2.2% +2.2%
丸紅 4,725円 +0.6% +1.9%
住友商事(11月2日) 1,670円 △1.0% △0.8%

11月4日は午前に市場全体が大きく下げ(日経平均の安値60,030.10)、午後に戻した日でした。三菱商事は発表の直前まで前の日より約4%安く、終わってみれば約8%高です。発表のあと、市場全体より大きく上げたのは三菱商事だけでした。

三菱商事は自社株買いと上方修正を同時に出しているので、どちらがどれだけ株価に効いたかは分けられません。1日の動きでもあります。この記事は、事実を並べるところまでにします。

7. どこが一番よかったか①:純利益の伸び

ここから2つ目の問いです。まず見出しの数字、中間の純利益の伸びです。

順位 会社 増減
1 三菱商事 +74.2%
2 三井物産 +35.7%
3 伊藤忠商事 +16.0%
4 住友商事 +15.5%
5 丸紅 +10.6%

この順位だけ見ると、丸紅が一番さえません。でも、純利益には臨時の利益が入っています。

8. どこが一番よかったか②:臨時の利益を除く

会社の利益を給料にたとえると、基本給とボーナスがあります。会社や不動産を売った益、一度きりの税金の動きなどがボーナスです。

三菱商事、伊藤忠商事、丸紅、住友商事は、ボーナスを除いた「基本給」にあたる数字を決算説明資料で出しています。三井物産は全社の合計を出していないので、資料の数字から私が計算しました。ここからは、まとめて「ふだんの稼ぎ」と呼びます。

順位 会社 会社の呼び方 中間のふだんの稼ぎ 増減
1 三菱商事 巡航利益(じゅんこうりえき) 3,148→5,391億円 +71%(私の計算)
2 丸紅 実態純利益 2,200→3,180億円 +45%
3 伊藤忠商事 基礎収益 3,790→5,045億円 +33%
4 住友商事 基礎的収益 2,590→3,340億円 +29%(私の計算)
5 三井物産 (全社の呼び名なし) 約4,047→約4,719億円(私の計算) 約+17%

丸紅は最下位から2位へ、三井物産は2位から最下位へ動きました。 見出しの順位と、ふだん稼ぐ力の順位は別物です。

同じ物差しではありません。 除いているものが会社ごとに違います。三菱商事の巡航利益には、不動産・電力の回転型事業の売却益が入っています。住友商事は今期から、発電事業の資産の入れ替えの損益を基礎的収益に入れました。前の年の2,590億円がこの変更の前か後かは資料から読み切れません。影響は最大30億円で、伸びが+29%から約+27.5%になる程度、順位は変わりません。

三井物産は、説明資料の要素別の図(p20)から、資産リサイクルと評価性(ひょうかせい)・一過性(いっかせい)の要因を除いて計算しました。セグメント別の表(p19)から計算すると4,009億円→4,696億円で+17.1%になります。どちらでも最下位です。

何が臨時だったのかも、会社ごとに違います。

  • 三菱商事:エム・シー・ヘルスケア株の売却+320億円、Olam Group傘下(さんか)事業の売却+240億円、千代田化工建設(ちよだかこうけんせつ)の再評価+190億円など。資産・事業リサイクルが1,092億円、特殊要因が△286億円
  • 三井物産:米国不動産事業(CIM Group)の再編+453億円、ブラジル旅客鉄道+206億円など。資産リサイクルが+830億円、評価性・一過性が+200億円で、計約1,030億円
  • 伊藤忠商事:一過性の損益が760億円(前の年は1,215億円)。CIECO Azerの売却等390億円、東京センチュリー関連255億円など
  • 丸紅:前の年に、第一生命ホールディングス(現・第一ライフグループ)との国内不動産事業の統合に伴う評価益765億円(税後)があり、その反動が出た
  • 住友商事:税引前利益は3,724億円→3,450億円で△7.4%なのに、純利益は+15.5%。法人所得税が△411億円→+157億円に変わった。短信はマダガスカルのニッケル事業売却に伴う税効果と書いている

丸紅の純利益の伸びが小さいのは前の年のボーナスが大きかったから、三井物産の純利益の伸びが大きいのは今期のボーナスが大きかったから、と言えます。

9. どこが一番よかったか③:資源価格と為替の分も除く

ふだんの稼ぎなら実力と言ってよいのか。そうとも言い切れません。基本給の中に、追い風で増えた分が入っているからです。

5社の説明資料には、利益が増えた理由を階段のように並べた図があります。その中の資源価格(市況)と為替の金額を拾いました。

会社 ふだんの稼ぎの増加 資源価格・市況 為替 追い風の計 追い風の割合 残りの伸び
三菱商事(p11) +2,243億円 +850 +320 +1,170 52% +34%
伊藤忠商事(p7) +1,255億円 +40 +190 +230 18% +27%
丸紅(p4) +980億円 +470 +60 +530 54% +20%
住友商事(p3) +750億円 +200 +170 +370 49% +15%
三井物産(p20) 約+672億円 +290 +240 +530 79% +3.5%

追い風の金額は会社の資料の数字、割合と残りの伸びは私の計算です。残りの伸びは、増加から追い風を引き、前の年のふだんの稼ぎで割りました。

5社を単純に足すと、増えた約5,900億円のうち約2,830億円、約半分が資源価格と為替です。残りの半分で差がつきました。

割合が小さいほど優れている、という意味ではありません。資源価格や為替が逆に動いたときに、どの会社の稼ぎがどれだけ揺れそうかを見る手がかりです。

数字を読むときの注意も書いておきます。

  • 三菱商事:残りのうちエネルギー&パワーが+820億円と大きい。資料は、LNGのスポット販売が上半期に偏っているなどと説明している(上期偏重)。1年で見ると、巡航利益の伸びは約32%になる(次の章)
  • 伊藤忠商事:別に「中東影響」+100億円を出している。これも追い風に入れると割合は26%、残りの伸びは+24%(私の計算)。全セグメントで基礎収益が増えている
  • 丸紅:為替+60億円には、豪ドル/米ドルなどのクロスレートの影響△90億円が入っている。また、投資の回収による取込損益の減少△110億円も残りの中に入っている
  • 住友商事:会社は、外部環境+370億円と利益成長+390億円に分けている。足すと760億円で、基礎的収益の増加+750億円と10億円違うが、会社は1億円の位を四捨五入して表示している
  • 三井物産:残りには、評価損益(FVTPL)の減少△190億円が入っている。これを除くと残りの伸びは約+8%(私の計算)

それでも順番はほぼ動きません。この物差しでも1位は三菱商事、2位は伊藤忠商事です。

資源価格や為替が動いたときの目安も、各社が資料に書いています。1ドルが1円動いたときと、銅が1トンあたり100ドル動いたときの、純利益への影響です。

会社 1ドルが1円動いたとき 銅が1トン100ドル動いたとき 資料の注
三菱商事 50億円 26億円 2026年度の純利益への影響。5月公表
三井物産 46億円 5億円 2027年3月期の利益への影響。5月公表。銅はヘッジの影響を含まない
住友商事 20億円 4.6億円 年間ベース。5月公表
丸紅 約19億円 約13億円 2026年度の期初の見通しに対する目安
伊藤忠商事 約16億円 この表には記載なし 下半期(3〜4Q)の純利益への影響で、半年分

伊藤忠商事だけ半年分なので、そのまま横には比べられません。持っている会社のこの数字を見ておくと、為替や銅の値段が動いたときに、自分で見当をつけられます。

10. 1年の見込みで見る

半年の数字は偏りが出るので、1年の見込みでも見ます。

会社 前の期 5月の見込み 今回の見込み 前の期からの伸び(私の計算)
三菱商事 7,037億円 8,200億円 9,300億円 +32%
住友商事 約5,280億円 6,200億円 6,700億円 約+27%
丸紅 4,800億円 5,400億円 6,000億円 +25%
伊藤忠商事 7,815億円 9,000億円 9,000億円 +15%
三井物産 7,980億円 - 約9,100億円 +14%

住友商事の前の期は、純利益6,003億円から資産入替関連の720億円を引いた私の計算です。三井物産は、純利益から「資産リサイクル・評価性/一過性」の分を引いた私の計算です(前の期8,340億円−360億円、今期10,500億円−1,400億円、資料p15)。三井物産の5月の見込みは同じ形で確かめられなかったので、空けています。

金額の大きさで見ると、三菱商事9,300億円、三井物産約9,100億円、伊藤忠商事9,000億円の順です。三菱商事は5月の8,200億円から上げて、伊藤忠商事を超えました。

半年の+71%が1年では+32%になるので、三菱商事の伸びには上半期に偏った分があります。それでも1年の伸びで1位です。

11. 三菱商事:来年の約1,400億円と、次の還元

三菱商事の中間の純利益を事業ごとに見ると、エネルギー&パワーソリューションが1,053億円→1,901億円、金属資源が466億円→1,358億円です。この2つで増益分の約3分の2を占めます(私の計算)。

資料には、来年を厳しめに見た図があります(p4)。2027年度のイメージとして、「27年度計画想定を超える資源価格等の上昇分」を約1,400億円のマイナスと置いています。そのうえで「現状の資源市況水準に依拠せず、増益を目指す」と書き、利益のイメージは1兆2,000億円以上、ROE12%以上です。

つまり、今期の見通しには、2027年度の計画で想定する水準を超える資源価格などの分が約1,400億円入っていると、会社自身が計算しています(今期の見通しと2027年度のイメージの前提の差を、感応度で概算した値と注にあります)。

株主還元も、今回の1兆円が続くとは書いていません。「今後の追加配分に関しては更なる成長投資への配分を重点的に検討していく」としています。今期のROEの見通しは12.7%です。

持っている人が次に確かめるのは、自社株買いの進み具合と、増配の判断です。

12. 三井物産:上半期で過去最高、ただし臨時が約1,030億円

三井物産は「上半期として過去最高益」と書いています。ただ、臨時の分が約1,030億円入っているので、ふだんの稼ぎの伸びは約17%です。

セグメント別の純利益で増えた額が大きいのは、モビリティ・デジタル・インフラ(1,027億円→1,537億円)、イノベーション&コーポレートディベロップメント(253億円→609億円)です。どちらにも、臨時の利益が入っています(ブラジル旅客鉄道、CIM Group)。

臨時を除いた数字(p19)で増えた額が大きいのは、化学品(258億円→512億円)、金属資源(1,139億円→1,387億円)、モビリティ・デジタル・インフラ(1,076億円→1,286億円)です。エネルギーは1,055億円→919億円と減っています。資料は、前の年のLNGトレーディングの反動(当期は下半期に偏る)と書いています。

配当の約束は5社で一番はっきりしています。2029年3月期まで140円以上の累進配当で、自社株買いと合わせて3年の基礎営業キャッシュフローの50%超を株主に返す目標です。

目標は2029年3月期に利益1.1兆円超、ROE12%超(p15)。中東情勢の今期の利益への影響は、増益と減益を合わせて+400億円と見込み(p8)、下半期は「中東情勢が平常化しない前提」としています。

13. 伊藤忠商事:予想を変えなかった1社

伊藤忠商事は5社で唯一、1年の純利益予想を変えませんでした。上半期の進み具合は純利益で61%と5社で一番進んでいて、基礎収益では56%です。

1年の内訳は、基礎収益9,000億円+一過性900億円−バッファー400億円で9,500億円です。バッファーは「リスクシナリオも想定した」備えと書いています。

上半期は全セグメントで基礎収益が増えました。非資源が3,280億円→4,270億円(+30%)、資源が510億円→775億円(+52%)。非資源の割合は85%です。会社は「外部環境や特定分野に依拠しない利益成長」と書いていて、資源価格と為替の割合が約2割という9章の数字と合っています。

配当は12期連続の増配になる予定です。自己株式の取得は、公開買付けの1,500億円(9月に完了)と市場での買付け1,500億円(2027年1月29日まで)です。一方で、増配率の+4.8%と配当利回り1.94%は、どちらも5社で最も低い数字です。

14. 丸紅:見出しは最下位、ふだんの稼ぎは2位

丸紅は、純利益の伸びは5社で最下位ですが、実態純利益は+45%で2位です。前の年の評価益765億円の反動がなければ、見え方はかなり違いました。

内訳は非資源分野が1,630億円→2,100億円(+29%)、資源分野が500億円→960億円(+92%)。増えた980億円の内訳を、社長の説明で見ると次のとおりです。

要因 金額
為替・市況の影響 +530億円
既存事業の磨き込み +370億円
成長投資の利益貢献 +190億円
投資の回収による取込損益の減少 △110億円

今期の総還元性向は55%、ROEは14〜15%程度の見込みです。株主還元の総額は3,500億円の見通しで、期初の見通しから1,200億円増やしました(8月に決めた自己株式取得1,000億円と、今回の配当の200億円)。

15. 住友商事:税引前は減っても純利益は増えた

住友商事は、税引前利益が△7.4%なのに純利益は+15.5%でした。8章で見たとおり、税金の動きです。

一方で基礎的収益は+750億円と伸びています。内訳は資源ビジネスが440億円→700億円、非資源ビジネスが2,040億円→2,470億円です。会社は、為替や資源価格などの押し上げを除いた基礎的収益で「計390億円の増益」と書いています。

1年の6,700億円には、バッファー△300億円が入っています。バッファーを除くと7,000億円です。ROEは14%程度の見込みです。

配当は40円から44円に上げ、総還元性向は41.5%の見通しです。方針の「40%以上」を上回っています。

16. 配当利回り・PER・PBRと2026年の高値からの下げ

11月4日の終値で並べます。

会社 株価 配当利回り PER PBR 2026年の高値 高値からの下げ
三井物産 4,900円 2.86% 13.2倍 1.54倍 6,675円(4月8日) △26.6%
住友商事 1,654.0円 2.66% 11.7倍 1.65倍 1,943.7円(5月13日) △14.9%
丸紅 4,754円 2.63% 12.2倍 1.75倍 6,328円(2月12日) △24.9%
三菱商事 5,148円 2.43% 15.6倍 1.93倍 6,012円(5月15日) △14.4%
伊藤忠商事 2,271.0円 1.94% 16.6倍 2.29倍 2,399円(9月17日) △5.3%

配当利回りとPERは、会社の予想配当・予想EPS(1株当たり利益)で私が計算しました。PBR、2026年の高値(取引時間中の値)は株探です。

5社とも配当利回りは3%未満です。

高値からの下げには差があります。三井物産と丸紅は25%前後下、伊藤忠商事は約5%下です。

17. 条件で並べる

「商社株は買うならどこ」とよく検索されていますが、この記事では答えを1つにしません。条件ごとに、当てはまる会社を資料で並べます。

条件 当てはまる会社 根拠
配当の約束に期間が書いてある 三井物産、丸紅 2029年3月期まで、2028年3月期まで
期間と金額の両方が書いてある 三井物産 140円以上
今回の決算で配当予想を上げた 丸紅、住友商事 125円、44円
前の期からの増配率が大きい 三井物産 +21.7%
連続増配の記録が長い(5社の資料で確かめられたもの) 伊藤忠商事 12期連続の予定
今期の総還元性向が高い 三菱商事 121%(上限で計算)
ふだんの稼ぎの伸びが大きい 三菱商事、丸紅 +71%、+45%
資源価格と為替の割合が小さい 伊藤忠商事 約2割(私の計算)
配当利回りが高い 三井物産 2.86%
PERが低い 住友商事、丸紅 11.7倍、12.2倍

どの条件を重く見るかで、答えは変わります。

18. 次に確かめる3つ

  1. 三菱商事の自社株買いの進み具合。上限1兆円のうち、実際にどれだけ買うか。期間は2027年7月31日まで
  2. 三菱商事の増配の判断。会社は「見極めた上で判断」と書いている。来期の配当予想が出るときに確かめる
  3. 資源価格と為替が動いたときの、ふだんの稼ぎ。次の決算でも、5社の階段の図で追い風の分を見る。9章の目安の表も手がかりになる

19. まとめ

  • 配当の約束は5社とも守られている。年間配当の予想は5社とも前の期より多い
  • 今回配当予想を上げたのは丸紅と住友商事。発表後の最初の終値で上がったのは、据え置いた三菱商事だけ(+7.88%)。同じ発表で上限1兆円の自社株買いと上方修正を出した
  • 一番よかったのは三菱商事。純利益、ふだんの稼ぎ、追い風を除いた伸びのどれでも1位
  • ただし5社を合わせると、増えたふだんの稼ぎの約半分は資源価格と為替。割合が一番小さいのは伊藤忠商事の約2割、一番大きいのは三井物産の約8割
  • 丸紅は純利益の伸びは最下位でも、ふだんの稼ぎは2位。三井物産はその逆
  • 5社とも配当利回りは3%未満。三井物産と丸紅は2026年の高値から25%前後下

見出しの数字だけでは、5社の差は見えません。約束の書き方、臨時の利益、追い風の順に見ると、同じ「増益」でも中身の違いが分かります。

関連する過去の記事

この記事で見た資料

  • 三菱商事「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信〔IFRS〕(連結)」「自己株式取得及び自己株式消却に係る事項の決定に関するお知らせ」「2026年度第2四半期決算説明会資料」(いずれも2026年11月4日)
  • 三井物産「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信〔IFRS〕(連結)」、決算プレゼンテーション資料(2026年11月4日)
  • 伊藤忠商事「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信〔IFRS〕(連結)」「2026年度 第2四半期 決算説明資料」(2026年11月4日)
  • 丸紅「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信〔IFRS〕(連結)」「配当予想の修正及び剰余金の配当(中間配当)に関するお知らせ」、2026年度第2四半期決算の説明資料(社長のスクリプト付き)(2026年11月4日)
  • 住友商事「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信〔IFRS〕(連結)」、連結業績予想と配当予想の修正のお知らせ、「2026年度 第2四半期決算説明会資料」(2026年11月2日)
  • 発表時刻:TDnet
  • 株価・指数・PBR・2026年の高値:株探(2026年11月4日時点)
  • 発表の前後の5分ごとの値:Yahoo!ファイナンス(補助)

※増配率、進み具合、株価の騰落率、配当利回り、PER、追い風の割合と残りの伸び、三井物産のふだんの稼ぎなどは、資料の数字をもとに私が計算したものです。ふだんの稼ぎの定義は会社ごとに違います。投資の判断はご自身でお願いします。

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たぐ

コロナショック直前の2020年に投資をスタート。リアルタイムで暴落を経験しながら独学で投資の基礎を習得。 現在の運用総額5,000万円超・年間配当収入120万円超を達成。投資信託・ETF・個別株・米国株など100銘柄超に分散投資し、相場の波に強いポートフォリオを構築中。 高配当株の長期保有と新NISAの積立を組み合わせた"2刀流"スタイルで資産形成を実践。保有銘柄の決算・配当・株価をブログで赤裸々公開しています。YouTubeでも投資情報を発信中!

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