※この記事は、日本銀行の公表文・決算・ETF買入れの運営方針、日本取引所グループ(JPX)のTOPIXファクトシート、日本経済新聞社の日経平均の公表データをもとにした情報の整理です。特定の銘柄の売買をすすめるものではありません。
※株価・指数は2026年10月30日(金)終値までです(日経平均は日本経済新聞社「日次サマリー」と株探、TOPIXは株探、各社の株価はYahoo!ファイナンスの日足)。11月2日以降の値動きと、日銀がそのあとに出す資料は入れていません。
2026年10月30日、日本銀行(日銀)が、持っているETF(イーティーエフ)を売るペースを上げると決めました。同じ日、日経平均は1,369円(2.12%)下げました。
「日銀が株を売るペースを上げたから、株が下がったの?」「持っている銀行株やトヨタ、投資信託はどうなるの?」と気になった方も多いと思います。
そこで今回は、日銀の公表文と決算、取引所と日本経済新聞社が出している公式のデータだけを使って、3つのことを確かめます。日銀はどれくらい売るのか。日銀が持っているETFの中身は、どんな会社の株なのか。そして、10月30日の下げは、日銀の発表のあとに起きたのか。
1. まず結論
- 売るペースは約2.6倍に。ETFの売却を、年3,300億円程度から8,600億円程度に増やす(買った値段で計算)。いまの値段に直すと年2兆4,600億円程度で、市場全体の売り買いの0.1%程度。2027年1月から始める。売り終わるまでの年数は、約112年から約43年に縮む(日銀の計算)
- 日銀が持っているETFは、いまの値段で94兆円。2026年3月末で、買った値段は37兆1,214億円、いまの値段は94兆1,871億円、含み益は57兆657億円
- 中身はTOPIX型が中心と考えられる。日銀は「TOPIX型だけを買う枠」を、2016年10月に約半分、2018年8月に約4分の3、2021年4月から全部と増やしてきた。ただし、指数ごとの内訳は日銀が出していない
- TOPIXと日経平均では、重い会社がまるで違う。TOPIXの1位は三菱UFJ(4.02%)、日経平均の1位はアドバンテスト(12.39%)。どちらも2026年9月30日時点
- 1社あたりでは薄い。1年分を全部TOPIX型と仮定しても、三菱UFJやトヨタで、ふだんの売買の1日分に届かない(私の概算。いちばん多い場合の数字)
- 10月30日の下げは、発表の前だった。日経平均がいちばん安かったのは10時53分。日銀の発表は昼休みの12時2分。しかも下げ1,369円の約7割(約960円)は、アドバンテストなど3社の分だった(私の計算)。TOPIXの下げは0.95%
つまり、売りのペースが上がったのは本当です。ただ、薄く・長く・止められる売り方で、10月30日の大きな下げは、決定が出る前にほぼ起きていました。
2. 10月30日に日銀が決めたこと
まず言葉の確認です。ETF(イーティーエフ)は、たくさんの会社の株をひとまとめにした箱のようなものです。株価の物差し(指数)と同じ動きをするように作られていて、株と同じように売り買いできます。日銀は長い間このETFを買い続け、2026年1月から売り始めています。
10月30日の決定は、次のとおりです(日銀「当面の金融政策運営について」「ETFの売却ペースの見直しに関する決定」)。
| 項目 | これまで | 見直し後 |
|---|---|---|
| 1年に売る額(買った値段) | 3,300億円程度 | 8,600億円程度 |
| いまの値段に直すと | ― | 2兆4,600億円程度 |
| 市場全体の売買代金に占める割合 | 0.05%程度 | 0.1%程度 |
| 売り終わるまでの年数 | 約112年 | 約43年 |
| いつから | ― | 2027年1月から |
| J-REIT(ジェイリート、不動産の投資信託) | 年50億円程度 | 年50億円程度(変えず) |
(日銀の公表文。8,600億円÷3,300億円=約2.6倍は私の計算)
この決定は、9人の委員の全員一致でした。
数字の意味を、少しかみくだいておきます。
「買った値段」と「いまの値段」。日銀は、売る額を簿価(ぼか)=買った値段で決めています。日銀が買ったころより株価が上がっているので、いまの値段(時価、じか)に直すと大きくなります。日銀は、1〜9月に実際に売ったETFの「いまの値段÷買った値段」の比率を使って、年8,600億円は、いまの値段で年2兆4,600億円程度になると計算しています。
なお、2025年9月に決めたときは「3,300億円程度(時価6,200億円程度)」でした。ただ、時価の計算のもとが前回と今回で違うので、時価どうしを比べて「4倍」とは言えません。比べるなら、日銀が決めている買った値段どうし(3,300億円→8,600億円)です。
「市場全体の売買代金の0.1%」。売買代金(ばいばいだいきん)は、1日に市場で売り買いされたお金の合計です。0.1%は、市場で1,000円が売り買いされるうち、日銀の売りが1円という大きさです。日銀は、1〜9月の東証プライム市場の売買代金をもとに計算しています。
「売り終わるまで約43年」。9月末に持っているETFの残高(買った値段)を、1年に売る額で割った日銀の計算です。私が確かめると、43年×8,600億円は約37兆円で、2026年3月末の残高(買った値段で37兆1,214億円)とほぼ合います。
もともと日銀は、2025年9月に、ETFの売り方を決めていました。銀行から買った株(「金融機関から買入れた株式」)を年1,500億円程度(時価6,200億円程度)のペースで売り、「市場に大きな影響を与えることなく」2025年7月に処分を終えた経験があります。ETFも、それと同じくらいの規模(市場全体の売買代金の0.05%程度)で売ることにしたのが、年3,300億円でした。今回、それを0.1%程度に引き上げたわけです。
3. 日銀が持っているETFは、いまの値段で94兆円
日銀の決算(第141回事業年度、2025年4月〜2026年3月)で、ETFの残高を見ます。
| 2025年3月末 | 2026年3月末 | |
|---|---|---|
| 買った値段(簿価) | 37兆1,861億円 | 37兆1,214億円 |
| いまの値段(時価) | 70兆574億円 | 94兆1,871億円 |
| 含み益(いま売ったら出る利益) | 32兆8,712億円 | 57兆657億円 |
(日銀「第141回事業年度(令和7年度)決算等について」)
1年で、含み益は24兆円あまり増えました(私の計算)。買った値段は37兆円ほどでほとんど変わらず、株価が上がったぶん、いまの値段が膨らんだ形です。
日銀は、このETFから毎年配当を受け取っています。2025年度は、ETFから受け取った分配金(ぶんぱいきん、ETFの配当)などが1兆6,336億円、ETFを売った益が1,073億円で、合わせて1兆7,409億円の利益でした。売った益は、すべて下半期(2025年10月〜2026年3月)の分です(売却は2026年1月から)。
帳簿のつけ方も確認しておきます。日銀はETFを「移動平均法による原価法」、つまり買った値段で帳簿に載せています。そして、ETFのいまの値段の合計が、買った値段の合計を下回ったときに、その差を引当金(ひきあてきん)として積む決まりです。いまは、いまの値段が買った値段の約2.5倍あるので、その状態からは遠いところにあります(倍率は私の計算)。
参考までに、日銀の2025年度の当期剰余金は1兆9,263億円で、国に納めるお金(国庫納付金、こっこのうふきん)は約1兆8,300億円でした。なお、不動産の投資信託(J-REIT)は、2026年3月末で買った値段6,537億円、いまの値段7,790億円です。
4. 中身はどんな株?日銀の買い方の歴史から考える
ここが、今回いちばん確かめたかったところです。日銀が売るETFの中には、どんな会社の株が多く入っているのでしょうか。
先に大事なことを言うと、日銀は、持っているETFのうち、どの指数に連動するものがいくらあるかを出していません。決算に載っているのは、ETF全体の合計だけです。そこで、日銀がどう買ってきたかの決まり(運営方針)を、さかのぼって確かめました。
| 期間 | 日銀の買い方 | TOPIX型だけを買う枠 |
|---|---|---|
| 2016年9月まで | 3つの指数(TOPIX・日経平均・JPX日経400)に連動するETFを、ETFごとの時価総額におおむね比例して買う | なし |
| 2016年10月から | 年5.7兆円のうち、3兆円は3つの指数のETF、2.7兆円はTOPIXに連動するETF | 約半分 |
| 2018年8月6日から | 3つの指数1.5兆円、TOPIX4.2兆円 | 約4分の3 |
| 2020年5月1日から | 3つの指数約25%、TOPIX約75%(「従来の取扱いから変更はありません」) | 約4分の3 |
| 2021年4月1日から | TOPIXに連動するETFだけ | 全部 |
(日銀「ETFの銘柄別の買入限度にかかる見直しについて」2016年9月21日、「今後のETFの買入れの運営について」2018年7月31日、「ETFの買入れの運営について」2020年4月30日・2021年3月23日。「約半分」「約4分の3」は金額からの私の計算)
TOPIX(トピックス)は、東証の会社を幅広く入れた株価の物差しです(2026年9月末で1,636社)。市場に出回っている株の金額が大きい会社ほど、重く入ります。日経平均は、東証プライム市場の225社の株価をもとにした物差しで、株価の高い会社ほど重くなりやすい作りです。JPX日経400(ジェイピーエックスにっけいよんひゃく)は、もう1つの物差しです。
表を見ると、日銀はTOPIX型だけを買う枠を作り、その割合をだんだん増やしてきたことが分かります。しかも「3つの指数」の枠の中にもTOPIX型が入っているので、TOPIX型の割合は、TOPIX型だけの枠より大きくなります。
ですから、日銀のETFの中身は、TOPIX型が中心と考えられます。ただし、これは買い方の決まりからの推測です。2016年9月までに買った分には日経平均型も入っていて、日経平均型なども一定程度あるはずです。何割かは日銀の資料に書かれていないので、この記事では言いません。
なお、設備投資や人材投資に積極的な企業を支援するETFも、別の枠で年約3,000億円買っていました。
もう1つ大事な点があります。ETFは、中身の株を指数の重さどおりに持っています。ですから、いつ買ったETFでも、いまの中身は、いまの指数の重さに近いものになります(ETFの一般的な仕組み)。
5. TOPIXと日経平均では、重い会社がまるで違う
では、TOPIXと日経平均の中身を、同じ日(2026年9月30日)で比べます。
TOPIXでいちばん重いのは、三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、三菱UFJ)で4.02%です。2位は三井住友フィナンシャルグループ(以下、三井住友)の2.58%、3位はトヨタ自動車の2.51%。8位にみずほフィナンシャルグループ(以下、みずほ)の2.12%が入り、メガバンク3社を足すと8.72%になります(私の計算)。上位10社で24.10%です(JPX「TOPIX ファクトシート」)。
日経平均でいちばん重いのは、アドバンテストの12.39%です。2位は東京エレクトロンの8.90%、3位はファーストリテイリングの8.54%、4位はソフトバンクグループ(以下、ソフトバンクG)の7.75%。上位3社だけで29.83%になります(日本経済新聞社「日経平均株価 構成銘柄ウエート」、合計は私の計算)。
同じ会社を、2つの物差しで並べてみます。
| 会社 | TOPIXでの重さ | 日経平均での重さ |
|---|---|---|
| 三菱UFJ | 4.02%(1位) | 0.19%(95位) |
| トヨタ自動車 | 2.51%(3位) | 0.73%(24位) |
| アドバンテスト | 上位3社に入らない | 12.39%(1位) |
| 東京エレクトロン | 上位3社に入らない | 8.90%(2位) |
(2026年9月30日時点。TOPIXはJPX、日経平均は日本経済新聞社)
三菱UFJは、TOPIXでは1位なのに、日経平均では0.19%しかありません。逆に、日経平均の上位4社(アドバンテスト・東京エレクトロン・ファーストリテイリング・ソフトバンクG)は、どれもTOPIXの1〜3位には入っていません。
つまり、「日銀がETFを売る」と聞いたとき、どの会社に売りが多くかかるかは、その箱がどの物差しの型かで大きく変わります。日銀の中身はTOPIX型が中心と考えられるので、売りが多くかかるのは、銀行やトヨタなど、TOPIXで重い会社だということになります。
6. 日銀は「持っている割合どおり」に売る
ここが、今回いちばん大事な仕組みです。
日銀は、売り方について、こう書いています。
時期の分散に配慮しつつ、各銘柄の保有割合におおむね比例的なかたちで売却
(日銀「ETFの売却ペースの見直しに関する決定」。2025年9月の決定にも同じ文があります)
ここで言う「銘柄」は、日銀が持っているETFの銘柄(たとえばTOPIXに連動する1306など)と読むのが自然です。日銀は、「三菱UFJを何%売る」と会社ごとに決めているわけではありません。持っているETFを、それぞれ持っている割合どおりに、時期を分けて少しずつ売る、ということです。
そして、ETFの中身は物差しの重さどおりです。TOPIX型の箱を1万円分売ると、その中には三菱UFJが約400円分、トヨタが約250円分入っています(9月30日の重さ4.02%・2.51%からの計算)。結果として、日銀の売りは、中身の重さどおりに、1,600社あまりに散らばることになります。
たとえるなら、大きな福袋を、中身の割合を変えずに、少しずつ手放すようなものです。中身の多い品(銀行やトヨタ)ほど量は多くなりますが、1年に手放すのは福袋のほんの一部です。
ひとつ注意があります。日銀がETFを売っても、その分そのまま中身の株が市場で売られるとは限りません。ETFのまま誰かが買えば、中身の株は売られないからです。売りが中身の株にどう伝わるかの細かい仕組みは、日銀の資料には書かれていません。ですから、次の章の数字は「多くても」の数字として見てください。
7. 1社あたり、どれくらい売られる?(いちばん多い場合の概算)
では、1社あたりにすると、どれくらいの量なのか。私の概算です。
前提:2027年からの年2兆4,600億円(いまの値段)が、全部TOPIX型だったとします。そこに、TOPIXの重さ(9月30日)をかけます。ふだんの売買代金は、2026年1月5日〜10月30日の201営業日の平均です(Yahoo!ファイナンスの日足から、終値×出来高で計算した概算)。
| 会社 | 1年の売り(いちばん多い場合) | 1日の平均売買代金 | 1年分は、ふだんの何日分か |
|---|---|---|---|
| 三菱UFJ | 約989億円 | 約1,325億円 | 約0.75日分 |
| 三井住友 | 約635億円 | 約810億円 | 約0.78日分 |
| みずほ | 約522億円 | 約752億円 | 約0.69日分 |
| トヨタ自動車 | 約617億円 | 約816億円 | 約0.76日分 |
(私の計算)
1年かけて売る量が、ふだんの1日の売り買いにも届かない計算です。
これが「いちばん多い場合」なのは、実際には日経平均型なども入っているからです。三菱UFJは日経平均では0.19%しかありません。JPX日経400は、1社の重さを1.5%に抑える決まりです(日本経済新聞社の指数情報)。ですから、ほかの型の分では、三菱UFJやトヨタの売りはTOPIX型より少なくなります。
参考までに、反対の極端として「全部が日経平均型だった」と仮定すると、アドバンテストは年約3,047億円で、ふだんの約1.0日分、東京エレクトロンは約1.15日分、ファーストリテイリングは約2.6日分になります。実際はTOPIX型が中心と考えられるので、これより小さいはずです。
なお、この計算は9月30日の重さと、1〜10月の売買代金を使っています。2027年に実際に売るときの重さや売買代金は変わります。
つまり、日銀の売りがいちばん多くかかるのは銀行株やトヨタですが、1年かけて、ふだんの1日分にも届かない量に薄められています。
8. 1月からの売却を、日銀はどう見ているか
日銀は、10月30日の公表文で、1月からの売却をこう評価しています。
本年1月より、ETFの売却を開始し、市場に大きな影響を与えることなく円滑に進めている。また、株式市場においては市場全体の売買代金も拡大している。
(日銀「当面の金融政策運営について」2026年10月30日)
日銀は、こうしたことを踏まえて、売却の割合を0.05%程度から0.1%程度に引き上げたと書いています。金額の8,600億円は、1〜9月の東証プライム市場の売買代金をもとに計算されています(日銀の公表文の注)。
日銀は、ETFを処分するときの基本方針として、次の3つを挙げています。
- 「市場の情勢を勘案し、適正な対価による」
- 「日本銀行の損失発生を極力回避する」
- 「市場に攪乱的な影響を与えることを極力回避する」
(日銀「ETFの売却ペースの見直しに関する決定」)
9. 10月30日の下げは、日銀の発表の前だった
では、10月30日の株価の動きを、時刻と一緒に見ていきます。
| 10月29日終値 | 10月30日終値 | 前日比 | |
|---|---|---|---|
| 日経平均 | 64,659.47円 | 63,290.11円 | −2.12%(−1,369.36円) |
| TOPIX | 4,003.28 | 3,965.07 | −0.95% |
(日経平均は日本経済新聞社「日次サマリー」・株探、TOPIXは株探)
TOPIXの下げは、日経平均の半分以下でした。
時刻で並べると
10月30日の流れを、時刻で並べます。
- 9:00 日経平均の始値64,344.37円
- 9:02 この日の高値64,589.04円
- 10:53 この日の安値62,711.42円(前日比−3.01%)
- 11:30 午前の取引が終わる(11時25分の5分足で−2.54%)
- 11:55 日銀の会合が終わる
- 12:02 日銀が決定を公表(昼休み)
- 12:05 午後の注文の受け付けが始まる
- 12:30 午後の取引が始まる(12時30分の5分足で−2.61%、12時35分の5分足が午後の安値で−2.74%)
- 14:00 −2.16%(5分足)
- 15:30 終値63,290.11円(−2.12%)
(始値・高値・安値と時刻は日本経済新聞社「日次サマリー」、途中の値はYahoo!ファイナンスの5分足、会合と公表の時刻は日銀、取引時間はJPX)
日経平均がいちばん安かったのは10時53分で、日銀の発表(12時2分)の1時間以上前です。発表は昼休みの間で、午後の取引は−2%台のまま動き、終値は安値より上で終わりました。
TOPIXの安値は3,941.76(前日比−1.54%)でした。ただ、TOPIXが何時にいちばん安かったかは、公式の資料では確かめられませんでした。
下げの約7割は3社だった
次に、日経平均の下げを、会社ごとに分けます。
| 会社 | 10月30日の前日比 | 日経平均を動かした幅 |
|---|---|---|
| アドバンテスト | −5.86% | 約−468円 |
| 東京エレクトロン | −5.19% | 約−263円 |
| ソフトバンクG | −5.96% | 約−230円 |
| 3社の合計 | ― | 約−961円 |
| ファーストリテイリング | +2.09% | 約+125円 |
(日経平均を動かした幅は私の計算。株価の値幅×日本経済新聞社が公表している株価換算係数÷除数29.66435840)
3社だけで約961円。日経平均の下げ1,369円の約7割です。この3社は、10月30日の日経平均の重さで合計25.21%、つまり約4分の1を占めています(日本経済新聞社「日次サマリー」)。
日本経済新聞社自身の集計(セクター別の騰落寄与度)でも、同じ姿が出ています。電機・自動車・精密機器の会社(日経の分類で「技術」)だけでマイナス1,402.76円。全体の下げ(マイナス1,369.36円)より大きい数字です。一方、ファーストリテイリングなどの「消費」は+270.09円でした。
日銀の売りが多くかかる会社は、小さな動き
では、日銀の売りが多くかかる、TOPIXで重い会社は、どう動いたのでしょうか。
- 三菱UFJ:−0.49%
- 三井住友:−0.46%
- みずほ:−1.77%
- トヨタ自動車:−0.23%
(Yahoo!ファイナンスの日足から私の計算)
同じ計算で見ると、三菱UFJが日経平均を動かした幅は約−0.6円、トヨタは約−1.2円でした。不動産株は、三井不動産+1.18%、三菱地所+1.35%、住友不動産+0.90%と上がり、東証REIT指数に連動するETF(1343)も+0.14%でした。
この日、なぜ3社が大きく下げたのかは、日銀の資料にも、3社の資料にも書かれていません。ですから、この記事では理由は言いません。言えるのは、「時刻」と「どの会社が動いたか」です。
つまり、10月30日の大きな下げは、日銀の決定が出る前にほぼ起きていて、しかも一部の会社に集中していました。「日銀の決定を見て株が売られた」とは、この日の動きからは言えません。
10. 金利は1.25%のまま。でも1人は引き上げを提案
同じ日、日銀は政策金利(せいさくきんり、日銀が決める、お金を貸し借りするときの金利の目安)を1.25%程度のまま据え置きました。こちらは賛成8・反対1です。
反対したのは高田審議委員(しんぎいいん)で、金利を1.5%程度に上げる案を出し、反対多数で否決されました。理由は、「基調物価が『物価安定の目標』に達した中、機動的な対応が可能となる中立金利に近づけるペースを速める新たな局面に入った」というものです(日銀「当面の金融政策運営について」)。
ETFの売却が全員一致だったのに対し、金利は9人中1人が引き上げを求めていた、という違いがあります。
11. 2026年の株価:日経平均もTOPIXも年初より上
日銀がETFを売り始めた2026年の株価を、日経平均とTOPIXで並べます。
| 2025年12月30日 | 2026年9月30日 | 2026年10月30日 | 年初から | 10月 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 日経平均 | 50,339.48円 | 66,753.72円 | 63,290.11円 | +25.7% | −5.19% |
| TOPIX | 3,408.97 | 4,108.65 | 3,965.07 | +16.3% | −3.49% |
(株探の月足。変化率は私の計算)
日銀が1月から売っている間も、日経平均とTOPIXは年初より上にあります。ただし、これを「日銀が売っても株は上がった」と、原因と結果のように言うことはできません。株価はほかの多くのことで動くからです。ここでは、日銀自身の評価(「市場に大きな影響を与えることなく」)と、株価の動きを並べるだけにします。
なお、10月だけで見ると、日経平均は5.19%、TOPIXは3.49%下げています。
12. 売りは、止めることもできる
今回のペースで売り始めるのは、2027年1月からです。そして日銀は、市場が荒れたときの決まりも書いています。
市場等の状況に応じ、年間の売却ペースの範囲内で、売却額の一時的な調整、停止を行うことができる(従来どおり)。
(日銀「当面の金融政策運営について」)
つまり、相場が大きく荒れたときは、売る額を一時的に減らしたり、止めたりできます。今回のペースの引き上げも、日銀が会合で売却ペースを見直した結果です。
ただ、2.6倍のペースで売っているときに、相場が大きく下がる日が重なったらどうなるかは、まだ実績がありません。
13. 次に見るところ
- 11月10日(火)8時50分:日銀「主な意見」。10月の会合での、委員の主な意見の要約
- 11月13日:三菱UFJ・三井住友・みずほの中間決算(日銀の売りが多くかかる会社。各社のIRページで確認)
- 12月17日(木)・18日(金):次の日銀の会合
- 2027年1月:新しいペース(年8,600億円程度)での売却が始まる
14. 自分で確かめるときの3つ
- 「〇兆円売る」と聞いたら、市場全体の売り買いの何%か、何年かけて売るかを見る。今回は0.1%程度で、約43年
- 自分の株が、TOPIXでどれくらい重いかを見る。日銀の売りはTOPIX型が中心と考えられるので、TOPIXで重い会社ほど、売りが多くかかる(JPXのTOPIXファクトシートで上位を確認できる)
- 株価が大きく動いた日は、発表の時刻と、どの会社が動いたかを見る。日経平均は、日本経済新聞社の「日次サマリー」に、安値の時刻や、業種ごとに日経平均を動かした幅が出ている
15. よくある疑問
Q. 日銀の売りで、株は下がるの?
言い切ることはできません。日銀の資料で言えるのは、売る額が市場全体の売り買いの0.1%程度であること、43年かけて売る計算であること、そして日銀自身が1月からの売却を「市場に大きな影響を与えることなく円滑に」と評価していることです。2.6倍のペースでの実績は、2027年1月からになります。
Q. 日銀が持っているETFの中身は分かるの?
指数ごとの内訳は、日銀が出していません。ただ、日銀の買い方の決まりを見ると、TOPIX型だけを買う枠を増やしてきたので、中身はTOPIX型が中心と考えられます。TOPIXで重いのは、三菱UFJ・三井住友・トヨタなどです。
Q. 10月30日の下げは、日銀の決定のせい?
この日の動きからは、そうは言えません。日経平均がいちばん安かったのは10時53分で、日銀の発表(12時2分)の前でした。下げの約7割は、アドバンテスト・東京エレクトロン・ソフトバンクGの3社でした。3社が下げた理由は、資料に書かれていません。
Q. 売り終わるまで43年って、本当に43年かかるの?
43年は、9月末の残高(買った値段)を、1年に売る額(8,600億円)で割った日銀の計算です。日銀は今回のように会合で売るペースを見直すことがあり、一時的に止めることもできるので、実際の年数は変わりえます。
16. まとめ
- 日銀は10月30日、ETFの売却を年3,300億円程度から8,600億円程度に増やすと決めた(買った値段、約2.6倍、全員一致)。いまの値段で年2兆4,600億円程度、市場全体の売買代金の0.1%程度。2027年1月から
- 売り終わるまでの年数は約112年から約43年に(日銀の計算)
- 日銀のETFは、2026年3月末でいまの値段94兆1,871億円、含み益57兆657億円。2025年度の分配金などは1兆6,336億円
- 日銀は「TOPIX型だけを買う枠」を約半分→約4分の3→全部と増やしてきたので、中身はTOPIX型が中心と考えられる。ただし指数ごとの内訳は出ていない
- TOPIXの1位は三菱UFJ(4.02%)、日経平均の1位はアドバンテスト(12.39%)。物差しによって、重い会社がまるで違う
- 日銀は持っているETFを、持っている割合どおりに少しずつ売る。1年分を全部TOPIX型と仮定しても、三菱UFJ・トヨタなどで、ふだんの売買の1日分に届かない(いちばん多い場合の概算)
- 10月30日、日経平均の安値は10時53分で、日銀の発表(昼休みの12時2分)より前。下げ1,369円の約7割は3社の分。TOPIXの下げは0.95%
- 金利は1.25%のまま(賛成8・反対1)
日銀が売るペースを上げたのは本当です。ただ、薄く・長く・止められる売り方です。自分の株がTOPIXでどれくらい重いかを知っておくと、「日銀が売る」というニュースに振り回されにくくなります。
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この記事で見た資料
- 日本銀行「当面の金融政策運営について」(2026年10月30日)
- 日本銀行「ETFの売却ペースの見直しに関する決定(2026年10月)」(2026年10月30日)
- 日本銀行「ETF等の処分に関する決定(2025年9月金融政策決定会合)」
- 日本銀行「第141回事業年度(令和7年度)決算等について」(2026年5月)
- 日本銀行「ETFの銘柄別の買入限度にかかる見直しについて」(2016年9月21日)、金融市場局「今後のETFの買入れの運営について」(2018年7月31日)、「ETFの買入れの運営について」(2020年4月30日・2021年3月23日)
- 日本銀行「金融政策決定会合の運営」(開催日程・公表日)
- 日本取引所グループ「TOPIX(東証株価指数)ファクトシート」(2026年9月30日時点)、「取引時間」
- 日本経済新聞社「日経平均株価 構成銘柄ウエート」(2026年9月30日)、「日次サマリー」(2026年10月30日)、「株価換算係数一覧」(2026年10月30日)、JPX日経インデックス400の指数情報
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループの各IRページ(決算発表日)
- 株価・指数:株探、Yahoo!ファイナンス(2026年10月30日終値まで)
※2.6倍、含み益の増え方、倍率、1社あたりの売りの量と日数、日経平均を動かした幅、株価の変化率は、資料の数字をもとに私が計算したものです。日経平均とTOPIXの構成銘柄の重さは、日本経済新聞社とJPXの資料からの引用です。投資の判断はご自身でお願いします。