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パナソニック決算、利益2倍超の中身|AI需要と1,200億円上方修正を解説

※本記事は投資判断の材料を整理するもので、特定銘柄の売買を勧めるものではありません。情報確認日は2026年11月2日。2026年10月30日公表の会社資料を基にしています。将来の業績・配当は会社予想であり、実現を保証するものではありません。

パナソニック ホールディングス株式会社(6752、以下パナソニック)の今回の決算は、2026年7〜9月の営業利益が前年同期の約2.3倍になりました。さらに、2027年3月期の営業利益予想を、7月の計画から1,200億円引き上げています。

ここで知りたいのは、利益の大きさだけでなく、商売の中で何が変わったかです。今、何が売れ、どの事業が稼ぎ、会社は何を理由に利益の見通しを引き上げたのでしょうか。

今回の資料を読むと、AI(エーアイ)に関係する製品の需要拡大は、すでに販売実績へ表れています。一方で、電池部門の増益を全てAIの成果にすることも、全社の上方修正を全て販売増で説明することもできません。冷蔵庫や洗濯機などの部門には、営業赤字も残っています。

この記事では、全社の実績から、電池と部品・材料の中身、通期計画の修正理由、残る弱さへと順に見ます。株価や利回りの比較ではなく、今回の決算で会社の見え方がどう変わったかに重点を置きます。

目次

結論:成長は実績に出た。ただし、稼いだ理由はひとつではない

今回の決算で押さえたい点は、次のとおりです。

  • 7〜9月の営業利益は1,807億円。前年の同じ四半期の781億円から大きく増えた。
  • 電池のエナジーと、部品・材料のインダストリーが、調整後営業利益の増加をけん引した。
  • 蓄電(ちくでん)関連、部品・材料側のAI関連は、それぞれ実際の売上が前年同期の約1.6倍になった。
  • 通期営業利益の1,200億円上方修正には、販売の拡大だけでなく、為替、関税、価格や費用の変化も含まれる。
  • スマートライフは、調整後の利益は改善しても、費用を含む営業利益では赤字。全社の好調と、家電の課題は両立している。

家電の会社というイメージだけで見ていると、今回どこで利益が増えたのかを見落とします。逆に、AI関連という言葉だけで見ていると、車向け電池や為替等の影響までAIの成果として数えてしまいます。

投資家が今回得られる材料は、「伸びる事業がある」という見通しだけではありません。実際の販売、計画からの変化、設備の進展、利益を押し上げた要因を、一つの決算の中でつなげて確認できることです。

出典:パナソニック ホールディングス「2026年度 第2四半期 決算概要」3〜14頁。倍率等は会社表示と独自計算を照合。

1.まず実績を確認。四半期と上期を混ぜない

会社の説明資料でいう「2026年度」は、2026年4月から2027年3月までです。「第2四半期」の表には7〜9月の3か月実績が載っています。一方、中間決算短信の表紙は4〜9月の6か月累計です。

指標・対象期間 前年の同じ期間 今回実績 比較
売上高・7〜9月 1兆9,238億円 2兆736億円 会社表示で前年の108%
営業利益・7〜9月 781億円 1,807億円 約2.3倍
調整後営業利益・7〜9月 904億円 2,132億円 1,228億円増
営業利益・4〜9月累計 1,649.96億円 3,632.29億円 120.1%増

上期累計が四半期より大きいのは、長い期間を合計しているからです。四半期の利益と上期累計を横並びにして、利益が急に膨らんだというグラフにはできません。

同じ期間同士を比べれば、直近の四半期にも、上期累計にも、大幅な増益が表れています。将来の計画だけを好材料として扱っているわけではなく、すでに実績が伴っている点は確認できます。

ただし、全社の数字だけでは、商品が売れた効果と、費用や為替の影響の割合までは分かりません。そこで、どの部門が利益を増やしたかを先に開きます。

出典:前掲「決算概要」3頁、同社「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信」1頁。短信は百万円表示を億円へ換算。

2.増益の中心は電池と部品・材料。ただし「AIの利益」とは限らない

会社が部門別の増減理由を説明する際に使っているのは、調整後営業利益です。売上から売上原価と販売・管理費を引く会社開示の指標で、通常の営業利益とは区別します。為替や補助金などの追い風を全て取り除いた利益、という意味ではありません。

7〜9月の部門 調整後営業利益 前年同期からの増加額
エナジー 567億円 556億円
インダストリー 541億円 271億円
その他の部門・消去調整の合計 1,024億円 401億円
全社 2,132億円 1,228億円

エナジーとインダストリーの増益額は合計827億円。全社の増加額1,228億円で割ると約67%になります。今回の増益で、この両部門の存在が大きかったことが分かります。

ただし、これは「AIが全社増益の67%を生んだ」という計算ではありません。電池には車向けもあり、部品・材料にはAI以外もあります。部門ごとの寄与と、AIそのものの寄与を同じものにしないことが重要です。

この後、エナジーでは実際の関連売上と車載電池の内訳を、インダストリーでは関連売上の実績と年間計画の修正を、それぞれ確認します。部門の好調を知るだけでなく、どの商売が伸びたかまで見ていきます。

出典:前掲「決算概要」3・4・6頁。827億円、401億円、約67%等は開示額による独自計算。

3.AI需要で、パナソニックは何を売っているのか

パナソニックと聞けば、家庭で使う製品を思い浮かべる人は多いでしょう。私の頭の中でも、まずテレビのリモコンが出てきます。しかし、今回の成長を読む際に見たいのは、データセンターの電源や、その周辺の部品・材料です。

今回見る領域 主な製品・商売 決算で確認するもの
エナジー データセンター向け蓄電システム 関連売上、供給体制、産業・民生側の増益説明
インダストリー コンデンサ、多層基板材料など AI関連売上、年間予想、価格・供給改善
周辺領域 半導体製造設備向けサーボモータ・センサ等 部門の販売拡大理由。AI専用売上として別集計しない

電源を支えるものを売る商売と、部品・材料を供給する商売では、製品も設備も違います。同じAI需要を捉えていても、全く同じ事業が増えているわけではありません。

また、会社が使う「関連売上」の範囲も同じではありません。インダストリー側にはサーバー等の設備に加え、自動運転支援やロボット等の領域が含まれます。エナジー側も一部にデータセンター以外を含みます。両方の数字を足して、純粋なAI売上の合計にはしません。

出典:前掲「決算概要」1・5・13・14頁と各頁の脚注。

4.蓄電関連は売上が約1.6倍。目標だけでなく、販売実績に出た

エナジーのデータセンター関連売上は、7〜9月に前年727億円から1,149億円へ伸びました。単純計算では約1.58倍で、会社も約1.6倍と示しています。

ここでの発見は、将来の工場計画や市場への期待だけではなく、すでに販売の実績が増えていることです。会社は同じ決算資料で、データセンター向け蓄電システムの増販が、産業・民生側の増益につながったと説明しています。

売上の数字と、利益への寄与の説明が別々に確認できます。もっとも、売上1,149億円がそのまま利益になったわけではありません。また、会社はこの売上に対応するAI専用利益を、同じ金額や利益率で示しているわけではありません。

年間の関連売上予想は5,500億円。前年実績3,220億円から大きな伸びを見込んでいますが、7月時点から予想額は据え置きです。会社は、もともと想定していた力強い成長が続いていると説明しています。

上方修正がないことだけで成長が止まったと読むより、前に置いた大きな計画に対して実績がどう進んだかを見る方が、今回の発表に沿っています。計画の変更額と、前年に対する成長の大きさは、違う問いです。

出典:前掲「決算概要」6・14頁、同社「2026年度 第1四半期 決算概要」15頁。関連売上はDCパワーソリューションBUの数字で、一部データセンター以外を含みます。

供給の話は「発表」から「量産開始」へ進んだ

メキシコ第2工場は、7月時点で今期第2四半期の量産開始を予定していました。今回の資料では、9月に量産を始めたと確認できます。

国内でも、車載用ラインを活用したセルの出荷や、ライン改造を進めています。この取り組みは7月にも公表されており、今回突然決めた用途変更ではありません。電池事業を全て車からAIへ移す、という説明でもありません。

需要が強くても、生産して届ける能力がなければ、販売は増やせません。今回の供給面の情報は、実際の売上を支える取り組みが、予定から実行へ進んだ具体例です。ただし、量産開始が、その工場で予定した売上や利益の全額達成を意味するわけではありません。

同じ資料にあるメキシコ第3工場や米国拠点へのデータセンター向けライン導入等は、将来の計画です。稼働済みと、稼働予定をまとめて完成扱いにしないことも必要です。

5.電池部門の増益を開くと、車向けの寄与が大きい

蓄電関連の成長は実績に出ています。それでも、エナジーの増益を全額AIに結び付けることはできません。会社が示す7〜9月の調整後営業利益の増加額を開くと、次のようになります。

エナジーの増益内訳 前年同期からの増加額 会社が示す主な理由
車載電池 391億円 北米工場の増販、米国関税影響、生産補助金増加等
産業・民生/その他 165億円 データセンター向け蓄電システムの増販等
合計 556億円 エナジーの調整後営業利益増加額

車載の391億円が、増益額の大きな部分を占めています。この中には米国関税の還付影響等もあり、図に示された関税影響155億円は391億円の内側です。391億円へさらに155億円を加算するものではありません。

産業・民生/その他の165億円も、全額をAI専用の利益として切り出した数字ではありません。会社がデータセンター向け蓄電システムの販売増を増益理由として挙げていることと、部門の増益額を全てAIへ割り当てることは別です。

つまり、今回の電池事業は、データセンター関連の成長と、車向けの販売・制度面の影響が重なって改善しています。AIが伸びたから車はもう重要でない、という読み方では、実際の利益構成を見失います。

出典:前掲「決算概要」4・6・34頁。391+165=556を独自検算。

6.部品・材料は、実績も年間計画も上へ動いた

インダストリーのAI関連売上は、7〜9月に前年548億円から886億円へ増えました。約1.62倍で、会社表示は約1.6倍です。

こちらは、年間売上予想も7月の3,100億円から3,600億円へ引き上げています。増額は500億円。蓄電側が大きな成長計画を維持したのに対し、部品・材料側では従来計画からさらに積み上げた、という違いがあります。

ただし、500億円の上積みのうち約200億円は為替によるものです。残りの約300億円も、全てが販売数量や新規受注の増加とは限りません。会社は需要と顧客開拓に加え、価格、商品の組み合わせ、材料調達の改善を挙げています。

ここで比較しているのはAI関連の売上予想です。全社の利益予想の修正や、インダストリー全体の利益予想の修正とは別の数字です。会社の資料に増額が複数あっても、売上と利益を足したり、別の範囲の数字を同じグラフにしたりはできません。

出典:前掲「決算概要」13頁、「第1四半期 決算概要」14頁。関連売上はサーバー等のインフラと、自動運転支援・ロボット等の領域を含む会社区分。

注文だけではない。出荷と、売る商品の中身も変わる

今回、会社が示す為替以外の修正要因は、大きく三つあります。世界での需要拡大と顧客開拓、価格政策と高付加価値商品への移行、材料調達の課題改善による供給能力の拡大です。

一般に、注文があっても必要な材料を調達できなければ、製品を出荷できません。調達が改善して供給できる量が増えることは、注文を実際の販売へつなげる経路です。一方、販売数量が同じでも、売値や商品の組み合わせが変われば、売上の金額は変わります。

この一般的な仕組みに対応する理由を、今回パナソニック自身が挙げています。だからこそ「需要が増えた」の一言で終わらず、供給できるか、どんな商品をどの価格で売るかまで読む意味があります。

ただし、会社はここで全要因の金額を細かく割り振ってはいません。材料調達改善が利益を何億円増やした、といった独自の内訳は作りません。会社が示した修正理由と、確認できる売上実績を対応させて読むことにとどめます。

7.前倒し投資は、完成の時期と販売へのつながりを見る

インダストリーは、旺盛(おうせい)な需要へ対応するため、生産能力拡大の投資を前倒ししています。多層基板材料では、蘇州(そしゅう)とアユタヤの工場で、第Ⅱ期の新棟建設を意思決定したと説明しています。コンデンサでは、宇治(うじ)とバタムの生産体制を強化します。

ここで「投資を決めた」「工事を進める」「量産を始めた」「実際に販売した」を区別します。例えば蘇州の第Ⅰ期新棟は2026年度第3四半期の稼働予定、バタム新棟は2029年度第1四半期の予定です。どちらも、今回の資料だけで全て稼働済みとは扱えません。

投資額が大きいこと自体を、そのまま将来の利益額や株価上昇へ変換することもできません。需要が見込めても、立ち上げの時期、生産、販売、費用の負担が異なるためです。

今回の決算を起点に見るなら、すでに量産を始めた蓄電側と、これから設備を立ち上げる部品・材料側の進み方を分けると整理できます。前者では稼働後の販売、後者ではまず予定に沿った供給能力の拡大を追います。

出典:前掲「決算概要」13・14頁。各地名と稼働予定は同社の当該資料で確認。

8.通期営業利益は7,100億円へ。今回の上方修正を分解する

全社の2027年3月期営業利益予想は、7月の5,900億円から7,100億円へ変わりました。1,200億円、約20.3%の上方修正です。

同じ資料の調整後営業利益予想は6,500億円から7,800億円へ1,300億円の増額。そこへその他損益の100億円悪化が加わり、通常の営業利益では1,200億円の増額となります。指標名の違いにより、発表の中に二つの増額があるわけです。

7月計画からの修正要因 営業利益への修正影響
販売が増える効果 +400億円
固定費 マイナス50億円
原材料・物流費 マイナス570億円
価格改定・合理化等 +710億円
ブルーヨンダー 修正なし
為替 +360億円
米国関税 +250億円
前年の車載電池製造不具合対応費用の反動 修正なし
以前の全社リスク見込みの取りやめ +200億円
その他損益 マイナス100億円
合計 +1,200億円

表は会社の増減図を、修正額に絞って整理したものです。前年比の増益額ではありません。全社の販売増の効果は400億円で、AIだけに切り出した金額でもありません。

見出しで拍手したところで、次は内訳を開く番です。ここから特に大きい為替・関税と、価格・材料費の組み合わせを見ます。

出典:前掲「決算概要」10・12頁。修正要因の合計、修正率は独自検算。

9.為替と関税は計610億円。上方修正を全額AIで説明しない

為替の見直しによる360億円と、米国関税影響による250億円を足すと610億円になります。1,200億円の修正純額の約50.8%に当たります。

この計算が示すのは、今回の上方修正には、販売の拡大以外の要因も大きく含まれるということです。「全額がAIの需要増」という説明にはなりません。

もっとも、610億円を単純に除いて「残りだけが本当の利益」とすることもできません。今回の修正は多くのプラスとマイナスを合計した結果です。為替や関税による影響も、会社の業績予想の一部です。

見るべき違いは、偽物か本物かではなく、何を前提に生まれた利益かです。商品を売る量、価格、為替、関税等では、次に見通しが変わる条件も異なります。同じ金額が毎年新しく積み上がると決めず、会社の修正理由を追います。

なお、ここでの610億円は、通期の7月予想に対する修正です。先に見た車載電池の四半期増益内訳の関税155億円と、期間・比較元が違います。違う表の関税の金額を、一つの利益へ重ねて足してはいけません。

出典:前掲「決算概要」6・12頁。610億円と約50.8%は独自計算。

10.価格の改善だけでなく、材料費の増加も同時に起きている

価格改定・合理化等の効果は、7月計画に対して710億円のプラスです。一方、原材料と物流費は570億円のマイナスへ修正されています。

この二項目だけの差はプラス140億円です。価格や生産の改善が大きいことは確認できますが、その改善が丸ごと追加利益になるという話ではありません。会社は、材料費等の増加も織り込んでいます。

同じ修正表では、固定費は50億円のマイナスです。改革の効果があることと、固定費全体の修正がプラスになることは同じではありません。戦略投資や人件費・エネルギー等の費用も含めた全体を見ます。

また、以前に全社で織り込んでいた中東情勢やメモリ価格等の追加的なリスク見込みを取りやめ、200億円のプラスとしています。これは会社予想に置いた前提の変更で、新たな商品を売った金額ではありません。現実の全リスクが消えたという説明でもありません。

個々の要因を追うと、今回の会社計画は、需要増だけの一本足ではありません。販売、価格や費用の改善、為替・関税、見通しに置くリスクの変更を合わせた姿として読むことになります。

出典:前掲「決算概要」12頁。140億円は二項目に限った独自の差額で、全社増益額ではありません。

11.「前年の約3倍」と「今回さらに増額」は、比較の起点が違う

通期営業利益予想7,100億円は、前年実績2,364億円に対して約3倍です。この大きな前年比の伸びには、前年の構造改革費用の反動1,745億円も含まれます。

前年に特別な費用がかかって利益が低くなった場合、その費用が同じようにかからないだけでも、前年比の増益額は大きくなります。これが費用の反動です。一方、今期に改革の成果として費用を下げ、稼ぎやすくすることは、別の経路です。

会社は今期の構造改革効果を1,000億円としています。ただし、前年費用の反動も、今期の改革効果も、7月の計画時点ですでに織り込んでいました。今回、新しく1,200億円へ上乗せする項目ではありません。

この区別をしないと、前年に対する改善を説明した数字を、今回の上方修正へもう一度足してしまいます。「前年よりなぜ増えるか」と「直前の計画よりなぜ良くなったか」は、同じ会社の決算でも違う問いです。

今回の実績と計画変更を評価するなら、大幅増益の見出しを否定するのではなく、その比較元と内訳を読み分けます。改革の反動があることだけで、今期の成長が全て見かけだけになったという結論にもできません。

出典:前掲「決算概要」10・12頁。倍率は会社表示と独自計算を照合。

12.スマートライフは、調整後増益でも営業赤字だった

全社が好調でも、全ての問題が消えたわけではありません。冷蔵庫、洗濯機、調理・美容等の製品を扱うスマートライフを見ると、7〜9月には次の結果が出ています。

同じ部門・同じ7〜9月 今回実績
調整後営業利益 202億円
その他損益 マイナス247億円
営業利益 マイナス45億円

調整後営業利益は前年から117億円改善しています。しかし、リコール等の費用を含めると、営業利益は赤字でした。洗濯乾燥機のリコール費用の連結影響は190億円と開示されています。

会社の全事業で増益という説明は、調整後営業利益の比較に基づいています。この指標で改善したことと、費用を含む営業利益がマイナスであることは両立します。会社の説明が誤りだという話ではなく、どの利益を見ているかの違いです。

また、その他損益全体の247億円と、リコールの連結影響190億円は同じ金額ではありません。赤字45億円へ190億円を単純に足し戻して、独自の「本当の家電利益」を作ることはしません。

販売の状況も一様ではなく、国内の小型家電は堅調な一方、中国の大型家電や欧州の映像関連等は減販でした。空調等は別部門ですから、この赤字をパナソニックの家電全製品が赤字だと広げないことも大切です。

成長領域の強さを見ると同時に、この部門が費用を含めても改善するかを追う。全社の好決算と、残った課題の両方を同じ資料で確認できます。

出典:前掲「決算概要」4・5・7・41頁。

13.今回の資金増加には、過去年度分の入金もある

上期の営業キャッシュフロー、営業で動いた資金は3,231億円で、前年の2,984億円から増えました。会社は、第1四半期に米国のIRA生産補助金の直接給付があったことを、増加の理由として説明しています。

資料の脚注にある1,088億円は、2024年度分の補助金の直接給付と、その約半分を顧客と有効活用した影響を合わせた数字です。この金額を、そのまま受け取った補助金の総額とは扱えません。

ここで押さえたいのは、一般的な会計用語ではなく、今回何が入金されたかです。以前の年度に対応する補助金が今期の資金へ表れたことを、今期の商品の販売拡大だけで説明しないようにします。

また、この営業資金の説明を、先に見た営業利益へ同額を加算する理由にもできません。利益の増減理由と、入金の時期は、それぞれ会社の資料に沿って見ます。補助金を除いた架空の利益や現金残高を作るのでなく、何がどの数字へ表れたかを理解するための補足です。

出典:前掲「決算概要」1・8頁。IRAは米国の制度名を示す略称で、ここでは会社が説明する生産補助金を指します。

14.会社は収益目標の2年前倒しを目指す

会社は、2028年度の調整後営業利益7,500億円以上という目標について、今期7,800億円の見通しにより2年前倒しでの達成を目指しています。

これまで見た通常の営業利益予想7,100億円とは、指標が違います。同じ数字として比較せず、目標と予想を調整後営業利益同士で比べます。

また、10月末時点では、今期全体の結果が出たわけではありません。会社が前倒し達成を目指す見通しと、すでに達成した実績は分けます。そのうえで、会社が年間の収益水準を従来より高く見ていることは確認できます。

投資家が次に追うのは、目標の見出しを何度も確認することではなく、それを支える事業の進み具合です。蓄電関連の販売、部品・材料の供給、価格と費用の改善が計画へどう表れるか。その実績で、今回の見通しを検証します。

出典:前掲「決算概要」1・10頁。

15.配当は、今回の発表内容だけ短く確認

今期の年間配当予想は70円。中間27円と期末43円予想の合計で、前年年間実績40円から増額されました。

年間予想には、すでに権利の基準日を通過した中間分が含まれます。今から年間70円の全額を受け取れるという意味ではありません。期末分も、必要な権利の取得が条件であり、会社の予想です。

今回の配当発表は、業績予想の修正と同時に行われました。配当額の変化を確認したうえで、その背景でどの事業が変わり、利益の見通しがどう動いたのかを判断材料にします。

出典:前掲「中間決算短信」1頁、同社「株式事務のご案内」。

16.次の発表では、この計画と実績を照合する

今回の決算を次へ生かすために、確認先を具体化します。「AIは好調か」という一問だけにせず、関連事業の販売、供給、利益へ分けて見ます。

対象 今回確認できたもの 次の開示で比べたいもの
蓄電関連 関連売上の拡大、年間5,500億円計画、メキシコ量産開始 年間計画に対する販売の進み方、稼働後の販売と利益への寄与
部品・材料側 AI関連売上拡大、年間3,600億円へ修正、供給能力拡大 上積みした計画に対する実績、調達と設備の進展
全社 営業利益7,100億円予想、修正理由の内訳 販売・価格・費用と、為替・関税等の条件の変化
スマートライフ 調整後は改善、費用込みでは四半期赤字 販売地域の動き、費用を含む営業利益の改善

これは会社が保証した将来結果ではなく、今回の開示を基にした筆者の確認観点です。予想がさらに上がったかどうかだけでなく、今回置いた計画に対して実際の販売と稼ぎがどう動いたかを追います。

例えば、設備の量産開始は供給の進展ですが、年間の販売目標を達成したこととは別です。売上計画を増やした場合も、為替や価格による金額の変化と、製品の販売量の変化を区別します。会社が理由を説明した範囲で、計画の動きを読み直します。

出典:前掲「決算概要」4〜14頁を基にした筆者の整理。

まとめ:今回の決算は、家電のイメージだけでもAIの見出しだけでも読めない

パナソニックの7〜9月の営業利益は、前年同期の約2.3倍でした。蓄電関連と部品・材料のAI関連売上は、それぞれ約1.6倍。成長への期待だけでなく、実際の販売に変化が表れています。

一方、電池部門では車載電池の増益も大きく、全社の上方修正には為替や関税、価格と費用、リスク見込みの変更等が含まれていました。AI関連が好調という説明を、会社全体の改善の全てへ広げないことが大切です。

さらに、スマートライフには費用を含む営業赤字が残ります。伸びた事業と、改善が必要な事業を分けて見ることで、全社の大きな増益に埋もれる変化も確認できました。

何を売り、何が利益を動かし、その計画がどこまで進んだか。今回の決算を、その順番で読むことが、今後会社を調べる際の具体的な材料になります。良い決算だったというだけで、購入価格の妥当性や将来の収益が決まるものではありません。

主な参照資料

※表の金額は、会社の億円表示を基本とし、上期累計等は短信の百万円表示から換算しています。倍率・寄与率・差額等の独自計算は各所に明記しました。

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コロナショック直前の2020年に投資をスタート。リアルタイムで暴落を経験しながら独学で投資の基礎を習得。 現在の運用総額5,000万円超・年間配当収入120万円超を達成。投資信託・ETF・個別株・米国株など100銘柄超に分散投資し、相場の波に強いポートフォリオを構築中。 高配当株の長期保有と新NISAの積立を組み合わせた"2刀流"スタイルで資産形成を実践。保有銘柄の決算・配当・株価をブログで赤裸々公開しています。YouTubeでも投資情報を発信中!

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