こんな方におすすめ
- 安定した収入源を求めている人
- 投資知識の向上をしたい人
- 投資判断の材料が欲しい人
※本ページはプロモーションが含まれています
- 企業概要:企業の基本情報や事業内容を紹介
- 決算概要: 対象企業の決算のキーポイントを簡潔に紹介
- 株価と配当:過去の傾向と推移を見る
- 株主優待:あれば紹介
- 財務:資金について確認
- まとめ: 全体の要約
- と言う流れでお話ししたいと思います^ ^
国内外で幅広い保険事業を展開する、日本トップクラスの損害保険グループである、MS&ADについて解説します
まずは、損害保険業界についてまとめます
Contents
損害保険事業の収益構造と自然災害の影響
損保事業の収益源
- 損害保険事業は、収入保険料(保険契約から得る売上)が収益の柱
- 一般の事業会社とは異なり、収入時点では原価(保険金支払い額)が確定しない
- 保険金支払いは、契約者が保険事故(災害や事故)に遭った際に発生するため、不確実性が高い
自然災害の影響
- 自然災害の発生頻度が収益に大きな影響を与える
- 災害が多発すると保険金支払いが増加し、利益が急減することがある
- 平年並みであれば収益は安定するが、異常気象や大型災害が頻発すると収益に悪影響を及ぼす
損害保険事業は、収益が自然災害の発生状況に大きく左右される構造を持つため、リスク管理や資産運用戦略が重要な収益安定化の鍵となっています
損害保険業界のまとめ
1. 業界構造
- 寡占状態:
- 東京海上日動火災保険、損害保険ジャパン、三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損害保険の大手4社が、国内市場シェアの約9割を占める
- 寡占状態が業界構造に根付いており、競争が制約される傾向がある
2. 保険料カルテル問題
- 問題の発覚:
- 大手4社が企業向け火災保険などで、保険料を事前に調整する「カルテル行為」が発覚
- 金融庁の調査では、対象となる取引先は大企業を中心に約600社に及ぶ
- 2023年末に金融庁が業務改善命令を発出
- 影響:
- 今後、公正取引委員会による行政処分が見込まれ、損保各社の信用回復には時間がかかると予想される
3. 政策保有株式の売却
- 背景:
- 政策株保有が競争制限の温床となる構造的な問題とされ、業務改善計画の一環として売却を加速
- 現状:
- 大手4社の保有する政策株式は2024年3月末時点で約8.9兆円
- 2030~31年を目標に政策株の解消を目指している
4. 自動車保険の収支悪化
- 要因:
- コロナ禍の収束により交通量が回復し、事故が増加傾向
- 収益の柱である自動車保険の収支悪化が課題に
- 自然災害リスク:
- 自然災害の発生が平年並みであれば、収益への大きな影響は回避可能
5. 業績の好調要因
- 政策株の売却益:
- 政策株売却による利益の底上げが業績を支える
- 業績の柱が従来の保険料収入に加え、資産売却益に移行する傾向
2024年10月31日に下記の報道がありました
損害保険大手4社のカルテル問題の概要
- 課徴金の命令:
- 三井住友海上火災保険、損害保険ジャパン、あいおいニッセイ同和損害保険、東京海上日動火災保険の大手4社に、公正取引委員会が計20億円超の課徴金納付命令を下しました
- 問題の内容:
- 発電事業者「JERA」や石油元売り「コスモエネルギーホールディングス」などが発注する共同保険契約をめぐり、事前に価格を調整するカルテルや談合を9件で繰り返していた
- 保険代理店「共立」も情報交換に協力していたと認定
- 背景:
- 地震や事故の増加で保険料引き上げの必要性が高まる中、各社がオンライン会議や通信アプリ、カラオケ店で情報共有を行っていた
- 措置:
- 公正取引委員会は4社に課徴金命令を、代理店を含めた5社に再発防止措置命令を出しました
損害保険業界は寡占構造による競争制約やカルテル問題という負の側面を抱えています一方で、政策保有株式の売却や自然災害リスクの安定化により、大手4社の業績は短期的には好調が続く見込みです
しかし、カルテル問題に対する行政処分や信用回復への取り組みが、業界の長期的な課題として残る状況です
1、MS&ADの企業概要
企業の特徴
-
- 三井住友海上火災保険・あいおいニッセイ同和損保を中核とする保険持株会社
- 国内損害保険、生命保険、海外保険、金融・リスク関連サービスの4事業を展開
- 国内損保料収入トップ(東京海上HDと並ぶ)
- 世界第8位、ASEAN域内でシェア1位
- 世界48の国・地域で事業展開、ASEAN10ヵ国で損保シェア1位
- 主要株主はトヨタ自動車
2、決算概要
2025年3月期第2四半期の累計
売上高
- **前年同期比-5.0%**の減少(3兆6,285億円 → 3兆4,478億円)
- 主な要因:
- 国内生命保険部門の収入が減少(生命保険料収入の減少が影響)
- 為替の影響で海外事業の保険料収入が円換算ベースで減少
経常利益
- 4.8倍の大幅増加(1,314億円 → 6,308億円)
- 主な要因:
- 投資収益の改善:特に有価証券売却益の大幅増(前年84億円 → 今期3,809億円)
- 自然災害関連損害が減少したことにより、損害率が改善(国内外の自然災害保険金支払いが前年より減少)
最終利益
- 5.2倍の増加(875億円 → 4,589億円)
- 主な要因:
- 経常利益の増加がそのまま反映
- 税引前利益も増加しているが、法人税等の負担が増加しつつも利益拡大をカバーできた
主に資産運用(有価証券売却益)と損害率の改善が、経常利益・最終利益を大幅に押し上げた反面、生命保険収益や為替影響による売上高減少が目立つ結果となっています
修正内容
- 経常利益:
- 修正前:8,710億円
- 修正後:8,930億円(+2.5%)
- 最終利益:
- 修正前:6,100億円
- 修正後:6,300億円(+3.3%)
- 修正1株益:
- 修正前:398.83円
- 修正後:411.9円(+3.3%)
業績修正の主な理由
- 資産運用収益の増加:
- 主に有価証券売却益のさらなる増加が想定されるため、経常利益が上方修正された
- 自然災害関連支払いの減少:
- 国内外での自然災害による損害保険金の支払い負担が当初予想よりも軽微だったため、最終利益が上方修正されています
- 為替の影響:
- 為替相場の変動が一部収益にポジティブな影響を与えた
今回の修正は、主に資産運用や損害保険事業の収益性改善によるものであり、経常利益・最終利益ともに順調な拡大を見せています
市場環境や損害率の改善を背景に、今期の業績見通しがポジティブであることを示しています
通期の業績推移
経常利益
- 2024年度実績予想:8,930億円(前期比+2.1倍)
- 大幅増加の理由:
- 資産運用収益の拡大:
- 有価証券売却益が大きく貢献し、収益増加を牽引。
- 株式や外国証券の売却を戦略的に進めた結果。
- 自然災害の負担軽減:
- 自然災害による損害保険金の支払いが当初予想より軽微で、損害率が改善。
- 為替影響:
- 一部海外事業の収益改善に寄与
- 資産運用収益の拡大:
- 大幅増加の理由:
最終利益
- 2024年度実績予想:6,300億円(前期比+70.6%)
- 増加の理由:
- 経常利益の拡大が最終利益に直結。
- 法人税負担は増加しているが、利益規模の拡大により全体の増益に寄与。
- グローバル事業の安定収益:
- 海外保険事業(特にアジア地域)の堅調な収益拡大が最終利益を押し上げた
- 増加の理由:
通期業績の全体的なポイント
- 経常利益・最終利益ともに過去最高水準を更新する見込み
- 投資収益を中心に大幅な増益が期待され、損害保険部門でも安定した収益性を維持
- 自然災害や市場変動といった外的リスクを抑えた、収益構造の強さが際立つ予想となっています
3、株価と配当
株価
2024年11月24日時点での月足チャートです
現在の株価:3,531円
- 2023年後半から2024年にかけて株価が急激に上昇。
- 特に2024年3月以降、業績の改善や市場環境の追い風を背景に上昇トレンドが続く。
- 9月以降も好調な業績を反映し、株価は高値圏を維持
PER(株価収益率)
- PER:8.6倍
- 業界水準では適正もしくはやや割安。
- 利益の成長が市場に織り込まれる余地があり、割安感が残る水準
PBR(株価純資産倍率)
- PBR:1.25倍
- 純資産価値の約1.25倍で取引されており、企業の資産価値が市場で高く評価されています
配当利回り
- 配当利回り:4.11%
- 高い配当利回りを維持しており、投資家にとって安定的な収益源
- 配当金予想:年間145円
- 業績の好調を反映し、配当が十分な利益でカバーされていることが信頼感を生んでいます
結論
- 株価は過去1年で急激に上昇しており、業績の好調さと配当利回りの高さが主要な要因
- PER・PBRから見ても、さらなる成長を期待する余地があり、安定した配当利回りが魅力となっています
- 今後の株価動向は、来期の業績見通しと市場環境の変化がポイントとなりそうです
4、株主優待
株主優待はありません
5、財務
自己資本比率
- 2024年3月期:16.6% → 2024年9月期:16.3%
- 自己資本比率は若干低下していますが、いずれも15%を超え、十分な財務健全性を示しています
- 16%台の自己資本比率は、保険業界としては高水準であり、リスク耐性が強いことを表しています
剰余金
- 2023年3月期:1兆6,344億円 → 2024年9月期:2兆140億円
- 剰余金の増加は、収益の安定成長と株主還元(配当)の余力を示しています。
- 特に最終利益が高水準で推移していることが剰余金拡大の要因です
有利子負債倍率
- 2024年3月期:0.16倍 → 2024年9月期:0.14倍
- 有利子負債倍率が低下しており、借入金に依存せず、健全な資金調達が行われていることを示しています。
- 0.14倍という水準は、キャッシュフローが強く、負債返済能力が高いことを裏付けています
総括
- 自己資本比率の高さと有利子負債倍率の低さから、MS&ADは非常に堅実な財務体質を維持しています
- 剰余金の大幅な増加は、収益基盤の強さを反映しており、安定的な成長を支えています
- 投資家にとって魅力的な財務内容といえ、今後の業績拡大や株主還元の可能性にも期待が持てます
6、MS&ADのまとめ
MS&ADの企業概要
- 事業内容:
- 三井住友海上火災保険、あいおいニッセイ同和損保を中核とする保険持株会社。
- 主な4事業:
- 国内損害保険(火災・海上・自動車など)
- 国内生命保険
- 海外保険
- 金融サービス・リスク関連サービス
- 業界地位:
- 国内損保料収入トップ(東京海上HDと並ぶ)。
- 世界第8位の損害保険グループ、ASEAN域内でシェア1位。
- 主要株主:トヨタ自動車。
- 海外展開:
- 世界48の国・地域で事業展開。
- ASEAN10ヵ国で損保シェア1位
第2四半期累計決算
- 売上高:3.45兆円(前年比-5.0%)
- 経常利益:6,308億円(前年比+4.8倍)
- 最終利益:4,589億円(前年比+5.2倍)
有価証券売却益の詳細
- 売却益:3,809億円(前年同期の842億円から大幅増)
- 市場環境の改善に伴う有価証券価格の上昇
- 資産ポートフォリオ再構築による戦略的売却
- 投資収益の最大化を目指した運用戦略の結果
通期業績予想
- 経常利益:8,930億円(前年比+2.1倍)
- 最終利益:6,300億円(前年比+70.6%)
- 資産運用収益と損害率改善による収益拡大が寄与
- 配当予想:年間145円(配当利回り4.11%)
株価と財務指標
株価
- 現在の株価:3,531円(2024年11月24日)
- PER:8.6倍(割安感あり)
- PBR:1.25倍(資産価値を評価)
- 配当利回り:4.11%(安定した高配当)
財務
- 自己資本比率:16.3%(堅実な財務体質)。
- 有利子負債倍率:0.14倍(低負債依存)。
- 剰余金:2兆140億円(内部留保の強化)
MS&ADは、国内外の保険事業で圧倒的な地位を持ち、収益基盤が安定しています
財務の健全性、高配当利回り、割安な株価評価から、投資家にとって魅力的な企業です
資産運用や海外展開の成果を最大化しつつ、今後も株主還元を強化する姿勢が期待されます
今後も別の個別株も解説していきますので、ひとつの参考にしてみてください(^^)