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海運大手3社、燃料高でも全社上方修正|利益の出どころと株主還元を比較

※本記事は、2026年8月21日時点で公表されている資料をもとに作成しています。株価と指標は2026年8月20日終値です。特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身でお願いします。

海運大手3社、燃料高でも全社上方修正

今回は、日本郵船、商船三井、川崎汽船の2027年3月期第1四半期決算を比較します。

海運株を見るとき、「中東情勢が緊迫すると運賃が上がるから、船会社には追い風」と考える人がいます。反対に、「原油が上がると船の燃料費が増えるから、海運株には逆風」と考える人もいます。

今回の決算を見ると、どちらも間違いではありませんでした。

同じ中東情勢が、自動車船には配船停止や迂回、燃料高という逆風になり、タンカーやドライバルクには輸送距離の長期化と市況上昇という追い風になっています。しかも、同じ会社の中で両方が同時に起きています。

その結果、第1四半期の利益は3社で明暗が分かれました。それでも通期の経常利益予想は3社とも期初予想から上方修正されています。

さらに株主還元も、日本郵船は増配、商船三井は累進配当、川崎汽船は大型自社株買いと、性格がまったく違います。

この記事では、単純な売上や配当利回りの順位ではなく、利益の出どころ、ONEの影響、中東情勢の前提、株主還元の設計まで分けて確認します。

まず結論

3社とも通期予想を上方修正しましたが、同じ理由で伸びたわけではありません。

会社 第1四半期の見え方 通期経常利益 還元の主役
日本郵船 ドライバルクとエネルギーが、自動車・物流の減益を補った 2,500億円 年240円へ増配
商船三井 表面上の売上は+68.9%。ただし決算期変更調整後の経常利益は△7.6% 2,250億円 年205円を起点とする累進配当
川崎汽船 ドライバルクは大幅増益、製品物流は大幅減益 1,350億円 年120円+上限1,300億円の自社株買い

今回のポイントは3つです。

1つ目は、中東リスクは海運会社全体へ同じ方向に働かないことです。

2つ目は、3社共通のコンテナ船会社ONEが、第1四半期では減益だった一方、通期予想を3倍へ引き上げたことです。

3つ目は、増配、累進配当、自社株買いは、どれも株主還元ですが意味が違うことです。

予想配当利回りだけなら川崎汽船が最も高く見えます。しかし、配当の安定性を重視するのか、将来の減配を避ける設計を重視するのか、発行株数の減少まで見るのかで、評価は変わります。

海運3社とONEの関係

日本の海運大手3社は、日本郵船、商船三井、川崎汽船です。

この3社は以前、それぞれコンテナ船事業を運営していました。しかし、世界のコンテナ船業界では規模とコスト競争力が重要です。そこで3社は事業を統合し、2018年にONEがサービスを開始しました。

ONEは「ワン」と読みます。正式名称はオーシャン・ネットワーク・エクスプレスです。出資比率は日本郵船が38%、商船三井が31%、川崎汽船が31%です。

重要なのは、ONEが3社の連結子会社ではなく、持分法適用会社であることです。

持分法では、ONEの利益の一部が、出資比率などに応じて3社の決算へ反映されます。その利益は主に営業利益より下の経常利益段階に入ります。

したがって、海運3社を営業利益だけで比較すると、コンテナ船事業の影響を見落とします。今回は連結全体を経常利益、各事業をセグメント経常利益で見ます。

周辺には、ドライバルクに強いNSユナイテッド海運、タンカーの飯野海運や共栄タンカー、自社船運航の乾汽船、内航・フェリーを手がける会社などもあります。ただし、事業構成と決算規模が大きく異なるため、今回の数値比較は大手3社に絞ります。

比較の前提|商船三井だけ単純な前年同期比ではない

3社はすべて日本基準、連結決算で、通常の対象期間は2026年4月1日から6月30日までです。

ただし、商船三井には重要な例外があります。

同社は今期から、12月末を決算日としていた連結子会社384社について、決算期を3月末へ変更、または3月末に仮決算する方法へ変更しました。このため、該当する子会社については2026年1月から6月までの6か月分が第1四半期に入っています。

商船三井の決算短信1ページ目を見ると、売上高は7,309億円で、前年の4,327億円から68.9%増えています。しかし会社は正式な前年同期比を「-」と表示しています。前年が3か月、今回の一部が6か月で、同じ期間ではないからです。

会社が示す3か月換算の調整後では、次のようになります。

  • 売上高:+21.0%
  • 営業利益:△18.8%
  • 経常利益:△7.6%

表面上は「売上69%増、経常利益ほぼ横ばい」ですが、期間をそろえると「増収、営業・経常減益」です。

この違いは大きいため、本記事では商船三井の表面上の数字に必ず注記をつけます。

日本郵船と川崎汽船もセグメント区分や費用配賦方法を一部変更していますが、前年値は各社が変更後の方法に組み替えて再表示しています。

第1四半期の決算一覧

単位は億円です。

会社 売上高 前年比 営業利益 前年比 経常利益 前年比 最終利益 前年比
日本郵船 7,277 +21.1% 577 +69.8% 712 +27.3% 671 +33.5%
商船三井 7,309 +68.9%※ 385 +3.9%※ 521 △0.2%※ 610 +15.6%※
川崎汽船 2,868 +17.1% 195 △1.3% 240 +10.9% 233 △21.9%

※商船三井は一部子会社の6か月分を含むため単純比較できません。

営業利益率は、日本郵船が7.9%、商船三井が表面値で5.3%、川崎汽船が6.8%です。商船三井の3か月換算調整後は5.7%で、前年の8.6%から低下しています。

数字だけを見ると日本郵船が最も強く見えます。実際、営業、経常、最終利益がすべて増えています。

一方、川崎汽船は営業利益がほぼ横ばいで、経常利益は増えたのに、最終利益は21.9%減りました。これは本業が同じ率で悪化したという意味ではありません。前年にあった特別利益の反動が含まれます。

そして商船三井は、最も見出しと実態がずれやすい決算です。表面上の売上増加率をそのまま実力の成長率として扱わないことが重要です。

中東リスクは悪材料だけではない

今回の決算の中心は、中東情勢による輸送ルートと燃料価格の変化です。

船会社にとって最もわかりやすい悪影響は、燃料費の増加です。日本郵船の平均消費燃料価格は、前年の1トン578.60ドルから722.71ドルへ上昇しました。川崎汽船は550ドルから787ドル、商船三井は544ドルから917ドルです。

さらにホルムズ海峡の混乱で、通常の航路を使えない船には迂回や配船停止が発生します。航海が長くなれば燃料を多く使い、同じ船が次の仕事へ移るまでの時間も長くなります。

自動車船はこの影響を強く受けました。

日本郵船の自動車事業は、売上高が前年同期比12.7%増えたのに、経常利益は288億円から168億円へ120億円減りました。輸送台数は前年並みで、円安も売上には追い風でした。しかし、ルート変更、燃料費、港湾混雑による運航コストが利益を押し下げました。

商船三井の製品輸送事業も、経常利益が307億円から70億円へ237億円減少しています。コンテナ船の燃料費増、自動車船のペルシャ湾向け配船停止などが影響しました。

川崎汽船では、自動車船事業の経常利益が152億円から21億円へ130億円減りました。代替輸送による航海の長距離化、船腹稼働率の低下、燃料費などの運航コスト増が重なりました。

ここまでなら「中東情勢は海運株に逆風」で終わります。

ところが、タンカーやドライバルクでは逆のことが起きました。

中東からの原油やLPGの供給が減ると、北米や南米など遠い地域から代替調達する動きが出ます。同じ貨物量でも輸送距離が伸びれば、必要な船と航海日数が増えます。これがトンマイルの増加です。

船の供給が急に増えないなかで輸送距離が伸びると、実質的な船腹需給が引き締まり、運賃市況が上がることがあります。

日本郵船のエネルギー事業は、経常利益が120億円から239億円へ118億円増えました。会社はVLCC、つまり大型原油タンカーの市況が歴史的な高水準になったと説明しています。VLGCや石油製品タンカーでも、北米産貨物の増加による輸送距離の伸長が追い風でした。

商船三井も、原油船とLPG船で代替調達に伴うトンマイル増を挙げています。エネルギー事業全体は一過性利益の反動などで減益でしたが、タンカー市況そのものは追い風です。

中東情勢は、「海運会社に良いか悪いか」ではなく、「どの船を、どの契約で、どの航路に使っているか」で影響が変わります。

ONEは第1四半期減益、通期予想は3倍

3社共通のコンテナ船会社ONEは、2026年度第1四半期に売上高45.39億ドル、税引後利益0.31億ドルを計上しました。

前年同期は売上高40.49億ドル、税引後利益0.86億ドルでした。売上は増えましたが、税引後利益は減っています。

荷動きは5月、6月に回復し、中国発の前倒し出荷、北米航路の需要、欧州の港湾混雑などで運賃が上がりました。一方、中東情勢によって燃料油価格と運航コストも増えました。

ONEの燃料油価格は前年の1トン535ドルから666ドルへ上昇しています。積高と運賃の改善だけでは、コスト増を完全には打ち返せませんでした。

ただし、ここで終わりではありません。

ONEは通期の税引後利益予想を、前回の3億ドルから9億ドルへ引き上げました。上期7.5億ドル、下期1.5億ドルの計画です。

つまり、第1四半期実績は減益、通期見通しは改善です。

「ONEは利益3倍」とだけ書くと、すでに実績が3倍になったように見えます。正確には、足元の運賃上昇と荷動きを反映し、通期予想を3倍へ上方修正した、です。

なお、日本郵船がQ1に計上したONEの持分法投資利益は13億円、川崎汽船は11億円です。商船三井はコンテナ船事業のセグメント経常利益52億円を開示していますが、これはONEの持分法利益だけを表す数字ではありません。3社の開示を同じ欄に単純に並べないよう注意が必要です。

日本郵船|2つの減益を2つの増益が補った

日本郵船の第1四半期は、売上高7,277億円、営業利益577億円、経常利益712億円、最終利益671億円でした。

セグメントを見ると、今回の中東リスクの二面性が最もわかりやすく出ています。

セグメント 経常利益 前年比増減
定期船 100億円 △20億円
物流 △24億円 △56億円
自動車 168億円 △120億円
ドライバルク 194億円 +222億円
エネルギー 239億円 +118億円

自動車と物流で合計176億円悪化した一方、ドライバルクとエネルギーで合計340億円改善しました。

物流は売上が46.4%増えましたが、経常損益は赤字です。航空貨物は堅調だったものの、海上貨物の仕入価格が先に上がり、欧州で買収したヘルスケア物流事業ののれん償却費も発生しました。増収でも利益が伸びるとは限らない例です。

ドライバルクは大幅増益ですが、注意点があります。会社は、市況改善、円安に加え、燃料価格の急上昇に伴う「評価性由来の収支影響」を増益要因に挙げています。194億円すべてを恒常的な稼ぐ力と見るのは危険です。

通期予想は、売上高2兆8,810億円、営業利益1,850億円、経常利益2,500億円、最終利益2,400億円へ上方修正しました。経常利益は期初予想から650億円、35.1%の引き上げです。

年間配当は200円から240円へ増額しました。中間120円、期末120円です。会社の基本方針である連結配当性向40%を目安にした数字で、会社予想EPS594.49円に対する配当性向は40.4%です。

さらに日本郵船は、NSユナイテッド海運への公開買付け開始予定を公表しています。鉄鋼原料を中心とするドライバルクと内航の顧客基盤を取り込み、市況変動の大きい事業の中で安定収益を厚くする狙いです。ただし現時点では「開始予定」であり、完了した買収として扱いません。

商船三井|表面上の増収より、調整後利益を見る

商船三井の表面上の第1四半期は、売上高7,309億円、営業利益385億円、経常利益521億円、最終利益610億円です。

しかし、384社の決算期変更を調整した3か月換算では、売上高5,235億円、営業利益301億円、経常利益483億円です。前年同期比は売上+21.0%、営業利益△18.8%、経常利益△7.6%になります。

それでも通期予想は大幅に上方修正されました。

売上高2兆2,300億円、営業利益1,350億円、経常利益2,250億円、最終利益2,400億円です。経常利益は期初予想から800億円、55.2%引き上げました。3社のなかで修正額と修正率が最も大きくなっています。

背景には、ケープサイズなどのドライバルク市況、原油船・LPG船のトンマイル増、ケミカル船市況、上期のコンテナ運賃、円安があります。

セグメント経常利益では、ドライバルクが前年の34億円赤字から107億円黒字へ転換しました。一方、製品輸送は307億円から70億円へ237億円減っています。

商船三井らしいのは、エネルギー関連の厚さです。原油船、LPG・アンモニア船、LNG船、エタン船、オフショア、ガスインフラに加え、今期からケミカルロジスティクスを独立した事業として開示しています。

一部のLNG船・ガスインフラでは契約終了や前年の一過性利益の反動がありましたが、中長期契約による安定利益は残ります。コンテナやドライバルクの市況変動だけに依存しない構造を、どこまで育てられるかが中長期の見どころです。

株主還元では、2026年度から1株205円を起点とする累進配当を導入しました。累進配当は、原則として前年度の配当を下回らない設計です。今期予想は中間100円、期末105円、年間205円。会社予想EPS698.27円に対する配当性向は29.4%です。

さらに総還元性向40%を目途に、業績の進捗を見て機動的な自社株買いを判断するとしています。現時点で新たな自社株買いを実施すると決まったわけではありません。

川崎汽船|配当より大型自社株買いが目立つ

川崎汽船の第1四半期は、売上高2,868億円、営業利益195億円、経常利益240億円、最終利益233億円でした。

営業利益は1.3%減、経常利益は10.9%増、最終利益は21.9%減です。最終減益だけを見て「本業が2割悪化」とするのは誤りです。

セグメントでは、ドライバルクが前年3億円の赤字から90億円の黒字へ転換しました。鉄鉱石やボーキサイト、石炭、穀物の荷動きと市況が追い風です。

一方、製品物流は243億円から108億円へ134億円減りました。なかでも自動車船は152億円から21億円へ130億円減っています。中東情勢による航海の長距離化、船腹稼働率の低下、燃料費の増加が大きく響きました。

通期予想は売上高1兆700億円、営業利益850億円、経常利益1,350億円、最終利益1,350億円です。経常利益は期初予想から350億円、最終利益は400億円引き上げました。

年間配当120円は据え置きです。中間60円、期末60円で、内訳は基礎配当40円と追加配当80円です。会社予想EPS220.79円に対する配当性向は54.4%になります。

ただし、川崎汽船の還元は配当だけで見てはいけません。

同社は上限1,300億円、4,442万9,000株の自社株買いを実施中です。7月末までに862億円、3,327万7,600株を取得しました。取得した株式は消却する予定です。

自社株買いで株数が減れば、同じ利益でも1株当たり利益が増えます。ただし1,300億円は上限であり、7月末時点で全額を実施済みではありません。また、配当のように全株主が直接現金を受け取る仕組みでもありません。

配当と自社株買いを足して、機械的に「総合利回り」を作ることは避けます。

通期予想と中東正常化の前提

3社の経常利益予想と進捗率を並べます。

会社 通期経常利益 Q1進捗率 通期最終利益 Q1進捗率
日本郵船 2,500億円 28.5% 2,400億円 28.0%
商船三井 2,250億円 23.2% 2,400億円 25.4%
川崎汽船 1,350億円 17.8% 1,350億円 17.3%

進捗率だけなら日本郵船が先行し、川崎汽船が低く見えます。ただし海運は、船種市況、為替、燃料価格、ONEの利益が四半期ごとに大きく動きます。25%を超えたから順調、下回ったから未達と機械的には判断できません。

さらに各社が置く中東正常化の前提も完全にはそろっていません。

  • 日本郵船:ホルムズ海峡封鎖が2026年9月末まで継続。スエズ運河を避ける喜望峰ルートは年度を通じて継続
  • 商船三井:2026年10月から徐々にホルムズ周辺を航行できる状態へ戻り、2027年1月に正常化
  • 川崎汽船:9月末に向けて正常化し、10月以降にホルムズ通峡を再開。スエズ運河は通年で使わず喜望峰経由を継続
  • ONE:10月にホルムズ周辺の運航条件が紛争前の水準へ安定。喜望峰ルートは年度内継続

これは将来を正確に予言したものではなく、業績予想を作るための前提です。情勢が早く落ち着けば燃料・迂回コストは下がりますが、タンカーやコンテナ船の需給が緩む可能性もあります。長期化すれば逆の影響が考えられます。

単純に「正常化すればプラス」とも言い切れません。

配当・PER・PBRを比較

2026年8月20日終値で計算します。

会社 株価 PER PBR 年間配当 予想利回り
日本郵船 6,795円 11.43倍 0.88倍 240円 3.53%
商船三井 6,957円 9.96倍 0.80倍 205円 2.95%
川崎汽船 3,174円 14.38倍 1.11倍 120円 3.78%

PERは株価を会社予想EPSで割って計算しました。PBRはQ1末の自己資本と普通株式数からBPSを計算し直しています。

川崎汽船のPERは、Yahoo!ファイナンスの表示では14.70倍です。本記事の14.38倍と少し違います。

理由は、大型自社株買いで株数が動いているためです。会社予想EPS220.79円は、会社が通期に想定する期中平均株式数を使っています。一方、情報サイトの表示はQ1の期中平均株式数を使った計算に近くなっています。どちらかが単純に間違いというより、分母の株数が違います。本記事では会社予想EPSを優先しました。

配当利回りだけなら、川崎汽船、日本郵船、商船三井の順です。

ただし、還元の性格は次のように分けて考える必要があります。

  • 日本郵船:利益予想の引き上げを240円増配へ反映
  • 商船三井:今期利回りより、205円を起点に減らさない累進配当を重視
  • 川崎汽船:配当120円に加え、大型自社株買いと消却で株数を減らす

どれが最も良いかは、配当収入、減配耐性、資本効率のどこを重視するかで変わります。

株価は3社ともTOPIXを上回った

各社の業績修正と決算発表は、2026年7月24日から8月7日に分かれています。そのため、最も早い発表の前日である7月23日を共通起点とし、8月20日までを比較しました。

銘柄・指数 7月23日終値 8月20日終値 変化率
日本郵船 5,817円 6,795円 +16.8%
商船三井 5,795円 6,957円 +20.1%
川崎汽船 2,790円 3,174円 +13.8%
TOPIX 4,053.88 4,059.73 +0.1%

この期間、3社はいずれもTOPIXを上回りました。

ただし、上昇の理由を各社決算だけに決めつけることはできません。期間中にはONEの見通し、海外海運株、コンテナ・タンカー・ドライバルク市況、中東情勢など複数の材料があります。

また、株価が上がれば配当利回りは低下し、PERやPBRは上昇します。決算が良いことと、現在の株価で買いやすいことも同じではありません。

次の決算で確認したい5項目

1. ONEのQ2利益

ONEは上期税引後利益7.5億ドルを見込んでいます。Q1は0.31億ドルだったため、計画の多くをQ2で稼ぐ想定です。運賃上昇が実際の利益へどこまで残るかが焦点です。

2. ホルムズ海峡の正常化時期

各社は9月末から2027年1月にかけて正常化する前提を置いています。遅れれば自動車船と燃料コストへの負担が続きます。

3. スエズ運河と喜望峰ルート

喜望峰経由が続けば輸送距離は長くなり、船腹需給には引き締め要因、燃料費には増加要因になります。正常化が利益に与える方向は船種で異なります。

4. 自動車船の回復

3社すべてで中東情勢の負担が強く出ました。ペルシャ湾向け配船、船腹稼働率、燃料費、港湾混雑が改善するかを見ます。

5. 株主還元の更新

日本郵船が追加還元へ動くか、商船三井が総還元性向40%を目途に自社株買いを決めるか、川崎汽船が1,300億円の上限まで取得し消却するかを確認します。

まとめ

海運大手3社は、燃料価格が上がり、中東の航路が混乱するなかでも、そろって通期経常利益予想を上方修正しました。

ただし、中身は同じではありません。

日本郵船は、自動車と物流の減益を、ドライバルクとエネルギーが補い、年間配当を240円へ増額しました。

商船三井は、決算期変更のため表面上の売上69%増をそのまま評価できません。3か月換算では経常減益ですが、今後の市況、円安、コンテナ運賃を反映し、通期経常利益を2,250億円へ上方修正しました。還元は205円を起点とする累進配当です。

川崎汽船は、ドライバルクの回復と製品物流の悪化がはっきり分かれました。配当は120円据え置きですが、上限1,300億円の自社株買いと消却が還元の中心です。

そして3社に共通するONEは、Q1では減益、通期予想では3倍という、足元と先行きが逆方向に見える決算でした。

海運株を見るときは、「運賃が上がった」「原油が上がった」だけで結論を出さず、船種、契約、航路、燃料、ONE、株主還元を分けて確認する必要があります。

同じ海運株でも、利益の出どころと株主への返し方は大きく違います。

主な参照資料

  • 日本郵船「2027年3月期 第1四半期決算短信」「決算説明会資料」
  • 商船三井「2027年3月期 第1四半期決算短信」「決算説明資料」
  • 川崎汽船「2027年3月期 第1四半期決算短信」「決算説明会資料」
  • Ocean Network Express「2026年度 第1四半期決算説明資料」
  • Yahoo!ファイナンス株価時系列
  • ユーザー提供画像「海運」174〜175ページ

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たぐ

コロナショック直前の2020年に投資をスタート。リアルタイムで暴落を経験しながら独学で投資の基礎を習得。 現在の運用総額5,000万円超・年間配当収入120万円超を達成。投資信託・ETF・個別株・米国株など100銘柄超に分散投資し、相場の波に強いポートフォリオを構築中。 高配当株の長期保有と新NISAの積立を組み合わせた"2刀流"スタイルで資産形成を実践。保有銘柄の決算・配当・株価をブログで赤裸々公開しています。YouTubeでも投資情報を発信中!

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