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印刷2強、稼ぎ頭はもう印刷じゃない|TOPPANと大日本印刷の最新決算

はじめに|「印刷会社」の決算に、印刷がほとんど出てこない

印刷会社、と聞いて思い浮かべるのは、本や雑誌、チラシ、パンフレットあたりでしょうか。

ところが、印刷大手の決算書(けっさんしょ)を開けると、そこに書いてあるのは半導体(はんどうたい)の部材だったり、電池の包装材だったり、家具に貼る化粧シートだったりします。

今回は、印刷を本業として出発した上場企業のうち、時価総額(じかそうがく)1,000億円以上の2社を取り上げます。TOPPANホールディングス(7911)と、大日本印刷(7912)です。

2社とも2026年4月から6月までの3か月の決算を発表しました。その中身を、部門ごとに開けていきます。

結論を先に言うと、印刷を含む部門の営業利益率(えいぎょうりえきりつ)は、2社ともほぼ3%でした。 別々の会社で、部門の名前も違います。それなのに、差は0.03ポイントしかありませんでした。

数字はすべて各社の決算短信(けっさんたんしん)から取っています。株価と指標は2026年8月21日(金)の終値(おわりね)です。

結論

先に、この記事でわかることを4つにまとめます。

1. 印刷を含む部門の営業利益率は、TOPPANが2.95%、大日本印刷が2.98%。

差は0.03ポイント。ただし、そこに至る道は逆でした。TOPPANは前の年の2.40%から上がってきて2.95%。大日本印刷は3.41%から下がってきて2.98%。両側から、同じ数字に寄ってきています。

2. 利益を作っているのは、どちらも半導体。

TOPPANのエレクトロニクス事業分野が24.75%、大日本印刷のエレクトロニクス部門が25.09%。ここでも差は0.34ポイントでした。

3. TOPPANでは、部門の順位が入れ替わった。

パッケージと建装材(けんそうざい)を扱う生活・産業事業分野が、情報ソリューション事業分野を売上で追い抜きました。前の年は740億円の差をつけられていた部門です。

4. 最終利益は、正反対に動いた。

TOPPANが+131.3%、大日本印刷が△48.0%。同じ3か月です。この理由は、損益計算書(そんえきけいさんしょ)を1行ずつ追うとはっきりします。

1. 今回の2社

今回は、印刷を本業として出発した上場企業のうち、時価総額1,000億円以上の2社を取り上げます。

会社 コード 市場 時価総額 株価
TOPPANホールディングス 7911 東証プライム 1兆5,098億円 5,123円
大日本印刷 7912 東証プライム 1兆4,173億円 3,225.0円

時価総額は1兆5,098億円と1兆4,173億円。925億円しか違いません。 業界の中でこの2社だけが飛び抜けて大きく、しかもほぼ同じ規模です。

2社とも3月決算で、今回発表されたのは2026年4月1日から6月30日までの3か月の成績です。会計基準(かいけいきじゅん)も両社とも日本基準の連結(れんけつ)でそろっています。

規模も、決算期も、会計基準も、期間もそろっている。ここまで条件がそろって比べられる組み合わせは、そう多くありません。

2. 比較の前提|3つ注意してください

数字を並べる前に、読み違えやすいところを3つ書いておきます。

注意1:TOPPANだけ、利益の指標が2つある

TOPPANは決算短信の1ページ目に、利益を2種類載せています。

  • 営業利益 200億24百万円
  • Non-GAAP営業利益(ノンギャープえいぎょうりえき) 254億10百万円

Non-GAAP営業利益は、会社が独自に決めた指標です。決算短信の注記に、こう書いてあります。

Non-GAAP営業利益は、営業利益から「買収に伴うのれん・無形資産の償却費(しょうきゃくひ)」「M&A関連費用」「株式報酬関連費用」の一過性または本業との関連が低い費用を調整して算出する、本業での収益力を示す利益指標です。

つまり、買収(ばいしゅう)にかかった費用を差し引く前の利益です。会社の言うとおり本業の力を見るには便利ですが、大日本印刷は同じ指標を出していません。 そこでこの記事では、2社を並べるときは正式な営業利益を使います。Non-GAAP営業利益は参考として書き添えます。

注意2:部門の名前に「印刷」と書いていない

2社とも、印刷が入っている部門の名前が「印刷事業」ではありません。

会社 印刷を含む部門の名前 その部門に入っているもの
TOPPAN 情報ソリューション事業分野 証券・事務系印刷、情報系印刷、BPO(ビーピーオー)、セキュア、IoT、マーケティング
大日本印刷 スマートコミュニケーション部門 出版、マーケティング、情報セキュア、写真プリント、コンテンツ

BPOというのは、企業や役所の事務作業をまとめて請け負うサービスのことです。

大事なのは、この部門の数字=印刷そのものの数字、ではないという点です。印刷以外の事業も同じ箱に入っています。ですからこの記事では「印刷を含む部門」という言い方をします。「印刷部門」とは略しません。

注意3:どちらもセグメントの区分を見直している

TOPPANは今期から「情報コミュニケーション事業分野」を「情報ソリューション事業分野」に名称変更しました。ただし決算短信に「当該変更は報告セグメントの名称変更のみであり、セグメント情報に与える影響はありません」とあり、前の年の数字も新しい名前で開示されています。前年と比べられます。

大日本印刷も、一部の子会社をライフ&ヘルスケア部門からスマートコミュニケーション部門へ移しました。こちらも前の年の数字を新しい区分で作り直して載せています。やはり前年と比べられます。

3. 2社の決算一覧

まず全体の数字です。2026年4月から6月までの3か月です。

会社 売上高 前年同期比 営業利益 前年同期比 営業利益率
TOPPANホールディングス 7911 4,573億18百万円 +15.0% 200億24百万円 +47.9% 4.38%
大日本印刷 7912 3,729億46百万円 +1.9% 278億76百万円 +21.3% 7.47%

売上はTOPPANのほうが843億円大きいのに、営業利益は大日本印刷のほうが78億円多い。

営業利益率で見ると、TOPPANが4.38%、大日本印刷が7.47%。1.7倍の差があります。

参考までに、TOPPANのNon-GAAP営業利益は254億10百万円(+57.0%)。EBITDA(イービットディーエー=営業利益に減価償却費を足し戻した数字)は431億8百万円(+33.6%)でした。

最終利益まで見るとこうなります。

会社 経常利益 前年同期比 最終利益 前年同期比
TOPPANホールディングス 7911 229億63百万円 +53.1% 216億74百万円 +131.3%
大日本印刷 7912 352億74百万円 +25.0% 235億76百万円 △48.0%

片方は2.3倍、片方は半減。 経常利益まではどちらも増えているのに、最後の行で正反対になりました。

ここが1つ目の謎です。

4. 【本題】印刷を含む部門の利益率が、0.03ポイント差だった

では部門ごとに開けます。まず、印刷が入っている部門です。

会社 部門名 売上高 営業利益 利益率
TOPPAN 情報ソリューション事業分野 2,112億91百万円 62億26百万円 2.95%
大日本印刷 スマートコミュニケーション部門 1,739億67百万円 51億79百万円 2.98%

2.95%と2.98%。差は0.03ポイントです。

別々の会社です。部門の名前も違います。中身の構成も完全には同じではありません。それでもここまで近い数字が出ました。

さらに面白いのは、この2つが逆の方向から寄ってきていることです。

会社 前年同期の利益率 当期の利益率 動き
TOPPAN 情報ソリューション事業分野 2.40% 2.95% 上がってきた
大日本印刷 スマートコミュニケーション部門 3.41% 2.98% 下がってきた

TOPPANは2.40%から上へ、大日本印刷は3.41%から下へ。両側から、同じ場所に集まりました。

売上の動きも逆です。TOPPANは+0.5%の増収、大日本印刷は△1.4%の減収。利益はTOPPANが+23.3%、大日本印刷が△13.9%です。

5. TOPPANの情報系で、何が起きているか

TOPPANの情報ソリューション事業分野は、売上+0.5%、営業利益+23.3%。増収増益(ぞうしゅうぞうえき)でした。

決算短信の説明を見ていきます。

伸びたのは3つです。セキュア事業は、前の年度に買収したタイのDZ Card社の効果で増収。IoTソリューションは公共分野を中心に案件を獲得して増収。証券・事務系印刷は、国内では構造改革による減収があったものの、海外のファイナンス印刷が拡大して増収。

BPOは横ばい。マーケティングは前の年度の一過性案件がなくなって減収。

そして、印刷そのものに近い部分については、こう書かれています。

情報系印刷事業では、出版・商業印刷が減少し、減収となりました。今後も、プロダクトミックスの改善に加え、拠点の統廃合など収益性向上に向けた当事業のさらなる構造改革を進めてまいります。

「拠点の統廃合」。 工場や営業所を減らす、ということです。

利益率が2.40%から2.95%へ上がったのは、買収した会社が加わったことと、この構造改革の両方が効いた形です。増益ではあるものの、印刷そのものは縮めていく方向にあると読めます。

6. 大日本印刷の情報系で、何が起きているか

大日本印刷のスマートコミュニケーション部門は、売上△1.4%、営業利益△13.9%。減収減益(げんしゅうげんえき)でした。

伸びた事業もあります。写真プリント用の部材が欧米・アジアで好調に推移し、欧米での撮影サービスも増えました。

一方で、情報セキュア関連はデュアルインターフェイスICカードの販売数量が減少しました。

そして、減益の理由については、会社自身がはっきり書いています。

マーケティング関連は、企業向け施策の実績・知見とデジタルの強みを掛け合わせた価値の提供に努めましたが、紙媒体(かみばいたい)の市場縮小の影響もあり、前年を下回りました。

出版関連は、教育・研究施設、図書館等の設計・内装施工に関する大型案件の完工数や、図書館運営業務の受託件数が増加したものの、雑誌等の市場縮小の影響を受け、前年を下回りました。

「紙媒体の市場縮小」「雑誌等の市場縮小」。 ここは推測ではなく、会社の言葉です。

なお、この部門を強化する動きもあります。2026年5月、大日本印刷は欧州・アフリカ・北米で決済ICカードや国民IDソリューションを手がけるAUSTRIACARD HOLDINGS AGを、公開買付け(こうかいかいつけ)で取得することを決定しました。情報セキュア関連の立て直しにつながるかどうか、次の決算以降の見どころです。

7. では、利益はどこから来ているのか

2社の全部門を並べます。

TOPPANホールディングス

部門 売上高 営業利益 利益率
情報ソリューション事業分野 2,112億91百万円 62億26百万円 2.95%
生活・産業事業分野 2,142億95百万円 146億5百万円 6.82%
エレクトロニクス事業分野 376億85百万円 93億27百万円 24.75%

大日本印刷

部門 売上高 営業利益 利益率
スマートコミュニケーション部門 1,739億67百万円 51億79百万円 2.98%
ライフ&ヘルスケア部門 1,277億29百万円 115億80百万円 9.07%
エレクトロニクス部門 713億31百万円 178億99百万円 25.09%

またです。 エレクトロニクスの利益率が、TOPPANで24.75%、大日本印刷で25.09%。差は0.34ポイント。

印刷を含む部門で約3%、エレクトロニクスで約25%。2社の数字が、2つの階層でそろいました。

しかも大日本印刷のエレクトロニクス部門は、売上が713億31百万円で全体の19%しかないのに、営業利益178億99百万円は3部門の中で最大です。売上の5分の1が、利益の半分以上を作っています。

8. エレクトロニクスの中身は、どちらも半導体

この部門で何を作っているのか、見ておきます。

TOPPAN はFC-BGA(エフシービージーエー)と呼ばれる高密度の半導体パッケージ基板(きばん)です。半導体のチップを載せる土台にあたります。

決算短信によると、先端品の認定を複数取得し、通信用途の需要が増えました。新潟工場では2026年1月に新しい製造ラインが量産を始め、石川工場では次世代のパイロットラインを立ち上げ中。さらにブロードコム社と協力して、シンガポールに新工場を設立しています。新潟・石川・シンガポールの3拠点体制に向けた準備が進んでいる、という書き方です。

大日本印刷 は半導体製造用のフォトマスクです。半導体の回路を焼き付けるための原版にあたります。決算短信には「先端品が増加したほか、ボリュームゾーンも堅調に推移し、前年を上回りました」とあり、EUV(イーユーブイ=極端紫外線)リソグラフィ用フォトマスクやナノインプリントといった最先端領域への展開にも取り組むと書かれています。

なお、TOPPANのエレクトロニクス事業分野は売上が△33.4%と大きく減っています。これはテクセンドフォトマスクという会社が、連結子会社から持分法適用(もちぶんほうてきよう)の関連会社に変わったためです。会社は「当影響を除くと増収」と書いています。事業が縮んだわけではありません。

9. TOPPAN|最大の部門が入れ替わった

TOPPANには、今回もう1つ大きな変化がありました。

部門 前年同期 売上 当期 売上 増減
情報ソリューション事業分野 2,102億54百万円 2,112億91百万円 +0.5%
生活・産業事業分野 1,362億18百万円 2,142億95百万円 +57.3%
エレクトロニクス事業分野 566億14百万円 376億85百万円 △33.4%

生活・産業事業分野が、情報ソリューション事業分野を売上で追い抜きました。

前の年は、情報が2,102億円、生活・産業が1,362億円。情報のほうが740億円も大きかった。それが1年で逆転しています。

生活・産業事業分野の中身は、パッケージ(包装材)と建装材(けんそうざい)です。建装材というのは、家具や床、ドアの表面に貼る化粧シートのことです。

伸びた理由は買収です。決算短信によると、米州の軟包装(なんほうそう)事業、環境性能の高いフィルムを作るイタリアのIrplast S.p.A.、そして2026年1月に買収したアロワーズ。これらの効果が積み上がりました。国内でも、溶剤の使用を抑えるSX生産方式を使ったパッケージが拡大しています。

利益も同じように伸びていて、営業利益は146億5百万円で+56.7%。TOPPANの3部門で、いちばん利益額が大きいのはここです。

ただし利益率は6.82%で、前の年の6.84%とほぼ同じです。売上が57.3%増えても、利益率は動いていません。 買収で規模を取りにいっている段階だ、と読めます。

なお、決算短信の「連結範囲の重要な変更」の欄に「除外2社(社名)TOPPANエッジ株式会社他1社」という記載があります。これは売却ではありません。 グループ内での吸収合併(きゅうしゅうがっぺい)です。TOPPAN株式会社が存続会社となり、TOPPANエッジとTOPPANデジタルを2026年4月1日付で吸収しました。短信にも「共通支配下の取引として処理しております」と書かれています。

10. 大日本印刷|3つ目の柱が育っている

大日本印刷のライフ&ヘルスケア部門も見ておきます。

部門 前年同期の利益率 当期の利益率
ライフ&ヘルスケア部門 7.48% 9.07%

売上は1,277億29百万円で+0.5%とほぼ横ばい。ところが営業利益は115億80百万円で+21.8%。売上が伸びていないのに、利益が2割増えました。

中身は、リチウムイオン電池の外装材、太陽電池の封止材(ふうしざい)、自動車の加飾(かしょく)フィルム、包装材、医療用パッケージ、そして飲料事業です。

太陽電池の封止材は、データセンター向けに電力需要が急増する中で好調でした。2025年10月に泉崎工場(福島県)へ導入した生産ラインの増強も寄与しています。

利益が増えた理由について、会社はこう書いています。

営業利益は、固定費等のコストダウン、固定資産の適正化などの事業構造改革によって、115億円(前年同期比21.8%増)となりました。

固定資産の適正化というのは、使っていない工場や設備を整理することです。

11. 最終利益が正反対に動いた理由

ここで冒頭の謎に戻ります。TOPPANは+131.3%、大日本印刷は△48.0%。なぜ逆になったのか。

まず大日本印刷から。損益計算書を1行ずつ追います。

項目 前年同期 当期
売上高 3,661億40百万円 3,729億46百万円 +68億6百万円
売上原価 2,784億32百万円 2,766億66百万円 △17億66百万円
売上総利益 877億7百万円 962億80百万円 +85億73百万円
販売費及び一般管理費 647億29百万円 684億3百万円 +36億74百万円
営業利益 229億78百万円 278億76百万円 +48億98百万円
経常利益 282億27百万円 352億74百万円 +70億47百万円
投資有価証券売却益 372億66百万円 2百万円 △372億64百万円
最終利益 453億48百万円 235億76百万円 △217億72百万円

答えは下から2行目です。

前の年、大日本印刷は投資有価証券売却益を372億66百万円計上していました。持っていた株を売った利益です。今年は2百万円しかありません。

つまり今年が悪かったのではなく、去年が特別だったということです。本業を表す営業利益は+21.3%で伸びています。

もう1つ、注目したい行があります。売上原価です。 売上が68億6百万円増えているのに、売上原価は17億66百万円減っています。ふつう、モノが多く売れれば原価も増えます。それが逆に減った。先ほどの「固定費等のコストダウン、固定資産の適正化」が、ここに効いています。

なお当期は、固定資産売却益を44億47百万円計上しています。

次にTOPPANです。

項目 前年同期 当期
営業利益 135億41百万円 200億24百万円 +64億83百万円
経常利益 150億2百万円 229億63百万円 +79億61百万円
特別利益合計 35億91百万円 25億8百万円 △10億83百万円
税金等調整前四半期純利益 176億48百万円 244億53百万円 +68億5百万円
法人税等合計 39億21百万円 18億14百万円 △21億7百万円
非支配株主に帰属する四半期純利益 43億57百万円 9億64百万円 △33億93百万円
最終利益 93億70百万円 216億74百万円 +123億4百万円

TOPPANの2.3倍は、株を売った利益ではありません。 特別利益はむしろ10億83百万円減っています。

増えた理由は3つです。1つ目は本業で、営業利益が64億83百万円の増加。2つ目は税金の負担が軽かったこと。3つ目は、非支配株主(ひしはいかぶぬし=子会社の他の株主)の取り分が33億93百万円減ったことです。

ただし、2つ目と3つ目について、決算短信に理由の記載はありません。 法人税等調整額が前の年の+11億98百万円から当期は△34億72百万円へ振れているのですが、なぜそうなったかは書かれていません。ここは「わからない」としておきます。

整理すると、大日本印刷の減益は去年の反動、TOPPANの増益は本業+税と持分の要因でした。どちらも、本業そのものは伸びています。

12. 通期予想と進捗率

2社の今期(通期)の予想です。

会社 売上高 前期比 営業利益 前期比 最終利益 前期比
TOPPANホールディングス 7911 1兆9,250億円 +6.6% 800億円 +19.2% 550億円 △15.1%
大日本印刷 7912 1兆5,300億円 +1.2% 1,080億円 +6.9% 950億円 △8.6%

2社とも、増収・営業増益・最終減益の予想です。

本業では稼ぐけれど、最終的な利益は前の年より減る。同じ形をしています。

第1四半期を終えた時点での、営業利益の進捗率です。

会社 第1四半期の営業利益 通期予想 進捗率
大日本印刷 7912 278億76百万円 1,080億円 25.8%
TOPPANホールディングス 7911 200億24百万円 800億円 25.0%

1年を4等分すると25%です。2社ともちょうどその線に乗っています。 TOPPANのNon-GAAP営業利益ベースでも25.2%で、やはり同じでした。

2社とも業績予想の修正は出していません。

13. 配当はどうなっているか

会社 前期の年間配当 今期の予想 増減 配当利回り 配当性向
大日本印刷 7912 40.00円 41.00円 +1.00円 1.27% 18.3%
TOPPANホールディングス 7911 58.00円 58.00円 据え置き 1.13% 29.2%

配当利回りはどちらも1%台です。高配当を狙って買う銘柄ではありません。

大日本印刷は1円の増配予想です。配当性向(はいとうせいこう=利益のうち配当に回す割合)は18.3%と低く、余裕があります。TOPPANは据え置きで、配当性向29.2%。

2社とも配当予想の修正はありません。

14. 株価はどう動いたか

決算発表日が8月7日と8月12日でずれているので、両社の発表前である7月29日の終値から、直近の8月21日の終値までで比べます。

会社 7月29日終値 8月21日終値 騰落率
TOPPANホールディングス 7911 4,281円 5,123円 +19.67%
大日本印刷 7912 2,991.0円 3,225.0円 +7.82%
(参考)日経平均株価 61,434.19円 66,016.36円 +7.46%
(参考)TOPIX 3,974.03 4,067.29 +2.35%

2社とも、日経平均もTOPIXも上回りました。

ここで指数(しすう)を2つ並べたのには理由があります。同じ期間で、日経平均は+7.46%、TOPIXは+2.35%。5ポイント以上の差があります。

日経平均は225銘柄を株価の水準で重みづけするため、株価の高い銘柄の動きに引っ張られやすい指数です。TOPIXは東証プライムの全銘柄を時価総額で重みづけするので、市場全体に近い動きになります。この期間は、値がさ株が大きく上げた一方で、市場全体はそこまで上がっていなかった、ということです。

その前提で見ると、大日本印刷の+7.82%は「日経平均をわずかに上回った」であると同時に、「TOPIXは3倍以上上回った」ことになります。TOPPANの+19.67%に至っては、TOPIXの8倍を超える上昇です。

TOPPANが大きく買われたのは、営業利益+47.9%、最終利益+131.3%という数字が素直に評価された形でしょう。

15. PER・PBR・配当利回り

2026年8月21日終値での指標です。

会社 株価 PER PBR 配当利回り
TOPPANホールディングス 7911 5,123円 26.0倍 1.04倍 1.13%
大日本印刷 7912 3,225.0円 14.5倍 1.12倍 1.27%

PER(ピーイーアール)は利益の何年分の株価がついているか、PBR(ピービーアール)は会社の資産に対して株価が何倍かを表します。

PERに大きな差があります。 TOPPANが26.0倍、大日本印刷が14.5倍。1.8倍の開きです。

ただしこれは、両社の今期の最終利益予想の差が効いています。TOPPANの通期予想は最終利益△15.1%。利益が減る予想だと、その分PERは高く出ます。一方でPBRは1.04倍と1.12倍で、ほとんど変わりません。

資産に対する評価はほぼ同じで、利益に対する評価だけが違う。 これが2社の現在地です。

これらの数値は自分で検算しました。株価を会社予想の1株利益で割った値も、株価を1株純資産で割った値も、いずれも表示どおりでした。指標をゆがめるような特殊な株式は、2社とも発行していません。

財務の安全性も見ておくと、自己資本比率はTOPPANが53.7%、大日本印刷が59.1%。どちらも前期末より上がっています。

16. 次の決算で見たい項目

第1四半期は3か月分でしかありません。次の決算で確かめたい点を挙げておきます。

1. 印刷を含む部門の利益率が、どちらに動くか

2.95%と2.98%で並びました。TOPPANは上げてきて、大日本印刷は下げてきた。次はすれ違うのか、それとも同じ水準にとどまるのか。

2. TOPPANの生活・産業事業分野が、買収の効果を除いても伸びているか

今回の+57.3%は買収の積み上げが大きく効いています。買収した会社が加わってから1年が経つと、その分の押し上げはなくなります。利益率が6.82%から動くかどうかも見どころです。

3. 大日本印刷のスマートコミュニケーション部門が下げ止まるか

売上△1.4%、営業利益△13.9%。会社自身が「紙媒体の市場縮小」と書いています。AUSTRIACARD HOLDINGS AGの取得が、いつからどう数字に表れるか。

4. 2社とも予想している「最終減益」が、実際にそうなるか

通期予想は2社とも最終減益です。ところが第1四半期の時点では、TOPPANが+131.3%と大きく伸びています。予想どおり減益に着地するのか、それとも上振れるのか。

5. エレクトロニクスの約25%という利益率が続くか

2社の利益を支えている部門です。半導体の需要が変われば、両社の決算は同じ方向に動くことになります。

まとめ

印刷2強の決算を、部門ごとに開けてきました。

印刷を含む部門の営業利益率は、TOPPANが2.95%、大日本印刷が2.98%。 差は0.03ポイントでした。しかもTOPPANは2.40%から上がってきて、大日本印刷は3.41%から下がってきた。両側から同じ場所に集まっています。

利益を作っているのは、どちらも半導体でした。 エレクトロニクスの利益率は24.75%と25.09%。ここも0.34ポイント差です。

TOPPANでは、パッケージと建装材の生活・産業事業分野が、情報ソリューション事業分野を売上で追い抜きました。前の年は740億円の差をつけられていた部門です。

最終利益はTOPPANが+131.3%、大日本印刷が△48.0%と正反対でしたが、中身を開けると、大日本印刷は去年の株式売却益372億66百万円の反動、TOPPANは本業と税・持分の要因でした。どちらも本業は伸びています。

「印刷会社」という呼び方は、もう会社の中身を表していないのかもしれません。2社とも、稼ぎ頭は別の場所に移っていました。

なお、この記事は決算の数字を確認したものであり、特定の銘柄の売買をすすめるものではありません。投資の判断はご自身でお願いします。

主な参照資料

  • TOPPANホールディングス「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」2026年8月12日
  • 大日本印刷「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」2026年8月7日
  • 株探(各銘柄ページ、日経平均株価・TOPIXの時系列ページ、2026年8月21日終値)
  • 日本経済新聞社『日経業界地図 2027年度版』139ページ「印刷」

※株価・指標は2026年8月21日(金)終値。決算数値は各社の決算短信から引用しています。

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コロナショック直前の2020年に投資をスタート。リアルタイムで暴落を経験しながら独学で投資の基礎を習得。 現在の運用総額5,000万円超・年間配当収入120万円超を達成。投資信託・ETF・個別株・米国株など100銘柄超に分散投資し、相場の波に強いポートフォリオを構築中。 高配当株の長期保有と新NISAの積立を組み合わせた"2刀流"スタイルで資産形成を実践。保有銘柄の決算・配当・株価をブログで赤裸々公開しています。YouTubeでも投資情報を発信中!

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