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生保5社、金利で本業のもうけは全社増えた。なのに差は6倍|最新決算で確認

はじめに|「金利上昇で運用収益拡大」は本当だったのか

生命保険会社は、契約者から集めた保険料を国債や株式で運用しています。ですから金利が上がれば、運用の収益は増える。理屈のうえではそうなります。

では実際の決算はどうだったのか。それを確かめたのがこの記事です。

今回取り上げるのは、生命保険を本業とする上場企業のうち、時価総額(じかそうがく)1,000億円以上の5社です。第一ライフグループ(8750)、T&Dホールディングス(8795)、かんぽ生命保険(7181)、ソニーフィナンシャルグループ(8729)、ライフネット生命保険(7157)。

5社とも2026年4月から6月までの3か月の決算を発表しました。

結論を先に言うと、本業のもうけは増えていました。ただし、増え方に6.5倍の差がつきました。

数字はすべて各社の決算短信(けっさんたんしん)と決算のお知らせ、決算補足資料から取っています。株価と指標は2026年8月21日(金)の終値(おわりね)です。

結論

先に、この記事でわかることを4つにまとめます。

1. 本業のもうけを示す「基礎利益」は、3社とも増えた。

第一生命がプラス45.2%、T&Dの生保3社合算がプラス20.9%、かんぽ生命がプラス7.0%。全社プラスですが、45.2%と7.0%では6.5倍の開きがあります。

2. 差がついた理由は、金利が費用にも効いているから。

かんぽ生命は有価証券の売却損が1,672億円で、前の年の3倍近くに膨らみました。金利が上がると債券の価格は下がります。運用収益が増えるのと同時に、売却損も増えるのです。

3. 包括利益が赤字の会社がある。

ソニーフィナンシャルグループとライフネット生命は、四半期の包括利益がマイナスでした。保有している債券の評価が下がった影響です。

4. 株価で市場に勝ったのは1社だけ。

8月6日から8月21日で、日経平均はプラス0.51%、TOPIXはプラス0.28%。この2つを上回ったのは、ソニーフィナンシャルグループ(プラス3.96%)だけでした。

1. 今回の5社

会社 コード 会計基準 時価総額 株価
第一ライフグループ 8750 日本基準 6兆4,791億円 1,788.5円
T&Dホールディングス 8795 日本基準 2兆3,400億円 4,795円
かんぽ生命保険 7181 日本基準 1兆7,916億円 1,651.5円
ソニーフィナンシャルグループ 8729 IFRS 1兆833億円 160.0円
ライフネット生命保険 7157 IFRS 1,229億円 1,529円

時価総額1,000億円以上という基準で絞った結果、この5社になりました。

大手なのに、ほとんど買えません

この業界には、他にはない特徴があります。規模の大きい会社ほど、株式市場で買えないのです。

生命保険の大手は、日本生命、第一生命、住友生命、明治安田生命の4社とされています。このうち上場しているのは第一ライフグループ(第一生命の親会社)だけです。

日本生命、住友生命、明治安田生命は相互会社(そうごがいしゃ)という形態で、そもそも株式を発行していません。契約者が社員(会社の持ち主)にあたる仕組みです。

準大手の富国生命、朝日生命、大樹生命も非上場。外資系のアフラック、プルデンシャル、メットライフ、アクサの日本法人も非上場です。

なお、損害保険の大手3社も生命保険の子会社を持っています。東京海上ホールディングス(8766)の東京海上日動あんしん生命、MS&ADインシュアランスグループホールディングス(8725)の三井住友海上あいおい生命と三井住友海上プライマリー生命、SOMPOホールディングス(8630)のSOMPOひまわり生命です。ただしこの3社は損害保険が本業なので、今回の比較には入れていません。

2. 生命保険の決算は、他の業種とまったく違う

数字を見る前に、用語の説明をさせてください。生保の決算には「売上高」も「営業利益」もありません。

用語 意味
経常収益 ふつうの会社の「売上高」にあたるもの。保険料等収入+資産運用収益+その他経常収益
保険料等収入 契約者から受け取った保険料。本業の入り
資産運用収益 集めた保険料を国債や株式で運用して得た収益
基礎利益 本業のもうけを示す指標。保険の収支と、利息・配当などの安定的な運用収支を足したもの
キャピタル損益 有価証券の売却益・売却損など、その期かぎりの売買損益
経常利益 基礎利益+キャピタル損益+臨時損益

この記事でいちばん大事なのは「基礎利益」です。

基礎利益には、株や債券を売って出た損益(キャピタル損益)が入りません。つまり「毎年くり返し稼げる力」を表しています。生命保険という商売は、契約が何十年も続くものですから、その期だけの売買損益を除いた数字のほうが実態に近い。だから業界では基礎利益が重視されます。

日経の業界地図が各社の「利」として載せているのも、この基礎利益です。

なお、基礎利益は決算短信ではなく、各社が同時に出す「決算のお知らせ」「決算補足資料」に載っています。

3. 比較の前提|3つ注意してください

注意1:2社は会計基準が違います

ソニーフィナンシャルグループとライフネット生命はIFRS(国際会計基準)です。経常収益も基礎利益も存在しません。

日本基準3社 IFRS2社
経常収益 保険収益
基礎利益 (該当なし)
経常利益 保険サービス損益+金融損益+その他の損益=税引前利益

金額を横に並べることはできません。この記事ではIFRSの2社を別のセクションに分けて、増減率と方向だけを見ます。

ただし考え方は同じです。IFRSでも「保険の本業」と「運用」に分けられます。保険サービス損益が保険の本業、金融損益や純利息収益が運用にあたります。

注意2:基礎利益の開示単位が、会社ごとに違います

会社 基礎利益の開示単位
第一ライフグループ 第一生命保険株式会社(単体)
T&Dホールディングス 生命保険会社3社の単純合算(太陽生命・大同生命・T&Dフィナンシャル生命)
かんぽ生命保険 かんぽ生命保険(単体)

グループ全体の数字ではありません。業界地図も同じ単位で載せています。この記事でも、どの単位の数字かを毎回書き添えます。

注意3:生保の自己資本比率は、極端に低く出ます

会社 自己資本比率(当四半期末)
ライフネット生命 7157 78.8%
T&Dホールディングス 8795 9.6%
かんぽ生命保険 7181 8.0%
第一ライフグループ 8750 6.0%
ソニーフィナンシャルグループ 8729 4.0%

これは危ないという意味ではありません。生保は将来の保険金支払いに備える「保険契約準備金」という巨額の負債を抱えているためです。

第一ライフグループの総資産76兆3,227億円に対して、保険契約準備金は61兆9,720億円。かんぽ生命は総資産58兆2,868億円に対して47兆7,511億円。資産の8割前後が、将来支払うためのお金なのです。

他の業種と直接比べる数字ではありません。

4. 【本題】本業のもうけは3社とも増えた。でも6.5倍の差

では、基礎利益を見ます。

会社 開示単位 前年同期 当期 増減率
第一ライフグループ 8750 第一生命(単体) 630億28百万円 915億29百万円 +45.2%
T&Dホールディングス 8795 生保3社合算 473億円 572億円 +20.9%
かんぽ生命保険 7181 単体 920億27百万円 984億80百万円 +7.0%

3社とも増えています。金利上昇が運用収益を押し上げた、という業界地図の見方は、決算で裏づけられました。

ところが、増え方がまるで違います。第一生命のプラス45.2%と、かんぽ生命のプラス7.0%。6.5倍の開きです。

同じ日本の金利上昇を受けているのに、なぜここまで差がつくのか。1社ずつ開けていきます。

5. 第一生命|保険も運用も両方伸びた

第一生命(単体)の基礎利益の明細です。

項目 前年同期 当期 増減率
保険料等収入 5,568億58百万円 6,248億82百万円 +12.2%
資産運用収益 2,081億38百万円 3,018億29百万円 +45.0%
うち利息及び配当金等収入 1,779億39百万円 1,976億10百万円 +11.1%
保険金等支払金 6,427億78百万円 8,363億45百万円 +30.1%
資産運用費用 356億42百万円 409億70百万円 +14.9%
事業費 1,011億46百万円 1,067億45百万円 +5.5%
基礎利益 630億28百万円 915億29百万円 +45.2%

保険料等収入がプラス12.2%、資産運用収益がプラス45.0%。両方伸びています。

そして資産運用費用の増え方はプラス14.9%にとどまりました。運用収益が45.0%増えるのに対して、費用は14.9%。この差が基礎利益の伸びにつながっています。

グループ全体(第一ライフグループ連結)で見ると、経常収益2兆8,930億02百万円でプラス25.3%、経常利益2,510億57百万円でプラス195.6%、最終利益1,600億65百万円でプラス367.8%。最終利益はおよそ4.7倍です。

6. T&D|保険料は1割減ったのに、基礎利益は2割増

T&Dホールディングスは、太陽生命、大同生命、T&Dフィナンシャル生命の3社を傘下に持っています。

会社 保険料等収入 増減率 基礎利益 増減率
太陽生命 2,109億円 △28.2% 239億円 +5.8%
大同生命 2,039億円 △0.5% 313億円 +30.4%
T&Dフィナンシャル生命 2,283億円 +5.6% 19億円 +204.3%
3社合算 6,432億円 △10.0% 572億円 +20.9%

保険料等収入は1割減っているのに、基礎利益は2割増えています。

理由は会社が書いています。

保険料等収入は、銀行窓販チャネルの販売量減少等により、前年同期から減少。

基礎利益は、利息配当金等収入の増加および為替ヘッジコストの減少等により、前年同期から増加。

銀行の窓口での販売が減った一方で、運用から入ってくる利息や配当が増えた。さらに、外貨建ての資産を持つときにかかる為替ヘッジのコストが下がった。保険の入りが減った分を、運用が補った形です。

なお、太陽生命の保険料等収入がマイナス28.2%と大きく落ちています。3社の中でここだけが目立った減少でした。

7. かんぽ生命|有価証券の売却損が1,672億円

かんぽ生命の基礎利益はプラス7.0%。3社の中でいちばん小さい伸びでした。

まず連結の数字を見ます。会社の説明です。

当第1四半期連結累計期間の経常収益は、保険料等収入5,725億円(前年同期比0.7%減)、資産運用収益4,192億円(同44.1%増)、その他経常収益3,725億円(同34.2%減)を合計した結果、1兆3,643億円(同4.9%減)となりました。

経常費用は、保険金等支払金9,762億円(同16.6%減)、資産運用費用1,903億円(同149.5%増)、事業費1,008億円(同0.2%増)、その他経常費用206億円(同7.8%増)等を合計した結果、1兆2,950億円(同5.2%減)となりました。

資産運用収益はプラス44.1%。ところが資産運用費用はプラス149.5%です。

第一生命が「収益プラス45.0%に対して費用プラス14.9%」だったのと比べると、まるで逆の形になっています。

では、その費用の中身は何か。基礎利益の明細を見ると、はっきりします。

項目 前年同期 当期 増減率
基礎利益 920億27百万円 984億80百万円 +7.0%
キャピタル収益 932億67百万円 2,120億36百万円 +127.3%
キャピタル費用 1,128億38百万円 2,283億47百万円 +102.4%
うち有価証券売却損 565億74百万円 1,672億07百万円 +195.6%
キャピタル損益 △195億71百万円 △163億11百万円 赤字幅は縮小

有価証券の売却損が1,672億円。前の年の3倍近くです。

最終利益は341億26百万円でマイナス1.5%。減った理由を、会社はこう書いています。

親会社株主に帰属する四半期純利益は、保有契約の減少等により、341億円(同1.5%減)となりました。

「保有契約の減少等により」。会社が書いているのはここまでです。それ以上は推測しません。

8. 金利上昇には、もう一つの顔がある

ここまでで、大事なことが見えてきました。

金利が上がると、運用の収益は増えます。利息や配当が増えるからです。3社とも資産運用収益は4割から7割増えていました。

ところが同時に、金利が上がると債券の価格は下がります。

債券は、あらかじめ決まった利率で利息が受け取れる商品です。世の中の金利が上がると、古い低い利率の債券は魅力が下がるので、価格が下がる。これが債券の仕組みです。

生保は保険料の多くを国債で運用しています。ですから金利上昇は、保有している債券の価値を目減りさせます。かんぽ生命の有価証券売却損1,672億円は、その表れです。

日経の業界地図も、この点をキーワードとして挙げています。

【債券含み損】2025年度は国内金利の上昇(債券価格は下落)により、各社が保有する国内債券の含み損が拡大した。

「金利上昇で運用収益拡大」という見出しは正しい。でもそれは片面です。もう一方の面が、この売却損や含み損に出ています。

そしてこの影響は、あとで見るIFRSの2社にもはっきり表れます。

9. ソニーフィナンシャルグループ|赤字から黒字へ。ただし主役は生保ではない

ここからはIFRSの2社です。指標の名前が変わるので、別の表で見ます。

まずソニーフィナンシャルグループ。2025年9月に東証プライムへ上場した会社で、ソニー生命保険を傘下に持っています。

項目 前年同期 当期 増減
保険収益 1,627億23百万円 1,780億05百万円 +9.4%
保険サービス損益 458億42百万円 477億71百万円 +4.2%
純利息収益 482億49百万円 589億41百万円 +22.2%
営業利益 △335億52百万円 152億28百万円 黒字転換
親会社所有者帰属四半期利益 △244億92百万円 91億60百万円 黒字転換
四半期包括利益 +289億87百万円 △59億59百万円 赤字転落

前の年は赤字でした。そこから黒字に転換しています。

運用にあたる純利息収益はプラス22.2%。この会社も金利の恩恵を受けています。

ただし、包括利益はマイナス59億59百万円で赤字です。保有している債券の評価が下がった影響が、ここに出ています。

ソニーFGは「生保の会社」ではありません

もう1つ、大事な点があります。この会社は生命保険だけをやっているわけではありません。

セグメント 前年 利益 当期 利益
生命保険事業 △411億92百万円 16億42百万円
損害保険事業 48億59百万円 68億98百万円
銀行事業 27億65百万円 60億02百万円

生命保険事業は、411億92百万円の赤字から16億42百万円の黒字へ転換しました。大きな改善です。

ところが当期の利益で見ると、生命保険事業は3つの中でいちばん小さい。最大は損害保険事業の68億98百万円、次が銀行事業の60億02百万円です。

この会社は、生保・損保・銀行の3事業を持つ金融グループです。「生保が好調だから黒字転換した」と読むと、実態を見誤ります。

なお、黒字転換の理由は決算短信に説明がありません。しかもこの会社は今期からIFRSに移行していて(前期までは日本基準)、会計基準の変更がどこまで影響しているかは短信からは読み取れません。事実として書くにとどめます。

10. ライフネット生命|契約は取れている。落ちたのは団信

もう1社のIFRS、ライフネット生命です。ネット直販の草分けとされる会社です。

項目 前年同期 当期 増減
保有契約年換算保険料 352億14百万円 378億10百万円 +7.4%
保険収益 82億22百万円 90億30百万円 +9.8%
保険サービス損益 29億45百万円 21億04百万円 △28.5%
金融損益 1億83百万円 3億23百万円 +76.7%
税引前四半期利益 30億63百万円 23億03百万円 △24.8%
四半期包括利益 +32億04百万円 △9億17百万円 赤字転落

保険収益はプラス9.8%。ソニーFGのプラス9.4%とほぼ同じ伸びです。

運用にあたる金融損益はプラス76.7%。会社は「保有を増加させた社債からの金利収益が増加したことなどにより」と書いています。この会社も金利の恩恵を受けています。

落ちたのは保険の本業のほうでした。保険サービス損益がマイナス28.5%。理由も会社が書いています。

保険サービス損益は、主に団信の保険金等の支払が増加したことにより団信に係る利益が減少し、前年同期比71.5%の2,104百万円となりました。

団信というのは団体信用生命保険のことです。住宅ローンを借りた人が亡くなったときに、残りのローンが保険で返済される仕組みです。その支払いが増えた、と。

一方で契約は順調に取れています。

  • 保有契約件数 698,946件(前期末比プラス1.9%)
  • 新契約件数 22,244件(前年同期比プラス11.4%
  • 解約失効率 5.2%(前年同期5.6%)→ 改善

解約が減り、新規契約が1割増えている。土台は崩れていません。

なお、この会社も包括利益はマイナス9億17百万円でした。

11. 通期予想と進捗率

5社の今期(通期)の予想です。

会社 経常収益/保険収益 前期比 経常利益 前期比 最終利益 前期比
第一ライフグループ 8750 10兆6,660億円 △5.7% 8,690億円 +15.3% 5,130億円 +17.5%
T&Dホールディングス 8795 3兆円 △13.8% 2,350億円 △8.6% 1,350億円 △2.9%
かんぽ生命保険 7181 5兆1,300億円 △8.8% 2,500億円 △8.1% 1,410億円 △16.5%
ソニーFG 8729 1兆700億円 +5.2% (営業利益)290億円 230億円
ライフネット生命 7157 375億円 +9.0% (保険サービス損益)112億円 △3.5% 82億円 +2.0%

通期で増益を見込んでいるのは第一ライフグループだけです。T&Dは経常利益マイナス8.6%、かんぽ生命は最終利益マイナス16.5%の予想。

第1四半期は全社が本業で増益だったのに、通期は慎重な見方をしている。ここは押さえておきたいところです。

日本基準3社の経常利益の進捗率です。

会社 第1四半期の経常利益 通期予想 進捗率
T&Dホールディングス 8795 762億60百万円 2,350億円 32.5%
第一ライフグループ 8750 2,510億57百万円 8,690億円 28.9%
かんぽ生命保険 7181 692億88百万円 2,500億円 27.7%

1年を4等分すると25%です。3社とも前倒しで進んでいます。

業績予想を修正しているのはソニーフィナンシャルグループだけで、他4社は修正なしです。

12. 配当はどうなっているか

会社 前期の年間配当 今期の予想 増減 配当利回り
ソニーフィナンシャルグループ 8729 3.80円 8.00円 +110.5% 5.00%
第一ライフグループ 8750 54.50円 72.00円 +32.1% 4.03%
T&Dホールディングス 8795 130.00円 164.00円 +26.2% 3.42%
かんぽ生命保険 7181 41.33円 50.00円 +21.0% 3.03%
ライフネット生命 7157 0円 0円 無配

4社とも2割以上の大幅増配です。利回りはソニーFGが5.00%、第一ライフグループが4.03%。

ここで注意が1つあります。かんぽ生命は株式分割をまたいでいます。2026年4月1日に、1株を3株にする分割をしました。

決算短信の配当欄には前期124円と書かれていますが、これは分割前の金額です。分割後にそろえると124円÷3=41.33円。今期予想の50円と比べると、プラス21.0%の増配になります。「124円が50円に減った」と読んではいけません。

ライフネット生命は無配です。この会社は保有契約を増やすことを経営目標にしていて、利益を成長に振り向ける段階にあります。

13. 株価はどう動いたか

決算発表日が8月7日から8月12日までばらついているので、全社の発表前である8月6日の終値から、直近の8月21日の終値までで比べます。

会社 8月6日終値 8月21日終値 騰落率
ソニーフィナンシャルグループ 8729 153.9円 160.0円 +3.96%
(参考)日経平均株価 65,683.26円 66,016.36円 +0.51%
(参考)TOPIX 4,055.85 4,067.29 +0.28%
T&Dホールディングス 8795 4,962円 4,795円 △3.37%
かんぽ生命保険 7181 1,750.5円 1,651.5円 △5.66%
第一ライフグループ 8750 1,921.0円 1,788.5円 △6.90%
ライフネット生命 7157 1,697円 1,529円 △9.90%

日経平均もTOPIXも上回ったのは、ソニーフィナンシャルグループだけでした。

指数を2つ並べているのには理由があります。日経平均は225銘柄を株価の水準で重みづけするため、株価の高い銘柄に引っ張られやすい指数です。TOPIXは東証プライムの全銘柄を時価総額で重みづけするので、市場全体に近い動きになります。今回はどちらも小幅なプラスなので、どちらを基準にしても結論は変わりません。

引っかかるのは、最終利益が4.7倍になった第一ライフグループがマイナス6.90%だったことです。決算の数字と株価が、素直につながっていません。

ただし、なぜ下がったのかは決算資料からはわかりません。株価は決算だけで動くものではなく、相場全体、金利、為替、需給、ほかの材料でも動きます。理由を断定することはしません。

14. PER・PBR・配当利回り

2026年8月21日終値での指標です。

会社 株価 PER PBR 配当利回り
ソニーフィナンシャルグループ 8729 160.0円 46.6倍 1.23倍 5.00%
T&Dホールディングス 8795 4,795円 16.9倍 1.37倍 3.42%
ライフネット生命 7157 1,529円 15.0倍 1.30倍
かんぽ生命保険 7181 1,651.5円 12.7倍 0.38倍 3.03%
第一ライフグループ 8750 1,788.5円 12.6倍 1.41倍 4.03%

PER(ピーイーアール)は利益の何年分の株価がついているか、PBR(ピービーアール)は会社の資産に対して株価が何倍かを表します。

PBRが1倍を割っているのは、かんぽ生命保険の0.38倍だけです。他の4社は1.2倍から1.4倍。3倍以上の差があります。

かんぽ生命は最終利益の通期予想がマイナス16.5%で、会社が「保有契約の減少」と書いている会社でもあります。ただしPBRが低い理由を、決算資料から断定することはできません。数字として示すにとどめます。

反対にPERがいちばん高いのはソニーフィナンシャルグループの46.6倍です。前の年が赤字だった会社なので、利益が回復する前提で買われているという見方もできますが、これも断定はしません。

これらの数値は自分で検算しました。株価を会社予想の1株利益で割った値も、株価を1株純資産で割った値も、いずれも表示どおりでした。

15. 次の決算で見たい項目

第1四半期は3か月分でしかありません。次の決算で確かめたい点を挙げておきます。

1. かんぽ生命の有価証券売却損が止まるか

1,672億円という数字は、前の年の3倍近くです。金利の動き次第でこの先も出続けます。

2. 第一生命の基礎利益プラス45.2%が続くか

保険も運用も両方伸びました。この形を保てるかどうか。

3. T&Dの保険料等収入が下げ止まるか

3社合算でマイナス10.0%。とくに太陽生命がマイナス28.2%と大きく落ちています。

4. ソニーFGの生命保険事業が利益を積み増せるか

赤字から黒字に転換しましたが、まだ16億42百万円です。損保と銀行に大きく水をあけられています。

5. ライフネット生命の団信が落ち着くか

保険サービス損益マイナス28.5%の原因です。契約自体は順調に増えています。

6. 通期予想が上振れるか

第1四半期の進捗率は3社とも25%を超えているのに、通期は第一ライフグループ以外が減益予想です。

まとめ

生命保険5社の決算を、本業のもうけから見てきました。

本業のもうけを示す基礎利益は、3社とも増えました。第一生命がプラス45.2%、T&Dの生保3社合算がプラス20.9%、かんぽ生命がプラス7.0%。金利上昇が運用を押し上げたのは事実でした。

ただし増え方には6.5倍の差がつきました。

分かれ目は、金利が費用の側にも効いていることです。かんぽ生命は有価証券の売却損が1,672億円と前の年の3倍近くに膨らみ、資産運用費用はプラス149.5%。第一生命が「収益プラス45.0%に対して費用プラス14.9%」だったのとは、まるで逆の形でした。

IFRSの2社も、運用の面では金利の恩恵を受けています。ソニーFGの純利息収益がプラス22.2%、ライフネット生命の金融損益がプラス76.7%。恩恵は全社が受けていました。分かれたのは、それがどれだけ利益として残ったかです。

そしてこの2社は包括利益が赤字でした。保有する債券の評価が下がったためです。金利上昇には、この顔もあります。

株価では、日経平均とTOPIXの両方を上回ったのはソニーフィナンシャルグループだけ。最終利益が4.7倍になった第一ライフグループは下落しました。

なお、この記事は決算の数字を確認したものであり、特定の銘柄の売買をすすめるものではありません。投資の判断はご自身でお願いします。

主な参照資料

  • 第一ライフグループ「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」2026年8月7日
  • 第一生命保険「2026年度第1四半期報告」2026年8月7日
  • T&Dホールディングス「2027年3月期第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」2026年8月7日
  • T&Dホールディングス「2027年3月期第1四半期決算のお知らせ」2026年8月7日
  • かんぽ生命保険「2027年3月期第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」2026年8月7日
  • かんぽ生命保険「2026年度第1四半期決算のお知らせ」2026年8月7日
  • ソニーフィナンシャルグループ「2027年3月期第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」2026年8月10日
  • ライフネット生命保険「2027年3月期第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」2026年8月12日
  • 株探(各銘柄ページ、日経平均株価・TOPIXの時系列ページ、2026年8月21日終値)
  • 日本経済新聞社『日経業界地図 2027年度版』216〜217ページ「生命保険」

※株価・指標は2026年8月21日(金)終値。決算数値は各社の決算短信・決算のお知らせ・決算補足資料から引用しています。

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たぐ

コロナショック直前の2020年に投資をスタート。リアルタイムで暴落を経験しながら独学で投資の基礎を習得。 現在の運用総額5,000万円超・年間配当収入120万円超を達成。投資信託・ETF・個別株・米国株など100銘柄超に分散投資し、相場の波に強いポートフォリオを構築中。 高配当株の長期保有と新NISAの積立を組み合わせた"2刀流"スタイルで資産形成を実践。保有銘柄の決算・配当・株価をブログで赤裸々公開しています。YouTubeでも投資情報を発信中!

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