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マンションは過去最高値。なのに儲かったのは建てる側だった|不動産5社の最新決算

はじめに|マンションは高い。では、作っている会社は儲かっているのか

首都圏の新築マンションの平均価格は、9,383万円。不動産経済研究所の集計で、2025年度としては過去最高です。1億円を超える「億ション」も珍しくなくなりました。

これだけ高く売れているなら、マンションを手がける会社はさぞ儲かっているだろう。そう思って決算を開けてみたら、少し違いました。

今回は、マンションに関わる上場企業のうち、時価総額(じかそうがく)1,000億円以上の5社を取り上げます。三井不動産(8801)、三菱地所(8802)、住友不動産(8830)、野村不動産ホールディングス(3231)、そして長谷工コーポレーション(1808)です。

5社とも2026年4月から6月までの3か月の決算を発表しました。マンションを含む部門だけを取り出して、並べていきます。

結論を先に言うと、マンションを含む部門でいちばん利益を伸ばしたのは、売る会社ではなく建てる会社でした。

数字はすべて各社の決算短信(けっさんたんしん)と決算補足説明資料から取っています。株価と指標は2026年8月21日(金)の終値(おわりね)です。

結論

先に、この記事でわかることを4つにまとめます。

1. マンションを含む部門で、営業利益がいちばん伸びたのは長谷工。プラス50.6%。

長谷工の建設関連事業は、マンションの建築工事です。決算短信には「完成工事総利益率(かんせいこうじそうりえきりつ)が上昇した」と書かれています。建てる側が、値上げを通せています。

2. 売る側は、3社が減益。

三井不動産の分譲がマイナス67.7%、野村不動産ホールディングスの住宅がマイナス16.8%、住友不動産の不動産販売がマイナス3.4%。増益は三菱地所の住宅事業(プラス17.4%)だけでした。

3. ただし三井不動産の落ち込みは、去年が高すぎた反動。

会社は「前年同期の都心・高額・大規模な物件の計上による反動等」と明記しています。しかも売れ残りは40戸しかありません。売れないのではなく、計上する物件が今期は少なかった、ということです。

4. 株価は5社とも下がった。

7月29日から8月21日で、日経平均はプラス7.46%、TOPIXはプラス2.35%。ところが5社は全部マイナスでした。

1. 今回の5社

今回は、マンションに関わる上場企業のうち、時価総額1,000億円以上で、決算短信からマンションを含む部門の数字を取り出せる5社を取り上げます。

会社 コード 市場 時価総額 株価
三菱地所 8802 東証プライム 4兆4,653億円 3,687円
三井不動産 8801 東証プライム 4兆737億円 1,498円
住友不動産 8830 東証プライム 3兆1,253億円 3,339円
野村不動産ホールディングス 3231 東証プライム 8,523億円 928.5円
長谷工コーポレーション 1808 東証プライム 8,355億円 2,856.5円

上の4社はマンションを分譲する会社、つまり売る側です。長谷工だけは立場が違います。マンションの建築工事を請け負う建てる側の最大手です。

この5社を並べると、マンションの値上がりが誰の利益になっているのかが見えてきます。

5社とも3月決算で、今回発表されたのは2026年4月1日から6月30日までの3か月の成績です。会計基準(かいけいきじゅん)も5社とも日本基準の連結(れんけつ)。期間も基準もそろっているので、そのまま比べられます。

2. 比較の前提|3つ注意してください

数字を並べる前に、読み違えやすいところを3つ書いておきます。ここが今回はとくに大事です。

注意1:不動産の分譲は、四半期の数字が大きく振れる

マンションは、建物が完成して買主に引き渡した時点で、はじめて売上に計上されます。契約したときではありません。

つまり、大型の物件がいつ完成するかで、その四半期の数字が跳ね上がったり落ち込んだりします。

3か月の増減率だけを見て「この会社は好調」「この会社は不調」と判断するのは危険です。この記事でも増減率を並べますが、それが会社の実力を表しているとは限らないことを、先にお伝えしておきます。

注意2:部門の中身が、会社ごとに違う

5社とも、マンションが入っている部門の名前も中身も違います。

会社 部門名 入っているもの
三井不動産 分譲 国内住宅分譲(マンション・戸建て)、投資家向け分譲、海外住宅分譲
三菱地所 住宅事業 国内のマンション分譲、住宅関連サービスなど
住友不動産 不動産販売 分譲マンションが中心
野村不動産ホールディングス 住宅 マンション分譲が中心
長谷工 建設関連事業 マンションの建築工事

「この部門の数字=マンションの数字」ではありません。投資家向けの物件売却や海外事業も同じ箱に入っています。ですからこの記事では「マンションを含む部門」という言い方をします。

注意3:利益の指標が2つある会社がある

三井不動産と野村不動産ホールディングスは、「営業利益」のほかに「事業利益」という指標を出しています。

三井不動産の決算短信の注記です。

事業利益=営業利益+持分法投資損益(不動産分譲を目的とした関係会社株式売却損益含む)+固定資産売却損益

野村不動産ホールディングスの短信は、本文が事業利益ベースで書かれています。住宅セグメントについて「事業利益15,673百万円、16.9%減」とあります。ただしセグメント表の営業利益は15,463百万円で、マイナス16.8%。

この記事では5社をそろえるため、営業利益(セグメント利益)で統一します。

3. 5社の決算一覧

まず会社全体の数字です。2026年4月から6月までの3か月です。

会社 売上高/営業収益 前年同期比 営業利益 前年同期比 営業利益率
三菱地所 8802 4,976億85百万円 +39.4% 1,212億40百万円 +94.3% 24.36%
三井不動産 8801 6,169億30百万円 △23.1% 1,035億7百万円 △35.4% 16.78%
住友不動産 8830 2,810億16百万円 △4.2% 1,028億46百万円 +1.0% 36.60%
長谷工 1808 3,121億48百万円 +9.2% 298億57百万円 +46.0% 9.57%
野村不動産HD 3231 1,910億64百万円 △13.7% 255億40百万円 △30.6% 13.37%

最終利益まで見るとこうなります。

会社 経常利益 前年同期比 最終利益 前年同期比
三菱地所 8802 1,081億76百万円 +94.3% 954億16百万円 +198.3%
住友不動産 8830 1,087億35百万円 +3.3% 851億61百万円 +15.4%
長谷工 1808 304億55百万円 +58.9% 212億87百万円 +68.5%
三井不動産 8801 894億93百万円 △37.9% 758億18百万円 △39.0%
野村不動産HD 3231 216億48百万円 △36.2% 147億28百万円 △36.5%

三菱地所が3倍、長谷工が1.7倍。その一方で三井不動産と野村不動産が4割近い減益です。同じ3か月で、ここまで分かれました。

なお、三井不動産は前の年の第1四半期が売上プラス27.3%・営業利益プラス58.1%・最終利益プラス91.1%と、極めて高い数字でした。今回の減少は、その反動という面が大きくなります。

4. 【本題】マンションを含む部門は、どう動いたか

では、会社全体ではなく、マンションが入っている部門だけを取り出します。

会社 部門名 売上 利益 前年利益率 当期利益率
長谷工 1808 建設関連事業 +3.7% +50.6% 6.78% 9.85%
長谷工 1808 不動産関連事業 +18.6% +12.2% 12.19% 11.54%
三菱地所 8802 住宅事業 +5.1% +17.4% 16.57% 18.51%
住友不動産 8830 不動産販売 △11.0% △3.4% 36.80% 39.94%
野村不動産HD 3231 住宅 △14.7% △16.8% 15.69% 15.29%
三井不動産 8801 分譲 △62.9% △67.7% 29.46% 25.61%

いちばん利益を伸ばしたのは、長谷工の建設関連事業でした。プラス50.6%です。

長谷工はマンションを売る会社ではありません。建てる会社です。デベロッパーから工事を請け負って、実際にマンションを作る。その部門の利益が5割増えました。

一方、売る側の4社を見ると、増益は三菱地所(プラス17.4%)だけ。あとの3社は減益です。

マンションが高くなって、いちばん得をしているのは建てる側なのか。そう読める数字が出ました。

なお、この利益率はセグメント表の数字からこちらで計算したものです。会社が公表している数値ではありません。

5. 長谷工|建てる側の利益率が上がった

長谷工の建設関連事業は、売上プラス3.7%に対して営業利益がプラス50.6%。利益率は6.78%から9.85%へ上がりました。

売上はほとんど増えていないのに、利益だけが伸びている。理由は決算短信にはっきり書かれています。

当第1四半期連結累計期間における業績は、売上高は3,121億円(前年同期比9.2%増)、完成工事総利益率が上昇したことにより、営業利益は299億円(同46.0%増)、経常利益は305億円(同58.9%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は213億円(同68.5%増)の増収増益となりました。

完成工事総利益率というのは、工事の売上から工事の原価を引いた利益の割合です。ここが上がった、と。

もう少し詳しい記述もあります。

建築工事では、当社の土地情報収集力や商品企画力、施工品質や工期遵守に対する姿勢、効率的な生産体制等について事業主から評価を頂いている中、当期の完成工事総利益率は上昇いたしました。

事業主、つまりデベロッパーから評価されている、という書き方です。資材や人件費の上昇分を、工事の請負価格に転嫁できていると読めます。

受注の状況も好調です。

当社における分譲マンション新築工事の受注は、首都圏で200戸以上の大規模物件6件を含む13件、近畿圏・東海圏で200戸以上の大規模物件4件を含む6件、合計19件となりました。

長谷工はもう1つ、自社で分譲もする不動産関連事業を持っています。こちらも売上プラス18.6%、営業利益プラス12.2%。「分譲マンションの新規引渡しが増加した」と説明されています。

建てる側でも、売る側でも、どちらも増益でした。

6. 三井不動産|1戸あたり2億1,685万円が1億2,112万円に

次に、いちばん大きく落ちた三井不動産です。分譲セグメントは売上マイナス62.9%、営業利益マイナス67.7%。

ここで1つ困ったことがあります。三井不動産の決算短信には、経営成績の説明が書かれていません。

当第1四半期連結累計期間における経営成績等の概況は、本日(2026年8月7日)公表の決算短信補足説明資料をご参照ください。

そこで補足説明資料を開きました。会社の説明はこうです。

国内住宅分譲は、前年同期の都心・高額・大規模な物件の計上による反動等により減収減益。固定資産売却益等を含む投資家向け・海外住宅分譲等は、前年同期の固定資産売却益の反動等により減収減益。

「反動」と会社自身が書いています。去年が特別に良かった、ということです。

どれくらい特別だったのか。補足説明資料には1戸あたりの単価まで載っていました。

項目 前年同期 当期 増減
中高層分譲(マンション)戸数 1,080戸 715戸 △365戸
中高層分譲 1戸あたり単価 2億1,685万円 1億2,112万円 △9,573万円
戸建分譲 戸数 70戸 82戸 +12戸
戸建分譲 1戸あたり単価 9,820万円 1億7万円 +187万円

マンションの1戸あたり単価が、2億1,685万円から1億2,112万円へ。44.1%下がっています。

これは「マンションの値段が下がった」という話ではありません。去年は都心の超高額物件を計上していたから、平均単価が跳ね上がっていたのです。

当期に計上した主な物件として、会社は三田ガーデンヒルズ、パークホームズ浅草橋、パークコート恵比寿を挙げています。

7. 三井不動産|完成在庫は40戸しかない

もう1つ、補足説明資料に興味深い表がありました。完成在庫、つまり建物ができあがったのに売れ残っているマンションの戸数です。

2022年3月末 2023年3月末 2024年3月末 2025年3月末 2026年3月末 2026年6月末
82戸 55戸 24戸 32戸 36戸 40戸

40戸です。

三井不動産は今期、国内で2,350戸のマンションを売上に計上する計画です。それに対して売れ残りが40戸。戸建てを含めても46戸しかありません。

契約の状況も出ています。

前期末に契約済み 期中に契約 契約累計 売上に計上 当期末に契約済み
3,701戸 509戸 4,210戸 715戸 3,495戸

当期末の時点で、3,495戸がすでに契約済みです。まだ建物が完成していないので売上に立っていないだけ。

会社は「国内の新築マンション分譲の当期計上予定戸数2,350戸に対する契約進捗率は83%」と書いています。

売れていないのではありません。売る物が、今期の第1四半期には少なかった。それだけのことです。

8. 住友不動産|利益率39.94%、通期の6割をもう稼いだ

住友不動産の不動産販売は、売上マイナス11.0%、営業利益マイナス3.4%。数字だけ見ると減益です。

ところが利益率を見ると、36.80%から39.94%へ上がっています。売上が減っても、利益はほとんど減っていない。

会社の説明です。

分譲マンションを中心とする不動産販売事業では、販売価格の上昇を背景に高水準の利益を確保しており、業績は順調に推移しております。

「販売価格の上昇を背景に」。値上げが利益率に効いている、と会社が書いています。

さらに、住友不動産はセグメントごとの通期進捗率まで開示しています。

セグメント 第1四半期の営業利益 通期予想 進捗率
不動産販売 489億41百万円 810億円 60%
不動産賃貸 581億28百万円 2,240億円 26%
ステップ 46億17百万円 220億円 21%
ハウジング △40億33百万円 170億円

不動産販売は、1年の4分の1が終わった時点で、通期予想の6割の利益をすでに稼いでいます。

なお住友不動産は「完成前完売にこだわらない」方針で知られています。建物ができてからも値引きせずに売る。その姿勢が、この利益率に表れているという見方もできます。

9. 三菱地所|最終利益3倍の主役は、住宅ではない

三菱地所は最終利益がプラス198.3%。約3倍です。住宅事業も営業利益プラス17.4%と好調でした。

ただし、増益の主役は住宅ではありません。

セグメント 前年 利益 当期 利益 増減
海外事業 63億73百万円 430億36百万円 6.8倍
コマーシャル不動産事業 162億85百万円 300億27百万円 +84.4%
丸の内事業 246億26百万円 272億40百万円 +10.6%
住宅事業 198億44百万円 233億5百万円 +17.4%

海外事業の利益が6.8倍。営業収益も303億83百万円から1,192億14百万円へ、およそ4倍になっています。

最終利益が3倍になった理由も、短信に書かれています。

特別損益につきましては、前年同期において投資有価証券売却益7,892百万円を特別利益に、固定資産除却関連損11,491百万円を特別損失に計上したのに対して、当第1四半期連結累計期間においては、投資有価証券売却益30,228百万円を特別利益に計上しております。

持っていた株を売って302億28百万円の利益が出た、ということです。

三菱地所の数字を「住宅が好調だから」と読むと、会社の姿を見誤ります。

10. 野村不動産|住宅も都市開発も減益

野村不動産ホールディングスは、住宅セグメントが売上マイナス14.7%、営業利益マイナス16.8%。

この会社は7つのセグメントを持っていますが、そのうち5つが減益でした。

短信の記述です。

①住宅 当セグメントの売上高は101,115百万円(前年同期比△17,398百万円、14.7%減)、事業利益は15,673百万円(同△3,191百万円、16.9%減)と、前第1四半期連結累計期間と比べ減収減益となりました。

②都市開発 当セグメントの売上高は48,657百万円(前年同期比△13,569百万円、21.8%減)、事業利益は5,504百万円(同△5,640百万円、50.6%減)と、前第1四半期連結累計期間と比べ減収減益となりました。

ここで正直にお伝えします。会社は減収減益の背景を短信に書いていません。

各セグメントについて「減収減益となりました」と結果を書いているだけで、なぜそうなったかの説明がありません。決算補足説明資料も作成されていません(短信に「決算補足説明資料作成の有無:無」とあります)。

理由が書かれていないものを、推測で書くことはしません。次の決算での説明を待ちます。

11. 通期予想と進捗率

5社の今期(通期)の予想です。

会社 売上高/営業収益 前期比 営業利益 前期比 最終利益 前期比
三井不動産 8801 2兆8,000億円 +3.3% 4,100億円 +3.1% 2,850億円 +2.3%
三菱地所 8802 2兆円 +14.5% 3,700億円 +12.2% 2,350億円 +5.6%
住友不動産 8830 1兆700億円 +1.2% 3,200億円 +7.0% 2,230億円 +4.9%
野村不動産HD 3231 1兆800億円 +14.6% 1,400億円 +1.3% 860億円 +3.8%
長谷工 1808 1兆3,800億円 +8.4% 1,100億円 +11.4% 660億円 +20.4%

5社とも増収増益の予想です。

第1四半期を終えた時点での、営業利益の進捗率です。

会社 第1四半期の営業利益 通期予想 進捗率
三菱地所 8802 1,212億40百万円 3,700億円 32.8%
住友不動産 8830 1,028億46百万円 3,200億円 32.1%
長谷工 1808 298億57百万円 1,100億円 27.1%
三井不動産 8801 1,035億7百万円 4,100億円 25.2%
野村不動産HD 3231 255億40百万円 1,400億円 18.2%

1年を4等分すると25%です。三菱地所と住友不動産は3割を超えていて、前倒しで進んでいます。

野村不動産の18.2%は低く見えますが、分譲は下期に物件の完成が集中する会社もあります。単純に4分の1で測れる事業ではない点は、頭に置いておきたいところです。

5社とも業績予想の修正は出していません。

12. 配当はどうなっているか

会社 前期の年間配当 今期の予想 増減 配当利回り 配当性向
野村不動産HD 3231 40.00円 44.00円 +4.00円 4.74% 43.8%
長谷工 1808 95.00円 100.00円 +5.00円 3.50% 40.1%
三井不動産 8801 35.00円 37.00円 +2.00円 2.47% 35.0%
住友不動産 8830 44.00円 52.00円 +8.00円 1.56% 21.7%
三菱地所 8802 46.00円 49.00円 +3.00円 1.33% 25.0%

5社すべてが増配予想です。

利回りがいちばん高いのは野村不動産ホールディングスの4.74%。次が長谷工の3.50%です。

ここで1つ注意があります。住友不動産は株式分割をまたいでいます。2026年1月1日に、1株を2株にする分割をしました。

決算短信の配当欄には「前期 中間42円、期末23円」と書かれていますが、中間の42円は分割前の金額です。分割後のベースにそろえると42円÷2=21円。期末23円と足して44円になります。

つまり前期44円 → 今期52円で、プラス18.2%の増配です。「42円が26円に減った」と読んではいけません。

配当性向(はいとうせいこう=利益のうち配当に回す割合)を見ると、野村不動産が43.8%、長谷工が40.1%と高め。住友不動産は21.7%と低く、余裕があります。

13. 株価はどう動いたか

決算発表日が7月30日から8月7日までばらついているので、全社の発表前である7月29日の終値から、直近の8月21日の終値までで比べます。

会社 7月29日終値 8月21日終値 騰落率
(参考)日経平均株価 61,434.19円 66,016.36円 +7.46%
(参考)TOPIX 3,974.03 4,067.29 +2.35%
長谷工 1808 2,902.5円 2,856.5円 △1.58%
野村不動産HD 3231 992.6円 928.5円 △6.46%
三井不動産 8801 1,627.0円 1,498.0円 △7.93%
三菱地所 8802 4,100.0円 3,687.0円 △10.07%
住友不動産 8830 3,742.0円 3,339.0円 △10.77%

5社とも下がりました。日経平均もTOPIXも上回った会社は、1社もありません。

同じ期間に日経平均はプラス7.46%、TOPIXはプラス2.35%。市場全体とは逆の方向に動いています。

ここで指数(しすう)を2つ並べているのには理由があります。日経平均は225銘柄を株価の水準で重みづけするため、株価の高い銘柄に引っ張られやすい指数です。TOPIXは東証プライムの全銘柄を時価総額で重みづけするので、市場全体に近い動きになります。今回はどちらもプラスなので、どちらを基準にしても5社が逆行したという結論は変わりません。

面白いのは、最終利益が3倍になった三菱地所がマイナス10.07%と、5社でいちばん下げていることです。決算の数字と株価が、素直につながっていません。

ただし、なぜ下がったのかは、決算資料からはわかりません。株価は決算だけで動くものではなく、相場全体、金利、為替、需給、ほかの材料でも動きます。この期間は3週間以上あります。理由を断定することはしません。

14. PER・PBR・配当利回り

2026年8月21日終値での指標です。

会社 株価 PER PBR 配当利回り
三菱地所 8802 3,687円 18.8倍 1.63倍 1.33%
三井不動産 8801 1,498円 14.2倍 1.24倍 2.47%
住友不動産 8830 3,339円 13.8倍 1.20倍 1.56%
長谷工 1808 2,856.5円 11.5倍 1.33倍 3.50%
野村不動産HD 3231 928.5円 9.2倍 0.99倍 4.74%

PER(ピーイーアール)は利益の何年分の株価がついているか、PBR(ピービーアール)は会社の資産に対して株価が何倍かを表します。

PBRが1倍を割っているのは、野村不動産ホールディングスの0.99倍だけです。PERも9.2倍と5社で最も低く、配当利回りは4.74%で最も高い。

一方で、いちばん高く評価されているのは三菱地所のPBR1.63倍でした。

これらの数値は自分で検算しました。株価を会社予想の1株利益で割った値も、株価を1株純資産で割った値も、いずれも表示どおりでした。指標をゆがめるような特殊な株式は、5社とも発行していません。

なお、不動産会社は借入をして物件を持つ商売なので、自己資本比率は他の業種より低く出ます。今回の5社は長谷工が42.1%、住友不動産が35.4%、三菱地所が31.8%、三井不動産が31.4%、野村不動産が28.3%。他業種と直接比べる数字ではありません。

15. 次の決算で見たい項目

第1四半期は3か月分でしかありません。しかも分譲は引き渡しの時期で振れます。次の決算で確かめたい点を挙げておきます。

1. 長谷工の完成工事総利益率が、この水準を保てるか

建設関連事業の利益率6.78%→9.85%は大きな改善です。資材と人件費が上がり続けるなかで、請負価格への転嫁を続けられるか。

2. 三井不動産の分譲が、下期にどこまで戻るか

契約進捗率は83%。当期末で3,495戸が契約済みです。これが売上に立つタイミングで数字は戻るはずですが、通期の営業利益予想は前期比プラス3.1%にとどまっています。

3. 住友不動産の不動産販売が、通期予想を超えるか

第1四半期で通期予想の60%を稼いでいます。このペースが続けば上振れる可能性があります。

4. 野村不動産ホールディングスの減益理由が説明されるか

7つのセグメントのうち5つが減益でしたが、背景の説明がありません。進捗率18.2%をどう戻すのか。

5. 三菱地所の海外事業が続くか

利益が6.8倍になった部門です。ここが元に戻ると、会社全体の見え方が変わります。

まとめ

マンションに関わる5社の決算を、部門ごとに開けてきました。

マンションを含む部門で、いちばん利益を伸ばしたのは長谷工の建設関連事業でした。プラス50.6%。決算短信には「完成工事総利益率が上昇した」と書かれています。建てる側が、値上げを通せています。

売る側は、増益が三菱地所の住宅事業だけ。あとの3社は減益でした。

ただし、三井不動産のマイナス67.7%は、去年が高すぎた反動です。会社自身が「前年同期の都心・高額・大規模な物件の計上による反動等」と書いています。売れ残りは40戸、契約済みは3,495戸。売れていないわけではありません。

住友不動産は「販売価格の上昇を背景に高水準の利益」と書き、利益率は39.94%へ上昇。第1四半期で通期予想の6割を稼ぎました。

三菱地所の最終利益3倍の主役は、住宅ではなく海外事業と株式の売却益でした。

そして株価は5社とも下落。日経平均プラス7.46%、TOPIXプラス2.35%に対して、全社が逆行しました。決算の数字と株価が、今回は素直につながっていません。

マンションの価格は過去最高です。その値上がりの取り分が、いま誰のところに行っているのか。少なくともこの3か月は、建てる側でした。

なお、この記事は決算の数字を確認したものであり、特定の銘柄の売買をすすめるものではありません。投資の判断はご自身でお願いします。

主な参照資料

  • 三井不動産「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」2026年8月7日
  • 三井不動産「2027年3月期 第1四半期決算短信 補足説明資料」2026年8月7日
  • 三菱地所「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」2026年8月7日
  • 住友不動産「2027年3月期 第1四半期決算短信[日本基準](連結)」2026年8月6日
  • 野村不動産ホールディングス「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」2026年7月30日
  • 長谷工コーポレーション「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」2026年8月6日
  • 株探(各銘柄ページ、日経平均株価・TOPIXの時系列ページ、2026年8月21日終値)
  • 日本経済新聞社『日経業界地図 2027年度版』231ページ「マンション」(業界の価格データは不動産経済研究所の集計)

※株価・指標は2026年8月21日(金)終値。決算数値は各社の決算短信および決算補足説明資料から引用しています。

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たぐ

コロナショック直前の2020年に投資をスタート。リアルタイムで暴落を経験しながら独学で投資の基礎を習得。 現在の運用総額5,000万円超・年間配当収入120万円超を達成。投資信託・ETF・個別株・米国株など100銘柄超に分散投資し、相場の波に強いポートフォリオを構築中。 高配当株の長期保有と新NISAの積立を組み合わせた"2刀流"スタイルで資産形成を実践。保有銘柄の決算・配当・株価をブログで赤裸々公開しています。YouTubeでも投資情報を発信中!

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