※本記事は2026年8月12日終値と、明治ホールディングスが2026年8月5日に発表した2027年3月期第1四半期決算を基に作成しています。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。
明治ホールディングス(2269)が、2027年3月期第1四半期決算を発表しました。
売上高は5.8%増、営業利益は27.7%増、経常利益は37.8%増、純利益は51.3%増。主要な利益がそろって2桁増となる好決算です。
株価も決算前日の3,610円から8月12日の4,187円まで約16%上昇しました。
ただし、中身を見ると少し意外です。チョコレートを含むカカオ事業は、売上高が12.7%増えた一方、営業利益は34.2%減りました。反対に、医薬品事業の営業利益は76.3%増加しています。
「きのこの山」と「たけのこの里」が目立つ会社ですが、今回の決算では白衣を着た医薬品事業が強い存在感を見せました。
結論:好決算の主役は食品だけではない
- 売上高2,894億円、営業利益226億円で増収増益
- 経常利益は37.8%増、純利益は51.3%増
- 食品事業は10.9%増益、医薬品事業は76.3%増益
- カカオ事業は増収でも34.2%減益
- 通期業績予想は据え置き
- 年間配当は5円増配の110円予想
- 2026年度から長期保有株主向けの「感謝BOX」を追加
- 株価は決算発表前から約16%上昇
明治HDはチョコと牛乳だけではない
明治HDは、大きく「食品」と「医薬品」の2つの事業を持っています。
食品事業には、ヨーグルト、牛乳、チョコレート、グミ、ザバス、乳幼児ミルク、アイス、チーズ、業務用食品などがあります。
医薬品事業には、抗菌薬、免疫領域の薬、ジェネリック医薬品、ワクチン、動物薬、海外医薬品などがあります。
コンビニやスーパーで見かける商品だけで会社全体を判断すると、決算の半分を見落とすことになります。
第1四半期は利益が大きく増加
| 項目 | 1Q実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2,894億1百万円 | +5.8% |
| 営業利益 | 226億73百万円 | +27.7% |
| 経常利益 | 247億90百万円 | +37.8% |
| 親会社株主に帰属する四半期純利益 | 152億71百万円 | +51.3% |
売上高は158億円増え、営業利益は49億円増えました。売上高の伸び率より利益の伸び率が大きく、全体として収益性が改善しています。
経常利益は、持分法による投資利益の増加や為替差益も押し上げました。純利益の増加率がさらに大きい点には、前年同期との特別損益や税負担の差も含まれます。
食品事業は4.1%増収、10.9%増益
食品事業の売上高は2,339億円で4.1%増、営業利益は151億円で10.9%増となりました。
食品全体は増収増益ですが、中身は一枚岩ではありません。
デイリー事業
デイリー事業は、プロバイオティクス、ヨーグルト、牛乳、海外乳製品などを扱います。
- 売上高:675億円、0.8%増
- 営業利益:64億円、6.2%増
「明治プロビオヨーグルトR-1」「明治おいしい牛乳」、新商品の「明治ヘモグロビンA1c対策ヨーグルト」などが増収に貢献しました。
原材料費や物流費は増えましたが、価格改定の効果で国内事業は増益。中国では市販用牛乳・ヨーグルトの売上が伸びています。
カカオ事業
カカオ事業は、チョコレート、グミ、海外菓子などを扱います。
- 売上高:436億円、12.7%増
- 営業利益:20億円、34.2%減
「きのこの山」「たけのこの里」「チョコレート効果」が好調で、グミや海外の「ハローパンダ」も売上を伸ばしました。
しかし、相場高騰期に調達したカカオ原料の使用や為替の影響で、原材料コストが増加。売上は増えましたが、利益は大きく減りました。
チョコはよく売れましたが、原料代まで甘くはなかったということです。
ニュートリション事業
ニュートリション事業は、乳幼児ミルク、ザバス、高栄養食品などを扱います。
- 売上高:309億円、6.3%増
- 営業利益:37億円、20.9%増
粉末タイプの「ザバス」は競合商品との価格差が縮まり、ドリンクタイプの「ザバスミルク」は商品構成の強化が寄与しました。
価格改定と構造改革によるコスト削減も利益を押し上げています。
フードソリューション事業
フードソリューション事業は、業務用食品、チーズ、アイスなどを扱います。
- 売上高:499億円、2.6%増
- 営業利益:20億円、15.4%増
「明治エッセルスーパーカップ」の商品強化や、業務用クリームの販売増加が寄与しました。
中国では、前期の減損損失によって今期の減価償却費が減ったことも増益要因です。これは販売の伸びだけによる利益増ではないため、次の決算でも持続性を確認したいところです。
医薬品事業は営業利益76.3%増
医薬品事業は、今回の決算で大きく利益を伸ばしました。
| 項目 | 1Q実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 556億円 | +13.6% |
| 営業利益 | 84億円 | +76.3% |
国内、海外、ワクチン・動物薬の3事業すべてで売上高が2桁増となりました。
国内では、注射用抗菌薬が前年同期の市場低調から回復し、薬価の下支えも寄与しました。選択的ROCK2阻害剤「レズロック錠」も好調です。
「レズロック錠」は、慢性移植片対宿主病に使われる薬です。移植後に、移植された免疫細胞が患者の体を攻撃してしまう病気の治療薬と考えると分かりやすいでしょう。
海外では、インド子会社の増収と原価低減が増益に貢献しました。
ワクチン・動物薬では、日本脳炎ワクチン「エンセバック」と5種混合ワクチン「クイントバック」が伸び、営業赤字は前年の18億円から4億円へ縮小しました。
通期業績予想は据え置き
会社は、第1四半期決算の発表時点で通期予想を変更していません。
| 項目 | 通期予想 | 前期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 1兆2,120億円 | +3.3% |
| 営業利益 | 1,000億円 | +7.2% |
| 経常利益 | 1,010億円 | +4.6% |
| 親会社株主に帰属する当期純利益 | 625億円 | +78.2% |
| 1株当たり利益(予想EPS) | 230.61円 | ― |
第1四半期の通期進捗率は、売上高が約23.9%、営業利益が約22.7%、経常利益が約24.5%、純利益が約24.4%です。
おおむね4分の1に近い進捗で、好調なスタートではありますが、進捗率だけで上方修正を見込めるほど突出しているわけではありません。
純利益の78.2%増予想は非常に大きく見えますが、前期の純利益が特別損失などで低下していた反動もあります。営業利益の7.2%増予想と分けて見る必要があります。
年間配当110円、13期連続増配の予想
2027年3月期の配当予想は、中間55円、期末55円、年間110円です。前期の年間105円から5円増配となります。
予想どおりなら、2015年3月期から13期連続の増配です。
会社は2026中期経営計画で、各年度の総還元性向50%以上を目安とし、1株当たり配当額の継続的な増配を目指しています。
予想EPS230.61円に対する配当110円の予想配当性向は約47.7%です。
株主優待に長期保有感謝BOXを追加
株主優待は、毎年3月31日時点で100株以上を保有する株主が対象です。
| 保有株数 | 通常の優待内容 |
|---|---|
| 100株以上 | 1,500円相当の明治グループ製品 |
| 200株以上 | 2,500円相当の明治グループ製品 |
| 1,000株以上 | 5,500円相当の明治グループ製品 |
2026年度からは、100株以上を3年以上継続保有した株主に、通常の優待品に加えて「長期保有感謝BOX」が贈られます。
3年以上の条件は、3月末と9月末の株主名簿に、同一株主番号で100株以上の保有が7回以上連続して記録されることです。
感謝BOXの具体的な内容や金額相当額は公表されていません。このため、総合利回りの計算では感謝BOXを金額換算しません。
8月12日終値の株価とバリュエーション
| 項目 | 2026年8月12日時点 |
|---|---|
| 終値 | 4,187円 |
| 前日比 | -3円(-0.07%) |
| 予想PER | 18.2倍 |
| PBR | 1.47倍 |
| 予想配当利回り | 2.63% |
| 最低投資金額 | 41万8,700円 |
| 時価総額 | 約1兆1,816億円 |
100株を保有した場合、年間配当は11,000円、通常の株主優待は1,500円相当です。両方を単純に合計した総合利回りは約2.99%となります。
ただし、優待品は現金ではなく、自社製品の詰め合わせです。現金配当と同じ価値として扱えるかは人によって異なります。
決算発表前日の8月5日終値は3,610円でした。翌6日は4,012円まで11.14%上昇し、8月12日には4,187円となりました。決算発表前からの上昇率は約16.0%です。
好決算への評価は、すでに株価へ相当程度反映されていると考える必要があります。
次の決算で確認したい6項目
- カカオ原料高による利益圧迫が縮小するか
- チョコレートの値上げ後も販売数量を維持できるか
- 医薬品事業の大幅増益が続くか
- ワクチン・動物薬事業が黒字化できるか
- 中国食品事業の構造改革が販売成長につながるか
- 通期業績予想の修正があるか
まとめ
明治HDの第1四半期は、売上高5.8%増、営業利益27.7%増、経常利益37.8%増、純利益51.3%増の好決算でした。
食品事業は増収増益でしたが、チョコレートを含むカカオ事業は、カカオ原料高などによって34.2%減益となりました。
一方、医薬品事業は国内薬、海外、ワクチンの改善によって76.3%増益。今回の全社増益を強く支えています。
年間配当は110円へ増配予定で、長期保有株主向けの感謝BOXも始まります。ただし、株価は決算発表前から約16%上昇しました。
次の決算では、カカオ事業の採算改善と医薬品事業の成長継続という、2つのポイントを並べて確認したいところです。
※本記事は公開資料に基づく情報提供を目的としており、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。