高配当株を6社持っていれば、十分に分散できているでしょうか。銘柄数を数えるだけでは、答えは出ません。
例えば、石油会社と商社は業種が違います。それでも、資源価格という同じ変化が、両社の利益に影響することがあります。銀行とリース会社は、どちらも金利が大事ですが、金利が上がったときの影響は同じではありません。通信会社2社も、同じ業種だから中身まで同じ、とは言えません。
今回は、INPEX、三井物産、三菱UFJフィナンシャル・グループ、三菱HCキャピタル、NTT、KDDIの6社を使って、「次の1社を買うと、配当の元手の偏りはどう変わるか」を考えます。6社は2026年10月2日時点ですべて時価総額1,000億円以上。銘柄の優劣や買い時を決める記事ではなく、手持ちの株を見直すための物差しです。
結論を先に言うと、会社を増やすことと、配当の元手を分けることは別です。次の1社を選ぶ際は、予想利回りだけでなく、①何で稼ぐ会社か、②どの変化に弱いか、③その影響が配当に届くまでにどんな備えがあるか、を順に見ると判断が変わります。
まず6社の数字をそろえる
以下の株価は2026年10月2日の東証終値。配当は各社が公表した年間の予想・予定額です。参考利回りは「年間配当予想÷終値」で私が計算し、小数点第3位を四捨五入しました。税引き前で、今後の配当を保証する数字ではありません。株価・時価総額は株探、配当は各社IRで照合しています。
| 会社(証券コード) | 10月2日終値 | 年間配当の予想・予定 | 参考利回り | まず見る収入源 |
|---|---|---|---|---|
| INPEX(1605) | 3,696円 | 112円・2026年12月期 | 3.03% | 石油・天然ガスの開発・生産 |
| 三井物産(8031) | 4,902円 | 140円・2027年3月期 | 2.86% | 金属資源、エネルギー、その他の事業 |
| 三菱UFJ FG(8306) | 3,544円 | 96円・2027年3月期 | 2.71% | 国内外の貸し出し、手数料など |
| 三菱HCキャピタル(8593) | 1,306円 | 51円・2027年3月期 | 3.91% | リース・金融サービスなど |
| NTT(9432) | 169.9円 | 5.4円・2027年3月期 | 3.18% | 通信、法人向けIT、海外事業など |
| KDDI(9433) | 2,896.5円 | 84円・2027年3月期 | 2.90% | 通信を土台に、法人・金融など |
この表だけで利回りが最も高い会社を選ぶと、今日の数字には答えられても、自分の配当収入にどんな偏りを追加するかには答えられません。なお、利回りは株価が下がるだけでも上がります。利回り上昇を、そのまま配当の安全性が上がった合図にはできません。
深掘り1:INPEXと三井物産――業種が違っても、資源価格で重なる
INPEXは石油・天然ガスの開発・生産が中核です。原油価格、為替、販売量などが業績に影響します。三井物産は総合商社で、食品、機械、インフラなど幅広い事業を持つ一方、鉄鉱石や原油・天然ガスも重要な収益源です。会社自身のリスク情報にも、商品価格が利益を左右することが書かれています。
三井物産は2027年3月期の利益に対する目安として、原油価格が1バレル当たり1米ドル動くと約13億円、鉄鉱石価格が1トン当たり1米ドル動くと約30億円の影響を見込んでいます。ただし、これは会社が示した条件付きの試算で、ヘッジの影響を除いています。INPEXと三井物産の感応度を単純に足したり、「同じだけ影響を受ける」と言ったりはできません。
ここで重要なのは、2社は同じ会社ではないが、共通の風を受ける部分があるという点です。INPEXを持つ人が三井物産を買うことは、事業の幅を広げる意味があります。一方で、資源価格に左右される利益を完全に別の収入源へ移すことにはなりません。
もっとも、資源価格が下がったら配当がただちに2社とも下がる、という話でもありません。INPEXは2025~2027年の中期計画で、年間90円を起点とする累進配当を掲げ、2026年12月期は112円を予定しています。三井物産も2027~2029年3月期の3年間、年間140円を下限とする累進配当を示しています。三井物産は単年の会計上の利益だけでなく、3年間の基礎営業キャッシュ・フローを還元の基準にします。利益への影響と配当への影響は、分けて考える必要があります。
ただし、どちらの方針も、その期間における会社の現在の方針です。永久保証ではありません。将来の業績・財務状況や経営判断によって変わり得ます。
深掘り2:銀行とリース――「金利上昇で得する・損する」では片づかない
三菱UFJ FGと三菱HCキャピタルは、どちらもお金を扱う会社です。しかし、お金の入り方と出方は異なります。
銀行では、お客さんに貸す金利と、預金などで集めるお金に払う金利の差が大切です。金利が上がり、貸出金利の上昇が調達金利を上回れば収益の追い風になります。反対に、預金金利や資金調達費用、貸し倒れ、保有債券の評価なども見なければなりません。三菱UFJ自身も、国内外の金利・預貸金収益だけでなく手数料収入を成長要因に挙げています。
リース会社は、設備などを貸して契約期間中の支払いを受け取ります。その設備を持つために借りるお金のコストもあります。既存契約の受取額がすぐ変わらない一方、資金調達のコストが変われば、利益の幅に影響します。ただし、新規契約の価格設定、固定・変動金利の組み合わせ、海外事業の構成などによって影響は変わります。「金利上昇=銀行は必ずプラス、リースは必ずマイナス」ではありません。
配当方針にも違いがあります。三菱UFJは利益成長を通じた1株配当の持続的な増加を基本とし、配当性向40%程度を目安にしています。今期の年間予想は96円。三菱HCキャピタルの今期予想は51円で、会社予想ベースの配当性向は45.8%です。両社とも増配を予定していますが、片方の増配が他方の増配を保証するわけではありません。
つまり、金利という共通語だけで2社をひとまとめにするのも、業種が違うから完全に無関係とするのも雑です。見るべきは、金利が「受け取る額」「支払う額」のどちらを、どの速さで変えるかです。
深掘り3:NTTとKDDI――同じ通信でも、利益の内訳を見たい
NTTとKDDIは通信という共通の土台を持ちます。国内の通信料金や利用者数をめぐる変化は、2社に共通する可能性があります。しかし、NTTを携帯電話だけの会社、KDDIを携帯電話だけの会社と見るのも違います。
NTTは、総合ICT、グローバル・ソリューション、地域通信などを開示しています。2025年度の営業利益の単純合算ベースでは、総合ICTが54.3%、グローバル・ソリューションが28.1%、地域通信が17.7%でした。グループ内取引を含む区分のため、連結営業利益の構成比としてそのまま使えない点に注意が必要です。一方、KDDIは今期から通信を土台とする「テレコムコア」に加え、個人向けの金融など、法人向けのデータセンター・サイバーセキュリティーなどを分けて示しています。
このため、2社の株を持つと通信業界への比重は増えますが、利益を伸ばす道筋まで完全に同じではありません。ここも、重なる部分と違う部分の両方を見るのが実際的です。
NTTの年間配当予想は5.4円、KDDIは84円です。KDDIの過去の配当を比較するときは、2025年4月の1対2の株式分割に注意してください。分割前の金額と現在の84円をそのまま並べると誤解します。
深掘り4:数字で考える「次の1社」の効果
ここからは実在の6社の保有比率を示すものではない、説明用の仮定です。税金、手数料、株価の変動は省きます。
いま持っている株から、年間30万円の配当を受け取るとします。このうち18万円が、資源価格の影響を受けやすい会社から来ています。つまり、配当額で見た割合は60%です。
次に投資する100万円について、二つの案を比べます。
| 説明用の仮定 | 追加する年間配当 | 合計の年間配当 | 資源価格の影響を受けやすい会社からの配当割合 |
|---|---|---|---|
| 現状 | ― | 30万円 | 18万円÷30万円=60.0% |
| 同じ収益要因に近い銘柄を、利回り4%で追加 | 4万円 | 34万円 | 22万円÷34万円=64.7% |
| 違う収益要因の銘柄を、利回り3%で追加 | 3万円 | 33万円 | 18万円÷33万円=54.5% |
1年分の見込み配当だけなら、4%の案のほうが1万円多くなります。しかし、資源価格に左右される会社から受け取る配当の割合は、60.0%から64.7%へ上がります。3%の案は配当額が1万円少ない代わりに、その割合は54.5%へ下がります。
ここで「3%の案なら安全」と決めるのは早計です。別の業種にも別の弱点があります。また、配当割合が下がったことは、減配する確率が下がった証明ではありません。この計算から言えるのは、年間配当を最大化する選択と、特定の収益要因への偏りを薄める選択は、必ずしも一致しないということです。
もう一つの注意点は、資源に関係する会社の配当18万円を、厳密に「資源事業から生まれた配当」とみなしていないこと。商社のような多角経営では、会社から受け取る配当を事業別に切り分けることはできません。ここでは資源価格の影響を受けやすい会社からの配当として、あえて粗く分類しています。
では、何をメモすればいいのか
手持ちの銘柄を全部調べ直す必要はありません。次の1社を買う前に、まずこの4行を書いてみるのがおすすめです。
- 今の年間配当見込みはいくらか。1社ごとの金額ではなく、合計を出す。
- そのうち、特定の景気・資源価格・金利・通信料金などに影響されやすい会社から、何円受け取っているか。
- 次の候補を足したら、その割合は上がるか、下がるか。
- 業績が揺れたとき、配当を支える方針と実際の資金の余裕をどこで確認できるか。
4行目が大切です。業績が下がること、株価が下がること、配当が下がることは同じ現象ではありません。会社が掲げる累進配当、配当性向、下限、自己株式取得も、それぞれ意味が違います。「下限があるから株価は下がらない」「配当性向が高いほど安全」という読み方はできません。
さらに、どんなに収益源を分けても、市場全体が下がれば複数の株価が同時に下がる可能性はあります。今回の整理は、株価の値動きを予測するものでも、「6社あれば安心」という保証でもありません。
まとめ:次の1社は、利回りだけでなく「どこから来る配当か」で選ぶ
INPEXと三井物産には、資源価格という重なりがあります。三菱UFJと三菱HCキャピタルは金利が大切でも、影響の向きや時間差が同じとは限りません。NTTとKDDIは通信で重なりながら、事業の広がり方に違いがあります。
6社のうちどれが一番いい、と決めるより、自分が今持っている株に、次の1社が何を足すのかを見てみてください。予想配当が年1万円多い選択と、配当の元手を少し分ける選択。どちらを重視するかは、現在の保有状況と自分の目的によって変わります。
この記事は2026年10月2日時点の公開情報をもとに作成しました。投資判断はご自身でお願いします。