こんにちは、高配当株投資家のタグです。
今日は、ちょっと「あれ?」と首をかしげたくなる銘柄の話をします。コナミグループ(証券コード9766)です。
この会社、つい先日まとめた前期の決算は、創業以来はじめて最終利益が1,000億円を超える「過去最高益」でした。数字だけ見れば文句なしの好決算です。
ところが、株価は2026年6月18日に「年初来安値」を更新しました。年初来安値というのは、その年に入ってからの一番安い値段、ということです。しかもこの日、株価は前の日から-8.70%(金額にして-1,655円)も下げています。
世の中では日経平均株価が史上はじめて7万円を超えて盛り上がっている、まさにその真っ最中です。市場全体は最高潮、会社の決算も過去最高益。なのに株価は今年の最安値。
「最高益なのに、なぜ下がるの?」
これは投資をしていると本当によく出くわす"逆説"で、しかもその仕組みを理解しているかどうかで、株の見え方がガラッと変わります。今日はこのコナミグループを題材に、「最高益と株安が同居する理由」を、専門用語をひとつずつほぐしながら一緒に見ていきましょう。
普段このブログで扱っている高配当株とはまったく値動きのタイプが違う銘柄なので、「成長株ってこういうふうに動くのか」という勉強材料としても、きっと役に立つはずです。
※はじめにお断りしておきます。後でくわしく書きますが、6月18日にその日だけで-8.70%も急落した「直接の引き金」は、私が根拠にしている公式の決算資料(2026年5月8日付)には書かれていません。なので「この日なぜ急落したか」を私が決めつけて断定することはしません。あくまで「株価がこう動いた」という事実と、「背景として考えられる構造」を整理する記事だと思って読んでください。
1. なぜ最高益なのに安値なのか――株価は「過去」ではなく「未来」を見ている
最初に、いちばん大事な考え方をお伝えします。
株価は、すでに出た決算(過去の成績)ではなく、これから会社がどれだけ伸びるか(未来の成長)を織り込んで動きます。
「織り込む(おりこむ)」というのは、株の世界の言い回しで、「将来こうなりそうだ、という予想をあらかじめ値段に反映させておく」という意味です。
ここがポイントです。コナミグループの「過去最高益」は、あくまで前期(2026年3月期)という"終わった期"の成績です。決算が発表されるころには、市場の関心はもう次に移っています。「この勢いは、来期(=当期、2027年3月期)も続くのか?」と。
そして、後でくわしく見ますが、コナミグループ自身が出している当期(2027年3月期)の利益予想は、前期のような勢いではありません。前期は最終利益が前の年から+33.9%も伸びたのに、当期の会社予想は最終利益+1.0%。つまり「ほぼ横ばい」の見通しなのです。
ここで起きているのが、こういうことです。
- 過去の成績(最高益)→ もう株価に織り込み済み。「知ってた」状態。
- 未来の成長(当期は急ブレーキ)→ これが新しい情報。市場はこっちに反応する。
だから「最高益=株が上がる」とは限りません。むしろ「最高益を更新したのに、次の成長が一気にしぼむ」という組み合わせは、株価にとってマイナスに働くことすらあるのです。
これが、コナミグループで起きている逆説の正体の"骨格"です。ここから先は、この骨格に肉をつけながら、ひとつずつ丁寧に見ていきます。
2. コナミグループはどんな会社か――4つの事業と、ずば抜けた稼ぎ頭
仕組みの話に入る前に、「そもそもコナミって何で稼いでいる会社なの?」を押さえておきましょう。ここが分かると、後の話がスッと入ってきます。
コナミグループは東京証券取引所のプライム市場に上場している、業種でいうと「情報通信業」の会社です。会計のルールは「IFRS(アイファース)」を使っています。IFRSは「国際会計基準」のことで、世界共通のものさしで業績を表す方式です。コナミは2015年3月期から採用しています。普段よく見る「日本基準」とは利益の呼び方などが少し違うので、その点だけ頭の片隅に置いておいてください。
会社は大きく4つの事業(セグメント)に分かれています。
| 事業(セグメント) | 何をしているか | 前期の事業利益 | 立ち位置 |
|---|---|---|---|
| デジタルエンタテインメント事業(DE) | モバイルゲーム、家庭用ゲーム、カードゲームなどのデジタルコンテンツの制作・販売 | 1,360億円 | 稼ぎ頭。圧倒的な主力 |
| アーケードゲーム事業(AG) | ゲームセンター向けアーケードゲームの企画・制作・販売 | 68億円 | 安定 |
| ゲーミング&システム事業(GS) | 北米・豪州のカジノ向けゲーミング機器、カジノ管理システムの製造・販売 | 36億円 | 前期は唯一の大幅減 |
| スポーツ事業 | スポーツ施設運営、スイミング・体操・ダンス等のスクール運営 | 34億円 | 小さいが伸びている |
表を見ていただくと一目瞭然なのですが、コナミグループは事実上「デジタルエンタテインメント事業(以下DE)の会社」と言ってよいくらい、利益がDEに集中しています。
数字で言うと、グループ全体の「事業利益」1,436億円のうち、DE単独で1,360億円。残りのアーケード・ゲーミング&システム・スポーツの3事業を全部合わせても約138億円ほどで、そこから全社の共通費用などを差し引くと、DE以外はほぼトントン規模です。
※「事業利益」という言葉が出てきました。これはコナミが使っている利益の区分で、売上高から、商品をつくるのにかかった費用(売上原価)と、販売や管理にかかった費用(販管費)を引いたもの、と決算資料で定義されています。「本業でどれだけ稼いだか」を表す数字、とイメージしてください。
では、その稼ぎ頭のDEは具体的に何で稼いでいるのか。聞いたことのある名前がたくさん並びます。
- サッカーゲーム「eFootball(イーフットボール)」。2026年4月に累計10億ダウンロードを突破したと発表しています。
- 「メタルギア」「SILENT HILL(サイレントヒル)」といった看板シリーズのリピート販売。前期は「METAL GEAR SOLID Δ: SNAKE EATER」が世界累計出荷200万本を突破しました。
- 「遊戯王(ゆうぎおう)」のカードゲームとアプリ。デジタル版「遊戯王 マスターデュエル」は9,000万ダウンロードの記念施策を実施。
- 野球ゲーム群「パワプロ」「プロ野球スピリッツ」シリーズ、大谷翔平選手がカバーの「eBaseball: MLB PRO SPIRIT」など。
つまりコナミは、世界中にファンがいる強力なゲームの「IP(アイピー=知的財産、キャラクターやブランドのこと)」をいくつも持っていて、それを家庭用ゲーム・スマホ・カードと、いろんな形で長く売り続けることで稼ぐ会社、というわけです。
ここを押さえると、次の「なぜ前期はあんなに伸びたのか」「なぜ当期は急ブレーキの予想なのか」が分かりやすくなります。
3. 前期(2026年3月期)は絶好調――初の最終利益1,000億円超で過去最高益
それでは、話題の「過去最高益」だった前期の決算を見てみましょう。前期というのは、2025年4月から2026年3月までの1年間(2026年3月期)のことです。
| 指標 | 前期(2026年3月期)実績 | 前の年比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 4,937億円 | +17.1% |
| 事業利益 | 1,436億円 | +31.6% |
| 営業利益 | 1,359億円 | +33.3% |
| 税引前利益 | 1,407億円 | +35.2% |
| 当期利益(親会社の所有者に帰属) | 1,000億円(初の1,000億円超・過去最高) | +33.9% |
| 1株あたり利益(EPS) | 737.80円 | +186.80円 |
| ROE | 19.1% | (前の年16.4%) |
改めて見ても、見事な数字です。売上が+17.1%、各段階の利益はどれも+30%超の伸び。そして最終的に手元に残る利益である「当期利益(親会社の所有者に帰属する当期利益)」が、ついに1,000億円の大台に乗りました。これは会社として初めてのことで、過去最高益です。
※「親会社の所有者に帰属する当期利益」というのは、グループ全体の最終的なもうけのうち、コナミグループの株主の取り分にあたる利益のことです。IFRSではこういう呼び方をします。これがいわゆる「最終利益」だと思ってください。なお、この「当期利益」という言葉は会計の科目名です。記事の中で「当期=2027年3月期」と時期を指すときの『当期』とは別物なので、混同しないようご注意を(このあたりが少しややこしいポイントです)。
しかもコナミは、売上高・事業利益・営業利益・税引前利益・当期利益のすべての区分で、3期連続で過去最高を更新しています。会社の説明によれば、この絶好調の主因は、やはり主力のDEの好調です。
もうけの効率も高水準です。表にあるROE(自己資本利益率)は19.1%。これは「株主が出したお金(自己資本)を使って、1年でどれだけ効率よく利益を稼げたか」を示す%で、一般に10%を超えれば優秀とされます。コナミはこの水準を大きく上回っています。
財務の健全さも文句なしです。
- 自己資本比率(会社の資産のうち、返さなくていい自前のお金がどれくらいの割合か)は75.4%。70%を超えていれば一般に「とても健全」と言われる水準で、コナミはそれを上回っています。
- 本業で稼いだ現金を表す営業キャッシュフローも+1,357億円(前の年から+18.4%)と潤沢です。
- 期末の手元現金は3,276億円。
つまり前期のコナミグループは、「最高の売上、最高の利益、頑丈な財務」と、決算の中身そのものには非の打ちどころがありません。だからこそ、株価が年初来安値というのが余計に不思議に見えるわけです。
その謎を解くカギは、「指標の読み方」と「次の期の予想」にあります。順番に見ていきましょう。
4. 指標の読み方――PER・PBR・配当利回りで「株価は未来を見ている」を体感する
ここで、株価の"高い・安い"を測るときに使う3つの代表的なものさしを、やさしく整理しておきます。コナミグループの今の数字(2026年6月18日終値ベース、証券サイトの値)も一緒に並べます。
| ものさし | コナミの値(6/18時点) | ざっくりした意味 |
|---|---|---|
| 株価 | 17,375円(前日比-8.70%) | 1株の値段 |
| PER(株価収益率) | 23.3倍 | 利益の何年分まで買われているか |
| PBR(株価純資産倍率) | 4.17倍 | 会社の純資産の何倍まで買われているか |
| 予想配当利回り | 1.29% | 株価に対して1年で何%の配当がもらえるか |
| 時価総額 | 約2兆4,933億円 | 会社まるごとの値段 |
ひとつずつ、かみくだきます。
PER(ピーイーアール/株価収益率)
PERは「今の株価が、1株あたりの利益の何年分にあたるか」を表す数字です。コナミは23.3倍。ざっくり言えば「この会社が今のペースで利益を出し続けたとして、23年ちょっとで元が取れる値段で買われている」というイメージです。
数字が大きいほど「割高」、小さいほど「割安」とされます。では23.3倍は高いのか低いのか。ここが大事なところです。
PERが高いということは、市場が「この会社はこれからもっと利益を伸ばす」と期待して、未来の成長分を前払いで株価に乗せている、という状態です。逆に言うと、高いPERは「これからの成長」という約束手形の上に成り立っているのです。だから、その成長期待が揺らぐと、PERそのものが下方修正されて株価が下がります。これを「バリュエーション(株価の評価水準)の調整」と呼びます。後でこの記事の核になる話です。
PBR(ピービーアール/株価純資産倍率)
PBRは「今の株価が、会社の純資産(解散したら株主に残るお金)の何倍まで買われているか」を表します。コナミは4.17倍。1倍が「株価=純資産」のラインで、4.17倍はかなり高めです。
これも理屈は同じで、「会社の資産価値そのもの」以上に高く買われているのは、「この会社は資産以上にこれから稼ぐ力がある」と市場が期待しているからです。PBRが高い銘柄は、やはり成長期待が値段に乗っている、と読めます。
予想配当利回り
配当利回りは「株価に対して、1年でもらえる配当が何%か」です。コナミは1.29%。
ここ、当ブログの読者さんにはとても大事なところです。私が普段ご紹介している高配当株は、利回り3%台〜4%台、あるいはそれ以上が珍しくありません。それと比べると、コナミの1.29%はけっして高配当ではありません。
これが何を意味するか。コナミグループは「配当をたくさんもらうために持つ株」ではなく、「会社の成長(=株価の値上がり)に期待して持つ株」だ、ということです。いわゆる「成長株(グロース株)」のタイプです。
そして――ここが今日いちばんお伝えしたいことにつながります。配当が少ない成長株は、「成長への期待」だけで株価が支えられているということです。期待が崩れたとき、株価を下から支えてくれる「配当」というクッションが薄い。だから、成長が鈍ると思われた瞬間に売られやすいのです。
3つのものさしが全部、同じことを指しています。「コナミの株価は、これまでの成長への高い期待で評価されている」。では、その期待のいちばんの拠りどころである"これからの成長"は、どうなる見通しなのでしょうか。
5. 当期(2027年3月期)の会社予想は急減速――最終利益わずか+1.0%という重い数字
ここが、今日の記事の核心です。
コナミグループ自身が出している、当期(2027年3月期。2026年4月から2027年3月まで)の業績予想を見てみましょう。前期の実績と並べます。
| 指標 | 当期(2027年3月期)会社予想 | 前期実績 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,050億円 | 4,937億円 | +2.3% |
| 事業利益 | 1,500億円 | 1,436億円 | +4.5% |
| 営業利益 | 1,430億円 | 1,359億円 | +5.2% |
| 税引前利益 | 1,430億円 | 1,407億円 | +1.7% |
| 当期利益(親会社の所有者に帰属) | 1,010億円 | 1,000億円 | +1.0% |
落差が、はっきり見えると思います。
前期は、売上+17.1%、最終利益+33.9%という、まさに駆け足の高成長でした。それが当期の会社予想では、売上+2.3%、事業利益+4.5%、そして最終利益にいたっては+1.0%。金額でいえば1,000億円が1,010億円へ、わずか10億円の増加です。
率直に言って、これは「ほぼ横ばい」の見通しです。「過去最高を毎年更新してきた急成長フェーズ」から、「増益率が一桁前半(最終利益は実質横ばい)」という巡航速度へ、ぐっとブレーキがかかる――会社自身がそう見込んでいる、ということになります。
なぜ急ブレーキなのか。中身を見ると、稼ぎ頭のDEの事業利益予想が前期1,360億円→当期1,380億円の+1.5%と、頭打ちの見通しになっているのが大きいです(前期は+37.5%の伸びでした)。一方で、前期に唯一大きく落ち込んだカジノ向けのゲーミング&システム事業は、新しい機種の展開で当期は回復を見込んでいます。ただ、この事業はもともと規模が小さく、グループ全体の流れを変えるほどの力はありません。
ここで、第1章でお話しした「株価は未来を見る」という話を思い出してください。
市場は、もう「過去最高益(前期)」は知っています。市場が今いちばん知りたいのは「次もこの勢いが続くのか?」でした。それに対する会社の答えが「最終利益+1.0%、ほぼ横ばい」だったわけです。
第4章で見たとおり、コナミの株価はPER23.3倍・PBR4.17倍という「これからも成長する」という前提の上に立った高めの評価でした。その前提(次の成長)が、会社予想の段階で「横ばい」と示された。すると、株価の評価そのものを見直す動き――「バリュエーションの調整」が起きやすくなります。高い期待で買われている株ほど、期待が外れたときの反動が大きい。 これが成長株のこわさであり、しくみです。
6. バリュエーション考察――「配当で持つ株」ではなく「成長で持つ株」
ここまでの話を、投資のスタンスという目線で整理し直してみます。
コナミグループの今の数字を、もう一度並べます。
- PER 23.3倍 … 利益の23年分まで買われている=成長を見込んだ高めの評価
- PBR 4.17倍 … 純資産の4倍以上=こちらも高めの評価
- 予想配当利回り 1.29% … 高配当ではない
この3つから言えることは、ひとつです。コナミグループは「成長で持つ株」であって、「配当で持つ株」ではない。
私のような高配当株中心の投資家の発想だと、株価が下がっても「利回りが上がるからむしろ買い増しチャンス」「配当をもらいながら待てばいい」と考えられる場面が多いです。それは、配当という"下支え"があるからこそ成り立つ考え方です。株価が下がると利回りが上がり、その高い利回りに魅力を感じた買い手が入ってくる。これが高配当株の値段を下から支えるクッションです。
ところがコナミのような成長株は、利回りが1.29%しかありません。仮に株価が下がって利回りが多少上がっても、「配当目当てで買おう」という人はそう多くありません。つまり、株価を下支えするクッションが薄いのです。
成長株を支えているのは配当ではなく「成長への期待」です。だから、
- 成長が続くと見られている間は、高いPER・PBRが正当化され、株価は強い。
- 「次の成長が見えない」と思われた瞬間に、その高い評価が一気にしぼみやすい。
という、振れ幅の大きい値動きになります。良いときはぐんぐん上がり、期待が崩れると大きく下げる。これが成長株の宿命のようなものです。
誤解しないでいただきたいのは、これは「コナミが悪い会社だ」という話では決してない、ということです。むしろ財務は超優良で、世界に通用するIPを持つ立派な会社です。あくまで「株価という値段が、どういう理屈で動くか」という話をしています。立派な会社であることと、今の株価が割高か割安かは、別の問題なのです。
ちなみに、コナミと同じようにゲームのIPで稼ぐ会社としては、カプコン、スクウェア・エニックス・ホールディングス、コーエーテクモホールディングスなどがあります。こうした「コンテンツで稼ぐ成長株」は、いずれも「次のヒットが出るか」「次の成長が続くか」で評価が大きく動きやすいという共通点があります。コナミの値動きも、その文脈で見ると理解しやすいでしょう。
7. 「最高益=買い」ではない――高配当株との対比で学ぶ
ここまでをふまえて、今日いちばん持って帰っていただきたい教訓をまとめます。
「過去最高益だから買い」とは限りません。
理由は、これまで見てきたとおりです。
- 株価は「過去の成績」ではなく「未来の成長」を織り込む。最高益はもう知られた過去。
- コナミのような高PER・高PBRの成長株は、「これから伸びる」という期待込みの高い評価がついている。
- その期待のよりどころである「次の成長」が、会社予想で「ほぼ横ばい(最終利益+1.0%)」と示された。
- 配当利回りは1.29%と低く、株価を下支えするクッションが薄い。
- だから、決算の中身が過去最高でも、成長期待が揺らげば売られやすい。
これを、当ブログでおなじみの高配当株と並べてみると、性格の違いがくっきりします。
| 成長株(例:コナミ) | 高配当株 | |
|---|---|---|
| 何で持つか | 成長=株価の値上がり期待 | 配当(インカム) |
| PER・PBR | 高めになりやすい | 低めになりやすい |
| 配当利回り | 低い(コナミは1.29%) | 高い(3〜4%台が多い) |
| 株価の下支え | 「成長期待」次第。薄い | 「配当の魅力」が支える |
| 値動きのクセ | 期待で大きく上下する | 比較的おだやか |
| 弱点 | 次の成長が見えないと急落しやすい | 大きな値上がり益は狙いにくい |
どちらが良い・悪いという話ではありません。性格が違うので、見るべきポイントと身構え方が違うということです。
高配当株は「利回りと配当の継続性」を見て、株価が下がってもうろたえず配当を受け取りながら待つ、という戦い方ができます。一方で成長株は「次の成長が続くか」をシビアに見続ける必要があり、好決算が出ても安心はできません。むしろ「好決算の"次"をどう描いているか」のほうが株価には効きます。
コナミグループは、まさにこの「成長株の値動きのしくみ」を学ぶのにうってつけの教材だと思います。最高益という華やかな見出しの裏で、市場は冷静に「次の成長」を値踏みしていた――そういう構図です。
8. 株価の事実――6月に軟調、6月18日に年初来安値・当日-8.70%
ここで、実際の株価の動きを「事実」として整理しておきます。ここは推測を交えず、起きたことだけを書きます。
- 2026年6月に入ってからコナミグループの株価は軟調(じわじわ下がる展開)が続きました。
- そして2026年6月18日、株価は17,375円まで下げ、年初来安値(その年の最安値)を更新しました。
- この日1日の下落率は-8.70%(金額で-1,655円)でした。
- 同じ時期、日経平均株価は史上はじめて7万円を超える高値圏にあり、市場全体はむしろ好調でした。
つまり「市場全体は最高潮なのに、コナミだけが今年の最安値」という、目を引く動きが起きた、ということです。
★ここはとても大事です:6月18日の急落の「直接の引き金」は断定しません
この記事で根拠にしているのは、コナミグループが公式に出した2つの決算資料(いずれも2026年5月8日付の本決算)だけです。6月18日にその日だけで-8.70%も急落した「直接の引き金(その日の材料)」は、この5月8日付の資料には書かれていません。 決算が出てから1か月以上あとの値動きなので、当然といえば当然です。
ですので、「6月18日になぜ急落したか」を、私が手元の資料だけで決めつけることはしません。ネット上にはいろいろな見方が出るかもしれませんが、確たる一次資料で裏が取れない以上、原因を確定的に書くのは避けます(これは過去に別の銘柄で痛感した、私の執筆ルールです)。
本記事として言えるのは、次の整理までです。
- 「事実」として、6月に軟調が続き、6月18日に年初来安値を更新し、当日-8.70%下げた。
- 「背景として考えられる構造」としては、これまで見てきたとおり、(1)当期会社予想が最終利益+1.0%と急減速していること、(2)PER23.3倍・PBR4.17倍という高い評価がついていたこと――この2つがあると、何かのきっかけで「成長期待の見直し(バリュエーションの調整)」が起きやすい土壌だった、とは言えます。
あくまで「土壌」の話であって、「6月18日の引き金がこれだ」と断定するものではありません。ここは慎重に切り分けてお読みください。
9. よくある質問(FAQ)
Q1. 過去最高益なのに、どうして株価が下がるのですか?
A. 株価は「すでに出た過去の成績」ではなく「これからの成長」を先回りして織り込むからです。コナミの最高益は前期(終わった期)の話で、市場はすでに知っています。市場が気にしているのは「次も伸びるか」で、当期の会社予想は最終利益+1.0%とほぼ横ばい。この"成長の急ブレーキ"が、最高益よりも株価に効いている、という構図です。
Q2. 高PER・高PBRの「成長株」とは、どういう特徴がありますか?
A. 「これから利益を伸ばす」という期待を前提に、利益や純資産に対して高めの値段がついている株のことです。期待が続く間は強いですが、「次の成長が見えない」と思われると、評価(PER・PBR)そのものが見直されて大きく下げやすい、という振れ幅の大きさが特徴です。コナミはPER23.3倍・PBR4.17倍と、この成長株タイプにあたります。
Q3. いつもブログで扱う高配当株とは、何が違うのですか?
A. 持つ目的と、株価を支えるものが違います。高配当株は「配当(インカム)」を目的に持ち、利回りの魅力が株価を下から支えます。成長株は「値上がり(成長)」を目的に持ち、支えているのは配当ではなく成長への期待です。コナミの配当利回りは1.29%と低く、下支えのクッションが薄いぶん、成長期待が揺らぐと売られやすい、というわけです。
Q4. 配当が出ているなら、持っていれば安心ではないですか?
A. コナミは前期の年間配当221.50円から当期予想224.00円へと、年間ベースでは増配の見通しで、配当方針も「連結配当性向30%以上を目安」と明確です。会社としての配当姿勢はしっかりしています。ただ、利回りが1.29%だと、株価の値下がりを配当でカバーするのは難しい水準です。「配当が株価を支えてくれる」と高配当株と同じ感覚で考えると、想定とズレる可能性があります。なお配当には注意点が一つ。前期から当期で期末配当だけ見ると138.50円→112.00円と減って見えますが、これは中間配当を83.00円→112.00円へ増やした結果、中間・期末が同額(各112.00円)になったもので、年間では増配です。「期末だけ見て減配」と誤読しないようご注意を。
Q5. 結局、コナミグループは「買い」なのですか?
A. 私は「買い」「売り」を断定しません(このブログの方針です)。お渡しできるのは判断の"ものさし"です。ポイントは、(1)これは配当で持つ株ではなく成長で持つ株であること、(2)その成長は当期会社予想で「ほぼ横ばい(+1.0%)」と示されていること、(3)PER23.3倍・PBR4.17倍はその成長前提の上に立った高めの評価であること。「この高い評価に見合う"次の成長"が描けるかどうか」をご自身で納得できるかが、判断の分かれ目になります。最終的な売買は、ご自身の責任でご判断ください。
10. まとめ――利回りの数字より、成長株は「次の成長」を見る
最後に、今日の要点をぎゅっとまとめます。
- コナミグループ(9766)は前期(2026年3月期)に初の最終利益1,000億円超・過去最高益(+33.9%)という見事な決算でした。
- それでも株価は2026年6月18日に年初来安値を更新し、当日-8.70%。市場全体(日経平均7万円超え)が好調な中での逆行でした。
- 理由の骨格は「株価は過去ではなく未来を見る」。当期(2027年3月期)の会社予想は最終利益+1.0%とほぼ横ばいで、成長が急減速する見通しだからです。
- コナミはPER23.3倍・PBR4.17倍・配当利回り1.29%。これは「配当で持つ株」ではなく「成長で持つ株」の評価です。配当という下支えが薄いぶん、成長期待が揺らぐと売られやすい。
- だから「最高益=買い」ではありません。 高PERの成長株は、好決算でも"次の成長"が見えないと売られる。これは、配当が株価を支える高配当株とは対照的です。
- ※6月18日の急落の「直接の引き金」は、根拠にした公式資料(5月8日付決算)には書かれていないため、本記事では断定しません。
普段このブログでは「利回り何%」「配当はいくら」という数字を主役に語ることが多いですが、成長株はものさしが違います。利回りの数字より、「次の成長が続くか」――そこを見るのが成長株のつき合い方です。コナミグループの今回の値動きは、その違いを身をもって教えてくれる、よい教材だったと思います。
それでは、また次の記事でお会いしましょう。高配当株投資家のタグでした。
免責事項
本記事は、コナミグループ株式会社が2026年5月8日付で公表した決算短信および決算説明資料(いずれも2027年3月期に向けた前期=2026年3月期の本決算)と、2026年6月18日終値時点の証券サイトの株価・指標値(株価17,375円、PER23.3倍、PBR4.17倍、予想配当利回り1.29%、時価総額約2兆4,933億円)にもとづく、筆者個人の整理・解説です。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。記載の数値・内容は執筆時点のものであり、将来の業績や株価を保証するものではありません。とりわけ2026年6月18日の株価急落(-8.70%)の直接の原因については、根拠とした公式資料(5月8日付決算)に記載がないため、本記事では特定・断定していません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。