J-POWER(電源開発、証券コード9513)が2026年7月31日、2027年3月期第1四半期決算を発表しました。
売上高は前年同期比12.0%増の2,802億73百万円、営業利益は11.7%増の362億82百万円です。
ところが、経常利益は45.9%減の395億61百万円、親会社株主に帰属する純利益は47.3%減の274億24百万円でした。
「本業の利益は増えたのに、最終利益はほぼ半分」。数字がそれぞれ別方向を向いており、少し交通整理が必要な決算です。
さらに、決算発表後の8月3日の株価は、一時前日比4%を超えて下落した後に急回復し、終値は前日比0.50%高の3,819円でした。
この記事では、大幅減益の正体、火力・水力・海外事業の変化、年間配当105円、PER・PBR・配当利回りまで、投資初心者にも分かる言葉で整理します。
※株価と投資指標は2026年8月3日の通常取引終値を基準にしています。この記事は特定銘柄の売買を推奨するものではありません。
結論:純利益47%減は事実。ただし本業の急失速ではない
今回のポイントは次のとおりです。
好材料
- 売上高は前年同期比12.0%増
- 営業利益は11.7%増
- 火力発電所の利用率は43%から49%へ上昇
- 火力の販売電力量は16.0%増
- タイを中心に海外の販売電力量は9.7%増
- 通期業績予想は据え置き
- 年間配当予想も105円で据え置き
- 2025年度に取得した自己株式6,713,200株を消却済み
確認したい点
- 経常利益は45.9%減、純利益は47.3%減
- 前年同期にあった米国火力発電事業の持分譲渡益が今期はない
- 水力の販売電力量は16.2%減
- 発電事業は増収でも燃料費などが増え、利益は1.8%減
- 有利子負債は前期末から785億円増の1兆9,617億円
- 8月3日終値基準の予想配当利回りは2.75%
- PERとPBRは低いが、大型投資や脱炭素対応などの不確実性がある
最も大切なのは、「純利益47%減」と「営業利益12%増」を矛盾した数字として捨てず、それぞれが何を表しているかを分けることです。
J-POWERは一般的な電力会社と少し違う
J-POWERの正式名称は電源開発株式会社です。
家庭向けの電気販売が中心というより、発電所でつくった電気を電力会社や卸電力市場などへ販売する、電力の卸売りを主力とする会社です。
主な事業は次のとおりです。
- 水力・風力・地熱などの再生可能エネルギー発電
- 石炭火力を中心とする火力発電
- 東日本と西日本をつなぐ設備などの送変電事業
- タイ、米国、豪州などの海外事業
- 豪州の炭鉱権益などの電力周辺関連事業
- 大間原子力発電所の建設計画
J-POWERの業績は、電気の販売量だけでなく、雨の量、火力発電所の稼働、燃料価格、卸電力価格、為替、海外プロジェクトなど、多くの要因で動きます。
一つのスイッチだけで動く会社ではなく、発電所の制御盤のように確認項目が多い会社です。
第1四半期は増収・営業増益、経常利益以下は大幅減益
2026年4月から6月までの第1四半期業績は次のとおりです。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,802億73百万円 | 2,502億97百万円 | +12.0% |
| 営業利益 | 362億82百万円 | 324億77百万円 | +11.7% |
| 経常利益 | 395億61百万円 | 730億67百万円 | -45.9% |
| 親会社株主帰属純利益 | 274億24百万円 | 520億88百万円 | -47.3% |
| 1株利益 | 155.80円 | 284.82円 | -129.02円 |
売上高は約300億円増え、営業利益は約38億円増えました。
一方、経常利益は約335億円、純利益は約247億円減っています。
営業収益と営業費用はいずれも12.0%増えており、営業利益率は前年同期も今回も約13%です。売上規模は拡大しましたが、利益率まで大幅に改善した決算ではありません。
純利益47%減の主因は前年の米国事業売却益
経常利益が大幅に減った最大の理由は、前年同期に計上した米国火力発電事業の持分譲渡による利益の反動です。
損益計算書の「持分法による投資利益」は、次のように減りました。
| 項目 | 今回 | 前年同期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 持分法による投資利益 | 101億10百万円 | 465億20百万円 | -364億10百万円 |
持分法による投資利益とは、J-POWERが出資している関連会社の利益などを、持分に応じて連結決算へ取り込むものです。
前年は米国火力発電事業の持分を譲渡したことで、この利益が大きく膨らみました。今期は同じ利益が繰り返されていません。
例えるなら、前年は普段の給料に加えて大きな臨時収入があり、今年は給料が増えたものの臨時収入がなかった状態です。年間収入を比べれば大きく減りますが、毎月の仕事まで半分になったわけではありません。
したがって、今回の純利益47.3%減を「発電事業が半分近く弱くなった」と説明するのは正確ではありません。
営業利益は11.7%増えた
通常の事業活動から生じた営業利益は、324億77百万円から362億82百万円へ11.7%増えました。
ただし、J-POWERは出資先の海外発電所も多く、継続的な海外事業から得る利益の一部も「持分法による投資利益」として営業利益の外側に計上されます。営業利益だけで、J-POWERの通常事業すべてを表せるわけではありません。
主な売上増加要因は次のとおりです。
- 火力発電所の利用率が43%から49%へ上昇
- 卸電力市場への販売単価が上昇
- タイで販売電力量が増加
ただし、営業利益が増えたから、すべての発電事業が順風満帆というわけでもありません。
発電事業と海外事業では燃料費が増え、為替差損と支払利息も増加しました。売上が走り出すと、燃料費も横から追いかけてくるのが電力事業の難しいところです。
水力は減少、火力は増加
国内の販売電力量を種類別に見ると、明確な差が出ました。
| 項目 | 今回 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 再生可能エネルギー | 27億kWh | -16.2% |
| 火力 | 77億kWh | +16.0% |
| 卸市場等から調達した電力 | 26億kWh | -27.2% |
| 発電事業合計 | 131億kWh | -3.3% |
水力出水率は前年同期の105%から94%へ低下しました。
水力出水率は、水力発電に使える水の量を平年と比べる目安です。数字が下がると、水力発電所でつくれる電気も減りやすくなります。
雨は決算説明会でお願いして増やせないため、水力発電には天候による変動が避けられません。
その一方、火力発電所の利用率が上がり、火力の販売電力量は16.0%増えました。水力の減少を火力が補う構図です。
発電事業は7.1%増収でも1.8%減益
発電事業の売上高は、火力の利用率上昇や卸電力市場への販売単価上昇により、7.1%増の1,927億円となりました。
しかし、セグメント利益は1.8%減の201億円です。
燃料費や他社から購入した電力の費用が増え、販売粗利が低下しました。
販売電力量や販売単価が上がっても、燃料費が同時に増えれば利益は残りにくくなります。今回の発電事業は、「売上は増えたが、レジを閉めた後に残る利益は少し減った」という内容です。
海外はタイが伸びたが、利益は反動減
海外事業の販売電力量は、タイで増加したことなどにより9.7%増の38億kWhでした。
| 海外事業 | 今回 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 664億円 | +33.8% |
| セグメント利益 | 150億円 | -67.7% |
売上高が33.8%増えた一方、利益は67.7%減っています。
この大きな差も、前年の米国火力発電事業の持分譲渡益が今期はないことが主因です。
「海外の電気が売れなくなって利益が3分の1になった」のではありません。タイの販売量は増えており、通常の販売活動と前年の一時的な利益を分けて確認する必要があります。
送変電と電力周辺事業は減益
送変電事業は、売上高が0.1%減の123億円、利益が24.6%減の19億円でした。支払利息の増加などが影響しています。
電力周辺関連事業は、豪州の炭鉱権益を持つ子会社で円安の影響があり、売上高は9.0%増の172億円です。一方、売上原価の増加などで利益は33.3%減の18億円でした。
連結全体が営業増益でも、すべての事業が増益だったわけではありません。
通期予想は変更なし
会社は2027年3月期の通期業績予想を変更していません。
| 項目 | 通期予想 | 前期比 | 1Q進捗率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆3,800億円 | +16.7% | 20.3% |
| 営業利益 | 1,250億円 | +23.8% | 29.0% |
| 経常利益 | 1,250億円 | -21.2% | 31.6% |
| 親会社株主帰属純利益 | 810億円 | +38.4% | 33.9% |
| 1株利益 | 460.21円 | ― | ― |
第1四半期の純利益進捗率は33.9%です。
ただし、電力事業は季節、降水量、燃料価格、発電所の稼働状況などで四半期ごとの利益が変わります。第1四半期を単純に4倍して「通期は計画を大きく超える」と判断しない方が安全です。
また、通期の経常利益が21.2%減る一方、純利益が38.4%増える予想なのは、前年に約540億円の特別損失を計上した反動もあります。
前年は豪州事業、大間原子力発電所、高砂火力発電所、風力開発事業などで特別損失が発生しました。今期予想には同規模の特別損失を前提としていません。
四半期では前年の臨時利益がなくなり減益、通期では前年の臨時損失がなくなる前提で純利益増。この二つが同時に存在するため、J-POWERの数字は少しややこしく見えます。
年間配当は105円、前期から5円増配予定
配当予想は次のとおりです。
| 年度 | 中間 | 期末 | 年間 |
|---|---|---|---|
| 2026年3月期 | 50円 | 50円 | 100円 |
| 2027年3月期予想 | 50円 | 55円 | 105円 |
年間配当は前期から5円増える予定です。
ただし、105円は7月31日の第1四半期決算で新しく引き上げた予想ではありません。会社は5月12日に示した配当予想を据え置いています。
予想1株利益460.21円に対する配当105円の割合は、単純計算で約22.8%です。
J-POWERは、利益水準や財務状況などを踏まえ、総還元性向30%を目安に安定的・継続的な還元充実を目指しています。中期経営計画2024-2026では、1株100円を下限とする方針も示してきました。
200億円の自社株買い後、6,713,200株を消却
J-POWERは2025年9月から2026年3月にかけて、6,713,200株を約200億円で取得しました。
その全株を2026年5月15日に消却しています。消却前の発行済株式総数に対する割合は3.7%でした。
自己株式の消却は、会社が買い戻した株を消すことです。発行済株式数が減るため、将来の利益が同じなら1株当たり利益を押し上げる方向に働きます。
ただし、今回の第1四半期に新しい自社株買いを発表したわけではありません。前年度に実施した株主還元の完了として整理します。
有利子負債は1兆9,617億円へ増加
第1四半期末の財政状態は次のとおりです。
| 項目 | 2026年6月末 | 前期末 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 総資産 | 3兆8,376億円 | 3兆7,397億円 | +979億円 |
| 純資産 | 1兆5,599億円 | 1兆5,345億円 | +254億円 |
| 自己資本比率 | 37.3% | 37.6% | -0.3ポイント |
| 有利子負債 | 1兆9,617億円 | 1兆8,832億円 | +785億円 |
総資産が増えた主な理由は、米国チャージャー太陽光発電所の建設進捗、ラオス水力発電事業への出資、円安などです。
有利子負債のうち3,500億円は、海外事業のノンリコースローンです。
ノンリコースローンは、原則として対象プロジェクトの資産や収益を返済原資とする借入れです。すべてがJ-POWER本体の通常借入れと同じ性格ではありません。
それでも、支払利息は前年同期の68億16百万円から86億12百万円へ増えています。大型投資が将来の利益につながるか、金利負担を吸収できるかは重要な確認点です。
8月3日の株価は一時4.6%安からプラス引け
2026年8月3日の株価は次のとおりです。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 前日終値 | 3,800円 |
| 始値 | 3,629円 |
| 高値 | 3,822円 |
| 安値 | 3,627円 |
| 終値 | 3,819円 |
| 前日比 | +19円(+0.50%) |
| 出来高 | 1,133,400株 |
始値は前日終値より171円安く、安値では約4.6%下落しました。しかし、その後は戻して高値に近い3,819円で取引を終えています。
朝は大きく揺れましたが、終わってみれば前日比プラスです。株価まで決算の数字と同じく、少し忙しい1日でした。
ただし、1日の値動きには相場全体、金利、為替、需給なども影響します。すべてを決算への評価と断定しません。
PER8.30倍、PBR0.47倍、配当利回り2.75%
8月3日終値を基準にした主な指標は次のとおりです。
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 終値 | 3,819円 |
| 100株購入額 | 381,900円 |
| 時価総額 | 約6,734億円 |
| 予想PER | 8.30倍 |
| 実績PBR | 0.47倍 |
| 予想配当利回り | 2.75% |
| 年初来高値 | 4,514円(4月2日) |
| 年初来安値 | 3,185円(2月3日) |
予想PERは、終値3,819円を会社予想1株利益460.21円で割ると約8.30倍です。
PBRも0.47倍で、数値だけを見ると利益や純資産に対して株価は低く見えます。
一方、年間配当105円を終値3,819円で割った予想配当利回りは約2.75%です。
増配予定ではありますが、現在の日本株市場で「高配当株」を前面に出す水準とは言いにくいでしょう。今回は「高配当株」ではなく、「配当105円」と表現するのが正確です。
PERやPBRが低いことだけで、割安と断定することもできません。市場は次のような不確実性を織り込んでいる可能性があります。
- 火力発電の燃料価格と脱炭素対応
- 大間原子力発電所の建設費と稼働時期
- 海外プロジェクトの工事費と収益性
- 有利子負債と支払利息
- 為替変動
- 水力発電を左右する降水量
年初来高値4,514円に対して現在は約15.4%下、年初来安値3,185円からは約19.9%上です。底値圏とも高値圏とも言い切りにくい位置にあります。
今後の確認ポイント
次回以降の決算では、次の項目を確認します。
1.燃料費と発電事業の利益率
火力の販売量が増えても、燃料費や購入電力料が増えれば利益は残りません。発電事業の増収が増益へつながるかを確認します。
2.水力出水率
水力発電は燃料を燃やさない強みがありますが、降水量に左右されます。出水率が平年水準へ戻るかがポイントです。
3.タイを中心とする海外事業
前年の米国事業売却益という比較要因が薄れた後、タイなどの通常事業がどの程度利益を生むかを見ます。
4.為替と金利
円安は海外資産や収益の円換算を押し上げる一方、為替差損が発生する場合もあります。借入れ増加に伴う支払利息にも注意します。
5.大型投資の進捗
米国太陽光、ラオス水力、大間原子力などの投資が、計画どおり稼働資産へ変わるかを確認します。
6.配当と追加還元
年間105円が維持されるかに加え、総還元性向30%を目安とする方針のもとで、追加の株主還元があるかも確認項目です。
まとめ
J-POWERの2027年3月期第1四半期をまとめます。
- 売上高は12.0%増
- 営業利益は11.7%増
- 経常利益は45.9%減
- 純利益は47.3%減
- 大幅減益の主因は、前年の米国火力発電事業の持分譲渡益の反動
- 火力の販売電力量は16.0%増、水力など再生可能エネルギーは16.2%減
- 発電事業は7.1%増収でも1.8%減益
- 通期業績予想は変更なし
- 年間配当予想は105円で変更なし
- 有利子負債は1兆9,617億円
- 8月3日終値は3,819円
- 予想PER8.30倍、PBR0.47倍
- 予想配当利回りは2.75%
今回の純利益47%減は事実ですが、本業まで47%弱くなったわけではありません。
その一方で、営業利益が増えたことだけを見て全面的に安心できる決算でもありません。発電事業では燃料費が増え、水力は天候の影響を受け、有利子負債も増加しています。
J-POWERを見るときは、「通常の発電事業」「前年だけの臨時利益」「大型投資と負債」を別々に確認することが大切です。
参考資料
- J-POWER「2027年3月期 第1四半期決算説明資料」
https://www.jpower.co.jp/ir/pdf/260731presentation.pdf - J-POWER「2027年3月期 第1四半期決算短信」
https://www.jpower.co.jp/news/pdf/kessan2027-1/all.pdf - J-POWER「2026年3月期 決算短信」
https://www.jpower.co.jp/news/pdf/kessan2026-4/all.pdf - J-POWER「中期経営計画2024-2026」
https://www.jpower.co.jp/ir/management/plan/ - J-POWER「自己株式の取得状況及び取得終了に関するお知らせ」
https://www.jpower.co.jp/news/2026/03/news260325.html - J-POWER「自己株式の消却完了に関するお知らせ」
https://www.jpower.co.jp/news/2026/05/news260515_1.html - Yahoo!ファイナンス「J-POWER(9513)」
https://finance.yahoo.co.jp/quote/9513.T