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ホテル株、インバウンドで儲かってる?|上場4社の最新決算で確認

本記事は2026年8月16日時点で公表されている各社の決算短信・決算説明資料をもとに作成しています。株価・指標は2026年8月14日(金)終値基準です。特定の銘柄の購入や売却を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

はじめに|ニュースは「好調」、決算はどうか

「インバウンドでホテルが満室」「客室単価が過去最高」。こういうニュースを毎日のように見かけます。

では、ホテルの株を持っている人は儲かっているのでしょうか。

確かめる方法はひとつです。決算を見ることです。売上ではなく、利益を見る。

今回は、ホテルが本業の上場4社について、最新の決算を並べて確認しました。すべて公式の決算短信・決算説明資料から数字を拾い、比率は自分で計算し直しています。

  • 帝国ホテル(9708)
  • リゾートトラスト(4681)
  • 藤田観光(9722)
  • ロイヤルホテル(9713)

この記事の結論

先に答えを出します。

4社とも増収でした。でも、営業利益が増えたのは1社だけです。

そして、その1社(リゾートトラスト)の利益は、ホテルではなく会員権から出ていました。

「インバウンドで儲かっている」というニュースと、投資家が受け取る利益の間には、はっきりしたズレがあります。順番に見ていきます。

その前に|有名ホテルは、ほとんど買えない

ホテル株の話をするとき、最初に知っておきたいことがあります。

名前を知っているホテルの多くは、株式市場に上場していません。

  • ホテルオークラ
  • ホテルニューオータニ
  • パレスホテル
  • 星野リゾート

御三家と呼ばれる3つのうち、上場しているのは帝国ホテルだけ。星野リゾートも会社そのものは上場していません。

つまり「インバウンドでホテルが儲かっているらしいから買ってみよう」と思っても、選べる先はかなり限られているのです。今回の4社は、その数少ない選択肢ということになります。

業界の全体像|市場は6兆5,000億円、でも稼働率には差がある

個別の会社に入る前に、業界全体の数字を押さえておきます。

日経『業界地図 2027年度版』によると、全国の旅館・ホテル市場の規模は6兆5,000億円(2025年度推計、帝国データバンク)。決して小さくない市場です。

そして観光庁のデータとして、こう紹介されています。

  • シティホテルの稼働率は75%
  • リゾートホテルの稼働率は57%
  • それぞれ前年を約2〜3ポイント上回った

ここで注目したいのが、シティホテルとリゾートホテルで18ポイントも差があることです。都市部のホテルは埋まっていても、リゾートは半分強しか埋まっていない。

今回の4社で言えば、リゾートトラストは会員制リゾートが主体で、実際にエクシブの稼働率は48.0%、ベイコートは49.2%。リゾートホテルの平均57%よりさらに低い水準でした。この業界全体の構図が、そのまま個社の数字にも出ています。

外資の高級ブランドが続々と入ってくる

もうひとつ、投資家として頭に入れておきたいのが競争環境です。業界地図には、外資系ラグジュアリーブランドの日本進出が並んでいます。

  • カペラホテルグループ(シンガポール)が2025年に日本初進出
  • ラッフルズ(アコー/仏)が2028年に日本進出予定
  • ドーチェスター・コレクション(英)が2028年にアジア初進出。東京駅前のトーチタワーに開業予定

すでにマリオット、ヒルトン、ハイアット、フォーシーズンズ、アマン、ザ・ペニンシュラ、マンダリン オリエンタルなどが日本で展開しています。

高い単価を取れる客層をめぐる競争は、これから激しくなる。今回の記事で見ていく「単価の上昇で稼ぐ」というやり方が、いつまで続けられるのか。ここは次の決算以降を見るうえでの論点になります。

なお、ここまでの数字は業界地図(二次資料)に載っているものです。ここから先の個別企業の数字は、すべて各社の公式資料から確認しています。

ホテル株を見るときの基本指標「RevPAR」

もうひとつ、覚えておくと便利な指標を紹介します。RevPAR(レブパー)です。

日本語では「客室1室あたり収益」。計算式はこうです。

RevPAR = ADR(エーディーアール=平均客室単価)× OCC(オーシーシー=客室稼働率)

たとえば、1泊3万円の部屋が7割埋まっていれば、RevPARは2万1,000円。1泊2万円の部屋が9割埋まっていれば、RevPARは1万8,000円。

単価が高くても、空室が多ければ収益は伸びない。逆に単価が安くても、満室に近ければ稼げる。この両方を1つの数字にまとめたのがRevPARです。ホテルの収益力を見るときの、いちばん基本的なものさしになります。

なぜこれを紹介するかというと、今回の4社を見るとADRとOCCが逆方向に動いているからです。単価は上がっているのに、稼働率は下がっている会社がある。片方だけを見ると判断を誤ります。

ただし残念なことに、今回の4社でADRと稼働率を開示しているのは、リゾートトラストだけでした。帝国ホテルは決算補足資料そのものを作っておらず、ロイヤルホテルも部門別の売上までしか出していません。藤田観光は「ADRが上昇した」と文章では書いていますが、数値は公表していません。

ですから今回はRevPARで4社を並べることができません。開示の姿勢そのものも、投資家が会社を見るときの材料のひとつだと思います。

4社の最新決算

まず注意点をひとつ。藤田観光だけ決算期が12月です。今回の数字は1月~6月の6か月分で、他3社の3か月分(4月~6月)とは期間が違います。金額の大小は比べられないので、増減率で見てください。

会社 対象期間 売上高 営業利益 最終利益
帝国ホテル 4-6月(3か月) 148億円 +9.0% 7.2億円 △6.1% 2.9億円 △65.4%
ロイヤルホテル 4-6月(3か月) 76億円 +4.9% 4.6億円 △32.0% 3.6億円 △22.6%
藤田観光 1-6月(6か月) 408億円 +2.0% 63億円 △8.8% 80億円 +77.4%
リゾートトラスト 4-6月(3か月) 613億円 +16.0% 81億円 +78.4% 55億円 +79.1%

4社とも増収。でも営業利益が増えたのはリゾートトラストだけです。

営業利益率も出しておきます。

会社 営業利益率
藤田観光 15.38%
リゾートトラスト 13.25%
ロイヤルホテル 6.03%
帝国ホテル 4.83%

では、なぜ売上が伸びているのに利益が減るのか。1社ずつ中身を見ていきます。

帝国ホテル|見出しは減益、でも本業は増益

帝国ホテルの第1四半期は、売上高148億円(+9.0%)、営業利益7億1,600万円(△6.1%)、最終利益2億8,600万円(△65.4%)でした。

ニュースの見出しだけを見ると「大幅減益」に見えます。でも、中身を開けると景色がまったく違いました。

セグメント 売上高 前年同期比 営業利益
ホテル事業 146億2,600万円 +8.5% 15億3,800万円(+16.4%)
不動産賃貸事業 1億8,900万円 +90.5% △2億2,600万円(営業損失)

ホテル事業の営業利益は16.4%の増益です。全社が減益になったのは、不動産賃貸事業で2億2,600万円の営業損失が出たから。会社の説明によると、タワー館の営業再開にあたっての設備補修等の費用を計上したためです。

そして最終利益が65.4%も減った理由も、短信にはっきり書かれています。「法人税等調整額の計上により」。税金の会計処理によるもので、稼ぐ力が落ちたわけではありません。

「増収減益」「最終利益65%減」という見出しだけで判断すると、事実を取り違えます。

帝国ホテルは今期、30年ぶりの新規ホテルとなる「帝国ホテル京都」を開業しました。祇園町(ぎおんまち)の弥栄会館(やさかかいかん)の一部を保存・活用したホテルです。

また、帝国ホテル東京の建て替えについては、タワー館の解体工事着工を2030年度末頃に目指すと変更しています。より質の高い事業計画の検討に時間が必要と判断したためです。

通期予想は据え置きで、営業利益24億円(+12.8%)と増益を見込んでいます。ただしここに大きな注意点があります。

上期(4~9月)の営業利益予想は「0円」です。

これ、意味を確認しておきましょう。第1四半期(4~6月)で7億1,600万円の営業黒字を出しています。それなのに上期のトータルが0円ということは、第2四半期(7~9月)で7億円の赤字を出す計画ということになります。

そして通期は24億円の黒字予想。つまり下期(10~3月)だけで24億円を稼ぐという前提です。

ホテルは季節性のある商売なので、この形自体が異常というわけではありません。ただ、第1四半期の進捗率29.8%という数字だけを見て「順調」と判断するのは早いということです。会社自身が上期は利益ゼロだと言っているのですから。

同じことが次に見るロイヤルホテルにも当てはまります。両社とも、勝負は下期です。

なお帝国ホテルは、決算補足説明資料そのものを作っていません。決算説明会も開催していません。ですから稼働率や客室単価は開示されておらず、他社と比べることができません。

ロイヤルホテル|客室売上+17.2%、でも営業利益は32%減

リーガロイヤルホテルを運営するロイヤルホテルは、今回いちばんわかりやすい形が出ました。

第1四半期は、売上高76億1,800万円(+4.9%)、営業利益4億5,900万円(△32.0%)、最終利益3億6,300万円(△22.6%)です。

部門別の売上を見てください。

部門 前年同期 当期 増減率
客室 33億6,700万円 39億4,500万円 +17.2%
宴会 14億5,000万円 13億9,900万円 △3.5%
食堂 9億7,100万円 10億900万円 +3.9%
その他 14億6,900万円 12億6,300万円 △14.0%

客室の売上は17.2%も伸びています。インバウンドの効果は確実に出ている。それでも営業利益は32%の減益です。

会社は事業環境をこう説明しています。

インバウンド消費の増加等の好影響を受ける一方で、中国政府による日本渡航自粛要請や中東情勢の不安定化の影響、原材料費・光熱費・人件費をはじめとした各種コストの上昇により、引き続き厳しい事業環境下に置かれております

売上が伸びても、コストがそれ以上に増えている。これがホテル業界のいまの姿です。

ロイヤルホテルは今期、2026年4月に「リーガロイヤルリゾート沖縄北谷(ちゃたん)」(全209室)と「アンカード・バイ・リーガ 大阪なんば」を開業しました。2029年3月末頃には北海道千歳に「リーガグラン千歳(ちとせ)」を開業し、北海道へ初進出することも発表しています。2035年までにグループ35ホテルが目標です。

こちらも通期予想は据え置きですが、上期(4~9月)の営業利益予想は△1億円の赤字。帝国ホテルと同じく、下期に大きく偏った計画です。

藤田観光|最終利益+77.4%の正体

ホテル椿山荘東京(ちんざんそうとうきょう)やワシントンホテルを運営する藤田観光は、中間期(1~6月)で売上高407億5,500万円(+2.0%)、営業利益62億7,000万円(△8.8%)、中間純利益80億1,500万円(+77.4%)でした。

営業利益は減っているのに、最終利益は77%増。またこのパターンです。

理由は短信にはっきり書かれています。「投資有価証券の売却があり」。キャッシュフロー計算書を見ると、投資有価証券の売却による収入が87億6,700万円計上されています。

本業ではなく、持っていた株を売った利益です。

セグメント別に見ると、こうなっています。なお「リゾート」は箱根小涌園(こわきえん)などを指します。

セグメント 売上高 前年同期比 営業利益 前年同期比
WHG事業(ワシントンホテル等) 243億7,000万円 △0.9億円 52億7,300万円 △7億5,800万円
ラグジュアリー&バンケット(椿山荘等) 104億4,400万円 +6.6億円 9億5,600万円 +2億900万円
リゾート(箱根小涌園など) 52億1,900万円 +1.2億円 6,800万円 △4,100万円

主力のWHG事業が7億5,800万円の減益。理由は客室改装による売り止めです。「東京ベイ有明ワシントンホテル」の客室・ロビー改装、「キャナルシティ・福岡ワシントンホテル」の4月からの全館休館などで、延べ約10万室の売り止め影響が出ました。加えて改装に伴う一時費用と減価償却費も増えています。

10万室というのは相当な数です。売る部屋がなければ、当然売上は立ちません。将来のための投資なので悪い話ではありませんが、その間は利益が減る。投資家としては、この期間をどう見るかということになります。

一方で明るい材料もありました。ラグジュアリー&バンケット事業(ホテル椿山荘東京など)は2億900万円の増益です。会社の説明によると、伸びたのは3つの部門でした。

  • 婚礼部門:料理・飲物・装花(そうか)などの商品力を強化し、施行件数(せこうけんすう)と単価がどちらも増加
  • 料飲部門:慶事(けいじ)需要の高まりで利用人数が増加。アフタヌーンティーのコラボ企画も寄与
  • 宿泊部門:海外OTA(オーティーエー=オンライン旅行会社)でのプロモーションによりインバウンド宿泊者が増加

ここは注目してよいところです。婚礼や宴会は、インバウンドとは関係のない国内需要。ホテル椿山荘東京では新しい宴会場も建設中で、会社は今後の収益拡大を狙っています。

インバウンド一本足ではない収益源を持っている、というのは強みになり得ます。

「訪日外国人数は前年と同水準」

そしてこの記事でいちばん重要かもしれない一文が、藤田観光の短信にあります。

ホテル・観光業界においては、中東情勢等が不透明であるものの、訪日外国人数は前年と同水準となりました

インバウンドは「増え続けている」のではなく、「前年と同じ水準」。会社自身がそう書いています。

では何が増収を支えたのか。会社は「欧米豪からのインバウンド需要獲得に伴うADR(エーディーアール=客室平均単価)の上昇」と説明しています。人数ではなく、単価です。

藤田観光は通期予想を上方修正しました。営業利益を120億円から132億円(+10.0%)へ引き上げています。

ただし忘れてはいけないのが、前期の営業利益実績は137億9,500万円だということ。上方修正はされましたが、前期比では減益の計画です。

なお藤田観光は2026年1月1日付で1株を5株にする株式分割を実施しています。過去の株価や配当と比べるときは調整が必要です。

リゾートトラスト|唯一の増益。でも稼いでいるのはホテルではない

4社で唯一、営業増益だったのがリゾートトラストです。しかも大幅増益でした。

第1四半期は売上高612億6,100万円(+16.0%)、営業利益81億1,600万円(+78.4%)、当期利益54億6,700万円(+79.1%)。第1四半期としての売上高・営業利益・経常利益はいずれも過去最高です。

ここだけ見ると「インバウンドでホテルが大儲け」に見えます。でも、セグメントを開けると別の会社の顔が出てきます。

セグメント 売上高 前年同期比 営業利益 前年同期比
会員権 188億9,200万円 +46.8% 69億2,000万円 +72.7%
ホテルレストラン 274億7,600万円 +5.0% 10億9,300万円 +20.6%
メディカル 147億100万円 +8.3% 22億1,800万円 +21.8%

営業利益の約7割(67.6%)は会員権事業から出ています。ホテルレストランは約1割(10.7%)にすぎません。

売上ではホテルレストランが274億円と最大なのに、利益では会員権に大きく負けている。ホテルレストランの営業利益率は3.98%です。

会員権の1Q契約高は352億円で、6期連続の過去最高更新。この会社の稼ぎ頭は、ホテルの宿泊ではなく会員権の販売なのです。

「ホテル株」として買うと、中身が違う。ここは押さえておきたいところです。

稼働率は下がっている

リゾートトラストは稼働率と単価を開示しています。ここも興味深い数字でした。

施設 稼働率(前年→当期) 消費単価(前年→当期)
エクシブ 51.2% → 48.0% 20,773円 → 21,778円
ベイコート 52.3% → 49.2% 34,992円 → 36,474円
トラスティ 89.4% → 88.8% 11,338円 → 12,247円

主力のエクシブとベイコートは、稼働率が下がっています。それでも増収なのは、単価が上がったから。会社自身が「ホテル稼働はやや苦戦したものの単価の上昇効果が貢献」と書いています。

ここで、さきほど紹介したRevPARの考え方を使ってみましょう。エクシブは稼働率が51.2%から48.0%へ3.2ポイント下がり、単価が20,773円から21,778円へ4.8%上がりました。単純にかけ算すると、1室あたりの収益はほぼ横ばいという計算になります。

つまりエクシブに関して言えば、単価の値上げで稼働率の低下をなんとか埋めたという状態です。「単価が上がったから好調」とは言い切れません。

そして冒頭で見た業界全体の数字を思い出してください。リゾートホテルの稼働率は業界平均で57%でした。エクシブの48.0%、ベイコートの49.2%は、業界平均よりさらに低い水準です。リゾートは埋まりにくいという業界の構図が、そのまま数字に出ています。

配当は年36円(前年比2円増配)で、過去最高を予定しています。

ここまでをまとめると

4社を並べて見えてきたのは、こういう構図です。

1. インバウンドの人数は、もう伸びていない
藤田観光が「訪日外国人数は前年と同水準」と明記しています。

2. 増収を支えているのは「単価」
藤田観光はADR上昇、リゾートトラストは稼働が下がるなか単価上昇、ロイヤルホテルは客室売上+17.2%。人数ではなく単価で稼いでいます。

3. その単価上昇を、コストが食っている
人件費、光熱費、原材料費。加えて各社とも改装や新規開業への投資が重なっています。だから増収でも営業減益になる。

4. 最終利益は、本業と関係ないところで動いている
帝国ホテルは税金で△65.4%、藤田観光は株の売却益で+77.4%。最終利益の見出しだけでは、その会社の実力はわかりません。

では、この4社をどう見分けるか

同じ「ホテル株」でも、4社は性格がかなり違いました。整理するとこうなります。

会社 どこで稼いでいるか 見るべき数字
帝国ホテル ホテル事業(営業利益率10.52%) 下期の営業利益、京都の立ち上がり
ロイヤルホテル 客室(売上の51.8%) コストの上昇が止まるか
藤田観光 ワシントンホテル+婚礼・宴会 改装明けのWHG事業、国内需要
リゾートトラスト 会員権(営業利益の67.6%) 会員権の契約高

リゾートトラストだけ、見るべき数字が「宿泊」ではありません。この会社の業績を占うなら、稼働率や客室単価より、会員権が何億円売れたかを見るほうが早い。

一方、藤田観光は婚礼や宴会という国内需要の柱を持っています。インバウンドが止まったときに効いてくるのは、こういう部分です。

「ホテル株」とひとくくりにせず、その会社が実際にどこでお金を稼いでいるかを確かめる。セグメント情報は決算短信の後ろのほうに載っていますが、ここを開けるかどうかで見え方がまったく変わります。

株価はどう動いたか

株価の比較には工夫が必要でした。決算発表日が7月30日から8月12日まで2週間もばらついているためです。「全社出そろった後」で揃えると1営業日しか取れません。

そこで、全社の決算発表前(7月29日終値)から、全社発表後(8月14日終値)までで比べます。この期間に4社すべての決算発表が入っています。

会社 7/29終値 8/14終値 騰落率
藤田観光 1,985円 2,333円 +17.53%
(参考)日経平均 61,434.19 68,713.80 +11.85%
ロイヤルホテル 905円 901円 △0.44%
リゾートトラスト 1,855.5円 1,831.5円 △1.29%
帝国ホテル 1,000円 985円 △1.50%

ここが今回いちばん考えさせられる部分です。

同じ期間に日経平均は11.85%上がっています。それなのに、4社のうち3社は下落しました。

上回ったのは藤田観光だけ。通期の上方修正を出した会社です。

参考までに、各社の決算発表日と翌営業日の動きも出しておきます。

会社 発表日終値 翌営業日終値 騰落率
帝国ホテル(7/30発表) 1,000円 1,008円 +0.80%
ロイヤルホテル(8/5発表) 906円 902円 △0.44%
藤田観光(8/6発表) 1,972円 2,235円 +13.34%
リゾートトラスト(8/12発表) 1,905.5円 1,860.0円 △2.39%

ただし、発表が場中だったか引け後だったかを確認できていないので、この表は参考値です。そして決算が原因で株価が動いたとは断定できません。株価は相場全体、為替、金利、需給、他の材料でも動きます。

財務は4社ともしっかりしている

ここまで利益の話ばかりしてきましたが、財務の状態も確認しておきます。

会社 自己資本比率 前期末
ロイヤルホテル 61.6% 60.6%
帝国ホテル 60.5% 59.9%
藤田観光 43.4% 37.3%
リゾートトラスト

4社とも自己資本比率は改善しています。特に藤田観光は37.3%から43.4%へ6ポイント以上高まりました。投資有価証券の売却益で利益剰余金が71億円増えたことと、借入金の返済を進めたことが効いています。

帝国ホテルとロイヤルホテルは60%台。ホテルは装置産業で借入が重くなりがちですが、この2社に関しては財務の余裕があります。

つまり、いま利益が出にくいのは財務が苦しいからではありません。単価は上げられているが、それ以上にコストが増えている、という構造の問題です。ここは分けて理解しておきたいところです。

リゾートトラストの通期計画も見ておく

もうひとつ補足しておきます。リゾートトラストの通期計画です。

セグメント 通期営業利益計画 前期比
会員権 242億円 △5.3%
メディカル 90億円 +8.5%
ホテルレストラン 70億円 +24.2%

全社の通期営業利益計画は310億円(+6.3%)です。

面白いのは、稼ぎ頭の会員権は5.3%の減益計画なのに、ホテルレストランは24.2%の増益計画になっていること。会社は今期、ホテル部門の収益改善を見込んでいるわけです。

第1四半期のホテルレストランの営業利益は10億9,300万円。通期70億円に対する進捗率は15.6%です。リゾート施設は夏休みシーズンの第2四半期に稼ぐ構造なので、この数字だけで判断はできませんが、次の決算でここが伸びているかどうかは確認したいポイントです。

なお、リゾートトラストの通期売上高計画は2,550億円で3.0%の減収です。これは会計上、未開業物件の販売収益が繰り延べられることによるもので、事業が縮小するという意味ではありません。会社は「評価売上高」「評価営業利益」という独自の指標で実力値を示しており、そちらでは評価営業利益365億円(+11.3%)を計画しています。

ただしこの「評価営業利益」は会社独自の指標です。他社の営業利益と並べて比べることはできません。

PER・PBR・配当利回り

2026年8月14日終値で計算した指標です。

会社 株価 予想PER PBR 予想配当利回り 配当性向 時価総額
帝国ホテル 985円 63.1倍 2.38倍 0.61% 38.4% 1,170億円
リゾートトラスト 1,831.5円 18.5倍 2.39倍 1.97% 3,975億円
藤田観光 2,333円 11.2倍 3.25倍 0.86% 9.6% 1,424億円
ロイヤルホテル 901円 17.9倍 0.78倍 0.67% 11.9% 138億円

※PERは会社予想EPSから計算しています。リゾートトラストのみ通期EPSが資料に明示されていないため、株探の掲載値を使用しました。ロイヤルホテルはA種優先株式(非上場)があるため、1株あたりの価値の評価は単純ではありません。

ここで目立つのは3点です。

ひとつ、帝国ホテルのPER63.1倍。通期の最終利益予想が18億5,000万円と小さい(△56.9%)ため、こうなります。利益の水準に対して株価が高い状態です。

ふたつ、配当利回りはすべて2%未満。前回の自動車株では4%台が3社ありましたが、ホテル株はまったく違います。インカムを狙う投資先ではないということです。

みっつ、PBR1倍割れはロイヤルホテルだけ。しかも時価総額138億円と小型です。

次の決算で確認したい項目

帝国ホテル

  • 上期の営業利益予想「0円」を守れるか(Q1で7億円の黒字なので、Q2で使い切る計画)
  • 帝国ホテル京都の立ち上がり
  • 不動産賃貸事業の営業損失が続くか

ロイヤルホテル

  • 上期の営業赤字△1億円の予想どおりか
  • 客室売上の伸び(+17.2%)が続くか
  • 沖縄・大阪の新規2ホテルの寄与

藤田観光

  • 客室改装の売り止め影響が終わり、WHG事業が戻るか
  • 上方修正した営業利益132億円に届くか(前期実績137億円には届かない計画)
  • 訪日外国人数が「前年と同水準」から動くか

リゾートトラスト

  • 会員権の契約高が7期連続で過去最高を更新できるか
  • エクシブ・ベイコートの稼働率が戻るか
  • ホテルレストラン事業の通期計画(営業利益70億円、+24.2%)の進み方

まとめ

要点を整理します。

  1. 4社とも増収。でも営業増益は1社だけでした。
  2. その1社(リゾートトラスト)の営業利益の約7割は会員権事業から。ホテルレストランは約1割です。
  3. 帝国ホテルは「増収減益」に見えて、ホテル事業だけなら+16.4%の増益。全社の減益は不動産賃貸事業の損失、最終利益△65.4%は税金の計上によるものです。
  4. ロイヤルホテルは客室売上+17.2%でも営業利益△32.0%。コスト上昇が単価上昇を上回っています。
  5. 藤田観光の最終利益+77.4%は、投資有価証券の売却によるもの。本業の営業利益は8.8%の減益です。
  6. 「訪日外国人数は前年と同水準」と藤田観光が明記しています。伸びているのは人数ではなく単価です。
  7. 帝国ホテルとロイヤルホテルは、上期の営業利益予想が0円と赤字。利益は下期に集中する計画です。
  8. 日経平均が+11.85%上がった期間に、4社中3社が下落しました。
  9. 配当利回りはすべて2%未満。インカム目的の投資先ではありません。

最後に、この記事でいちばんお伝えしたいことを。

「インバウンドが好調」というニュースは、そのまま「ホテル株が儲かる」にはつながりません。

単価は上がっています。でもコストも上がっている。そして最終利益は、税金や株の売却といった本業の外側で大きく動きます。売上ではなく営業利益を見る。セグメントを開けて、どこで稼いでいるか確かめる。そこまでやって、はじめてその会社の姿が見えてきます。

答え合わせは、次の決算に出ます。

主な参照資料

  • 帝国ホテル「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」2026年7月30日
  • ロイヤルホテル「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」2026年8月5日
  • 藤田観光「2026年12月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結)」2026年8月6日
  • リゾートトラスト「2027年3月期 第1四半期 決算説明資料」「決算説明資料 補足資料(3ヵ月情報)」2026年8月12日
  • 株価・日経平均:株探(2026年7月29日・8月14日終値)
  • 業界の全体像および未上場ホテルの位置づけ:日経『業界地図 2027年度版』ホテル(高級・リゾート系)

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コロナショック直前の2020年に投資をスタート。リアルタイムで暴落を経験しながら独学で投資の基礎を習得。 現在の運用総額5,000万円超・年間配当収入120万円超を達成。投資信託・ETF・個別株・米国株など100銘柄超に分散投資し、相場の波に強いポートフォリオを構築中。 高配当株の長期保有と新NISAの積立を組み合わせた"2刀流"スタイルで資産形成を実践。保有銘柄の決算・配当・株価をブログで赤裸々公開しています。YouTubeでも投資情報を発信中!

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