INPEX(1605)とは|日本の基幹エネルギー企業としての全体像
INPEX(証券コード:1605)は、決算短信に「日本の基幹エネルギー企業」と自己定義している大手石油・天然ガス開発企業です。代表取締役社長は上田 隆之氏、決算期は12月で、IFRS(国際財務報告基準)に基づく連結決算を開示しています。
事業の中核は「石油・天然ガスの探鉱・開発・生産(上流/E&P)」で、補足説明資料の地域別開示によると、生産・販売エリアは「日本」「豪州・東南アジア」「欧州」「アブダビ及びその他(中東、NIS諸国等)」の4区分にまたがります。
2026年12月期第1四半期(2026年1月1日〜3月31日)の連結売上収益は5,018億円、親会社の所有者に帰属する四半期利益は1,094億円と、四半期単位で5,000億円規模の売上を計上する大型事業体です(出典:2026年12月期第1四半期決算短信)。
会社の規模感(2026年3月末時点)
| 項目 | 数値 | 備考 |
|---|---|---|
| 資産合計 | 8兆194億円 | 2026年3月31日時点(連結) |
| 資本合計 | 5兆1,227億円 | 同上 |
| 親会社所有者帰属持分 | 4兆8,899億円 | 同上 |
| 親会社所有者帰属持分比率 | 61.0% | 同上 |
| 1株当たり親会社所有者帰属持分(BPS) | 4,207.52円 | 2026年3月31日時点 |
| 期末発行済株式数(自己株式を含む) | 1,259,136,067株 | 2026年Q1末 |
| 期末自己株式数 | 96,946,200株 | 同上 |
| 期中平均株式数(Q1累計) | 1,162,984,491株 | 2026年Q1累計 |
純資産は約4兆8,899億円と巨大で、財務基盤は極めて厚い構造になっています。資源開発という、本質的に巨額の設備投資と長期の回収期間を必要とする事業を、自前のバランスシートで支えられる規模感が特徴です。
※ 株主構成(経済産業大臣の甲種類株式を含む特殊株主構造)の細部、設立経緯(旧帝国石油との統合)、上場区分の沿革等の詳細は、公式IR(コーポレートサイト・有価証券報告書)を参照してください。
事業セグメント|国内O&G・海外O&G(イクシス/その他)・その他(再エネ・CCS・水素)
INPEXは決算短信のセグメント区分として、次の4区分で開示しています。
| セグメント | 主な内容 | 2026年Q1売上収益(外部収益) | 2026年Q1セグメント利益 |
|---|---|---|---|
| 国内O&G | 日本国内の原油・天然ガス、ヨウ素、発電 | 579億円 | 19.6億円 |
| 海外O&G イクシスプロジェクト | 豪州イクシスLNG(上流+下流の合算) | 986億円 | 703億円 |
| 海外O&G その他のプロジェクト | アブダビ・欧州・中東・NIS諸国等の上流 | 3,407億円 | 351億円 |
| その他 | 再生可能エネルギー・電力関連事業、CCS・水素事業 等 | 45億円 | △14.8億円 |
※ セグメント利益は「親会社の所有者に帰属する四半期利益」ベース(決算短信セグメント情報)。連結合計1,094億円との差は調整額34.8億円。
セグメント別の特徴
海外O&G(その他のプロジェクト)が売上規模で最大(Q1で3,407億円)ですが、利益貢献ではアブダビ等の租税負担が大きいため、イクシスプロジェクトが利益面で大きな存在感を示します。2026年Q1のイクシスセグメント利益は703億円と、連結四半期利益1,094億円の約6割強に相当します。
国内O&Gは売上規模では海外に比べて小さいものの、日本のエネルギー安全保障の観点から重要な位置づけです。その他セグメント(再エネ・CCS・水素)は現段階では赤字(Q1で△14.8億円)ですが、中期経営計画上「将来の柱」として位置づけられている事業群です。
セグメント別のROIC(2026年12月期通期予想・5月発表時点)
| セグメント | 油価$83ケース | 油価$70ケース |
|---|---|---|
| 国内O&G | △0.4% | △0.4% |
| 海外O&G イクシス | 9.4% | 7.7% |
| 海外O&G その他 | 9.4% | 7.7% |
| その他(うち再エネ) | △1.5% | △1.4% |
| 連結 | 8.0% | 6.4% |
会社はWACCを6%程度と見込んでおり、油価$83ケースの連結ROIC 8.0%・油価$70ケースの連結ROIC 6.4%は、いずれも資本コストを上回る水準です(出典:2026年12月期Q1決算 補足説明資料)。
主要プロジェクト解説|イクシスLNG・アバディ・国内事業
イクシスLNG(豪州)
INPEXのイクシスLNGプロジェクトは、沖合生産施設(CPF)・沖合生産貯油出荷施設(FPSO)・890kmの輸送パイプライン・陸上ガス液化プラントから構成される統合LNGプロジェクトです。
事業構造は「上流事業」と「下流事業」に分かれており、補足説明資料には次のように記載されています。
- 上流事業:INPEX Ichthys Pty Ltd(IIPL) =イクシス上流権益を67.82%保有
- 下流事業:Ichthys LNG Pty Ltd(ILNGPL) =イクシス下流事業を100%保有(共同支配企業として持分法で会計処理、持分67.82%)
2025年12月期 イクシスプロジェクトの実績
| 項目 | 2025年12月期実績 |
|---|---|
| イクシスプロジェクトセグメント利益 | 2,708億円 |
| セグメント売上収益 | 3,348億円 |
| 持分法による投資損益 | 605億円 |
| 減価償却費 | △1,090億円 |
下流事業会社(ILNGPL、100%ベース)の2025年12月期は、売上収益8,238億円、当期利益892億円、資産合計4兆6,379億円と、子会社単体でも兆円規模のバランスシートを持つ巨大プロジェクトです。
イクシスLNGの出荷カーゴ実績
過去のLNG出荷カーゴ数を見ると、フル稼働期は安定して年間100カーゴ超を継続しています。
| 年 | LNG(カーゴ数) | プラントコンデンセート(陸上) | フィールドコンデンセート(海上) | LPG |
|---|---|---|---|---|
| 2019年 | 104 | 19 | 29 | 27 |
| 2020年 | 122 | 22 | 34 | 34 |
| 2021年 | 117 | 21 | 32 | 32 |
| 2022年 | 112 | 21 | 29 | 30 |
| 2023年 | 129 | 23 | 29 | 34 |
| 2024年 | 116 | 20 | 28 | 30 |
| 2025年 | 112 | 20 | 27 | 30 |
| 2026年1〜4月累計 | 43 | 7 | 11 | 13 |
2026年は年初から安定生産を継続し、年の半ばから後半にかけてBooster Compressor Module(低圧生産設備)稼働に向けた接続・試運転関連作業を予定しています。LNG出荷カーゴ数は年間平均で月10カーゴ程度を見込む計画です(出典:補足説明資料p.13)。
アバディ
「アバディ」は、INPEXの2026年12月期成長投資内訳の中で独立した投資項目として開示されているプロジェクトです(補足説明資料p.4)。2026年度の投資額は600億円(油価$83ケース、5月発表時点)を計画しており、成長軸①(LNG事業を中心とした石油・天然ガス分野の維持拡大)の中で重要な位置づけにあることが分かります。
※ アバディの所在地、権益比率、最新FID時期、生産開始時期等のプロジェクト詳細は、本記事の根拠資料(2026年12月期Q1の決算短信・補足説明資料)には記載がないため、公式IRのプロジェクト紹介ページ・有価証券報告書を参照してください。
国内事業
2026年Q1の国内O&Gセグメントでは、原油178千バレル、天然ガス6,541百万CF(日量73百万CF)、ヨウ素154トン、発電6百万kWhが生産されています(決算短信p.14)。同セグメントの2026年Q1売上収益は579億円、親会社所有者帰属四半期利益は19.6億円です。
※ 国内O&Gのプロジェクト所在地(生産県の内訳)、ガスパイプライン延長、直江津LNG基地等の物流インフラ詳細、海外個別プロジェクトの権益比率は、本記事の根拠資料(2026年12月期Q1の決算短信・補足説明資料)には記載がないため、公式IRの有価証券報告書・プロジェクト紹介ページを参照してください。
直近決算ハイライト|2026年12月期 第1四半期(2026年5月13日発表)
連結損益計算書サマリー
| 項目 | 2025年12月期Q1 | 2026年12月期Q1 | 増減 | 増減率 |
|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 5,368億円 | 5,018億円 | △350億円 | △6.5% |
| 売上原価 | △2,171億円 | △2,302億円 | △130億円 | +6.0% |
| 売上総利益 | 3,197億円 | 2,715億円 | △481億円 | △15.1% |
| 営業利益 | 3,238億円 | 2,782億円 | △456億円 | △14.1% |
| 税引前四半期利益 | 3,353億円 | 2,913億円 | △440億円 | △13.1% |
| 親会社所有者帰属四半期利益 | 1,262億円 | 1,094億円 | △168億円 | △13.4% |
| 基本的1株当たり四半期利益(EPS) | 105.46円 | 94.08円 | △11.38円 | △10.8% |
| 希薄化後1株当たり四半期利益 | 105.38円 | 94.00円 | △11.38円 | - |
外部環境(期中平均)
| 項目 | 2025年Q1 | 2026年Q1 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 期中平均油価(ブレント) | 74.98 $/bbl | 78.38 $/bbl | +3.40 +4.5% |
| 期中平均為替(¥/$) | 152.56円 | 156.96円※3 | 4円40銭の円安(+2.9%円安) |
※32026年Q1の期中平均為替は、補足説明資料記載の156.96円を採用しています。決算短信本文(p.2)では「157円00銭」と表記されており、両者間で4銭程度の差があります。これは小数桁数の丸めによる差で、本記事では小数2桁までの数値(156.96円)を採用しています。
製品別の販売状況
| 製品 | 項目 | 2025年Q1 | 2026年Q1 | 増減率 |
|---|---|---|---|---|
| 原油 | 売上収益 | 3,939億円 | 3,528億円 | △10.4% |
| 販売量 | 34,223千バレル | 33,343千バレル | △2.6% | |
| 海外平均単価 | 75.49 $/bbl | 67.39 $/bbl | △10.7% | |
| 天然ガス(LPG除く) | 売上収益 | 1,361億円 | 1,336億円 | △1.8% |
| 販売量 | 125,583百万CF | 130,018百万CF | +3.5% | |
| 海外平均単価 | 5.16 $/千CF | 5.04 $/千CF | △2.3% |
注目すべきは、期中平均ブレント原油価格は前年同期比+4.5%上昇しているにもかかわらず、当社の海外原油平均単価は△10.7%下落している点です。これは補足説明資料に「市況変動のタイミング差による一時的な価格乖離」「3月油価上昇も遅効性による販売単価下落」と注記されており、出荷タイミングと市況の時間差が要因です(出典:補足説明資料p.6・p.7)。
売上収益の要因別分析(前年同期比 △350億円)
- 販売数量の減少 = △70億円(内訳:原油△101億円、天然ガス+30億円)
- 販売単価の下落 = △494億円(内訳:原油△411億円、天然ガス△82億円)
- 為替(円安) = +128億円(内訳:原油+101億円、天然ガス+27億円)
- その他の売上収益 = +85億円
親会社所有者帰属四半期利益の要因別分析(前年同期比 △168億円)
- 売上収益 △350億円
- 売上原価 △139億円(増加)
- 探鉱費 +16億円(減少)
- 販管費 △14億円(増加)
- その他損益 +3億円(廃鉱関連費用の増加等を含む)
- 持分法損益 △43億円(イクシス減資に伴う為替差益等を含む)
- 法人税等 +273億円(原油の減収・減益に伴う税金費用の減少等)
外部環境(販売単価下落)でマイナスの影響を受ける一方、法人税費用の減少で大幅に相殺しているのが特徴です。資源会社は海外権益に対する高い税率が利益を圧迫する一方、収益悪化時には税負担も比例的に軽減されるため、税前利益と税後利益の動きが連動する構造になっています。
地域別の売上収益(2026年Q1)
| 地域 | 原油 | 天然ガス(LPG除く) | その他 | 小計 |
|---|---|---|---|---|
| 日本 | 2億円 | 519億円 | 57億円 | 579億円 |
| 豪州・東南アジア | 457億円 | 720億円 | 37億円 | 1,215億円 |
| 欧州 | 180億円 | 87億円 | 3億円 | 270億円 |
| アブダビ・その他(中東・NIS諸国等) | 2,888億円 | 8億円 | 10億円 | 2,906億円 |
| その他 | - | 0億円 | 44億円 | 45億円 |
| 合計 | 3,528億円 | 1,336億円 | 153億円 | 5,018億円 |
アブダビ・中東・NIS諸国エリアが売上の約58%を占めており、原油事業の中核地域となっています。豪州・東南アジア(イクシスを含む)は天然ガス売上の比重が高く、地域でみると原油=中東中心、天然ガス=豪州・東南アジア中心という構造が確認できます。
ネット生産量(2026年Q1、千BOE/日)
| 区分 | 原油・コンデンセート・LPG(千BOE/日) | 天然ガス(千BOE/日相当) | 合計(千BOE/日) |
|---|---|---|---|
| 国内O&G | 2(1%) | 15(2%) | - |
| 海外O&G イクシス | 37(10%) | 244(39%) | - |
| 海外O&G その他 | 328(90%) | 376(61%) | - |
| 合計 | 368 | ―※2 | 635(うち天然ガス1,410百万CF/日相当) |
※2合計 635千BOE/日は、原油・コンデンセート・LPG(368千BOE/日)と天然ガス(1,410百万CF/日をBOE換算)を合算した小計です。決算短信p.11の表記に従い、合計列に集約しています。各区分の天然ガス列の数値は、決算短信p.11記載の数値をそのまま転記したものです。
※ 上記は正味経済的取分ベース(生産分与契約反映)。権益比率ベースでは2026年Q1は原油34,732千バレル(日量386千バレル)・天然ガス129,781百万CF(日量1,442百万CF)・合計59,376千BOE(日量660千BOE)と開示されています(決算短信p.11 注4)。集計区分が異なるため両方併記してあります。
2026年12月期通期のネット生産量見通しは、2月時点で655千BOE/日 ⇒ 5月時点で629千BOE/日に修正されています(油価$83ケース、補足説明資料p.14)。
通期業績予想|2026年5月13日発表の修正後数値(レンジ形式)
INPEXは2026年5月13日、中東情勢の不確実性を踏まえて、油価・為替の前提を見直し、通期業績予想をレンジ形式で上方修正しました。
2026年12月期 通期予想(連結、5月発表)
| 項目 | 2月発表予想 | 5月発表(油価$70ケース) | 5月発表(油価$83ケース) |
|---|---|---|---|
| 期中平均油価(ブレント) | 63.0 $/bbl | 70.0 $/bbl | 83.0 $/bbl |
| 期中平均為替(¥/$) | 151.0円 | 154.0円 | 156.0円 |
| 売上収益 | 1兆8,930億円 | 2兆40億円 | 2兆2,910億円 |
| 営業利益 | 9,570億円 | 1兆860億円 | 1兆3,680億円 |
| 税引前利益 | 1兆円 | 1兆1,340億円 | 1兆4,160億円 |
| 親会社所有者帰属当期利益 | 3,300億円 | 3,500億円 | 4,500億円 |
| 基本的1株当たり当期利益(EPS) | - | 300.95円 | 386.94円 |
| ROIC | 6.0% | 6.4% | 8.0% |
| ROE | 7.0% | 7.4% | 9.3% |
| ネットD/Eレシオ | 0.39 | 0.35 | 0.33 |
※ 2月発表予想に対する変動要因は補足説明資料p.8に詳細掲載。たとえば油価$83ケースでは、外部環境(油価・為替)で+1,079億円、PJ要因+94億円・1Q実績差異△195億円等を加減した結果、当期利益は3,300億円 ⇒ 4,500億円へ+1,200億円の上方修正となっています。
上期・下期別の修正後予想
| 区分 | 項目 | 2月予想 | 5月予想(油価$70) | 5月予想(油価$83) |
|---|---|---|---|---|
| 上期 | 売上収益 | 9,710億円 | 1兆440億円 | 1兆870億円 |
| 営業利益 | 4,760億円 | 5,790億円 | 6,280億円 | |
| 親会社所有者帰属当期利益 | 1,500億円 | 1,800億円 | 2,140億円 | |
| 下期 | 売上収益 | 9,220億円 | 9,600億円 | 1兆2,040億円 |
| 営業利益 | 4,810億円 | 5,070億円 | 7,400億円 | |
| 親会社所有者帰属当期利益 | 1,800億円 | 1,700億円 | 2,360億円 |
油価$70ケースでは下期の親会社所有者帰属当期利益が上期1,800億円に対し1,700億円とやや減少する見通しで、下期に向けて利益水準が落ち着く想定です。一方、油価$83ケースでは下期も2,360億円と2,000億円超を見込んでいます。
配当方針と配当推移|累進配当と「総還元性向50%以上」
2026年12月期の配当予想
| 期 | 第1Q末 | 第2Q末(中間) | 第3Q末 | 期末 | 年間合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2025年12月期 実績 | - | 50.00円 | - | 50.00円 | 100.00円 |
| 2026年12月期 予想 | - | 54.00円 | - | 54.00円 | 108.00円 |
※ 上記は普通株式の配当。甲種類株式(非上場、経済産業大臣保有)の配当は、2025年12月期実績40,000円、2026年12月期予想43,200円(中間21,600円+期末21,600円)と別途開示されています(決算短信p.3)。普通株式1株につき400株の割合で2013年10月1日に株式分割を実施した経緯から、甲種類株式の配当額は分割前の普通株式と同等になるよう定款で定められています。
株主還元方針の原本表記
2026年12月期Q1補足説明資料(p.4)では、株主還元方針が以下のように記載されています。
中期経営計画でお示しした「総還元性向 50%以上」及び「累進配当」を堅持する方針
外部環境及び市場の状況を見極めつつ、追加の株主還元を検討
同資料では、「成長を継続することで還元も維持できるという方針のもと、成長投資と株主還元を両立させていく」とも明示されています。
「累進配当」という用語は、INPEX自身が補足説明資料の還元方針スライド内で「累進配当」と表記している原本表記であり、本記事もそれに準じています。
株主還元実績および2026年12月期予想
| 項目 | 2025年度実績 | 2026年度予想(2月時点) | 2026年度予想(5月時点) |
|---|---|---|---|
| 配当総額 | 1,182億円 | 1,256億円 | 1,256億円 |
| 自己株式取得額 | 1,000億円 | 1,000億円 | 1,000億円 |
| 合計 | 2,182億円 | 2,256億円 | 2,256億円 |
| 総還元性向 | 55.4% | 50%以上 | 50%以上 |
2025年度の総還元性向は55.4%と、方針の「50%以上」を上回って実績着地しています。2026年度も50%以上を堅持する方針が明示されています(補足説明資料p.4)。
自己株式取得|2026年Q1で約100億円取得済み
2026年Q1中、INPEXは自己株式取得を9,975百万円(約100億円)実行しています(決算短信p.12 持分変動計算書)。これにより、期末自己株式数は2025年末の93,742,368株から2026年Q1末の96,946,200株へ約320万株増加しました。
2026年通期では、補足説明資料の還元実績表の通り1,000億円の自己株式取得を予定しており、Q1段階で年間計画の約1割の進捗となります。
| 時点 | 期末自己株式数 |
|---|---|
| 2025年12月期末 | 93,742,368株 |
| 2026年12月期Q1末 | 96,946,200株 |
※ 期末自己株式数には役員報酬BIP信託の保有する当社株式(2026年Q1:999,480株、2025年末:1,012,209株)が含まれます。
キャッシュ・フローと成長投資|2026年度8,000億円規模
2026年12月期 キャッシュ・フロー予想(イクシス下流事業会社込み)
| 項目 | 2月発表予想 | 5月発表(油価$70) | 5月発表(油価$83) |
|---|---|---|---|
| 探鉱前営業CF | 8,420億円 | 9,500億円 | 1兆790億円 |
| 投資CF(探鉱投資含む) | △8,620億円 | △7,900億円 | △8,000億円 |
| うち成長投資 | △8,500億円 | △7,900億円 | △8,000億円 |
| 成長軸①(LNG中心の石油・天然ガス維持拡大) | △8,090億円 | △7,770億円 | △7,870億円 |
| 成長軸②(CCS・水素) | △20億円 | △10億円 | △10億円 |
| 成長軸③(再エネ・電力) | △390億円 | △120億円 | △120億円 |
| フリーCF | △200億円 | 1,600億円 | 2,790億円 |
| 財務CF | 190億円 | △1,610億円 | △2,800億円 |
| うち株主還元 | △1,650億円 | △1,750億円 | △2,250億円 |
| 現金及び現金同等物の期末残高 | 2,000億円 | 2,000億円 | 2,000億円 |
成長投資の中身(5月発表時点・油価$83ケース、計8,000億円)
- 維持・更新:2,820億円
- アバディ:600億円
- 探鉱:630億円
- 既存案件増強:2,740億円
- 新規取得(豪州陸上鉱区Beetaloo取得、南西カスピ海石油の持分追加取得など):1,080億円
- 低炭素化ソリューション・再エネ:合計130億円
2026年Q1には、成長軸①関連で豪州陸上鉱区(Beetaloo)の取得、成長軸③関連で南西カスピ海石油の持分追加取得といった主要な実行済み案件が補足説明資料p.4に明示されています。
2月時点の8,500億円計画から5月時点で8,000億円に若干減少していますが、これは「一部期ずれ」によるものとされ、計画の方向性は概ね予定通りと位置づけられています。
Profit Boosterの貢献|2026年度 約850〜1,000億円
補足説明資料p.9では、当期利益の押し上げ要因として「Profit Booster」と呼ばれる仕組みが開示されています。
| 項目 | 2月発表予想 | 5月発表(油価$83) | 5月発表(油価$70) |
|---|---|---|---|
| 投資インセンティブ効果 | 約650億円 | 約450億円 | 約450億円 |
| TAリサイクリング | 約300億円 | 約550億円 | 約400億円 |
| 合計 | 約950億円 | 約1,000億円 | 約850億円 |
同社の説明では、「投資インセンティブ効果」「TAリサイクリング」の2つの仕組みを通じて、通期で約850〜1,000億円規模の当期利益貢献が見込まれています。
財政状態|2026年Q1末
要約連結財政状態計算書(主要項目、2026年Q1末 vs 2025年末)
| 項目 | 2025年12月期末 | 2026年12月期Q1末 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 流動資産 | 1兆1,090億円 | 1兆2,282億円 | +1,191億円 |
| 非流動資産 | 6兆6,261億円 | 6兆7,911億円 | +1,650億円 |
| うち石油・ガス資産 | 3兆8,889億円 | 3兆9,564億円 | +674億円 |
| うち持分法で会計処理されている投資 | 1兆249億円 | 1兆731億円 | +482億円 |
| うち貸付金 | 1兆4,093億円 | 1兆4,396億円 | +303億円 |
| 資産合計 | 7兆7,351億円 | 8兆194億円 | +2,842億円 |
| 流動負債 | 8,396億円 | 9,921億円 | +1,524億円 |
| 非流動負債 | 1兆8,726億円 | 1兆9,045億円 | +318億円 |
| 資本 | 5兆229億円 | 5兆1,227億円 | +998億円 |
| うち在外営業活動体の換算差額 | 8,764億円 | 1兆247億円 | +1,483億円 |
| うち非支配持分 | 2,757億円 | 2,327億円 | △429億円 |
| 期末為替(円/ドル) | 156.54円 | 159.93円 | +3.39円 |
2026年Q1末の石油・ガス資産は3兆9,564億円と、資産合計の約半分を占めます。これは多数の海外権益を保有する上流E&P企業ならではのバランスシート構造です。
イクシス下流事業会社(共同支配企業、100%ベース・うち当社出資比率67.82%)
| 項目 | 2026年Q1末 |
|---|---|
| 流動資産 | 2,781億円 |
| 非流動資産 | 4兆5,494億円 |
| 流動負債 | 4,089億円 |
| 非流動負債 | 3兆1,356億円 |
| 資本 | 1兆2,829億円 |
| うち有利子負債合計 | 1兆3,976億円 |
オフバランスのイクシス下流事業会社分を含むネット有利子負債は1兆6,601億円、ネットD/Eレシオ0.34倍と注記されています(補足説明資料p.18)。在外営業活動体の換算差額の為替感応度は「期末為替1円円安で+290億円」となっています。
株価推移と利回り|執筆時点情報の取り扱い
記事執筆時点の株価・予想配当利回り・実績PER・PBR・時価総額については、市場の変動が激しいため、本記事では具体値の掲載を控えます。最新値は公式IR(株価情報ページ)・四季報・各証券会社の銘柄ページを参照してください。
判断の基礎データとしては、本記事中で示した次の数値を参照することができます。
- 2026年12月期の予想1株配当:108円(中間54円+期末54円、累進配当方針)
- 2026年12月期の予想EPS:300.95円〜386.94円(5月発表レンジ)
- 2026年3月31日時点のBPS:4,207.52円
- 2026年Q1末の期末発行済株式数:1,259,136,067株(うち自己株式96,946,200株)
これらを株価で割り戻すことで、執筆時点の予想配当利回り・予想PER・PBR・時価総額を算出可能です。
バリュエーションを見るときの注意点|資源株固有の留意点
資源開発企業のバリュエーションは、油価・LNG価格・為替といった市況要因の影響を強く受けるため、PERやPBRの単純な水準比較で「割安/割高」を判断しにくい性質があります。
INPEXの開示資料からは、次の評価軸を読み取ることができます。
- ROE:油価$70ケースで7.4%、油価$83ケースで9.3%(株主資本コストは8%程度を見込むと開示)
- ROIC:油価$70ケースで6.4%、油価$83ケースで8.0%(WACCは6%程度を見込む)
- ネットD/Eレシオ:0.33〜0.35(オフバランス含むベース)
- 総還元性向:2025年度実績55.4%、2026年度方針50%以上
原油価格レンジ(油価$70〜$83)の幅で、ROE・ROICが大きく変動する点は、資源株の典型的な性質です。「割安/割高」と単一の結論で評価するのではなく、油価シナリオごとの収益力と還元水準を比較することが、INPEXのバリュエーション評価では特に有用です。
※ 同業他社(出光興産・ENEOSホールディングス・コスモエネルギー等)との直接的なバリュエーション比較は、本記事の根拠資料(INPEX公式IRのPDF2点)では取り扱っていないため省略します。比較を行う場合は、各社の公式IR・四季報等で最新値を参照してください。
事業構造の特徴|上流E&P中心+イクシス下流(液化プラント)を保有
INPEXの事業構造は、「石油・天然ガスの探鉱・開発・生産(上流/E&P)」がコアであり、補足説明資料のセグメント区分でも国内O&G・海外O&G(イクシス・その他)と分類されています。
加えて、イクシスLNGに関しては、上流事業会社IIPL(権益67.82%)に加えて下流事業会社Ichthys LNG Pty Ltd(ILNGPL)を100%保有しており(持分法、持分67.82%)、液化プラントを含む下流事業も自社グループで保有している点が特徴です(補足説明資料p.23)。
業績ドライバーとしては、原油価格(ブレント)、LNG・天然ガス価格、為替(円/ドル)が主要要素となり、市況の上下に対する感応度が高い構造です。本記事中で示した通り、油価$70 ⇔ $83の幅で通期当期利益が3,500億円 ⇔ 4,500億円と変動する点が、その代表的な表れです。
中期経営計画と長期ビジョン|成長軸の3区分
INPEXの中期経営計画では、成長投資の枠組みを次の3軸に整理しています(補足説明資料p.9・p.10)。
- 成長軸①:LNG事業を中心とした石油・天然ガス分野の維持拡大(2026年度予想 約7,770〜7,870億円)
- 成長軸②:CCS・水素をコアとした低炭素化ソリューション(2026年度予想 約10億円)
- 成長軸③:INPEX「ならでは」の強みを活かした再エネ・電力分野での新たな取り組み(2026年度予想 約120億円)
金額ベースでは現時点でも成長軸①が圧倒的であり、当面は「石油・天然ガスの維持拡大」が中心軸です。成長軸②・③の低炭素・再エネ領域は、開発フェーズや研究開発段階の案件が中心で、投資金額としてはこれからの育成期にあたります。
2026年度の成長投資内訳には、豪州陸上鉱区Beetaloo取得(成長軸①)、南西カスピ海石油の持分追加取得(成長軸①)、アバディ(成長軸①)などが、主要な実行・進行中の案件として示されています。
※ 「INPEX Vision @2030」「Net Zero 2050」など長期ビジョンの数値目標(ネットゼロ達成までのロードマップ、生産量目標、設備投資総額等)の詳細は、本記事の根拠資料(2026年12月期Q1の決算短信・補足説明資料)には全文掲載がないため、公式IR(中期経営計画・統合報告書)を参照してください。
リスク要因|開示資料に明示されている観点
2026年12月期Q1補足説明資料の「注意事項」セクションでは、将来予想に関する記述に内在するリスク・不確実性として、次の項目が明示されています(補足説明資料p.2)。
- 原油および天然ガスの価格変動および需要の変化
- 為替レートの変動
- 探鉱・開発・生産に関連するコストまたはその他の支出の変化
これは「これらに限られるものではない」と明示されていますが、INPEX自身が将来予想の前提として優先的に挙げているリスクであり、投資判断のうえでも重要な観点です。
地政学リスクの実例:中東情勢悪化
2026年5月時点での通期予想修正の背景にも、中東情勢の急速な悪化が明示されています(補足説明資料p.3)。同資料には次のように記載されています。
中東情勢の急速な悪化により、当社原油サプライチェーンへの多面的な影響あり。原油価格や為替相場の不確実性を考慮し、油価・為替共に幅を持たせた前提としたことから、当期利益は2月時点予想の3,300億円から上方修正した3,500〜4,500億円を見込む。
具体的な対応として、補足説明資料p.3には次のような状況が記載されています。
- 生産・出荷:当社が権益を保有する陸上および海上生産施設への損害報告は受けていない。生産量は制限されているものの、事業継続に向けた取り組みを実施中
- 出荷経路:ホルムズ海峡経由ではなく、アラビア湾外からの出荷を継続
- イクシス(豪州):主に天然ガスを生産。安定生産を継続している(2026年1〜3月で計32カーゴのLNGを出荷)
- その他(日本・中央アジア等):原油および天然ガスを安定生産継続
- 有事対応:豪州・中央アジア等の原油供給源を最大限活用
- 投資方針:状況を注視しながら、原油増産投資を継続
このように、INPEXは多様な地域に権益を分散保有していることが、特定地域の地政学リスクに対するレジリエンスとなっています。
市況変動と業績感応度
補足説明資料p.8では、2月発表予想から5月発表予想(油価$83ケース)への通期当期利益増減要因が、油価影響+978億円、為替影響+222億円と明示されています。これは「油価+20.0ドル(63ドル→83ドル)、為替+5円(151円→156円)」での感応度であり、INPEXの業績が外部環境にどれほど敏感かを示すデータです。
逆方向の感応度として、油価$83ケース(当期利益4,500億円)から油価$70ケース(当期利益3,500億円)への変化では、△1,000億円の利益減少が示されています(補足説明資料p.8)。
INPEX 株はどんな投資家に向くか|投資スタイル別の整理
本記事で確認できたファクトを踏まえると、INPEXの特性は次のように整理できます。
累進配当・株主還元を重視するスタイル
2025年度実績で総還元性向55.4%、2026年度方針で「総還元性向50%以上」「累進配当」を堅持と明示されており、配当を継続的に受け取りたい長期保有スタイルとは相性が良い性質を持っています。
市況連動性を意識した中期スタイル
油価$70 ⇔ $83の幅で通期当期利益が3,500億円 ⇔ 4,500億円と変動するため、原油価格・為替の方向感を持って投資する中期スタイルにとっては、市況の追い風/逆風が業績に反映されやすい銘柄です。
ポートフォリオの分散用途
事業構造が「上流E&P型」と特殊なため、製造業中心や金融中心のポートフォリオに対する、エネルギーセクターの分散ピースとして組み入れる用途も考えられます。
※ 上記は「どんな人に向く/向かない」という性質の整理であり、買い推奨や売り推奨ではありません。投資判断は読者自身で行ってください。
まとめ|INPEX(1605)を見るときに押さえておきたい視点
本記事の内容を5つの視点に圧縮します。
- 事業構造:国内O&G・海外O&G(イクシス・その他)・その他(再エネ・CCS・水素)の4セグメント。イクシスがQ1単体で703億円の利益貢献。
- 直近業績:2026年12月期Q1は売上5,018億円(△6.5%)、親会社所有者帰属四半期利益1,094億円(△13.4%)、EPS 94.08円。販売単価下落を法人税減少で一部相殺。
- 通期予想:油価$70ケースで当期利益3,500億円、油価$83ケースで4,500億円のレンジ予想。EPSは300.95円〜386.94円。
- 配当・還元:2026年12月期予想配当108円(中間54円+期末54円)。総還元性向50%以上、累進配当方針を堅持。2025年度実績は55.4%。Q1には自己株式約100億円取得済み。
- リスク:原油・天然ガス価格変動、為替変動、探鉱・開発・生産コストの変化。直近では中東情勢を踏まえた油価・為替のレンジ予想となっている点に注意。
INPEXは「上流E&P中心の石油・天然ガス開発企業」(イクシスは下流の液化プラントも保有)であり、「累進配当・総還元性向50%以上の方針」「油価・為替への感応度が高い大型株」という特徴を併せ持つ銘柄です。本記事のファクトを踏まえつつ、個別の判断材料(株価・PER・PBR・配当利回り)は執筆時点の最新値を公式IR・四季報で取得して、自分なりのフレームで評価していくのが、銘柄分析としてのスタンダードな進め方になります。
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※ 本記事は、株式会社INPEX「2026年12月期第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」(2026年5月13日)および「2026年12月期第1四半期決算 補足説明資料」(2026年5月13日)に基づき作成しています。記事中の数値は変更される場合があるため、最新情報は INPEX公式IRサイト をご確認ください。