本記事は2026年8月17日時点で公表されている各社の決算短信・決算補足資料をもとに作成しています。株価・指標は2026年8月14日(金)終値基準です。特定の銘柄の購入や売却を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
はじめに|チケット代は、20年で2倍になった
ディズニーランドやUSJの1日券が高くなった、と感じている方は多いと思います。
実際、数字がそうなっています。日経『業界地図 2027年度版』に載っている「東西2大テーマパークの大人1日券価格の推移」というグラフによると、2006年に6,000円弱だった大人1日券は、2025年に12,000円を超えました。約20年で2倍です。
値上げしているのは2大テーマパークだけではありません。帝国データバンクの2025年の調査では、値上げを実施した施設数は前年比で約2倍になったとされています。
では、投資家として気になるのはここです。
値上げした分、ちゃんと儲かっているのか。それとも、値上げして客が離れたのか。
今回はレジャー施設を持つ上場4社の最新決算を並べて、これを確かめました。すべて公式の決算短信・補足資料から数字を拾い、比率は自分で計算し直しています。
- オリエンタルランド(4661)
- 東武鉄道(9001)
- 富士急行(9010)
- グリーンランドリゾート(9656)
この記事の結論
先に答えを出します。
値上げしても客が増えた会社と、値上げしたのに客が減った会社に、はっきり分かれました。
- オリエンタルランド:入園者数もゲスト1人当たり売上高も、どちらも前年を上回った
- グリーンランドリゾート:3月に値上げしたが、天候不良で利用者数が減り、遊園地事業は17.4%の減益
そしてもうひとつ、意外な事実がありました。
日本でいちばん強いホテルは、ディズニーホテルでした。客室稼働率95.2%、平均客室単価67,036円。前回の記事で見たホテル専業4社を、はるかに上回っています。
順番に見ていきます。
その前に|レジャー施設は3種類に分けて考える
レジャー施設への株式投資は、施設名だけで「買える・買えない」を判断できません。運営会社自身が上場しているのか、非上場の運営会社を上場親会社が保有しているのかまで確認する必要があります。日本株として整理すると、主に次の3種類です。
| 区分 | 施設の例 | 株式でのアクセス |
|---|---|---|
| 運営会社自身が上場 | 東京ディズニーリゾート、グリーンランド遊園地 | オリエンタルランド(4661)、グリーンランドリゾート(9656)へ直接投資できる |
| 運営会社は非上場、親会社が上場 | 富士急ハイランド、東武動物公園、サンリオピューロランド | 富士急行(9010)、東武鉄道(9001)、サンリオ(8136)を通じて間接投資できる |
| 運営会社に日本の上場親会社がない | よみうりランド、ハウステンボス、ジャングリア沖縄など | 日本株として施設事業へ投資する直接の銘柄がない |
オリエンタルランドとグリーンランドリゾートは、上場会社自身がテーマパーク・遊園地を経営しています。一方、富士急ハイランドの運営会社は富士急行の100%子会社、東武動物公園を運営する東武レジャー企画は東武鉄道の100%子会社です。
サンリオピューロランドもこれらと同じ構造です。運営会社のサンリオエンターテイメントはサンリオの100%子会社で、同社自体は非上場ですが、サンリオ(8136)は上場しています。したがって、サンリオ株を通じてテーマパーク事業へ間接的に投資できます。
当初の記事では、富士急行と東武鉄道については上場親会社を通じて「投資できる」と扱う一方、サンリオピューロランドは運営会社が非上場であることだけを理由に「買えない」としており、分類基準が統一できていませんでした。ここに訂正します。
しかも、選択肢は減っています。
スパリゾートハワイアンズを運営していた常磐興産は、2025年に米投資ファンドの傘下に入り、上場を廃止しました。
レジャー施設は建物や乗り物に巨額の投資が要る、いわゆる装置産業です。上場を続けるより、ファンドや親会社の下で腰を据えて投資したほうがいい、という判断が働きやすい業界とも言えます。
今回比較する4社のうち、オリエンタルランドとグリーンランドリゾートは運営会社自身への投資、富士急行と東武鉄道は上場親会社を通じた間接投資という違いがあります。
なお業界の規模は、国内の遊園地・テーマパークの売上高で7,522億円(2025年、総務省『サービス産業動態統計調査』)。前回見たホテル業界の6兆5,000億円と比べると、10分の1程度の市場です。
比較の前提|期間がそろっていません
数字を並べる前に、注意点を2つ。
ひとつ、グリーンランドリゾートだけ決算期が12月です。今回の数字は1月~6月の6か月分で、他3社の3か月分(4月~6月)とは期間が違います。金額の大小は比べられないので、増減率で見てください。
ふたつ、東武鉄道と富士急行は、本業が鉄道です。どちらも証券取引所の分類は「陸運業」。レジャーは事業のひとつにすぎません。ですから、この2社についてはレジャー部門だけを取り出して見ていきます。
| 会社 | コード | 決算期 | 今回の対象期間 | 発表日 |
|---|---|---|---|---|
| オリエンタルランド | 4661 | 3月期 | 4-6月(3か月) | 7月30日 |
| 東武鉄道 | 9001 | 3月期 | 4-6月(3か月) | 8月4日 |
| 富士急行 | 9010 | 3月期 | 4-6月(3か月) | 8月5日 |
| グリーンランドリゾート | 9656 | 12月期 | 1-6月(6か月) | 8月10日 |
4社の最新決算
| 会社 | 対象期間 | 売上高 | 営業利益 | 最終利益 |
|---|---|---|---|---|
| オリエンタルランド | 3か月 | 1,807億円 +10.4% | 477億円 +23.1% | 413億円 +50.3% |
| 東武鉄道 | 3か月 | 1,563億円 +5.2% | 210億円 +10.6% | 142億円 +1.5% |
| 富士急行 | 3か月 | 128億円 +3.9% | 17億円 +0.5% | 11億円 +0.2% |
| グリーンランドリゾート | 6か月 | 30億円 △0.3% | 1.9億円 △32.9% | 2.1億円 +2.1% |
営業利益率も出しておきます。
| 会社 | 営業利益率 |
|---|---|
| オリエンタルランド | 26.40% |
| 東武鉄道 | 13.45% |
| 富士急行 | 13.13% |
| グリーンランドリゾート | 6.19% |
オリエンタルランドの26.40%は、他の3社の2倍から4倍です。日本の上場企業全体で見ても、かなり高い水準になります。
なぜここまで差がつくのか。1社ずつ見ていきます。
オリエンタルランド|値上げしても、客は増えた
オリエンタルランドの第1四半期は、売上高1,807億3,400万円(+10.4%)、営業利益477億1,600万円(+23.1%)、最終利益412億9,700万円(+50.3%)でした。
会社の資料によると、売上高・営業利益・営業キャッシュ・フローは第1四半期として過去最高です。
セグメント別に見ます。
| セグメント | 売上高 | 営業利益 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| テーマパーク | 1,512億500万円 | 378億6,500万円 | +29.3% |
| ホテル | 295億1,300万円 | 92億5,400万円 | +0.9% |
| その他 | 51億5,600万円 | 5億6,300万円 | - |
テーマパーク事業の営業利益率は25.04%。ホテル事業は31.36%です。
何が売れたのか
収入の中身を見ると、面白いことがわかります。
| 収入区分 | 前年同期 | 当期 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| アトラクション・ショー収入 | 654億1,900万円 | 703億円 | +7.5% |
| 商品販売収入 | 390億3,100万円 | 472億1,900万円 | +21.0% |
| 飲食販売収入 | 236億6,200万円 | 263億3,800万円 | +11.3% |
| その他の収入 | 31億7,900万円 | 35億7,600万円 | +12.5% |
いちばん伸びたのは、入場料ではなく「商品販売収入」の+21.0%でした。グッズです。
チケットで7.5%、グッズで21.0%、飲食で11.3%。園内でお金を使ってもらう仕組みが効いているということになります。
入園者数も、1人当たりも「上回った」
そして今回いちばん重要なのがここです。
オリエンタルランドの補足資料には、こう書かれています。
- 入園者数:上回った
- ゲスト1人当たり売上高:上回った
人数も単価も、どちらも前年を超えた。
前回のホテル株の記事では、藤田観光が「訪日外国人数は前年と同水準」と書いていました。人数は伸びず、単価だけで稼いでいる状態です。
オリエンタルランドは違います。値上げしても客が減らない。むしろ増えている。これが「値上げできる会社」ということです。
なお、四半期の補足資料では具体的な数値までは開示されていません。「上回った」という表現だけです。年間の決算ではきちんと数字が出ますが、四半期はこの形になっています。
ただし、通期は減益の計画です
ここは冷静に見ておきましょう。
Q1は営業利益+23.1%の大幅増益でした。でも通期予想は営業利益1,607億7,600万円で、前期比4.5%の減益。しかも上期(4~9月)予想は13.6%の減益です。
つまり会社は、第2四半期以降は前年を下回ると見ています。Q1の数字だけを見て「絶好調」と判断するのは早い、ということですね。
Q1時点の進捗率は29.7%です。
東武鉄道|レジャーは伸びている。でも全体の4分の1
東武鉄道の第1四半期は、営業収益1,562億9,200万円(+5.2%)、営業利益210億1,700万円(+10.6%)、最終利益141億9,300万円(+1.5%)でした。
セグメント別に見ます。
| セグメント | 売上高 | 営業利益 | 利益の増減率 |
|---|---|---|---|
| 運輸事業 | 561億1,700万円 | 102億6,200万円 | +0.1% |
| レジャー事業 | 386億4,800万円 | 38億3,100万円 | +10.4% |
| 不動産事業 | 138億7,200万円 | 38億7,100万円 | +22.3% |
| 流通事業 | 443億400万円 | 23億9,000万円 | +24.4% |
| その他事業 | 190億600万円 | 11億7,900万円 | - |
レジャー事業は+10.4%の増益です。東武動物公園、東武ワールドスクウェア、東京スカイツリータウンなどが含まれます。
ただし売上386億円は、全社1,563億円の約25%。レジャー事業の営業利益率も9.91%で、オリエンタルランドのテーマパーク事業(25.04%)とはかなり差があります。
東武鉄道を「レジャー株」として買うと、実際に持つのは鉄道と不動産と流通が中心の会社ということになります。ここは押さえておきたいところです。
なお、この四半期でいちばん利益が伸びたのは不動産事業(+22.3%)と流通事業(+24.4%)でした。
富士急行|レジャーは+214.8%。でも会社全体は+0.5%
今回、いちばん構図が面白かったのが富士急行です。
第1四半期は、営業収益128億2,400万円(+3.9%)、営業利益16億8,400万円(+0.5%)、最終利益10億7,600万円(+0.2%)。
ほとんど横ばいに見えます。でもセグメントを開けると、まったく違う姿が出てきました。
| セグメント | 売上高 | 営業利益 | 利益の増減率 |
|---|---|---|---|
| 運輸業 | 49億9,200万円 | 9億2,000万円 | △29.4% |
| レジャー・サービス業 | 61億200万円 | 5億6,300万円 | +214.8% |
| 不動産業 | 6億7,500万円 | 1億2,800万円 | △1.4% |
| その他 | 17億9,500万円 | 8,800万円 | +22.6% |
レジャー・サービス業の営業利益は3倍以上(+214.8%)に増えています。
さらに中身を見ると、こうです。
| 事業 | 営業収益 | 増減率 |
|---|---|---|
| 遊園地事業 | 28億4,300万円 | +16.0% |
| ホテル事業 | 16億2,200万円 | +9.0% |
| ゴルフ・スキー事業 | 3億1,300万円 | △0.4% |
| アウトドア事業 | 3億5,500万円 | △8.0% |
富士急ハイランドを含む遊園地事業が+16.0%。レジャーはしっかり伸びています。
では、なぜ全社は+0.5%だったのか
足を引っ張ったのは運輸業(鉄道・バス・ロープウェイ・船)の△29.4%でした。
理由は会社が具体的に書いています。
- 「富士山パノラマロープウェイ」で支索(ケーブル)の更新工事と山頂エリアのリニューアル工事を行い、5月11日から7月15日まで運休
- 水陸両用バス「山中湖のKABA」の運休
- 6月の天候不順
鉄道の輸送人員は111万5,000人で5.6%減、旅客運輸収入は5億9,300万円で9.3%減でした。
つまり富士急行は「レジャーは絶好調だが、運休工事と天気で鉄道が沈んだ」という決算です。レジャー株として見るか、鉄道株として見るかで、評価がまったく変わります。
グリーンランドリゾート|値上げしたのに、客が減った
そして今回の対比の核心が、グリーンランドリゾートです。
中間期(1~6月)は、売上高30億300万円(△0.3%)、営業利益1億8,600万円(△32.9%)、中間純利益2億600万円(+2.1%)でした。
セグメント別はこうです。
| セグメント | 売上高 | 営業利益 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 遊園地事業 | 13億5,800万円 | 2億8,800万円 | △17.4% |
| ゴルフ事業 | 5億4,600万円 | 5,500万円 | △12.9% |
| ホテル事業 | 8億5,200万円 | △5,500万円(赤字) | 赤字拡大 |
| 不動産事業 | 1億100万円 | 6,900万円 | +25.0% |
| 土木・建設資材事業 | 1億7,300万円 | 3,400万円 | △25.0% |
主力の遊園地事業が17.4%の減益。
会社の説明を読むと、努力していないわけではありません。九州の「グリーンランド」は開園60周年を迎え、XR技術を使った新アトラクション「ZOMBIE STORM」を導入し、アトラクション2機種と園内飲食1店舗をリニューアルしています。
そして3月からアトラクションフリーパスの料金を改定(値上げ)しました。
それでも減益になった理由を、会社はこう書いています。
各施設においても、来場者数の増加を図るための新たな施策を推進しましたが、特に九州の遊園地事業において、天候不良の影響を受けて利用者数が減少いたしました
値上げはした。でも天気に負けて、客が減った。
ここがオリエンタルランドとの決定的な違いです。同じ「値上げ」でも、結果が正反対になっています。
なお中間純利益が+2.1%と増えているのは、本業が良かったからではありません。北海道の「ホテルサンプラザ」を2026年7月1日に事業譲渡したことを踏まえ、繰延税金資産の見直しで法人税等調整額(益)を計上したためです。営業利益は32.9%の減益であることを忘れないでください。
ちなみにこのホテルサンプラザの譲渡は受取対価が無償で、譲渡損失の概算額は3,479万円でした。中間期のこのホテルの売上高は1億5,299万円、営業損失は1,338万円です。
天気と暑さは、この業界の構造リスク
ここまで見てくると、あるものが繰り返し出てきます。天気です。
- 富士急行:6月の天候不順でロープウェイなどが影響を受けた
- グリーンランドリゾート:天候不良で九州の遊園地の利用者数が減った
屋外レジャーは、天気に売上を左右されます。ここは工場や店舗とは違う、この業界特有のリスクです。
そして業界地図には、キーワードとして【猛暑対策】が挙げられています。
猛暑で夏の集客が鈍っている。各社は暑さ指数(WBGT/ダブリュービージーティー)の基準に応じて、ミストや屋根の設置など対策を進める。政府が2025年6月から企業に熱中症対策を義務付けたため、働き手の労働環境の整備も欠かせない。
夏休みは本来、レジャー施設の稼ぎ時です。そこが猛暑で鈍っているとすれば、これは一時的な話ではなく構造的な問題になります。しかも対策には設備投資と人件費がかかる。
「値上げできるかどうか」と並んで、「暑さにどう対応するか」が、これからのレジャー株を見るポイントになりそうです。
番外:日本でいちばん強いホテルは、ディズニーホテルだった
ここで、前回のホテル株の記事とつながる話をひとつ。
オリエンタルランドはホテル事業も持っています。ディズニーアンバサダーホテル、東京ディズニーシー・ホテルミラコスタ、東京ディズニーランドホテルなど6つのディズニーホテルです。
その数字がこれです。
| 項目 | 前年同期 | 当期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 客室稼働率 | 94.0% | 95.2% | +1.2ポイント |
| 平均客室単価 | 66,534円 | 67,036円 | +0.8% |
稼働率95.2%。平均客室単価67,036円。
前回の記事で見た業界のデータを思い出してください。観光庁の調査では、シティホテルの稼働率が75%、リゾートホテルが57%でした。
ディズニーホテルの95.2%は、業界平均を20ポイント以上も上回っています。しかも1泊6万7,000円で、それだけ埋まっている。
利益率も見てみましょう。
| 会社・部門 | 営業利益率 |
|---|---|
| オリエンタルランド ホテル事業 | 31.36% |
| 藤田観光 | 15.38% |
| リゾートトラスト | 13.25% |
| 帝国ホテル(ホテル事業のみ) | 10.52% |
| ロイヤルホテル | 6.03% |
| 帝国ホテル(全社) | 4.83% |
前回見たホテル専業4社の、どこよりも高い。
ホテル株を探している人が、ホテル専業の会社ばかり見ていると、この会社は視界に入りません。「テーマパークの会社」だと思っていたら、実は日本で最強クラスのホテル事業者だったということです。
ただし、ディズニーホテルはテーマパークとセットで成り立っています。単独のホテル事業として比べるのはフェアではない、という見方もできます。そこは公平に書いておきます。
財務と配当
| 会社 | 自己資本比率 | 年間配当予想 | 前期 | 配当性向 |
|---|---|---|---|---|
| オリエンタルランド | 69.5% | 16円 | 15円 | 23.1% |
| グリーンランドリゾート | 53.3% | 15円 | 15円 | 31.0% |
| 富士急行 | 40.2% | 33円 | 32円 | 30.5% |
| 東武鉄道 | 33.9% | 75円 | 70円 | 26.2% |
4社のうち3社が増配予想です。グリーンランドリゾートだけ据え置き。
配当性向はいずれも20~30%台で、無理をしている水準ではありません。
なお富士急行は2026年8月5日に、決算とは別に自己株式の取得枠設定を開示しています(内容の詳細は本記事では確認していません)。
通期予想への進捗率
| 会社 | 進捗率 | 経過期間 |
|---|---|---|
| オリエンタルランド | 29.7% | 3か月 |
| 東武鉄道 | 29.2% | 3か月 |
| グリーンランドリゾート | 23.8% | 6か月 |
| 富士急行 | 18.8% | 3か月 |
グリーンランドリゾートに注目してください。6か月が経過して23.8%です。目安の50%に遠く届いていません。通期予想(営業利益7億8,000万円、前期比+6.1%)は据え置かれていますが、下期にかなり偏った計画になっています。
株価はどう動いたか
決算発表日が7月30日から8月10日までばらついているため、全社の決算発表前(7月29日終値)から、全社発表後(8月14日終値)までで比べます。前回のホテル株の記事と同じ設計です。
| 会社 | 7/29終値 | 8/14終値 | 騰落率 |
|---|---|---|---|
| (参考)日経平均 | 61,434.19 | 68,713.80 | +11.85% |
| グリーンランドリゾート | 598円 | 598円 | ±0.00% |
| 富士急行 | 2,809円 | 2,719円 | △3.20% |
| オリエンタルランド | 3,030.0円 | 2,881.0円 | △4.92% |
| 東武鉄道 | 3,198.0円 | 2,925.5円 | △8.52% |
ここが今回いちばん考えさせられる部分です。
同じ期間に日経平均は11.85%上がっています。それなのに、4社すべてが下落か横ばいでした。
そして、第1四半期として過去最高の売上高・営業利益を出したオリエンタルランドが、4.92%の下落です。
前回のホテル株でも同じことが起きていました。「好決算だから株価が上がる」は、少なくともこの期間については成り立っていません。
もちろん、決算が原因で下がったとは断定できません。株価は相場全体、為替、金利、需給、他の材料でも動きます。この期間は約2.5週間ありますから、決算以外の要因も入っています。あくまで機械的な比較です。
PER・PBR・配当利回り
2026年8月14日終値で計算した指標です。
| 会社 | 株価 | 予想PER | PBR | 予想配当利回り | 時価総額 |
|---|---|---|---|---|---|
| オリエンタルランド | 2,881.0円 | 41.5倍 | 4.19倍 | 0.56% | 5兆1,871億円 |
| 富士急行 | 2,719円 | 25.1倍 | 3.45倍 | 1.21% | 1,492億円 |
| グリーンランドリゾート | 598円 | 12.4倍 | 0.58倍 | 2.51% | - |
| 東武鉄道 | 2,925.5円 | 10.2倍 | 0.91倍 | 2.56% | 5,771億円 |
※PERはすべて会社予想EPSから計算しています。
ここには、この記事の内容がそのまま表れています。
値上げできる会社(オリエンタルランド)はPER41.5倍、PBR4.19倍と高く評価されています。その代わり配当利回りは0.56%しかありません。
逆に、値上げに苦戦しているグリーンランドリゾートはPBR0.58倍。会社の純資産の6割程度の値段しかついていません。配当利回りは2.51%です。
市場は「値上げできる力」に、はっきり値段をつけている。この対比は、レジャー株に限らず参考になる見方だと思います。
なお時価総額を見ると、オリエンタルランドは5兆1,871億円。東武鉄道の約9倍、富士急行の約35倍です。実質的に「レジャー株を買う」=「オリエンタルランドを買う」に近い構図になっています。
次の決算で確認したい項目
オリエンタルランド
- 上期の営業利益△13.6%という減益予想どおりになるか
- 商品販売収入の高い伸び(+21.0%)が続くか
- 入園者数とゲスト1人当たり売上高が、通期でどんな数字になるか
東武鉄道
- レジャー事業の増益(+10.4%)が続くか
- 全社の通期営業利益が+0.2%の計画に届くか
富士急行
- ロープウェイの運休(7月15日まで)が終わり、運輸業が戻るか
- 遊園地事業の+16.0%が続くか
- 自己株式の取得がどう進むか
グリーンランドリゾート
- 下期に偏った計画(進捗率23.8%)を達成できるか
- 値上げの効果が、天候の影響を上回るようになるか
- ホテル事業の赤字が縮まるか
まとめ
要点を整理します。
- 大人1日券は20年で約2倍(6,000円弱→12,000円超)。値上げした施設数も2025年に前年比約2倍になりました。
- オリエンタルランドは、入園者数もゲスト1人当たり売上高も「上回った」。値上げしても客が減っていません。営業利益率26.40%は他3社の2~4倍です。
- グリーンランドリゾートは3月に値上げしたのに、天候不良で利用者数が減り、遊園地事業は17.4%の減益でした。
- 富士急行はレジャー・サービス業が+214.8%の大幅増益。でも運休工事と天候不順で運輸業が29.4%減り、全社では+0.5%にとどまりました。
- 東武鉄道のレジャー事業は+10.4%の増益。ただし売上は全社の約25%で、本業は鉄道です。
- 天気と猛暑は、この業界の構造リスクです。2社が天候を減益理由に挙げています。
- ディズニーホテルの稼働率95.2%、平均客室単価67,036円、営業利益率31.36%。前回見たホテル専業4社の、どこよりも高い数字でした。
- 市場は「値上げできる力」に値段をつけています。オリエンタルランドはPER41.5倍・PBR4.19倍、グリーンランドリゾートはPBR0.58倍。
- 日経平均が+11.85%上がった期間に、4社すべてが下落か横ばいでした。過去最高益のオリエンタルランドも4.92%下げています。
最後に、この記事でいちばんお伝えしたいことを。
値上げのニュースを見たら、「いくら上げたか」ではなく「上げても客が減っていないか」を確かめてください。
値上げは誰でもできます。でも、値上げしても人が来る会社は限られている。その差が、営業利益率にも、PERにも、そのまま出ていました。
答え合わせは、次の決算に出ます。
主な参照資料
- オリエンタルランド「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」および「2027年3月期 第1四半期決算 補足資料」2026年7月30日
- 東武鉄道「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」2026年8月4日
- 富士急行「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」2026年8月5日
- グリーンランドリゾート「2026年12月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結)」2026年8月10日
- 株価・日経平均:株探(2026年7月29日・8月14日終値)
- 業界の全体像、大人1日券価格の推移、未上場企業の位置づけ、【猛暑対策】:日経『業界地図 2027年度版』レジャー施設
- ホテル業界の稼働率(シティホテル75%・リゾートホテル57%):同上(出典は観光庁)