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株主優待をやめた会社の2.4倍が、優待を始めていた|大型18社を調べたら、100株ですぐ、アプリも口座もなしでもらえるのは4社。個人株主を増やしたのは分割のほうだった

「株主優待は、どんどんなくなっている」

そう言われることが多いですし、実際に2024年から2026年9月までに優待の廃止を発表した会社は179社あります。

ところが、同じ期間に優待を始めた会社を数えたら、425社ありました。やめた会社の約2.4倍です。

しかも始めた側には、トヨタ自動車、三井住友フィナンシャルグループ、東京海上ホールディングス、ソフトバンク、花王といった、日本を代表する会社が並んでいます。

では、これから優待株を買う人にとって、うれしい話なのか。時価総額の大きい18社の導入のお知らせを全部読んで、条件を1社ずつ確かめました。有価証券報告書で個人株主の人数も数えています。

先に結論を3つ書きます。

  1. 優待は減っていません。中身が変わっています。大企業の新しい優待は、自社のアプリや口座を使ってもらうための「入口」になっていて、18社のうち8社は、自社グループのアプリ・口座・会員登録がないと受け取れないか、使えません。
  2. 100株を買って、次の基準日に、アプリも口座もなしで確実にもらえるのは18社中4社だけでした。残りは「500株から」「3年持ってから」「アプリに登録してから」「100株は抽選」のどれかが付いています。
  3. 優待を始めた会社で個人株主が大きく増えたのは、株式分割を同じ時期にした会社でした。分割と一緒だった5社はすべて市場全体の4倍以上増えた一方、優待だけを始めた6社は、3社が市場を下回り、上回った3社も分割組ほどの差はありませんでした。

優待をやめた会社の2.4倍が、優待を始めていた

まず数です。株主優待を集計している個人サイトの一覧をもとに、2024年から2026年9月中旬までに優待を始めた会社を数えました。

優待を始めた会社(再開を含む)
2024年 125社
2025年 186社
2026年(9月中旬まで) 116社

延べ427件、同じ会社の重複を除いて425社です。このうち30件は、一度やめた優待を再開したものです。

同じ期間にやめた会社は179社でした。425÷179で約2.4倍。数だけ見れば、優待は減っているどころか増えています。

どちらの一覧も同じ種類の資料(個人サイトの集計)なので、漏れはありえます。ただ、同じ物差しどうしで比べているので、2.4倍という比は大きくはずれないはずです。

大型株だけで見ると3.6倍。しかも毎年増えている

小さな会社が多いのでは、と思って、今も上場していて時価総額1,000億円以上の会社だけで比べ直しました。

社数
優待をやめた大型株 17社
優待を始めた大型株 61社

3.6倍です。大型株ほど「始める側」が多くなります。

しかも年ごとに増えています。

優待を始めた大型株
2024年 12社
2025年 21社
2026年(9月中旬まで) 28社

2026年は9月の時点で、もう前の年を超えました。61社のうち13社は銀行・フィナンシャルグループです。八十二長野銀行、ほくほくFG、北洋銀行、紀陽銀行、武蔵野銀行、大分銀行、宮崎銀行、秋田銀行、山形銀行、山梨中央銀行、愛媛銀行と、地方銀行が次々に優待を始めていて、多くが地元の特産品のカタログやクオカードです。

ちなみに、やめた179社と始めた425社の両方に名前がある大型株は、くら寿司だけでした。2024年12月に廃止を発表し、70日後の2025年2月に再導入した会社です。

調べたのは時価総額の大きい18社

61社のうち、時価総額の大きい順に18社を選びました。

会社 時価総額 優待を始めた発表
1 トヨタ自動車 44兆1,498億円 2025年3月3日
2 三井住友フィナンシャルグループ 25兆9,617億円 2026年5月13日
3 東京海上ホールディングス 15兆8,588億円 2026年8月25日
4 ソフトバンク 11兆9,215億円 2024年4月25日
5 第一ライフグループ 6兆9,319億円 2024年2月29日
6 セブン&アイ・ホールディングス 4兆6,869億円 2024年4月10日
7 三井不動産 3兆9,994億円 2024年3月1日
8 花王 3兆1,552億円 2026年8月5日
9 セコム 3兆30億円 2024年9月5日
10 荏原製作所(えばらせいさくしょ) 1兆9,775億円 2024年10月8日
11 八十二長野銀行(はちじゅうにながのぎんこう) 1兆3,317億円 2026年1月16日
12 スクウェア・エニックス・ホールディングス 1兆1,006億円 2026年2月5日
13 楽天銀行 1兆776億円 2024年2月22日
14 ほくほくフィナンシャルグループ 1兆421億円 2025年2月25日
15 小糸製作所(こいとせいさくしょ) 8,141億円 2025年2月27日
16 GMOペイメントゲートウェイ 6,752億円 2026年2月12日
17 東京建物 6,730億円 2025年8月8日
18 コカ・コーラ ボトラーズジャパンホールディングス 6,560億円 2025年2月13日

時価総額は2026年9月22日の終値です。第一ライフグループは、発表当時の社名は第一生命ホールディングスでした。18社とも、今も優待を続けていることを確かめています。

上位10社のうち7社は、ポイント・電子マネー・商品券

優待の中身を並べると、傾向がはっきりします。

会社 優待の中身
トヨタ自動車 TOYOTA Wallet(トヨタウォレット)の残高
三井住友FG Vポイント、円定期預金の金利上乗せクーポン
東京海上HD 電子マネー等(複数から選択)
ソフトバンク PayPay(ペイペイ)ポイント
第一ライフグループ 健康アプリ「QOLism(キュオリズム)」のポイントなど
セブン&アイHD セブン&アイ共通商品券
三井不動産 三井ショッピングパークポイント
花王 化粧品・家庭品のセット
セコム 防災備蓄品
荏原製作所 荏原 畠山美術館(はたけやまびじゅつかん)の招待券

上位10社のうち7社が、ポイント・電子マネー・商品券です。そのうち東京海上HD(複数の電子マネーから選ぶ形)を除く6社は、自社グループのアプリ・口座・お店で使うものです。

昔の優待といえば、基準日に100株持っていれば届く食事券やクオカードでした。今の大企業の優待は、自社のアプリや口座を使ってもらうための入口になっています。

金額も書いておきます。トヨタ自動車は100株で、持っている期間が1年未満なら500円分、1年以上3年未満で1,000円分、3年以上で3,000円分。1,000株を5年以上持つと30,000円分で、ほかにレースのペアチケットなどの抽選にも応募できます。セブン&アイHDは100株で2,000円分、3年以上で2,500円分。三井不動産は100株ごとに1,000ポイント(1,200株の12,000ポイントが上限)で、持ち株数に比例して増え、長く持つと追加のポイントもあります。

目的にもそれがはっきり書いてあります。トヨタ自動車はこうです。

当社関連サービスの利用を通じて、当社グループの事業に対する理解をより一層深め、より多くの投資家の皆様に当社株式を長期にわたって保有いただくことを目的として

目的はみな「長く持ってもらうこと」

18社の導入のお知らせのうち16社に、「長期」という言葉が入っていました(「中長期」「長期にわたって」など)。

いちばん率直だったのはソフトバンクです。

若年層を含む新たに投資を始める方に、初めて投資する株式として当社株式を選択していただき、かつその長期保有を促すことによって、投資家層のより一層の拡大を目指します

同じお知らせには「2024年3月末時点では当社の株主数は約86万人」とも書いてあり、新NISA(ニーサ)が始まったことにも触れています。

東京海上ホールディングスは、理由まで書いています。

株主優待については、3年以上継続して保有いただける株主の皆さまを対象とします。これは、短期的な保有ではなく、東京海上グループの2035年に向けた挑戦を、長い時間軸で支えていただきたいという想いを込めたものです

「長く持ってもらいたい」という目的が、そのまま「すぐにはもらえない条件」になっているわけです。ここから、その条件を3つに分けて見ていきます。

条件①:100株ではもらえない会社がある

株主優待は100株から、と思いがちですが、18社のうち4社は100株では確実にはもらえません。

会社 最低ライン
八十二長野銀行 500株以上
ほくほくFG 500株以上
東京建物 200株以上
花王 100〜399株は抽選(400株以上で6,000円相当)

花王は、1,000株以上なら化粧品か家庭品のセットで10,000円相当、400〜999株で6,000円相当です。100〜399株は「抽選にて当選者に当社製品をプレゼント」となっています。

ほかの3社の中身はこうです。八十二長野銀行は500〜999株でクオカード1,000円分、1,000株以上で長野県の特産品などのカタログ3,000円相当。ほくほくFGは500株以上で北海道・北陸の特産品カタログ5,000円相当。東京建物は200株以上でWEBカタログギフト2,000円相当と、グループのホテルや温浴施設の割引券です。

条件②:何年持っているか

いちばん差が出るのがここです。

会社 必要な保有期間(100株)
東京海上HD 3年以上
ソフトバンク 1年以上
三井不動産 1年以上
三井住友FG 1年以上(Vポイント)
八十二長野銀行・ほくほくFG・東京建物 1年以上(それぞれ500株・500株・200株)
花王・GMOペイメントゲートウェイ・コカ・コーラBJ 半年以上

保有期間の条件が付いているのは18社中10社です。

東京海上ホールディングスは、100株以上を3年以上持っている人に、初回7,500円相当、翌年から毎年2,500円相当です。初回の基準日は2027年3月31日です。

3年以上の数え方は「毎年3月31日および9月30日時点の株主名簿に、同一株主番号で連続して7回以上」。これを当てはめると、2026年9月30日の株主名簿に初めて載った人が7,500円を受け取れるのは、早くて2030年3月31日の基準日になります(私の計算です)。いつ買っても、最初の優待までは3年以上かかります。

ソフトバンクは1年以上です。2024年4月に発表して、初回の対象は「2025年3月31日から2026年3月31日まで」持っていた人でした。発表から最初の贈呈まで約2年かかっています。

ここで大事な注意がひとつあります。「持っていた期間」は、株主名簿に同じ株主番号で連続して載っていた回数で数えます。三井住友FGのお知らせにはこう書いてあります。

相続・譲渡、貸株の利用及び預け入れ、証券会社の変更等により、当社株主名簿からの除籍や株主番号の変更が生じた場合、それ以前の保有状況については考慮せず、新たに当社株主名簿に記載または記録された日から起算するものとします

証券会社を移したり、貸株に出したりすると、数え直しになることがあります。長期保有の優待を狙うなら、ここは知っておいたほうがいいところです。

条件③:アプリ・口座・会員登録

18社のうち8社は、自社グループのアプリや口座、会員登録がないと受け取れないか、使えません。

会社 受け取り・利用に要るもの
トヨタ自動車 TOYOTA Walletアプリのインストールと登録
三井住友FG Oliveアカウントの契約(Vポイントは残高15万円以上も)
ソフトバンク PayPayポイント(PayPayのアカウント)
第一ライフグループ 健康アプリ「QOLism」の登録
三井不動産 三井ショッピングパークの会員登録
楽天銀行 楽天銀行での定期預金や住宅ローンの利用(金利優遇・キャッシュバック)
GMOペイメントゲートウェイ GMOクリック証券で買った代金に応じたビットコイン(GMOコインの口座)
コカ・コーラBJ Coke ON(コーク・オン)アプリ

いくつか補足します。

第一ライフグループの健康アプリは、登録するともらえるポイントに加えて、歩数や体重の記録といった健康活動でポイントが増えるしくみです。株主優待なのに、歩くほど得をします。

GMOペイメントゲートウェイは、GMOクリック証券で自社の株を買った代金×0.03%に相当するビットコインが上限1万円までもらえます。ほかの証券会社で買った分は対象外です。優待をたくさんもらう近道は、この会社の株をたくさん買うこと、という作りになっています。

楽天銀行は、定期預金の金利上乗せや、住宅ローンの手数料キャッシュバックなどです。楽天銀行を使わない人には、中身がありません。

それから三井住友FGのお知らせには、Oliveアカウントの契約に「2週間以上のお時間を要することもございます」とも書いてあります。基準日の直前に慌てても間に合わないことがあります。

100株を買って、次の基準日に、アプリも口座もなしでもらえるのは4社

ここが、今回いちばん自分で判定した部分です。

18社それぞれについて、100株を買った人が、次の基準日に、アプリも口座もなしで確実にもらえるかを3つの点で見ました。①100株で確実に対象になるか、②保有期間の条件がないか、③自社のアプリ・口座・会員登録が要らないか。

会社 ①100株 ②保有期間 ③登録 判定
セブン&アイHD
セコム
荏原製作所
小糸製作所
トヨタ自動車 アプリ ×
第一ライフグループ アプリ ×
スクウェア・エニックスHD 自社通販のクーポン
楽天銀行 口座 ×
三井住友FG 1年 口座 ×
ソフトバンク 1年 アカウント ×
三井不動産 1年 会員 ×
コカ・コーラBJ 半年 アプリ ×
GMOペイメントゲートウェイ 半年 口座 ×
東京海上HD 3年 (詳細未定) ×
花王 抽選 半年 ×
東京建物 200株から 1年 ×
八十二長野銀行 500株から 1年 ×
ほくほくFG 500株から 1年 ×

アプリも口座もなしで確実にもらえるのは、セブン&アイHD(共通商品券2,000円分)、セコム(防災備蓄品3,000円相当)、荏原製作所(美術館の招待券)、小糸製作所(クオカード1,000円分)の4社でした。

セコムは申し込み、セブン&アイHDは商品券か寄付かの選択が必要ですが、アプリや口座は要りません。花王は初回(2026年12月31日)に限って保有期間を問いませんが、100〜399株は抽選です。

時価総額の上位5社(トヨタ自動車、三井住友FG、東京海上HD、ソフトバンク、第一ライフグループ)は、すべて何かしらの条件付きでした。

三井住友FGの初回基準日は9月30日。それでも初年度にVポイントはもらえない

新しい優待で、いちばん勘違いしやすい例です。

三井住友FGのお知らせには「2026年9月30日を初回の基準日として、株主優待制度を導入いたします」とあります。9月30日が基準日と聞くと、その前に買えば間に合う、と思いたくなります。

ところが、特典ごとに条件が違います。

特典 100株で保有期間の条件 その他
Vポイント5,000円相当 1年以上 Oliveアカウント+翌年2月末に残高15万円以上
円定期預金の金利上乗せクーポン(3か月もの・年1.0%上乗せ) なし Oliveアカウント
抽選でイベントへ招待 なし Oliveアカウント+残高15万円以上

初回の基準日の直前に買った人は、Vポイントはもらえません。ただし、Oliveアカウントを契約していれば、定期預金の金利上乗せクーポンは受け取れます。「何ももらえない」わけではありません。

もうひとつ。三井住友FGは2026年10月1日付で1株を2株に分割します。そのため2027年以降の基準日では、条件が「100株以上」から「200株以上」に読み替わります。お知らせには、Oliveアカウントの契約に「2週間以上のお時間を要することもございます」とも書いてあります。

新しい優待は、初回の基準日に間に合うことと、初回にもらえることが別物です。これは三井住友FGに限らず、保有期間の条件が付いた優待すべてに言えます。

優待を始めた会社で、個人株主は増えたのか

ここからが、今回いちばん手間をかけたところです。

優待を始めた目的は、どの会社も「より多くの人に、長く持ってもらうこと」でした。では実際に、個人株主は増えたのか。

有価証券報告書の「所有者別状況」という表に、個人株主の人数が載っています。18社ぶん、合計84期を読みました。

ただ、ここで気をつけないといけないことがあります。2024年は新NISAが始まった年で、個人株主はどの会社でも増えやすい時期でした。そこで、東京証券取引所などが毎年出している「株式分布状況調査」で、市場全体の個人株主がどれだけ増えたかを物差しにします。

市場全体の個人株主(延べ人数)
2022年度 6,982万7,188人
2023年度 7,445万3,588人
2024年度 8,359万4,852人
2025年度 9,198万9,897人

1年で+10.0%、2年で+23.6%、3年で+31.7%です。これより増えていれば「市場以上」、少なければ「市場以下」と読めます。

この数字は「延べ人数」で、1人が10社の株を持っていれば10人と数えます。会社ごとの株主数を足したものなので、会社ごとの増え方と比べる物差しとしてちょうどいい数字です。

比べられるのは、優待を始めてから時間が経っている12社です。三井住友FG、東京海上HD、花王、GMOペイメントゲートウェイは、始めたあとの有価証券報告書がまだ出ていません。八十二長野銀行とスクウェア・エニックスHDは、始めてから2か月ほどしか経っていないので外しました。

分割と一緒だった5社は、すべて市場の4倍以上

結果は、株式分割をしたかどうかで、はっきり分かれました。

会社 株式分割 優待前 最新 増減 同じ期間の市場
三井不動産 1→3(同時) 4万2,750人 12万557人 +182.0% +31.7%
セコム 1→2(同時) 1万5,480人 3万4,763人 +124.6% +23.6%
ソフトバンク 1→10(同時) 78万2,902人 172万4,983人 +120.3% +23.6%
荏原製作所 1→5(3か月前) 1万7,223人 3万5,056人 +103.5% +23.6%
セブン&アイHD 1→3(約1か月前) 6万2,471人 25万3,891人 +306.4% +23.6%

5社とも、個人株主が2倍以上になりました。同じ期間の市場全体の増え方の4倍以上です。ソフトバンクは約94万人増えています。

ソフトバンク、三井不動産、セコムは、株式分割と優待の新設を、1本のお知らせで同時に発表しています。三井不動産の分割の目的はこうです。

投資単位当たりの金額を引き下げることにより、投資家の皆様がより投資しやすい環境を整えるとともに、株式の流動性の向上と投資家層の拡大を図ることを目的としています

分割のほうが効いていそうだ、というのは取引所の統計からも裏付けられます。2025年度の調査では、個人株主が1年で839万人増えたうち、263万人は「株式分割実施会社」の分だと取引所自身が書いています。さらに、その年に株式分割をした会社の一覧(表12)から216社の数字を読むと、個人株主の増え方の中央値は+40.7%でした。市場全体の+10.0%の約4倍です。

ひとつ注意があります。セブン&アイHDの+306.4%には、優待と分割以外の理由も入っていると思います。この期間には、カナダのアリマンタシォン・クシュタールから買収提案を受けていて、2025年7月に撤回されています(会社のお知らせで確認)。

優待だけ始めた6社は、半分が市場を下回った

では、株式分割をせず、優待だけを始めた会社はどうだったか。

会社 優待前 最新 増減 同じ期間の市場
楽天銀行 ※ 1万5,957人 2万6,074人 +63.4% +23.6%
トヨタ自動車 83万3,029人 106万8,960人 +28.3% +23.6%
コカ・コーラBJ(再導入) 4万3,995人 5万5,070人 +25.2% +10.0%
東京建物 1万6,701人 1万7,230人 +3.2% +10.0%
小糸製作所 1万6,571人 1万5,258人 △7.9% +23.6%
ほくほくFG 2万373人 1万8,323人 △10.1% +23.6%

※楽天銀行は2023年4月の上場なので、優待発表前の有価証券報告書がありません。表の「優待前」は、発表の約1か月後、初回の基準日(2024年3月末)の数字です。

市場を上回ったのは3社、下回ったのは3社。上回った3社も、トヨタは市場を4.8ポイント、コカ・コーラBJは15.1ポイント上回った程度で、分割と一緒だった5社(約80〜283ポイント上回った)のような大きな差にはなっていません。楽天銀行は上のとおり比べる起点が発表後なので、参考にとどめます。

そしてほくほくFGと小糸製作所は、優待を始めたのに個人株主が減りました。ほくほくFGの優待は「500株以上を1年以上」が条件です。100株だけ持つ人には関係のない優待でした。

優待だけでは、分割ほどには個人株主は増えなかった、というのが今回の答えです。

例外:分割したのに増えなかった第一ライフ

1社だけ、分割をしたのにほとんど増えなかった会社があります。第一ライフグループです。

第一ライフグループ 個人株主
2023年3月末(優待発表の前) 68万2,990人
2026年3月末 71万1,985人

3年で+4.2%。同じ3年の市場全体は+31.7%なので、大きく下回っています。

この会社は2025年4月1日に1株を4株に分割しています。取引所の表12にも載っていて、分割をまたいだ1年は+7.7%でした。その年に分割した会社の中央値+40.7%を大きく下回ります。

理由は断定できませんが、事実として書いておくと、分割のあと優待の対象は400株以上になり、100〜399株の株主は対象外でした。100株以上を対象に加えると発表したのは2026年1月14日です。株を買いやすくしたのに、買いやすい株数では優待がもらえない期間があったことになります。

やめた会社と、始めた会社をつなぐ2つの話

最後に、優待を「やめた」話と「始めた」話が1本につながった例を2つ紹介します。

1つ目はコカ・コーラ ボトラーズジャパンHDです。この会社は2019年12月に優待の廃止を決め、2020年3月の贈呈を最後にやめていました。そのときの理由がこれです。

現在の収益状況および将来にわたる株主のみなさまに対する公平な利益還元のあり方などの観点から、慎重に検討を重ねた結果

優待をやめる会社がよく使う「公平な利益還元」という言葉です。そして2025年2月、再導入のお知らせにはこう書きました。

Coke ONドリンクチケットを全面的に活用することにより発送費用を抑えて株主優待をお届けすることが可能となったことなどをふまえ

アプリにしたら安く配れるようになったので、戻したということです。今の優待が「自社アプリの入口」になっている理由が、この一文によく表れています。

2つ目は第一ライフグループとベネフィット・ワンです。

ベネフィット・ワンは2024年2月8日、「2024年3月期の通期連結業績予想及び期末配当予想の修正(無配)並びに株主優待制度の廃止に関するお知らせ」を出しました。第一生命ホールディングス(今の第一ライフグループ)による公開買付けが成立することが条件でした。ベネフィット・ワンは2024年5月23日付で第一生命ホールディングスの完全子会社になっています。

そして2024年8月13日、第一生命ホールディングスは自社の株主優待に、ベネフィット・ワンが運営する「ベネフィット・ステーション」を加えました。買われた会社の株主からは消えた優待が、買った会社の株主優待として戻ってきたわけです。

まとめ:新しい優待を見たら、4つを読む

長くなったので、使える形にまとめます。

1. 何株からもらえるか

100株からとは限りません。18社のうち、八十二長野銀行とほくほくFGは500株から、東京建物は200株から、花王は100〜399株だと抽選です。

2. 何年持てばもらえるか

東京海上HDは3年、ソフトバンク・三井不動産・三井住友FG(Vポイント)は1年です。保有期間は株主名簿に連続して載った回数で数え、証券会社を移すと数え直しになることがあります。

3. 何を登録すればもらえるか

18社のうち8社は、自社グループのアプリ・口座・会員登録が要ります。自分が使うサービスかどうかで、優待の価値は大きく変わります。

4. 初回の基準日と、初回にもらえるかは別の話

三井住友FGのように、初回の基準日の直前に買っても、一部の特典は1年後からです。

そして、会社が優待を始めた目的だった「個人株主を増やす」については、大きく増えたのは株式分割を同じ時期にした会社でした。優待だけを始めた会社は、半分が市場全体の増え方を下回っています。

優待は減っていません。でも、100株を持っていれば誰にでも届くものから、長く持って、自社のサービスを使う人に届くものへ、形が変わってきています。

この記事で見た資料

  • 18社の「株主優待制度の導入(新設)に関するお知らせ」全文と、その後の変更・拡充のお知らせ
  • 18社の有価証券報告書「所有者別状況」(合計84期)
  • 東京証券取引所ほか「2025年度株式分布状況調査の調査結果について」(2026年7月2日)表2・表12
  • コカ・コーラ ボトラーズジャパンHD「株主優待制度の変更および廃止に関するお知らせ」(2019年12月16日)
  • ベネフィット・ワン「2024年3月期の通期連結業績予想及び期末配当予想の修正(無配)並びに株主優待制度の廃止に関するお知らせ」(2024年2月8日)
  • 第一生命ホールディングス「株式会社ベネフィット・ワンの完全子会社化について」(2024年5月22日)
  • セブン&アイHD「1株当たりの配当金」ページ(2024年3月1日付の株式分割の記載)
  • セブン&アイHD「アリマンタシォン・クシュタール社のプレスリリースについて」(2025年7月17日)

※時価総額は2026年9月22日終値。優待の条件は各社のお知らせ時点のもので、変わることがあります。「判定」「最短の受け取り時期」「増減率」は私が計算したものです。

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コロナショック直前の2020年に投資をスタート。リアルタイムで暴落を経験しながら独学で投資の基礎を習得。 現在の運用総額5,000万円超・年間配当収入120万円超を達成。投資信託・ETF・個別株・米国株など100銘柄超に分散投資し、相場の波に強いポートフォリオを構築中。 高配当株の長期保有と新NISAの積立を組み合わせた"2刀流"スタイルで資産形成を実践。保有銘柄の決算・配当・株価をブログで赤裸々公開しています。YouTubeでも投資情報を発信中!

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