銀行業

メガバンク3社+SBI新生 2026年3月期決算|配当・自社株買い・ROEを横並び

2026年3月期は、メガバンク3社がそろって過去最高益を更新し、再上場した「第4のメガバンク候補」SBI新生銀行も26期ぶりの最高益となりました。日銀の利上げによる利ざや改善、政策保有株式の売却益、非金利ビジネスの拡大が同時に効いた格好です。

本記事では、三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)三井住友フィナンシャルグループ(8316)みずほフィナンシャルグループ(8411)に、SBI新生銀行(8303)を加えた4社の2026年3月期通期決算を、業績・配当・自己資本・株主還元方針までフラットに並べて整理します。順位づけや煽りはしません。「自分の投資方針にどの会社が合うか」を読者ご自身が判断するための材料を、表中心で渡すことを目的とした記事です。

三菱UFJ単独の詳細解説は三菱UFJ 2026年3月期決算 徹底解説記事で別途公開しています。本記事は4社横断比較に絞った構成で、銘柄選びの「視点の引き出し」を増やすことを目的としています。個別銘柄ごとの深掘り解説とあわせてご活用ください。

※本記事の数値は2026年5月15日までに各社が開示した決算短信・決算説明資料を一次情報として整理しています。株価関連指標は2026年5月15日終値時点(三井住友FGは決算翌営業日からの動きを反映、5月13日終値も併記)。

30秒で読める要約:4社の2026年3月期決算ハイライト

まず「ざっくり全体像」を1枚の表でつかみます。詳細はそれぞれの章で分解します。

項目 三菱UFJ
(8306)
三井住友
(8316)
みずほ
(8411)
SBI新生
(8303)
決算開示日 2026/5/15 2026/5/13 2026/5/15 2026/5/1
親会社株主に帰属する当期純利益 2兆4,272億円
(+30.3%)
1兆5,830億円
(+34.4%)
1兆2,486億円
(+41.0%)
1,134億円
(+34.2%)
連結ROE 11.3% 10.4% 10%超の水準と公表
※確定値は決算短信参照
具体水準は決算短信参照
2026年3月期配当金
(1株当たり年間)
86円
(中間35+期末51)
157円
(分割前ベース)
145円
(中間70+期末75)
34円
※業績連動配当方針
2027年3月期配当予想
(1株当たり年間)
96円
(中間48+期末48)
180円(分割前)
90円(分割後)
150円
(中間75+期末75)
現時点で期末配当未定
2027年3月期純利益予想 2兆7,000億円
(+10.3%)
1兆7,000億円
(+7.4%)
1兆3,000億円
(+4%程度)
税前ベース
FY2024比+50%目安
株式分割 なし 1:2分割
(2026/10/1効力発生予定)
なし なし
株主還元方針 配当性向40%目安+
機動的自己株式取得
累進的配当方針+
配当性向40%
累進的増配+
総還元性向50%以上目安
再上場後の方針
形成段階

出典:各社2026年3月期決算短信・決算説明資料/既公開MUFG記事/SBI新生銀行 新中期経営計画FY2025-2027(2025/5/9公表)/SBI新生 2026/3期配当はYahoo!ファイナンス・みんかぶ・finboard掲載値(2026/5/15時点取得)。注:ROEは「連結ROE」「銀行単体業務純益ベースROE」など定義が銀行ごとに異なります。みずほFGの2026年3月期通期ROE実績値は決算短信本文の財務指標欄をご参照ください。SBI新生銀行は中期経営計画KPIで税引前当期純利益を主指標としています。

表でぱっと見えるのは、純利益の絶対額では三菱UFJが2兆円台、三井住友・みずほが1兆円台、SBI新生は1,000億円規模と、4社の間に明確な規模差があるという点です。一方で増益率はみずほFGが+41.0%と最も高く、増益スピードでは三菱UFJ(+30.3%)を上回っています。配当も、年間配当金額の絶対額ではみずほ145円・三井住友157円が大きく、増配スピードでは三菱UFJ(64円→86円→96円予想)が目立つ、というふうに「何で測るか」で印象がはっきり変わります。

4社の基本プロフィールと株価指標(2026年5月15日終値ベース)

続いて、株価・PER・PBR・配当利回りを並べます。指標は2026年5月15日の終値ベース(三井住友FGは決算翌日の5月13日終値とその後の市場価格を併記)。SBI新生銀行は2025年12月17日に東証プライムへ再上場した銘柄で、上場直後は値動きが大きい点に留意が必要です。

項目 三菱UFJ
(8306)
三井住友
(8316)
みずほ
(8411)
SBI新生
(8303)
上場市場 東証プライム 東証プライム 東証プライム 東証プライム
(2025/12/17再上場)
株価
(2026/5/15終値)
約2,929円 約5,702円
(5/13終値5,852円)
約6,912円 1,700円前後
※再上場直後で日々変動
予想PER 約15.7倍 約14.5倍 約13.0倍 非掲載/決算後で
値動き大
実績PBR 約1.54倍 掲載値は変動
(決算後)
約1.49倍 非掲載/決算後で
値動き大
予想配当利回り 約2.5%前後 約2.7〜3.1%
(基準株価による)
約2.17%前後 約2.0%前後
(34円÷1,700円水準)

株価・指標は2026年5月15日終値ベース(みんかぶ・株予報Pro・松井証券 各銘柄ページから取得)。三井住友FGは5/13終値値(5,852円)とその後の市場価格(約5,702円)を併記しています。PER・PBR・配当利回りは決算発表直後で自己株式取得・株式分割の進捗により短期的に変動します。SBI新生銀行は再上場後の流動性・配当方針が形成段階にあり、PER・PBR・配当利回りは安定値として表示できる段階にないため省略している項目があります。最終的な売買判断時は、ご自身が利用される証券口座のリアルタイム情報を必ずご確認ください。

PER水準を見ると、三菱UFJが約15.7倍と4社の中で最も高く、みずほが約13.0倍と最も低い水準です。PBRはいずれも1倍超で、3メガバンクとも「PBR1倍割れ」の局面は脱しています。配当利回りは三井住友FGが2.7〜3.1%(基準株価次第)と高めで、SBI新生・三菱UFJ・みずほは2%前後にとどまります。「配当利回り重視か」「PBR水準で見るか」「成長率で見るか」によって、評価軸が変わってきます。

3メガバンクが「PBR1倍割れ」を脱したのは、東証のPBR1倍割れ企業への改善要請、政策保有株の縮減進捗、自社株買いの積極化など複数要因が重なった結果です。一方でPBR水準は引き続き、米欧の大手金融機関と比べて低い水準にとどまるという指摘もあり、長期的な株価評価の余地をどう見るかは投資家ごとに分かれます。

2026年3月期 連結業績の比較(業務純益・経常利益・親会社株主純利益)

4社とも収益拡大が顕著ですが、利益成長率は同水準ではありません。みずほFGの+41.0%が最も大きく、続いて三井住友FG(+34.4%)、SBI新生(+34.2%)、三菱UFJ(+30.3%)と並びます。ただし利益の絶対額では三菱UFJが2兆4,272億円と他社を上回っており、規模感の差は明確です。

項目(連結ベース) 三菱UFJ 三井住友 みずほ SBI新生
経常収益 決算短信参照 10兆7,909億円
(+6.1%)
9兆854億円
(+0.6%)
決算短信参照
連結業務純益(注) 2兆3,772億円
(+7,860億円)
各社開示参照
※細目は決算短信
実質業務純益
傘下行合計大幅増
業務粗利益拡大
※細目は短信参照
経常利益 3兆4,101億円
(+27.7%)
2兆3,034億円
(+34.0%)
1兆5,731億円
(+34.6%)
1,233億円
(+58.6%)
親会社株主に帰属する当期純利益 2兆4,272億円
(+30.3%)
1兆5,830億円
(+34.4%)
1兆2,486億円
(+41.0%)
1,134億円
(+34.2%)
過去最高益更新 更新 3期連続更新 2期連続更新
(初の1兆円台)
26期ぶり更新

注:銀行決算では「業務純益」「実質業務純益」「連結業務純益」「銀行単体業務純益」など複数の集計区分が併存します。比較表ではグループが代表値として公表する数値を採用し、定義の違いがある場合は注記しています。詳細な内訳は各社決算短信・決算ハイライト資料をご参照ください。

「業務純益」の集計区分に関する注意

銀行業の決算を読む際に最初に引っかかりやすいのが、「業務純益」という言葉の使い分けです。同じ会社の決算資料でも、以下のように複数の数値が並ぶことがあります。

  • 連結業務純益:グループ全体(信託・証券・海外子会社含む)の業務純益
  • 銀行単体業務純益:傘下銀行本体(三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行)単体ベース
  • 実質業務純益:一般貸倒引当金繰入前ベースで信用コスト変動の影響を排除した本業ベース
  • のれん償却前/償却後:海外子会社買収によるのれん償却負担を除外するかどうか

4社を厳密に同じ定義で並べるには、決算短信・決算ハイライトの該当ページまで読み込む必要があります。他社比較サイトで数字が違うと感じた場合、まずこの集計区分の違いを疑ってみてください。例えば三菱UFJの場合、銀行単体業務純益の「一般貸倒引当金繰入前」と「のれん償却前」の2区分で十数億円の差が出ることがあり、各社の決算ハイライトでもどの数値を強調表記するかが微妙に異なります。

また、3メガバンクとSBI新生では事業構造そのものが違うため、「業務純益」と単純に並べても比較しづらい部分があります。SBI新生銀行はノンバンク(消費者金融)事業を含む総合金融グループであり、3メガバンクの「銀行業務純益」と直接横並びにすると違和感が出る集計項目もあります。本記事では4社を強引に同じ指標で比較するのではなく、それぞれが代表値として公表している数値を表に並べる方針を採用しました。

セグメント別の状況:収益の「色」がそれぞれ異なる

同じメガバンクと言っても、収益の源泉構成(リテール/法人/市場/海外)は3社で微妙に異なります。決算ハイライト資料に掲載されている各社のセグメント別業績の方向感を、概略レベルでまとめます。

セグメント方向感 三菱UFJ 三井住友 みずほ
国内リテール/個人 住宅ローン・運用商品
を中心に堅調
SMBC日興証券
含む個人取引が拡大
非金利ビジネス
(コンサル・運用)拡大
国内法人/ホールセール 法人・ウェルス +1,116億円
コーポレートバンキング +590億円
SMBC日興+三井住友銀行
連携深化
M&A助言、不動産仲介
クロスボーダー案件好調
市場部門 市場 +7,071億円
政策保有株売却益寄与
市場関連収益
金利環境の追い風
非金利ビジネスと
政策保有株売却益寄与
海外 グローバルCIB +487億円
米国 ほか幅広い展開
米国SMBC Americas
+ アジア展開
米国・欧州
クロスボーダーM&A

出典:各社決算ハイライト資料(2026年5月13日/5月15日開示)/三菱UFJのセグメント増減額は既公開MUFG単独記事の数値と整合させて記載。三井住友・みずほのセグメント別具体額は各社決算ハイライトをご参照ください。各社セグメント定義は微妙に異なるため、厳密な横並び比較には公式IRの注記参照を推奨します。

「市場」「政策保有株式売却益」は将来も継続するのか

2026年3月期は3メガバンク・SBI新生のいずれも、政策保有株式の売却益が業績を押し上げる重要な要因となりました。これは「保有株式の縮減」というガバナンス課題と「短期的な利益計上」が両立する局面ですが、永久に続く性質の収益ではありません。2027年3月期以降の業績予想を読む際は、「保有株売却益の剥落をどう吸収しているか」を併せてチェックしておくと、本業の地力が見えやすくなります

3社の中で政策保有株縮減を最も具体的な計画として公表しているのが三井住友FGで、FY2024〜2028の5年間で6,000億円の縮減計画を持ちます。三菱UFJは中計累計で4,410億円の売却を進捗中。みずほFGも継続的な売却方針を公表しており、いずれも今後数年は売却益が業績に一定の貢献をする構図です。

自己資本比率・CET1比率:健全性の現在地

銀行株を見るときに外せないのが、資本の厚みです。バーゼルIIIの完全実施ベースで、各社が「ターゲットレンジ」をどこに置いて運営しているかを確認します。

項目 三菱UFJ 三井住友 みずほ SBI新生
CET1比率(含み益除き) 9.2%
(Shriram Finance出資▲0.65%含む)
決算説明資料参照 2025年3月末10.3%
※2026年3月末値は短信参照
連結自己資本比率
9.68%
ターゲットレンジ 9.5〜10.5% 10%程度 運営レンジ上限近辺 再上場後に明確化
規制最低基準(資本保全バッファー等含む) クリア クリア クリア クリア

注:CET1比率は「その他有価証券評価差額金を含む/除く」の2区分があり、各社で公表ベースが異なります。本表は「含み益除き」ベースをそろえる前提で各社開示資料から拾っていますが、定義の差は必ず元資料で確認してください。三井住友FG・みずほFGの2026年3月末確定値は決算短信・バーゼルⅢ開示資料をご参照ください。SBI新生銀行は連結自己資本比率を併記。

3メガバンクのCET1比率は概ね9〜10%台と、規制最低水準を上回る健全な水準を維持しています。三菱UFJは2026年3月期にインド系金融サービス会社Shriram Financeへの出資(CET1比率に▲0.65%の影響)があり、それでも9.2%を確保しています。これらは「資本余力=株主還元の原資」として今後の自社株買い余地に直結する数字です。三井住友FGは「CET1比率10%程度」を中期的なターゲットとして公表しており、目標達成タイミングが市場の注目点となっています。

配当推移(過去5年):3メガバンクは増配トレンド

株主還元の中で最もシンプルな指標である「年間配当金」の過去5年の推移を整理します。3メガバンクはいずれも増配トレンドにあり、三井住友FGは2027年3月期予想(分割前換算180円)で6期連続増配、三菱UFJは2025年3月期64円→2026年3月期86円→2027年3月期予想96円と段階的な増配を継続しています。

1株当たり年間配当(円) 三菱UFJ 三井住友
※2026/10/1の1:2分割は反映前
みずほ SBI新生
※再上場前は非上場
2022年3月期 28円 110円 80円 ―(非上場)
2023年3月期 32円 120円 85円 ―(非上場)
2024年3月期 41円 135円 105円 ―(非上場)
2025年3月期 64円 122円
(分割考慮後)
140円 ―(非上場)
2026年3月期(実績) 86円 157円 145円 34円
2027年3月期(予想) 96円 180円(分割前換算)
90円(分割後)
150円 期末配当未定

注:三井住友FGは過去にも株式分割の経緯があり、過去配当も分割考慮ベースで表示があります。本表は各年度の公表値を可能な範囲で「現行株式換算後」で記載していますが、厳密には公式IRサイトの配当推移ページをご確認ください。SBI新生銀行は2023〜2025年が非上場期間で、再上場後の2026/3期年間配当は34円(Yahoo!ファイナンス・みんかぶ・finboard掲載値の複数ソース照合により確定)。2027/3期の期末配当方針は適時開示をご参照ください。

3メガバンクの増配は、いずれも純利益の拡大と歩調を合わせる形で進んでいます。配当方針上、三井住友FGとみずほFGは「累進的」な増配を打ち出しており、業績が悪化した局面でも配当を維持・増配し続ける枠組みを公式に表明しています。三菱UFJは中期経営計画で「配当性向40%目安+機動的自社株買い」の組み合わせを掲げており、実質的に累進的運用に近い形が継続しています。

配当推移を5年スパンで眺めると、三菱UFJの増配ペースが顕著です。2022年3月期の28円から2027年3月期予想96円まで、5年で約3.4倍に伸びています。三井住友FG・みずほFGも増配を続けていますが、伸び率では三菱UFJが先行する形となっています。一方で配当の絶対水準を見ると、みずほFG145円・三井住友FG157円(分割前)が、三菱UFJ86円より大きいという構造もあり、「増配率で選ぶか」「配当の絶対水準で選ぶか」によって評価が変わります。なお三井住友FGは2026年10月1日効力発生予定の1:2株式分割により、分割後ベースでは2027年3月期予想配当が90円となります(分割前換算では180円相当)。

株主還元方針の比較:累進的配当・配当性向・自社株買い

「配当方針」の言葉づかいは似ていても、内実は3社それぞれです。表面的な配当利回りだけでなく、「どういう条件で増配が続きうるか」「自社株買いの設計はどう違うか」を整理しておくと、長期保有時の安心材料が変わってきます。

項目 三菱UFJ 三井住友 みずほ SBI新生
配当方針 配当性向40%程度
(中計目安)
累進的配当方針+
配当性向40%
累進的増配+
毎期5円目安に増配
再上場後に方針
形成中
自社株買い
(2026年3月期実績/2027年3月期)
5,000億円
+27年上期 上限1,000億円
1,800億円
(追加発表)
年間合計4,000億円
(5月1,000+11月2,000+2月1,000億円決議)
再上場直後で
大型枠は未設定
総還元性向の考え方 配当+自社株買いを
機動的に組み合わせ
配当性向40%維持の上で
機動的自社株買い
総還元性向50%以上を目安 明示の数値目標は
今後の中期計画で具体化見込み
政策保有株縮減 中計累計売却4,410億円
(中計目標:別途公表)
FY2024〜2028で
6,000億円計画
政策保有株売却を継続
※具体額は決算説明参照
SBIホールディングス
との連携が中心

注:「累進的配当方針」とは、業績悪化時にも減配せず、配当を維持または増配し続ける株主還元方針です。三井住友FGは公式IRで「累進的配当方針」を明示しています。みずほFGも「累進的な1株当たり増配+機動的な自己株式取得」を株主還元方針として開示しています。三菱UFJは「配当性向40%目安+機動的自社株買い」を中計で示しており、実質的に累進的運用に近い形が継続しています。

自社株買いの規模感を見ると、2026年3月期はみずほFGの年間4,000億円が3メガバンクの中で最大規模となりました。三菱UFJは5,000億円の自社株買いを完了し、2027年3月期上期も上限1,000億円を予定。三井住友FGは1,800億円の追加自社株買いを発表しています。配当だけでなく自社株買いも含めた総還元性向で比較すると、各社の還元姿勢の温度差がよりはっきり見えてきます

自社株買いは、配当と並ぶ株主還元の柱であると同時に、1株当たり利益(EPS)の押し上げ効果も持ちます。みずほFGの総還元性向「50%以上を目安」は、配当性向を超える還元水準を中長期で維持する姿勢を示すもので、株主にとっては安心材料と言えます。三菱UFJの「配当性向40%目安+機動的自社株買い」は、年度の業績や資本余力に応じて自社株買いの規模を柔軟に調整する設計で、ROE向上にも資する形となっています。三井住友FGは累進的配当方針と自社株買いの両輪で還元を進めており、株式分割による流動性改善も合わせて、個人投資家のすそ野を広げる施策が並びます。

SBI新生銀行は再上場直後ということもあり、大型の自社株買い枠は現時点で未設定です。今後の中期経営計画の進捗・利益水準の安定化に応じて、株主還元方針が具体化していく段階と整理できます。

中期経営計画の進捗:KPIの並び

中期経営計画は、銀行にとって「3〜5年後にどこを目指すか」の北極星です。各社の現行中計のKPI(主要業績指標)を並べます。

項目 三菱UFJ
(2024〜2026年度)
三井住友
(2023〜2025年度)
みずほ
(2023〜2025年度)
SBI新生
(2025〜2027年度)
純利益目標
(最終年度)
2027年3月期予想
2兆7,000億円
2027年3月期予想
1兆7,000億円
2027年3月期予想
1兆3,000億円
税前ベース
FY2024比+50%目安
ROE目標 12%程度を志向 ROTE15%水準
を中長期で志向
連結ROE 10%超 段階的にROE向上
経費率目標 60%程度 業務粗利益経費率の
中期的な低下
経費効率
業務純益との両立
連結経費率の改善
政策保有株縮減 中計累計売却4,410億円 FY2024-28で6,000億円 毎期一定額売却
+利益貢献
SBIG連携で
運用効率化
サステナブルファイナンス 2030年度までに
100兆円(環境50兆円)
2030年度までに
50兆円規模
2030年度までに
サステナブル投資拡大
個別方針は別途

注:各社中期経営計画の対象年度・KPI定義はそれぞれ異なります。「純利益目標」と「翌期業績予想」は厳密には別物(予想は通期業績見通しベース、目標は中計最終年度の数字)であるため、本表は2027年3月期に注目を集める数値として参考表示しています。SBI新生銀行の中計税前利益のFY2024実績は877億円(大口の負ののれん益117億円を除外した数値)です。

2027年3月期業績予想の並列比較

各社が2026年5月の通期決算発表に合わせて開示した2027年3月期の業績予想を一覧化します。SBI新生銀行は中期経営計画上の税引前当期純利益の目標方向感を併記しました。

項目(2027年3月期) 三菱UFJ 三井住友 みずほ SBI新生
※中計KPIベース
業務純益(目標) 2兆9,000億円
(決算ハイライト)
非公表
(経常利益ベース)
非公表
(連結業務純益で1.4〜1.6兆円中計)
中計で段階拡大方針
経常利益(予想) 3兆9,500億円 経常利益増益方向
(具体値は短信参照)
2026年3月期1兆5,731億円から
増益方向
親会社株主に帰属する当期純利益(予想) 2兆7,000億円
(+10.3%)
1兆7,000億円
(+7.4%)
1兆3,000億円
(+4%程度)
税前ベース
FY2024比+50%目安
1株当たり配当金(予想) 96円 180円(分割前換算)
90円(分割後)
150円 期末配当未定
与信費用見通し 引き続き低位 3,400億円
(前期比12%減)
低位安定見通し 個人ローン中心に管理

注:業績予想は2026年5月時点の各社開示値。為替・金利環境・市場環境の変化により会社見通しは見直されることがあります。最新の四半期決算発表で予想修正が行われた場合は、必ず最新版をご確認ください。

2027年3月期も4社とも増益を見込む内容ですが、増益率は三菱UFJ+10.3%、三井住友+7.4%、みずほ+4%程度と差があります。2026年3月期に大幅増益となった反動と、政策保有株売却益の剥落を、本業のどこまで吸収できるかが2027年3月期の見どころです。SBI新生銀行は中計最終年度(2027年度)の税前利益でFY2024比+50%という目標を掲げており、3メガバンクとは異なる成長軌道での評価が必要になります。

「第4のメガバンク候補」SBI新生銀行の立ち位置

SBI新生銀行は、2023年9月に一度上場廃止となり、SBIホールディングス傘下で公的資金の完済(2025年7月31日)を済ませた後、2025年12月17日に東証プライムへ再上場した経緯を持ちます。「3メガバンク」とは資本規模・店舗網・海外展開の厚みで明確に差があり、本記事では「第4のメガバンク候補」として整理しています。

項目 SBI新生銀行 3メガバンクとの比較ポイント
連結純利益(2026年3月期) 1,134億円(+34.2%) 3メガバンクと比べ規模はおおよそ十分の一以下
事業特徴 銀行+ノンバンク(消費者金融)
を併せ持つ総合金融
3メガバンクは投信・証券・信託が中心。消費者金融は限定的
SBIグループとの関係 SBIホールディングスの
連結子会社(再上場後も継続)
3メガバンクは独立持株会社で完結
個人向け事業 ネット銀行+アプリ+
新生フィナンシャル(消費者金融)
3メガバンクは店舗・ATM網も併用
2026年3月期配当金 1株あたり34円
(複数二次情報源で確認)
3メガバンクは中間+期末の構成
SBI新生は業績連動配当方針

注:SBI新生銀行の事業特徴・グループ関係はSBIホールディングスの開示資料・新規上場関連資料に基づきます。2026/3期配当金は2026年5月15日時点のYahoo!ファイナンス・みんかぶ・finboardでの複数掲載値(34円)を採用しました。再上場直後の数か月は株価変動が大きい銘柄であり、3メガバンクと同列の安定銘柄として扱う前にボラティリティの理解が必要です。

「第4のメガバンク」呼称について

「第4のメガバンク」という呼称は、SBI新生銀行の再上場前後に一部メディアが用いた表現で、正式な金融行政上のカテゴリではありません。総資産・利益規模・ネットワークの広がりでは、まだ3メガバンクとSBI新生の間には明確な差があるため、本記事ではあくまで「第4のメガバンク候補」「総合金融グループの一角」という整理にとどめています。SBI新生銀行は親会社のSBIホールディングスの戦略との一体運営が前提であるため、株主としての評価軸は3メガバンクとは異なる視点(SBIグループ全体の方針、ノンバンク事業の収益性等)が必要になります。

投資家タイプ別の整理:どんな視点で銀行株を見るか

4社の決算と方針を並べたところで、「では自分はどう見ればいいか」を整理しておきます。本記事はどの銘柄についても投資判断を断定しません。あくまで「自分の投資方針との相性を判断するための切り口」を渡す姿勢です。

投資家タイプ 重視する切り口 本記事で参照する表
高配当インカム志向 配当利回り・累進的配当方針の明示・
配当性向の安定性
「配当推移」「株主還元方針」
キャピタルゲイン志向 利益成長率・PBR・自社株買い規模・
株式分割による流動性
「2026年3月期連結業績」
「自社株買い」「株式分割」
安定志向 自己資本比率・CET1比率・
規制対応の状況
「自己資本比率・CET1比率」
「中期経営計画」
中長期テーマ志向 サステナブルファイナンス・
政策保有株縮減・海外戦略
「中期経営計画」
「セグメント別状況」
イベント志向 新規上場直後の銘柄
SBI新生のような事業構造
「SBI新生銀行の立ち位置」

4社のうち、どれが「向いている/いない」は、投資する人の投資期間・収益形態・リスク許容度によって変わります。同じ「銀行株」でも、3メガバンクの中ですら株主還元方針は異なり、SBI新生銀行と並べると性質はかなり違います。例えば「累進的配当を重視するなら三井住友FG・みずほFG」「自社株買いの厚みを重視するなら三菱UFJ・みずほFG」「株式分割で投資単位の引き下げを期待するなら三井住友FG」「ノンバンク事業も含めた総合金融に投資したいならSBI新生銀行」、というふうに整理できます。

リスクポイント:金利・為替・地政学・規制・市場環境

銀行株の長期投資を考える際に押さえておきたい主要リスクを整理します。これらは「投資しない理由」ではなく、「投資判断のときに同時に頭に置いておく変数」として読んでください。

リスクカテゴリ 内容と影響 特に影響を受けやすい銘柄
金利環境 日銀政策金利・米長期金利の変動。利ざや拡大の恩恵は金利上昇局面で顕著、利下げ局面では収益圧迫要因 4社いずれも影響大
為替 円安は海外子会社の円換算利益を膨らます。急激な円高は利益下押し要因 海外比率の高い
三菱UFJ・三井住友
地政学 米中対立・新興国情勢・ロシア関連エクスポージャー グローバル展開の
三菱UFJ・三井住友
規制 バーゼル規制の段階的見直し・マネロン・ESG開示要求 4社いずれも影響大
株式市場 政策保有株式の含み益・売却益依存。株価急落時には自己資本比率にも影響 4社いずれも影響あり
クレジット環境 景気後退時の与信費用増加。商業用不動産・スタートアップ向け融資の不良債権化 4社いずれも管理対象
個別固有リスク 三菱UFJ:海外大型出資の評価
三井住友:株式分割後の需給
みずほ:システム関連リスク管理
SBI新生:再上場直後の流動性
各社固有

注:上記は一般的に銀行業に共通するリスクと、各社の事業特性から想定される個別リスクの整理です。網羅性を保証するものではなく、最新の有価証券報告書「事業等のリスク」のセクションを必ずご確認ください。

金利環境は4社の業績を共通して左右する要素ですが、特に2026年3月期の好業績は日銀の利上げ局面と重なったことが大きな追い風となりました。今後利下げ局面に転じた場合、利ざやの縮小により4社いずれも収益が圧迫される可能性があります。為替・地政学リスクは海外比率の高い三菱UFJ・三井住友FGに相対的に影響が大きく、システム関連リスクはみずほFGが過去のシステム障害の経緯から特に開示・管理を強化しているテーマです。

2026年3月期の業績を押し上げた要因のうち、政策保有株式の売却益は3メガバンクとも継続的な縮減計画の枠内で発生したもので、計画年度内は一定額の売却益寄与が続く見通しです。ただし保有株式残高は売却が進むほど減少するため、売却益の貢献も中長期では逓減していくと考えるのが自然です。2027年3月期以降の予想を読む際は、「利ざや拡大による本業の伸び」と「政策保有株売却益の剥落」を分けてチェックすると、銀行株の地力が見えやすくなります

個別固有リスクの面では、三菱UFJが2026年3月期に実行したインドShriram Financeへの出資(CET1比率に▲0.65%の影響)のような海外大型出資の評価が継続的なテーマとなります。三井住友FGは2026年10月1日の1:2株式分割後、需給面で短期的な値動きが出やすい局面が想定されます。みずほFGは過去のシステム障害の経緯を踏まえたリスク管理体制の継続強化が重要です。SBI新生銀行は再上場直後で流動性・出来高の安定が課題であり、3メガバンクと同列のボラティリティ前提では捉えにくい銘柄と言えます。

よくある質問(FAQ):銀行株を比較する時のポイント

4社を比較しようとする読者から、よく頂く質問をまとめます。

質問 本記事での回答方向性
4社の中で純利益が大きいのはどこ? 三菱UFJが2兆4,272億円で最大、次いで三井住友1兆5,830億円、みずほ1兆2,486億円、SBI新生1,134億円の順(2026年3月期実績)
増益率が高いのはどこ? みずほFGが+41.0%で最も高く、三井住友+34.4%、SBI新生+34.2%、三菱UFJ+30.3%(2026年3月期実績)
配当利回りが高いのはどこ? 三井住友FGが2.7〜3.1%で4社の中で最も高い水準(2026/5/15時点)
累進的配当方針を明示しているのは? 三井住友FGとみずほFGが公式IRで明示。三菱UFJは「配当性向40%目安+機動的自社株買い」
株式分割を予定しているのは? 三井住友FGが2026/10/1効力発生予定の1:2分割を発表
SBI新生銀行は3メガバンクと同じように扱える? 規模・事業構造・株主構成(SBIHD連結子会社)が異なるため、3メガバンクと同列の安定銘柄としては扱わない方が無難
2026/3期の配当はいくらだった? 三菱UFJ86円・三井住友157円・みずほ145円・SBI新生34円(年間ベース、いずれも1株あたり)

注:上記は本記事の整理に基づく一般的な参考情報であり、個別の投資判断を保証するものではありません。最新の数値・配当金額は各社の公式IR・適時開示でご確認ください。

同日決算からみえる「メガバンクの現在地」

2026年3月期は、メガバンク3社がそろって過去最高益、SBI新生銀行も26期ぶり最高益と、銀行セクター全体が大幅増益となる象徴的な決算でした。日銀の利上げによる利ざや改善、政策保有株式の売却益、非金利ビジネスの拡大が同時進行で寄与した結果です。

株主還元の面では、3メガバンクとも「配当性向40%目安または累進的配当方針」を軸に、自社株買いを柔軟に組み合わせる形になっています。株式分割を控えた三井住友FG、配当の絶対水準が大きいみずほ、配当成長率が目立つ三菱UFJ、再上場直後で総合金融グループとして独自構造を持つSBI新生と、4社それぞれの「色」が見える決算でした。

三菱UFJ単独のより詳細な数値・セグメント別の動きについては三菱UFJ 2026年3月期決算 徹底解説記事もあわせてご参照ください。

これらの数値が今後の株価にどう反映されるかは、金利・為替・市場環境次第です。本記事はあくまで「同じ土俵に4社を並べて整理した資料」であり、特定銘柄の購入・売却を勧めるものではありません。投資判断は、必ずご自身で各社の決算短信・有価証券報告書を確認の上、自己責任で行ってください。

まとめ:4社の特徴を1行で整理

銘柄 2026年3月期の決算と還元方針の特徴
三菱UFJ
(8306)
純利益2兆4,272億円。連結ROE 11.3%・自社株買い5,000億円実績。中計KPI(純利益2.7兆円・ROE12%程度)の達成フェーズ
三井住友
(8316)
純利益1兆5,830億円。累進的配当方針を明示し、2026年10月1日効力発生予定の1:2株式分割で投資単位を引き下げ。中長期ROTE15%水準を志向
みずほ
(8411)
純利益1兆2,486億円で初の1兆円台。総還元性向50%以上目安、年間4,000億円の自社株買いを決議
SBI新生
(8303)
純利益1,134億円で26期ぶり最高益。1株配当34円(業績連動配当方針)。再上場後の中計KPIは形成段階。ノンバンク併設の総合金融という独自構造

4社それぞれの特徴を踏まえつつ、ご自身の投資方針との相性を確認していただければ幸いです。銀行株は「同質」ではなく、配当方針・成長戦略・事業構造ですべて異なります。表に並べてみると、その違いがよりはっきり見えてきます。

本記事の前半では4社の業績・配当・自社株買い・株主還元方針を表中心で並べ、後半では「投資家タイプ別の整理」「リスクポイント」「FAQ」というかたちで読者ご自身が判断するための材料を整理しました。同じ「メガバンク」「銀行株」というカテゴリでも、実際の投資判断にあたっては、配当方針の累進性、自社株買いの規模、ROE目標水準、政策保有株縮減のスピード、海外展開の厚み、株式分割の予定、再上場直後の流動性など、複数の軸を組み合わせて考える必要があります。

銀行株は2024〜2026年にかけて、PBR1倍割れ脱却・配当利回り改善・自社株買い拡大と、株主還元の面で大きな転換期を迎えました。2027年3月期以降は政策保有株売却益の剥落をどう吸収するか、本業の利ざや拡大が継続するか、海外事業の収益寄与がどう変化するかが重要な観点となります。本記事はあくまで「2026年5月時点の決算開示を横並びで整理した資料」であり、最新の業績・株主還元動向は各社の決算短信・適時開示を継続的にウォッチしていく必要があります。

免責事項

本記事は2026年5月18日時点で各社が公表している2026年3月期決算短信・決算ハイライト資料・適時開示および公開報道をもとに、筆者個人が整理した内容です。記載の数値は執筆時点の公表値であり、その後の修正・訂正が反映されていない可能性があります。本記事は特定の金融商品の購入・売却を推奨するものではなく、投資判断はご自身の責任において行ってください。掲載された情報の正確性については最善を尽くしていますが、それらを保証するものではありません。実際の投資判断にあたっては、必ず最新の公式IR資料(決算短信・有価証券報告書・適時開示等)をご確認ください。

主要参考資料:三菱UFJフィナンシャル・グループ 2026年3月期決算短信・決算ハイライト(2026/5/15開示)/三井住友フィナンシャルグループ 2026年3月期決算短信・決算説明資料(2026/5/13開示)/みずほフィナンシャルグループ 2026年3月期決算短信(2026/5/15開示)/SBI新生銀行 2026年3月期決算短信(2026/5/1開示)および新中期経営計画FY2025-2027(2025/5/9公表)/既公開記事:三菱UFJ 2026年3月期決算解説(https://kabu.tagu-blog.com/mufg-8306-2026-q4-earnings-deep-dive/)/株価・PER・PBR・配当利回り:みんかぶ・株予報Pro・松井証券 各銘柄ページ(2026/5/15時点取得)/SBI新生 2026/3期配当金:Yahoo!ファイナンス・みんかぶ・finboard 各銘柄ページ(2026/5/15時点取得)。

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たぐ

コロナショック直前の2020年に投資をスタート。リアルタイムで暴落を経験しながら独学で投資の基礎を習得。 現在の運用総額5,000万円超・年間配当収入120万円超を達成。投資信託・ETF・個別株・米国株など100銘柄超に分散投資し、相場の波に強いポートフォリオを構築中。 高配当株の長期保有と新NISAの積立を組み合わせた"2刀流"スタイルで資産形成を実践。保有銘柄の決算・配当・株価をブログで赤裸々公開しています。YouTubeでも投資情報を発信中!

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