※この記事は、各社が公表した決算短信をもとに、2026年8月22日時点の情報でまとめたものです。特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資の判断はご自身の責任でお願いします。株価・指標は2026年8月21日の終値を基準にしています。
はじめに|本には「赤字」と書いてあるのですが
日本経済新聞社の『業界地図 2027年度版』を開くと、化粧品最大手・資生堂の欄にこう書いてあります。
営業利益 ▲287億円。
売上9,699億円の業界最大手が、営業赤字。かなりの衝撃です。
ところが、最新の決算を開けてみたら、もう戻っていました。
資生堂の2026年12月期中間期は、営業利益419億円。前年同期比で131.8%増です。最終利益にいたっては211.4%増。
本に載っている数字は2025年12月期、つまり前の期の実績でした。本が間違っているわけではありません。その後に状況が変わったのです。
そして、もっと意外なことが起きていました。
資生堂が戻る一方で、コーセーホールディングスが営業利益41.5%減の大幅減益になっていたのです。
同じ化粧品業界で、同じ半年間で、明暗が入れ替わっている。今回はそこを見ていきます。
結論
先に結論をお伝えします。
資生堂の中間期の営業利益は419億円で、前年同期比131.8%増。 前の期は通期で287億円の営業赤字でしたから、大きく戻したことになります。通期予想の営業利益590億円に対して、半年で71.1%まで進んでいます。
その同じ期間に、コーセーホールディングスは営業利益41.5%減。 通期予想に対する進捗は33.1%にとどまります。
営業利益率で見ると、順番が入れ替わっています。
| 会社 | 前年同期 | 今回 |
|---|---|---|
| 資生堂 | 3.8% | 8.4% |
| コーセーホールディングス | 7.1% | 4.0% |
半年で、資生堂がコーセーを追い抜きました。
5社を並べると、営業増益が3社(資生堂・花王・ポーラオルビス)、減益が2社(コーセー・ノエビア)。
ただし、資生堂について1つ大事な注意点があります。売上は表面上6.2%増えていますが、為替の影響などを除いた実質は0.2%減。ほぼ横ばいです。 戻ったのは利益であって、売上ではありません。ここは記事の中で詳しく書きます。
1. 化粧品株は、買える会社が減っています
本題の前に、対象を整理します。
今回取り上げるのは、化粧品を主力にしている上場5社です。
| 会社 | コード | 市場 | 決算期 |
|---|---|---|---|
| 資生堂 | 4911 | 東証プライム | 12月期 |
| 花王 | 4452 | 東証プライム | 12月期 |
| コーセーホールディングス | 4922 | 東証プライム | 12月期 |
| ポーラ・オルビスホールディングス | 4927 | 東証プライム | 12月期 |
| ノエビアホールディングス | 4928 | 東証プライム | 9月期 |
対象は時価総額1,000億円以上に絞っています。5社とも東証プライムで、いちばん小さいノエビアホールディングスでも1,665億円です。
そして、この業界は買える会社が減り続けています。
- ファンケルは2024年12月にキリンホールディングスの完全子会社となり、上場廃止
- DHCは2023年1月にオリックスが買収し、子会社化
- マンダムは2026年5月に上場廃止。欧州のファンドの傘下に入りました
ほかにも、カネボウ化粧品(花王のグループ)、アルビオン(コーセーのグループ)、セザンヌ化粧品、ちふれホールディングス、伊勢半ホールディングス、日本メナード化粧品など、名前を知っている会社の多くが上場していません。
「CANMAKE(キャンメイク)」で知られる井田ラボラトリーズも未上場です。
3年で3社が市場から消えたことになります。プライム市場で化粧品を主力にしている会社は、もうかなり限られています。
なお、業界の規模は国内化粧品市場で2兆9,509億円(2025年、TPCマーケティングリサーチ)。業界地図の2027年度の天気図は108となっています。
2. 比較の前提|今回は少し複雑です
数字を並べる前に、注意点を4つお伝えします。地味ですが、ここを飛ばすと数字を読み違えます。
ひとつ、決算期がそろっていません。
5社のうち4社は12月決算で、今回の対象期間は2026年1月〜6月の6か月。ここは完全に一致します。
ただしノエビアだけ9月決算で、今回は第3四半期。対象は2025年10月〜2026年6月の9か月です。金額の大小は比べられないので、増減率と利益率で見てください。
ふたつ、会計基準が2種類あります。
資生堂と花王がIFRS(アイファース。国際会計基準のことです)、コーセー・ポーラオルビス・ノエビアが日本基準。IFRSには経常利益という項目がありませんので、5社を並べた表に経常利益の欄は作れません。
みっつ、資生堂は「コア営業利益」という独自の指標を短信の1ページ目に載せています。
決算短信の注記には、こう書かれています。
「コア営業利益は、営業利益から構造改革に伴う費用・減損損失・買収関連費用等、非経常的な要因により発生した損益(非経常項目)を除いて算出しています。」
中間期でいうと、コア営業利益が444億円、正式な営業利益が419億円。25億円の差があります。他社と並べるときは、正式な419億円のほうを使います。
よっつ、花王は会計基準の変更と株式分割が重なっています。
花王は2026年12月期の第1四半期から、IFRS第18号という新しい基準を早期適用しました。そのため前年同期の営業利益は遡及(そきゅう)修正、つまり新しい基準に合わせて過去の数字を直したものになっています。
そして会社自身は、営業利益の増減率を短信に載せていません。 この記事に出てくる「+38.5%」は、私が自分で計算した数字です。
さらに花王は2026年7月1日に1株を2株にする株式分割をしています。配当や株価を前の期と比べるときは、分割を考えないと数字を読み違えます。
3. 5社の決算一覧
前置きが長くなりました。数字を見ていきます。
| 会社 | 対象期間 | 売上 | 前年同期比 | 営業利益 | 前年同期比 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 資生堂 | 6か月 | 4,990億円 | +6.2% | 419億円 | +131.8% | 8.4% |
| 花王 | 6か月 | 8,719億円 | +7.8% | 958億円 | +38.5% | 11.0% |
| ポーラ・オルビスHD | 6か月 | 843億円 | +1.3% | 100億円 | +21.1% | 11.8% |
| ノエビアHD | 9か月 | 461億円 | △2.6% | 69億円 | △13.9% | 15.0% |
| コーセーHD | 6か月 | 1,649億円 | +2.7% | 66億円 | △41.5% | 4.0% |
※ノエビアだけ9か月分です。金額の大小は比べられません。
※花王の営業利益の増減率は自分で計算した値です。前年は遡及修正後の数字です。
営業増益が3社、減益が2社。 そして増益率で見ると、資生堂の+131.8%と、コーセーの△41.5%が両極端です。
利益率で見ると、いちばん高いのはノエビアの15.0%。いちばん低いのはコーセーの4.0%です。
4. 【本題①】資生堂は、どこまで戻ったのか
まず資生堂です。
| 項目 | 前年同期 | 今回 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 4,698億円 | 4,990億円 | +6.2% |
| コア営業利益 | 234億円 | 444億円 | +90.1% |
| 営業利益 | 181億円 | 419億円 | +131.8% |
| 税引前中間利益 | 192億円 | 442億円 | +130.2% |
| 親会社の所有者に帰属する中間利益 | 95億円 | 297億円 | +211.4% |
営業利益率は3.8%から8.4%へ。財務も改善していて、親会社所有者帰属持分比率は47.4%から50.0%へ上がりました。
通期予想は営業利益590億円です。半年で419億円ですから、進捗率は71.1%。かなり前倒しで進んでいます。
配当も、前の期の年40円から年60円へ増配の予想になりました。
ただし、売上は実質横ばいです
ここが大事なところです。
売上は6.2%増えていますが、決算短信には「実質増減率」という欄があります。 為替の影響と、事業を売却した影響を除いた数字です。
その実質増減率は、△0.2%。 つまりほぼ横ばい、わずかに減っているのです。
| 地域 | 売上 | 表面の増減率 | 実質の増減率 |
|---|---|---|---|
| 日本 | 1,447億円 | △0.8% | △0.4% |
| 中国・トラベルリテール | 1,914億円 | +10.0% | △0.1% |
| アジアパシフィック | 371億円 | +10.1% | +2.1% |
| 米州 | 546億円 | +6.0% | △0.9% |
| 欧州 | 669億円 | +12.4% | △1.2% |
| 合計 | 4,990億円 | +6.2% | △0.2% |
トラベルリテールというのは、空港などの免税店での販売のことです。
見ていただくとわかるとおり、表面では二桁増えている地域も、実質ではマイナスです。 売上が増えて見えるのは、円安による為替の影響が大きい。
つまり資生堂が戻ったのは、売上ではなく利益です。
5. では、どこで戻ったのか
資生堂は地域別のコア営業利益も開示しています。ここを見ると、何が起きたのかがはっきりします。
| 地域 | 前年同期 | 今回 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 日本 | 195億円 | 209億円 | +14億円 |
| 中国・トラベルリテール | 388億円 | 476億円 | +88億円 |
| アジアパシフィック | △1億円 | 22億円 | +23億円(黒字転換) |
| 米州 | △58億円 | 20億円 | +78億円(黒字転換) |
| 欧州 | △26億円 | △34億円 | △8億円(赤字拡大) |
| その他 | △9億円 | △2億円 | +7億円 |
| 小計 | 489億円 | 692億円 | +41.5% |
| 調整額(本社費用など) | △255億円 | △248億円 | +7億円 |
| 合計 | 234億円 | 444億円 | +90.1% |
いちばん大きいのは、米州の黒字転換です。 58億円の赤字が20億円の黒字へ。78億円も改善しました。アジアパシフィックも赤字から黒字に変わっています。
そして、いちばん稼いでいるのは中国・トラベルリテール事業の476億円です。
ここで気づくことがあります。中国・トラベルリテール事業だけで476億円。連結全体のコア営業利益444億円を上回っています。 これは本社の費用など248億円が全体から差し引かれるためです。
業界地図のこのページの見出しは「脱中国依存へ成長モデル再編」でした。ところが資生堂の数字を見るかぎり、売上構成比でも38.4%と最大、利益でも最大の稼ぎ頭が中国・トラベルリテールです。
これは「見出しが間違っている」という話ではありません。方向として脱中国依存を目指している一方で、現時点の数字はまだ中国が支えている、ということです。事実として押さえておきたいところです。
一方で、欧州は赤字が26億円から34億円へ拡大しています。 すべてが順調というわけではありません。
6. 【本題②】その裏で、コーセーが41.5%の減益
資生堂が戻る一方で、コーセーホールディングスはこうなっていました。
| 項目 | 前年同期 | 今回 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,605億円 | 1,649億円 | +2.7% |
| 営業利益 | 113億円 | 66億円 | △41.5% |
| 経常利益 | 96億円 | 88億円 | △8.2% |
| 親会社株主に帰属する中間純利益 | 71億円 | 57億円 | △19.9% |
増収なのに、営業利益が4割以上減りました。
理由は決算短信にはっきり書かれています。
「営業利益は、コーセー事業が増益となったものの、アルビオン事業およびコーセーコスメポート事業の減益が連結全体に影響し、6,617百万円(前年同期比41.5%減)となりました。」
コーセー本体は増益。ところが、高価格帯を手がけるアルビオンと、ドラッグストア向けが中心のコーセーコスメポートが足を引っ張った、ということです。
売上についても注意点があります。会社はこう書いています。
「連結売上高は、前年同期比2.7%増の164,915百万円(為替の影響を除くと前年同期比0.2%増)となりました。」
資生堂と同じで、為替を除くとほぼ横ばいです。 海外売上高の比率は38.6%とのことです。
なお、経常利益の減少が8.2%にとどまったのは「円安に伴い為替差益が増加したこと」によるもの。最終利益が19.9%減ったのは「前年同期において固定資産売却益2,715百万円を計上した反動」です。どちらも会社が短信に書いています。
ただし、通期予想は営業利益200億円で+8.3%の増益予想のまま、修正されていません。 下期での挽回を見込んでいることになります。
7. 利益率の順番が入れ替わりました
この2社を並べると、こうなります。
| 前年同期 | 今回 | |
|---|---|---|
| 資生堂の営業利益率 | 3.8% | 8.4% |
| コーセーHDの営業利益率 | 7.1% | 4.0% |
半年で、ほぼ入れ替わっています。
通期予想に対する進捗率でも差がついています。
| 会社 | 進捗率 |
|---|---|
| 資生堂 | 71.1% |
| ポーラ・オルビスHD | 57.5% |
| 花王 | 50.4% |
| コーセーHD | 33.1% |
※ノエビアは9か月経過で60.5%のため、単純に比べられません。
ただし、化粧品には季節性があります。「6か月だから50%が目安」と単純に当てはめて判断するのは避けたほうがよさそうです。 各社の通期予想がそのまま据え置かれている点も、あわせて見ておきたいところです。
8. 花王|化粧品事業が3億円から58億円へ
花王は日用品最大手ですが、化粧品事業も持っています。中間期の営業利益は958億円で、私の計算では38.5%の増益でした。
そして、セグメント別を見ると面白いことがわかります。
| セグメント | 売上 | 増減率 | 営業利益 前年 | 営業利益 今回 | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ファブリック&ホームケア製品 | 1,890億円 | +6.1% | 312億円 | 347億円 | 18.4% |
| サニタリー製品 | 817億円 | +2.6% | 43億円 | 44億円 | 5.4% |
| ヘルスビューティケア事業 | 2,286億円 | +8.1% | 182億円 | 199億円 | 8.7% |
| 化粧品事業 | 1,310億円 | +10.5% | 3億円 | 58億円 | 4.4% |
| ビジネスコネクティッド事業 | 192億円 | +6.4% | 4億円 | 8億円 | 4.4% |
| ケミカル事業 | 2,472億円 | +9.4% | 143億円 | 181億円 | 7.3% |
| 合計 | 8,719億円 | +7.8% | 692億円 | 958億円 | 11.0% |
化粧品事業の営業利益が、3億円から58億円になっています。 数字のうえでは約19倍です。
ただし、これは前年がほぼゼロだったための倍率です。利益率は4.4%で、花王全体の11.0%を大きく下回っています。花王も化粧品では、まだそれほど稼げていないというのが実際のところです。
そして花王でいちばん稼いでいるのは、ファブリック&ホームケア製品でした。洗剤などの分野で、利益率18.4%。売上は化粧品の1.4倍ですが、利益は6倍です。
日用品最大手という呼び方は、数字のうえでも合っています。
なお花王は、5社で唯一、通期の業績予想を修正しています。 短信に「直近に公表されている業績予想からの修正の有無:有」とあります。通期予想は売上1兆8,000億円、営業利益1,900億円です。
9. ポーラ・オルビス|経常利益+93.2%の中身は為替
ポーラ・オルビスホールディングスの数字を見ると、ある欄だけが飛び抜けています。
| 項目 | 前年同期 | 今回 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 833億円 | 843億円 | +1.3% |
| 営業利益 | 82億円 | 100億円 | +21.1% |
| 経常利益 | 63億円 | 121億円 | +93.2% |
| 親会社株主に帰属する中間純利益 | 46億円 | 65億円 | +40.8% |
営業利益は+21.1%なのに、経常利益は+93.2%。 差が大きすぎます。
損益計算書を開いたら、理由がすぐわかりました。
| 項目 | 前年同期 | 今回 |
|---|---|---|
| 為替差損(営業外費用) | 20.6億円 | なし |
| 為替差益(営業外収益) | なし | 19.6億円 |
前の年は為替で20.6億円の損、今回は19.6億円の得。 差し引き約40億円の振れが、経常利益を押し上げていました。
本業の伸びは、営業利益の+21.1%のほうです。 経常利益の+93.2%を実力と読むと、見誤ります。
なお今回は、特別損失に事業構造改善費用20.8億円を計上しています(前年はゼロ)。販管費も598億円から586億円へ減っていて、そのうち広告宣伝費が51億円から45億円へ減りました。
配当は年52円で据え置きです。
10. ノエビア|利益率15.0%でも減益
5社でいちばん利益率が高いのがノエビアホールディングスです。それでも今回は減収減益でした。
| 項目 | 前年同期 | 今回 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 473億円 | 461億円 | △2.6% |
| 営業利益 | 80億円 | 69億円 | △13.9% |
| 親会社株主に帰属する四半期純利益 | 41億円 | 41億円 | △0.8% |
※対象は2025年10月〜2026年6月の9か月です。
営業利益率は16.9%から15.0%へ。それでも5社でいちばん高い水準です。
セグメント別では、化粧品事業の売上が364億円で2.6%減、セグメント利益は81億円で9.9%減。医薬・食品事業は売上80億円で4.4%減、利益5.6億円で24.6%減でした。
ただし、会社は減収減益の理由を決算短信に書いていません。 書かれているのは「中長期的な戦略のテーマ『グループ各事業の持続可能な経営による節度ある成長の実現』に取り組んでおります」という方針だけです。
決算補足説明資料も作っておらず、決算説明会も開いていません。
理由が書かれていないものを、推測で書くことはしません。 ここは事実として「開示されていない」とだけ書いておきます。
なお通期予想は営業利益114億円で+2.9%の増益予想。配当は年230円で据え置きです。
11. 配当はどうなっているか
配当も見ておきます。
| 会社 | 前期実績 | 今期予想 | 予想配当利回り | 配当性向 |
|---|---|---|---|---|
| ノエビアHD 4928 | 年230円 | 年230円 | 4.72% | 95.8% |
| ポーラ・オルビスHD 4927 | 年52円 | 年52円 | 3.70% | 127.9% |
| コーセーHD 4922 | 年140円 | 年150円 | 2.55% | 70.4% |
| 花王 4452 | 年154円※ | 年78円※ | 2.19% | 52.3% |
| 資生堂 4911 | 年40円 | 年60円 | 1.62% | 57.1% |
増配を予想しているのは、資生堂とコーセーの2社です。
ただし、それぞれ注意点があります。
コーセーの期末配当80円のうち、10円は記念配当です。 短信に「普通配当70円00銭、記念配当10円00銭を予定しております」と明記されています。普通配当だけで見ると前の期と同じ70円ですから、恒久的な増配とは違います。
花王の数字は株式分割をまたいでいます。 前の期は年154円ですが、これは分割前の金額。今期は中間78円(分割前の実際の金額)+期末39円(分割考慮後)という書き方になっています。分割後のベースにそろえると、実質はわずかな増配です。「配当が半分になった」ではありません。
そして配当性向にも注目してください。ポーラ・オルビスは127.9%。 利益を超える額を配当に回す計画になっています。ノエビアも95.8%と高い水準です。
利回りだけを見て判断せず、その配当がどこから出ているのかまで見ておきたいところです。
12. 株価はどう動いたか
株価も見ておきます。
決算発表日が8月3日から8月6日までの4日間に集まっているので、全社が発表する前の7月31日の終値から、直近の8月21日の終値までで比べます。
| 会社 | 7/31終値 | 8/21終値 | 騰落率 |
|---|---|---|---|
| 資生堂 4911 | 3,154.0円 | 3,696.0円 | +17.18% |
| 花王 4452 | 3,268.0円 | 3,556.0円 | +8.81% |
| ポーラ・オルビスHD 4927 | 1,340.5円 | 1,406.0円 | +4.89% |
| コーセーHD 4922 | 5,685円 | 5,893円 | +3.66% |
| (参考)日経平均株価 | 64,362.02円 | 66,016.36円 | +2.57% |
| (参考)TOPIX | 4,003.30 | 4,067.29 | +1.60% |
| ノエビアHD 4928 | 4,970円 | 4,875円 | △1.91% |
日経平均もTOPIXも上回ったのが4社、どちらも下回ったのが1社でした。
ここで指数(しすう)を2つ並べたのには理由があります。同じ期間で、日経平均は+2.57%、TOPIXは+1.60%。日経平均は225銘柄を株価の水準で重みづけするため株価の高い銘柄に引っ張られやすく、TOPIXは東証プライムの全銘柄を時価総額で重みづけするので市場全体に近い動きになります。片方だけを基準にすると、市場を上回ったかどうかの判定を誤ることがあります。
今回は2つの差が0.97ポイントと小さいので、4社と1社という結果は両方の指数で同じでした。
そして資生堂の+17.18%。日経平均の6.7倍、TOPIXの10.7倍の上昇率です。営業利益がいちばん伸びた会社が、株価もいちばん上がった形になっています。
一方で、営業利益41.5%減のコーセーも、両方の指数を上回っています。 ここが面白いところです。
「決算が良かったから上がった」とは断定できません。 株価は決算だけで動くものではなく、相場全体、為替、金利、需給、ほかの材料でも動きます。この期間は3週間ありますから、決算以外の要因も入っています。
事実として押さえておくのは、「決算をはさんだこの期間に、資生堂が日経平均を大きく上回った」というところまでです。
13. PER・PBR・配当利回り
指標をまとめます。
| 会社 | 終値 | PER | PBR | 予想配当利回り |
|---|---|---|---|---|
| 資生堂 4911 | 3,696.0円 | 35.2倍 | 2.32倍 | 1.62% |
| 花王 4452 | 3,556.0円 | 23.8倍 | 2.87倍 | 2.19% |
| コーセーHD 4922 | 5,893円 | 27.6倍 | 1.18倍 | 2.55% |
| ポーラ・オルビスHD 4927 | 1,406.0円 | 34.6倍 | 1.93倍 | 3.70% |
| ノエビアHD 4928 | 4,875円 | 20.3倍 | 3.26倍 | 4.72% |
PERとPBRは、会社が公表している1株当たり利益と1株当たり純資産から自分で計算し、株探の値と突き合わせました。5社すべて一致しています。 種類株式などによるズレはありませんでした。
この業界、PBRが1倍を割っている会社が1社もありません。 いちばん低いコーセーでも1.18倍、いちばん高いノエビアは3.26倍です。
PERも20倍台から30倍台と、決して低くありません。資生堂は35.2倍。前の期が赤字だった会社としては高い水準です。市場が今後の回復を織り込んでいる、という見方もできますが、「割高」「割安」と決めつけることはしません。
14. 次の決算で見たい項目
1つめ、資生堂の売上が実質でプラスに転じるか。 今回は利益は戻りましたが、実質売上は0.2%減でした。次は売上そのものが伸びるかどうか。
2つめ、資生堂の欧州事業。 赤字が26億円から34億円へ拡大しています。ここが止まるかどうか。
3つめ、コーセーの下期。 通期予想は営業利益200億円のまま据え置かれています。半年で66億円ですから、下期に134億円を積む計画です。アルビオンとコーセーコスメポートが戻るかどうか。
4つめ、花王の化粧品事業。 中間期で営業利益58億円、利益率4.4%。ここが全社平均の11.0%にどこまで近づくか。
5つめ、ノエビアの減収が止まるか。 理由が開示されていないので、次の決算での説明を待ちます。
6つめ、ポーラ・オルビスの配当性向127.9%。 利益を超える配当が続くのかどうか。
まとめ
1. 業界地図に「営業▲287億円」と載っている資生堂は、すでに戻っていた。 中間期の営業利益は419億円で131.8%増。通期予想に対する進捗は71.1%。
2. ただし戻ったのは利益で、売上ではない。 表面では6.2%増だが、為替などの影響を除いた実質は0.2%減。
3. 戻った最大の要因は米州の黒字転換。 58億円の赤字が20億円の黒字へ、78億円の改善。アジアパシフィックも黒字に転じた。
4. いちばん稼いでいるのは中国・トラベルリテール事業の476億円。 業界地図の見出しは「脱中国依存」だが、現時点の数字では中国が最大の柱。
5. その裏で、コーセーホールディングスが営業利益41.5%減。 アルビオン事業とコーセーコスメポート事業の減益が影響したと会社は説明している。
6. 営業利益率の順番が入れ替わった。 資生堂3.8%→8.4%、コーセー7.1%→4.0%。
7. 花王の化粧品事業は営業利益3億円→58億円。 ただし利益率4.4%で、全社の11.0%には遠い。花王の稼ぎ頭は洗剤などのファブリック&ホームケア製品で利益率18.4%。
8. 買える会社が減っている。 ファンケル、DHC、マンダムが3年で市場から消えた。
本に載っている数字は、その時点では正しい。でも決算は動きます。最新の四半期まで開けてみないと、いま何が起きているかはわからない。 今回はそれがよく出た決算でした。
次の決算も追いかけます。
主な参照資料
- 資生堂「2026年12月期 第2四半期(中間期)決算短信〔IFRS〕(連結)」「同 決算説明資料」(2026年8月5日)
- 花王「2026年12月期 第2四半期(中間期)決算短信〔IFRS〕(連結)」(2026年8月5日)
- コーセーホールディングス「2026年12月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年8月6日)
- ポーラ・オルビスホールディングス「2026年12月期 第2四半期(中間期)決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年8月6日)
- ノエビアホールディングス「2026年9月期 第3四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」(2026年8月3日)
- 株探(株価・指標、2026年8月21日終値)
- 日本経済新聞社『日経業界地図 2027年度版』194〜195ページ「化粧品・トイレタリー」(業界の全体像・市場規模のみ参照)
※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資の判断はご自身の責任でお願いします。