本記事は2026年8月16日時点で公表されている各社の決算短信・決算説明資料をもとに作成しています。株価・指標は2026年8月14日(金)終値基準です。特定の銘柄の購入や売却を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
はじめに|「台数」で見ても、自動車株のことはわからない
自動車の決算ニュースを見ると、必ず出てくるのが販売台数です。「世界販売◯万台」「前年比◯%増」。
でも、株を持つ側からすると、この数字だけでは判断できません。たくさん売っても、1台あたりの儲けが薄ければ利益は増えないからです。
そこで今回は、日本の乗用車メーカー7社について、「1台売って、いくら残っているのか」を計算してみました。使ったのは2027年3月期第1四半期(2026年4月~6月)の決算です。すべて公式の決算短信と決算説明資料から数字を拾い、比率は自分で計算し直しています。
対象は次の7社です。
- トヨタ自動車(7203)
- ホンダ/本田技研工業(7267)
- 日産自動車(7201)
- スズキ(7269)
- SUBARU(7270)
- マツダ(7261)
- 三菱自動車工業(7211)
ダイハツは未上場なので外しています。トラックのいすゞとARCHIONは別の機会にまとめます。
この記事の結論
先に答えを出します。
1台あたりの営業利益は、トヨタが30.06万円、三菱自動車が5.36万円。同じ「自動車株」でも、5.6倍の差がありました。
そしてもうひとつ。
7社中6社がPBR1倍割れ。配当利回りは4%台が3社。それなのに、決算発表後の1週間で日経平均を上回ったのは1社だけでした。
数字が良くなっているのに株価がついてこない。この「ねじれ」が、今の自動車株の姿です。順番に見ていきます。
まず、1台あたりいくら残るか
計算方法はシンプルです。四輪(自動車)事業の営業利益 ÷ 四輪の販売台数。二輪や金融を持っている会社は、できるだけ四輪だけの利益を取り出しました。
| 順位 | 会社 | 1台あたり営業利益 | 使った営業利益 | 使った台数 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | トヨタ | 30.06万円 | 自動車事業 7,199億円 | 連結販売 239万5千台 |
| 2 | ホンダ | 24.44万円 | 四輪事業 1,921億円 | 四輪グループ販売 78万6千台 |
| 3 | SUBARU | 19.35万円 | 全社 426億円 | 連結完成車 22万台 |
| 4 | スズキ | 14.09万円 | 四輪事業 1,343億円 | 四輪卸販売 95万3千台 |
| 5 | 日産 | 11.11万円 | 全社 779億円 | グローバル小売 70万1千台 |
| 6 | マツダ | 10.80万円 | 全社 328億円 | グローバル販売 30万4千台 |
| 7 | 三菱自動車 | 5.36万円 | 自動車事業 96億円 | グローバル販売 17万9千台 |
トヨタが1台で30万円残すのに対し、三菱自動車は5万円台。約5.6倍の開きです。
この数字を見るときの注意
先に正直にお伝えしておきます。この計算には限界があります。
- 台数の定義が各社でバラバラです。トヨタは「連結販売台数」、ホンダは持分法適用会社を含む「グループ販売台数」、スズキは「卸販売台数」、日産は「小売台数」。厳密に同じ条件ではありません
- SUBARU・日産・マツダは四輪だけの利益を分けて開示していないため、全社の営業利益を使っています
- ホンダを連結売上台数(70万8千台)で割ると27.13万円になります。今回は会社が前面に出している78万6千台を採用しました
そしてもうひとつ大事なこと。1台あたりが高いほど良い会社、ではありません。軽自動車や小型車を大量に売る会社と、大型SUVを売る会社では単価がまったく違うからです。優劣ではなく、ビジネスの構造の違いとして見てください。
では、なぜこれだけ差がつくのか。1社ずつ中身を見ていきます。
7社のQ1決算一覧
| 会社 | 売上高 | 前年同期比 | 営業利益 | 前年同期比 | 最終利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| トヨタ | 13兆5,254億円 | +10.4% | 1兆634億円 | △8.8% | 1兆4,770億円 | +75.6% |
| ホンダ | 6兆615億円 | +13.5% | 5,307億円 | +117.4% | 4,509億円 | +129.3% |
| 日産 | 2兆9,642億円 | +9.5% | 779億円 | 黒字転換 | 37億円 | 黒字転換 |
| スズキ | 1兆7,057億円 | +22.0% | 1,580億円 | +11.2% | 1,836億円 | +80.0% |
| マツダ | 1兆2,857億円 | +16.9% | 328億円 | 黒字転換 | 296億円 | 黒字転換 |
| SUBARU | 1兆2,508億円 | +3.0% | 426億円 | △44.3% | 491億円 | △10.3% |
| 三菱自 | 6,199億円 | +1.8% | 101億円 | +78.8% | 14億円 | +91.2% |
※億円未満は四捨五入。会計基準は、日産・マツダ・三菱自が日本基準、トヨタ・ホンダ・スズキ・SUBARUがIFRSです。IFRSには経常利益がありません。
営業利益率も出しておきます。
| 会社 | 営業利益率 |
|---|---|
| スズキ | 9.26% |
| ホンダ | 8.76% |
| トヨタ | 7.86% |
| SUBARU | 3.40% |
| 日産 | 2.63% |
| マツダ | 2.55% |
| 三菱自 | 1.63% |
売上6兆円のホンダより、1.7兆円のスズキのほうが利益率が高い。規模と稼ぐ力は比例していません。
トヨタ|営業利益は減益、最終利益は+75.6%
トヨタのQ1は、営業収益13兆5,254億円(+10.4%)、営業利益1兆634億円(△8.8%)、最終利益1兆4,770億円(+75.6%)でした。
営業利益が減って、最終利益が7割以上増えている。前回のAI関連株の記事でも出てきた「営業と最終が逆を向く」パターンです。
理由は損益計算書を見るとわかります。営業利益の下にある「その他の金融収益」が、1,537億円から8,506億円へ急増しているのです。本業ではなく、営業外で稼いだ利益が最終利益を押し上げました。
営業利益が減った理由も、会社が内訳を出しています。
| 増減要因 | 金額 |
|---|---|
| 為替変動の影響 | +3,450億円 |
| 営業面の努力 | +700億円 |
| 原価改善の努力 | △850億円 |
| 諸経費の増減・低減努力 | △1,900億円 |
| その他 | △2,426億円 |
為替が3,450億円も押し上げているのに、それでも減益です。諸経費と「その他」で6,000億円近く食われています。
もうひとつ、今回のトヨタには大きな変化があります。日野自動車とその連結子会社70社が、連結の対象から外れました。日野は三菱ふそうと統合してARCHIONになったためです。ですから、販売台数239万5千台(△0.7%)を前年と単純に比べることはできません。
地域別で目立つのは北米です。営業利益1,854億円で、前年同期から2,066億円の改善。つまり前年の北米は赤字でした。
通期予想は営業利益3兆4,000億円(△9.7%)に修正されています。Q1時点の進捗率は31.3%です。
ホンダ|四半期で過去最高益。ただし稼ぎ頭は四輪ではない
ホンダのQ1は、売上収益6兆615億円(+13.5%)、営業利益5,307億円(+117.4%)、最終利益4,509億円(+129.3%)。営業利益は四半期として過去最高です。
ここまでは明るいニュースですが、中身を見ると景色が変わります。
| 事業 | 売上収益 | 営業利益 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|
| 二輪 | 1兆1,411億円 | 2,339億円 | 20.5% |
| 四輪 | 3兆8,791億円 | 1,921億円 | 5.0% |
| 金融サービス | 1兆270億円 | 1,058億円 | 10.3% |
| パワープロダクツ等 | 944億円 | △11億円 | △1.2% |
二輪の営業利益が、四輪を上回っています。しかも利益率は二輪20.5%に対して四輪5.0%。4倍の差です。
売上で見れば四輪が3兆8,791億円と圧倒的なのに、利益では二輪に抜かれている。ホンダを「クルマの会社」として見ていると、この構造は見えません。
四輪も改善はしています。前年同期は296億円の赤字でしたから、1,921億円は大きな回復です。ただしこれには事情があって、前年の四輪にはEV関連損失1,220億円が含まれていました。これを除いた前年の調整後利益は923億円。そこからの伸びは+108.0%です。
そしてもう一点、四輪のグループ販売台数は78万6千台で、前年から6.3%減っています(中国が7万4千台の減少)。台数が増えて増益になったわけではありません。
ホンダの通期予想は、見方に注意が必要
ホンダは通期の営業利益予想を5,000億円から6,500億円へ上方修正しました。
ただ、この6,500億円には「電動化戦略見直しに伴う損失▲5,200億円」が含まれています。これを除いた調整後営業利益は1兆1,700億円です。
つまり進捗率が2通りになります。
- 通期6,500億円に対して:81.7%
- 調整後1兆1,700億円に対して:45.4%
「Q1で通期の8割を達成」と読むと誤解します。下期にEV関連の損失を計上する計画が入っているためです。
なお配当は年70円で据え置き。DOE(株主資本配当率)3.0%を目安に安定配当を続ける方針です。事業会社のネットキャッシュは3.3兆円あります。
スズキ|利益率9.26%で7社トップ。稼ぎ頭は四輪
スズキのQ1は、売上収益1兆7,057億円(+22.0%)、営業利益1,580億円(+11.2%)、最終利益1,836億円(+80.0%)。営業利益率9.26%は7社で最も高い数字です。
セグメントを見ると、ホンダとは正反対の構造でした。
| 事業 | 売上収益 | 営業利益 | 利益率 |
|---|---|---|---|
| 四輪 | 1兆5,417億円 | 1,343億円 | 8.7% |
| 二輪 | 1,244億円 | 144億円 | 11.6% |
| マリン | 368億円 | 85億円 | 23.1% |
スズキの利益はほぼ四輪から出ています。二輪は144億円で、全体の1割程度。同じ「二輪も作る会社」でも、ホンダとは中身がまったく違います。
伸びを支えているのはインドです。四輪の小売販売は40万2千台から53万5千台へ33.0%増。四輪の卸販売台数も95万3千台と19.5%伸びました。
ただし、ここは誤解しやすいところです。インドルピーの為替影響は、Q1実績では±0でした(1.70円のまま)。「円安でインド事業が膨らんだ」わけではなく、実際に台数が伸びています。
一方で、原材料価格の変動は624億円のマイナス。為替のプラス326億円を上回っており、市況要因だけ見れば298億円のマイナスです。
通期予想は上方修正されましたが、営業利益5,400億円は前期比13.3%の減益計画です。Q1が好調でも、通期は減益を見込んでいる点は押さえておきたいところです。
日産|黒字転換。ただし最終利益は37億円
日産のQ1は、売上高2兆9,642億円(+9.5%)、営業利益779億円(前年同期は791億円の赤字)で黒字転換。最終利益も37億円の黒字(前年は1,158億円の赤字)でした。
前年から1,570億円の改善です。数字だけ見れば大きな回復に見えます。
でも、規模を確認してください。売上2兆9,642億円に対して、最終利益は37億円。利益率にすると0.13%です。1万円の売上で13円しか残っていない計算になります。
改善の中身も見ておく必要があります。会社は次のように説明しています。
- 「Re:Nissan」により第1四半期で約600億円のコスト削減
- 生産と車両コストの改善
- 良好な為替の影響
- 2025年度の米国関税に関連する一時的な利益も、営業利益の改善に寄与
つまり、継続的な体質改善だけでなく、一時的な要因も入っています。
そして重い事実がふたつ。
ひとつ、2026年度のグローバル販売台数見通しを、330万台から315万台へ引き下げました。中国市場の環境悪化が理由です。通期の財務見通し(営業利益2,000億円)は維持していますが、台数の前提は下がっています。
ふたつ、日産は無配です。配当予想は年0円。前期も0円でした。7社の中で唯一、配当がありません。
マツダ|売上高は過去最高、黒字転換
マツダのQ1は、売上高1兆2,857億円(+16.9%)で第1四半期として過去最高。営業利益328億円(前年は461億円の赤字)、最終利益296億円で黒字転換しました。
前年から789億円の改善です。中身を見てみます。
| 増減要因 | 金額 |
|---|---|
| 台数・構成 | +434億円 |
| 為替 | +413億円 |
| コスト改善 | +157億円 |
| 固定費他 | +123億円 |
| 原材料・物流費等 | △240億円 |
| 成長投資 | △98億円 |
為替だけで413億円。改善額789億円の半分以上が為替です。為替レートは1ドル145円から160円、1ユーロ164円から185円へ動いています。
一方、グローバル販売台数は30万4千台で+1%にとどまります。台数が伸びたから増益、という話ではありません。
なお「台数・構成」の内訳には関税影響+203億円が含まれます。ただし会社は「関税影響が継続する中でも」と明記しており、関税がなくなったわけではありません。
通期予想は変更なし。営業利益1,500億円、最終利益900億円を見込んでいます。Q1の進捗率は21.9%です。
SUBARU|7社で唯一の大幅減益。米国が2万1千台減
SUBARUのQ1は、売上収益1兆2,508億円(+3.0%)、営業利益426億円(△44.3%)、最終利益491億円(△10.3%)。7社で唯一の大幅減益でした。
営業利益が44%減ったのに、最終利益は10%減にとどまっています。税引前利益614億円が営業利益426億円を上回っており、営業外が支えている形です。
減益の理由は販売です。連結完成車販売台数は24万4千台から22万台へ、9.5%減少しました。
| 市場 | 前年Q1 | 当Q1 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 米国 | 17万1千台 | 15万台 | △2万1千台 |
| 国内 | 2万4千台 | 2万3千台 | △0 |
| カナダ | 1万9千台 | 1万9千台 | ±0 |
| 欧州 | 5千台 | 8千台 | +2千台 |
| 豪州 | 1万5千台 | 1万1千台 | △4千台 |
主戦場の米国が2万1千台減った。これがそのまま効いています。営業利益の増減要因でも「販売活動△353億円」が最大のマイナスでした。
一方で、明るい材料もあります。米国関税の影響は、自動車関税率の引き下げを主因に329億円減少しました。関税は追い風に変わっています。
通期予想は変更なしで営業利益1,500億円。Q1の進捗率は28.4%です。配当は年116円(前期115円50銭)を維持しています。
三菱自動車|増益率78.8%、でも金額は101億円
三菱自動車のQ1は、売上高6,199億円(+1.8%)、営業利益101億円(+78.8%)、最終利益14億円(+91.2%)でした。
増益率だけ見れば7社で上位に入ります。でも金額は101億円です。営業利益率1.63%は7社最低。1台あたりも5.36万円で最下位でした。
グローバル販売台数は17万9千台で8%減。会社は「中東情勢の緊迫化に加え、燃料価格の高止まりや金利上昇の影響を受け、中東やアセアン、豪州などで需要が軟化し、市場競争も激化した」と説明しています。
通期予想は営業利益900億円で据え置き。Q1の進捗率は11.2%と7社で最も低く、下期に大きく偏った計画になっています。ここが達成できるかどうかは、次の決算での確認事項です。
米国関税は、いま「追い風」に変わっている
今回7社の資料を読んで意外だったのが、関税の扱いです。
| 会社 | 一次資料の記述 |
|---|---|
| SUBARU | 米国関税影響は、自動車関税率の引き下げを主因に329億円減少 |
| マツダ | 営業利益の増減要因のうち関税影響は+203億円(前年同期比) |
| 日産 | 2025年度の米国関税に関連する一時的な利益が営業利益の改善に寄与 |
| ホンダ | 四輪について「販売台数の増加や、為替・関税影響により増益」 |
去年は各社の重荷だった関税が、前年同期と比べると、いまはプラスに効いているのです。
ただし勘違いしないでください。関税がなくなったわけではありません。マツダは「関税影響が継続する中でも」と明記しています。あくまで「前年より負担が軽くなった分がプラスに見えている」という話です。
株価はどう動いたか
7社の決算発表は8月3日から5日に集中しました。全社が出そろった8月7日終値を起点に、8月14日終値までの共通期間で比べます。
| 会社 | 8/7終値 | 8/14終値 | 騰落率 |
|---|---|---|---|
| スズキ | 1,956.0円 | 2,086.5円 | +6.67% |
| (参考)日経平均 | 65,606.71 | 68,713.80 | +4.74% |
| トヨタ | 2,980.0円 | 3,020.0円 | +1.34% |
| SUBARU | 2,567.5円 | 2,583.0円 | +0.60% |
| マツダ | 1,168.5円 | 1,169.0円 | +0.04% |
| ホンダ | 1,683.0円 | 1,658.0円 | △1.49% |
| 三菱自 | 349.2円 | 342.8円 | △1.83% |
| 日産 | 340.8円 | 330.0円 | △3.17% |
ここが今回いちばん考えさせられる部分です。
同じ期間に日経平均は4.74%上がっています。それを上回ったのはスズキ1社だけ。
そして、四半期で過去最高益を出したホンダの株価は、1.49%下がっています。
「好決算だから株価が上がる」は、少なくともこの1週間については成り立っていません。株価は相場全体、為替、金利、需給、他の材料でも動きます。決算内容が意識された可能性はありますが、決算が原因だと断定はできません。
PER・PBR・配当利回り
2026年8月14日終値で計算した指標です。
| 会社 | 株価 | 予想PER | PBR | 予想配当利回り | 配当性向 |
|---|---|---|---|---|---|
| マツダ | 1,169円 | 8.2倍 | 0.38倍 | 4.70% | 38.6% |
| SUBARU | 2,583円 | 14.4倍 | 0.66倍 | 4.49% | 64.6% |
| ホンダ | 1,658円 | 16.1倍 | 0.52倍 | 4.22% | 68.1% |
| トヨタ | 3,020円 | 11.1倍 | 0.96倍 | 3.31% | 36.7% |
| 三菱自 | 342.8円 | 18.4倍 | 0.50倍 | 2.92% | 53.5% |
| スズキ | 2,086.5円 | 9.6倍 | 1.14倍 | 2.44% | 23.4% |
| 日産 | 330円 | 57.7倍 | 0.24倍 | 無配 | - |
※PERは会社予想EPSから計算しています。ホンダのEPS102.75円にはEV関連損失▲5,200億円が反映されているため、PERは高めに出ます。
ここで目を引くのは2点です。
ひとつ、PBRが1倍を下回っているのは7社中6社。1倍を超えているのはスズキ(1.14倍)だけです。日産に至っては0.24倍。会社が持っている純資産の4分の1の値段しかついていない計算になります。
ふたつ、配当利回り4%台が3社(マツダ4.70%、SUBARU4.49%、ホンダ4.22%)。トヨタも3.31%あります。
ただし、利回りの高さと配当の安全性は別の話です。ホンダは配当性向68.1%、SUBARUは64.6%と高めです。利益が計画どおり出ない場合、配当を維持する余裕は小さくなります。逆にスズキは23.4%と余裕があります。
そして日産は無配です。PBR0.24倍という数字は「安い」というより、市場が将来の稼ぐ力に厳しい評価をしていると読むほうが自然でしょう。
次の決算で確認したい項目
次の四半期(2027年3月期第2四半期、11月発表予定)では、それぞれ見る点が変わります。
トヨタ
- 営業利益の減益が続くか(Q1は諸経費と「その他」で6,000億円近くのマイナス)
- 日野の連結除外を織り込んだうえでの台数の実力
- 「その他の金融収益」が今後も出るのか
ホンダ
- 四輪のグループ販売台数が減少から戻るか(中国の動き)
- 電動化戦略見直しに伴う損失▲5,200億円が実際にどう計上されるか
- 二輪の高い利益率が続くか
スズキ
- インドの伸びが続くか(通期は前期比+10%以上の見通し)
- 通期の減益計画(営業利益△13.3%)に対する進み方
- 原材料価格の影響
日産
- 最終利益が通期予想200億円に届くか(Q1時点で37億円)
- 中国以外の市場で台数見通しを守れるか
- 配当が復活するかどうか
マツダ・SUBARU
- マツダ:為替頼みから台数の伸びに移れるか(新型CX-5などの立ち上がり)
- SUBARU:米国の販売台数が戻るか(Q1は2万1千台減)
三菱自動車
- 通期営業利益900億円に対する進捗(Q1は11.2%)
- 中東・アセアン・豪州の需要が戻るか
まとめ
要点を整理します。
- 1台あたりの営業利益は、トヨタ30.06万円から三菱自動車5.36万円まで、約5.6倍の差がありました。ただし台数の定義が各社で違うため、優劣ではなく構造の違いとして見てください。
- 営業利益率のトップは売上1.7兆円のスズキ(9.26%)。売上13.5兆円のトヨタ(7.86%)を上回りました。規模と稼ぐ力は比例していません。
- トヨタは営業利益△8.8%の減益。最終利益+75.6%の主因は営業外の金融収益です。本業が絶好調なわけではありません。
- ホンダは四半期で過去最高益。ただし稼ぎ頭は二輪(2,339億円)で、四輪(1,921億円)を上回りました。通期予想にはEV関連損失▲5,200億円が含まれるため、進捗率の読み方に注意が必要です。
- 日産は黒字転換したものの、最終利益は37億円。販売見通しは330万台から315万台へ引き下げ、配当は無配のままです。
- マツダとSUBARUは為替と関税が大きく効いています。マツダは改善789億円のうち413億円が為替。SUBARUは関税影響が329億円減りました。
- 米国関税は、前年同期と比べるといまは各社にプラスに働いています。ただし影響が消えたわけではありません。
- 7社中6社がPBR1倍割れ、配当利回り4%台が3社。それでも共通期間(8/7~8/14)で日経平均+4.74%を上回ったのはスズキ1社だけでした。
最後に、この記事でいちばんお伝えしたいことを。
台数のニュースだけでは、自動車株の中身はわかりません。「1台でいくら残しているか」「その利益はどこから来ているか(本業か、為替か、営業外か)」を分けて見る。そうすると、同じ「自動車株」と呼ばれている7社が、まったく違う会社に見えてきます。
答え合わせは、次の決算に出ます。
主な参照資料
- トヨタ自動車「2027年3月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)/決算要旨」2026年8月4日
- ホンダ「2027年3月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」および「2027年3月期 第1四半期 決算説明会資料」2026年8月5日
- 日産自動車「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」および「日産自動車、2026年度第1四半期決算を発表」2026年8月3日
- スズキ「2027年3月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」および「第1四半期 決算参考資料」2026年8月5日
- SUBARU「2027年3月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」「第1四半期連結決算 参考資料」「第1四半期決算 アナリスト向け説明会資料」2026年8月5日
- マツダ「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」および「第1四半期決算 プレゼンテーション資料」2026年8月4日
- 三菱自動車工業「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」2026年8月3日
- 株価・日経平均:株探(2026年8月7日・8月14日終値)