※本記事は株式会社INPEXの公表資料を確認する情報提供であり、売買を推奨するものではありません。株価・利益・配当の将来を保証しません。情報確認日は2026年10月24日。現在の株価表示は直近営業日の10月23日東証終値です。金額・利回りは税引前、購入費用は別です。会社の計画・予想と実績を区別します。
株式会社INPEX(インペックス、証券コード1605)が10月21日に開いたInvestor Day 2026。その資料「INPEXの伸び代」に、株価約6,300円という試算が載っています。
これから投資先を探している人にとって、気になる数字です。ただ、「会社が示した数字だから、そこまで上がるのだろう」と受け取ると、資料の意味が変わってしまいます。
今回の試算は、遠い将来の利益だけで出した予想株価ではありません。現在の利益の見通しと、将来の成長を市場がどう評価するかという仮定を組み合わせたものです。その成長に向けてお金を使う間、今の稼ぎや配当をどう支える計画なのかまで読む必要があります。
この記事では「6,300円になるか」を当てるのではなく、その数字を作っている条件を分解します。株をまだ持っていない人も、会社の大きな将来計画を候補選びに使うための見方として読んでください。
まず結論:株価の数字ではなく、3つの条件を分けて読む
確認するのは、試算の前提、投資から利益までの時間、そして待つ間のお金です。
| 見るところ | 今回の発見 | 買う前に残しておく問い |
|---|---|---|
| 株価の試算 | 2026年の1株利益予想と、将来成長を織り込んだ倍率を使う | 事業の進展と市場の評価を同じものにしていないか |
| 投資の中身 | 維持・更新等と、新たな利益を目指す投資が混在する | 何に使い、いつ稼ぎに届く予定なのか |
| 待つ間の資金 | 準備資金の積立て・取り崩し、借入、還元を組み合わせる | 費用や工程が変わったとき、お金の配分をどう見直すか |
会社が利益を増やすことと、株式市場がその利益に高い値段を付けることは別です。また、投資の発表時点と、投資先が稼ぎ始める時点も一致しません。この2つの時間差を、お金の計画と一緒に見ます。
参照:INPEX「INPEXの伸び代」2026年10月21日、印刷p.4-5・8。以下、ページ番号は資料に印刷された番号です。
現在の価格と配当を先に確認する
10月23日の終値は3,860円でした。会社公式サイトの株価ページに表示された、同日15時30分の価格を使います。データはEuroland配信であり、会社が自社株の価値を保証している表示ではありません。
| 項目 | 10月23日終値・公表予想による数値 | 注意点 |
|---|---|---|
| 終値 | 3,860円 | 場中値やPTS価格ではない |
| 通常の売買単位 | 100株 | 単元未満株サービスの条件は別 |
| 100株の購入額 | 386,000円 | 購入費用別 |
| 2026年の年間配当予想 | 1株112円 | 中間実績と期末予想の合計 |
| 予想配当利回り | 約2.90% | 112円÷3,860円。税引前 |
ここでの利回りは、今期の年間配当予想を現在の価格で割った参考値です。今日から同じ12か月間に受け取る配当を予測したものではありません。過去の中間配当まで、今から買う人が受け取れるわけではない点は後で整理します。
約2.9%という数字を、基準なしに「とても高い利回り」と評価することもしません。今回の主題は、配当の高さの順位ではなく、成長投資を進める会社を、配当目的でどう確認するかです。
参照:INPEX「株価情報」、「株式情報(株式の状況)」、8月7日付の配当修正開示。株価は10月24日閲覧。
6,300円は、何を掛け合わせた数字なのか
会社資料の計算の入り口は、1株利益439円と、その利益に付ける14.4倍という評価です。
439円×14.4倍=6,321.6円。概数で約6,300円です。
PER(ピーイーアール)という言葉が使われていますが、ここでは「1株の利益に対して、株価が何倍になっているか」という意味だけ押さえれば十分です。倍率が高いほど、同じ利益でも計算上の株価は高くなります。
大事なのは、439円の横に付いた脚注です。これは2026年8月時点の見通しで、2035年の1株利益ではありません。8月の決算短信にある基本的1株当たり当期利益予想は438.82円。439円はその丸めた表示と整合します。
| 使われたもの | 対象・意味 |
|---|---|
| 439円 | 2026年の1株利益予想。2026年8月見通し |
| 14.4倍 | 会社の成長戦略が市場に浸透する場合を想定した倍率 |
| 約6,300円 | 上の利益と倍率を組み合わせた条件付き試算 |
「2035年の利益を予想したので、2035年の株価も6,300円に決まった」という読み方ではありません。資料に、この株価へ到達する日付や確率が示されているわけでもありません。
数字だけをメモするなら電卓で足ります。投資先を調べるときに残したいのは、電卓に入れた条件のほうです。
参照:INPEX「INPEXの伸び代」p.8、「2026年12月期 第2四半期(中間期)決算短信」表紙。
2025年の実績、2026年の予想、2035年のイメージを混ぜない
同じページには、異なる時点の数字が並んでいます。ここを整理すると、試算がぐっと読みやすくなります。
| 資料の数字 | 時点 | 役割 |
|---|---|---|
| 株価3,127円 | 2025年12月末 | 資料内の実績比較の基準 |
| 1株利益331円 | 2025年実績 | 同じ実績側の比較に使用 |
| 1株利益439円 | 2026年8月見通し | 約6,300円試算の掛け算に使用 |
| 当期利益6,000億円 | 2035年の会社イメージ | 長期の成長戦略の姿 |
現在の終値3,860円は、資料の実績比較欄の3,127円とは別です。古い価格を現在値だと思って「今から2倍」と書くことはできません。
また、2035年の利益イメージを2026年の利益予想と同じ年度のように扱ってはいけません。2026年の親会社所有者に帰属する当期利益予想は5,100億円、基本的1株当たり利益予想は438.82円です。
さらに、資料の過去推移には「調整後EPS」という別の指標も出てきます。調整後の利益と、今回の試算に使う予想1株利益は、そのまま差し替えられません。似た名前の欄があるときは、見出しと脚注を一緒に読む必要があります。
これは細かい揚げ足取りではありません。年度や定義を入れ替えると、「いま、何を期待して投資する話なのか」が変わるからです。
参照:INPEX「INPEXの伸び代」p.7-8、「通期連結業績予想の修正」2026年8月7日、p.1。
長期の利益は、生産量だけでできているわけではない
2035年の利益イメージには、アバディLNG事業の生産開始、イクシスの生産水準を保つ取り組み、欧州・中東での増産投資等が挙げられています。
LNG(エルエヌジー)は液化天然ガスです。新しい事業を動かすだけでなく、生産中の事業を長く動かすための開発も、将来の稼ぎを考えるうえで重要になります。
ただし、会社の長期イメージには、油価90ドル、為替1ドル155円という仮定もあります。2025年実績側に示された油価68ドル・為替153円とは同じ条件ではありません。
つまり「原油価格も為替も変わらず、生産量だけが増えて利益が伸びる」という説明にはできません。会社は事業の成長だけでなく、将来の販売価格や為替を置いて利益の姿を描いています。
| 成長の要素 | 資料で確認するもの | 読み替えないこと |
|---|---|---|
| アバディ | 生産開始を目指す工程 | すでに利益を生んでいる事業 |
| イクシス | 生産水準の維持につながる開発 | 現在の生産が何もしなくても永続する |
| 欧州・中東 | 増産投資等 | すべての案件の利益が確定済み |
| 外部環境 | 油価・為替の仮定 | 同じ利益がどんな価格環境でも出る |
将来の利益を見るときは「どれだけ売れるか」に加えて「いくらで売る計算か」を見る。この見方は、目立つ成長計画を読むときの確認に使えます。
本記事では、原油価格が下がった場合の2035年利益を独自に作りません。今回の資料だけで、全ての費用・生産・税金の条件をそろえた再計算まではできないためです。
参照:INPEX「INPEXの伸び代」p.8。90ドル・155円は長期イメージ側の前提で、2026年予想の前提ではありません。
事業が成長することと、市場の評価が上がることは別
倍率の14.4倍は、会社資料では株主資本コスト10%と、市場期待成長率3.06%を置いたモデルから説明されています。平たく言えば、投資家が求める収益と、成長への期待を仮定し、利益に付ける評価を計算しています。
ここは計算式を暗記する場面ではありません。会社の成長を市場がどう評価するかにも、仮定が入ると分かれば十分です。
会社が新しい生産計画を進めることは、事業側の出来事です。一方、その進展にどれだけの価格を付けるかは市場側の評価です。費用や時間、外部環境への見方も含めて、投資家による判断は同じとは限りません。
したがって「会社が計画を達成すれば、自動的に資料の倍率になる」とも、「利益が増えても株価は上がらない」とも言いません。今回の試算では、利益の見通しに加え、評価の仮定が置かれているということです。
資料の成長率は会社が示すモデルの仮定として扱います。3.06%へ換算する全ての導出手順を、本記事で独立に再現したわけではありません。「約6,300円になる掛け算が合う」ことと「そのモデルが実現する」ことは別です。
同じページには、求める収益の仮定が変わると倍率も変わる参考表があります。会社自身の図にも、評価を決める条件が1つではないことが表れています。
参照:INPEX「INPEXの伸び代」p.7-8。会社モデルの説明と、当方の投資判断上の読み方を分けています。
約2兆円の投資。全部が新しい利益になるわけではない
2025-2027年の成長投資は1兆9,500億円です。金額の大きさより、何に使う計画かを見ます。
| 会社資料の区分 | 利益貢献開始時期の区分 | 2025-2027年の投資額 |
|---|---|---|
| 新規取得・マレーシア他 | 短期:2026-2027年 | 約1,000億円 |
| 既存案件増強 | 短期:2026-2027年 | 約2,000億円 |
| 新規取得・既存案件増強 | 中期:2028年からアバディ生産開始前 | 約4,000億円 |
| アバディ | 長期:アバディ生産開始後 | 約2,000億円 |
| Beetaloo・探鉱 | 長期:アバディ生産開始後 | 約1,000億円 |
| 既存案件の維持・更新等 | 生産中の案件等 | 約9,500億円 |
| 合計 | 投資時期と利益開始時期は別 | 1兆9,500億円 |
※約9,500億円には、成長軸②③への投資約900億円も含まれます。各区分は会社資料によるものです。将来の利益貢献開始時期は計画であり、投資した年の利益額ではありません。
約9,500億円は全体の約48.7%。規模感としては約半分です。ただし「半分が修理だけ」「半分は成長に関係ない」とは言えません。「等」と脚注を落とすと、会社が示す区分より狭い意味になってしまいます。
ここで持ち帰りたいのは、投資の総額をそのまま新しい利益の上乗せ額に置き換えないことです。今ある稼ぎを支える投資と、新しい稼ぎを目指す投資では、確認する役割が違います。
お店でたとえるなら、新しい店を出すお金と、今の店をきちんと動かすお金。どちらも必要ですが、同じ売上の上乗せとして数えることはできません。もちろん、INPEXが店舗を運営するという意味ではありません。
逆に、維持のためのお金だから価値が低い、とも決めつけられません。長期の利益イメージにイクシスの生産水準維持が入っている以上、それを支える投資も計画の一部です。「新規か維持か」を分けるのは、価値の順位を付けるためでなく、お金の役割を取り違えないためです。
参照:INPEX「INPEXの伸び代」p.4。約48.7%は9,500÷19,500による当方計算。
大きな事業が動く前に、何が稼ぎを支えるのか
アバディの生産開始は2030年代初頭を想定しています。それまで何も起きないという計画ではありません。会社は、先に利益貢献を目指す案件を短期・中期に分けて示しています。
短期には新規取得や既存案件の持分追加等、中期にはアブダビの生産能力増強投資等が位置付けられています。投資のニュースを読むときは、取得した権益(けんえき)や契約の名称より先に、「いつから利益へ届く区分なのか」を見ます。
ただし、取得契約の締結と、実際の取得完了も別です。具体例として9月25日のイクシス参加権益等の追加取得開示は、契約締結と、関係当局の承認等の先行条件を記しています。発表を読んだだけで、全ての権利移転が終わったことにはしません。
また、利益貢献の「開始」は、投資したお金の回収が終わることではありません。最初の利益が出る時点と、投資全体から十分な収益を得る時点は分けて考える必要があります。
今回の資料には200億円程度、600億円程度という利益貢献の図もありますが、本記事ではこれを使った投資利回りや回収年数を出しません。年額・累計などの厳密な追加説明を確認できていないためです。分からないまま計算を一段足すより、時期の違いに絞ります。
参照:INPEX「INPEXの伸び代」p.3-4、「イクシスLNGプロジェクト参加権益等の追加取得について」2026年9月25日。
アバディは、どの段階まで進んでいるのか
10月21日資料では、アバディLNGは最終投資決定前とされています。FID(エフアイディー)は、開発へ本格的に投資する最終的な意思決定です。式典や基本設計の開始と同じ意味ではありません。
8月の決算説明資料では、2027年央頃の最終投資決定を目標とし、生産開始を2030年代初頭に置いています。日付が書かれていても、どちらも達成済みの事実ではありません。
工程表には、基本設計後の費用とスケジュール、販売契約、資金調達の条件、環境許認可などが並んでいます。会社は基本設計後の費用・工程をもとに政府と協議し、経済性を確保する方針を説明しています。
| 確認対象 | 進んだと判断するために見るもの |
|---|---|
| 費用・工程 | 新しい見積もりや工程の説明 |
| 販売 | 基本合意と正式な売買契約の区別 |
| 資金 | 調達条件や資金手当ての進展 |
| 許認可 | 必要な承認の取得状況 |
| 最終投資決定 | 会社が決定を開示したか |
「大型案件がある」だけでは、費用が確定したか、販売先の約束がどこまで固まったかは分かりません。ここが、期待を具体的な確認条件へ変える部分です。
投資額約2,000億円は、あくまで2025-2027年の区分の数字です。アバディの全期間の総開発費でも、INPEXが将来負担する全ての金額でもありません。確定していない総費用や将来配当額を、こちらで埋めないようにします。
参照:INPEX「INPEXの伸び代」p.3-4、「2026年12月期 第2四半期(中間期)決算説明会」p.7。
投資が増える時期に備え、先に資金を積み立てる
成長の説明を配当目的の投資に結び付けるには、利益の完成図だけでなく、投資の途中で現金がどう動くかを読みます。会社が10月21日に示した資金配分は、時間を3つに分けています。
| 期間 | 会社が説明する位置付け | お金を見るときの要点 |
|---|---|---|
| 2025-2027年 | 還元拡充とアバディへの準備 | 営業CF等から投資・還元・準備資金積立てへ配分 |
| 2028-2030年 | アバディへの投資実行と還元の両立 | 営業CFと準備資金の取り崩し、借入を組み合わせる |
| 2031-2033年 | 投資ピークアウトと財務健全性向上 | 投資、増えた借入の返済、還元を両立する計画 |
※原図は各期間の年平均です。2028年以降の年度別配当額を示す表ではありません。
2025-2027年の中計資金配分では、アバディ開発準備資金7,000億円以上、2027年末の残高9,000億円以上を示しています。積立額という期間中の流れと、期末残高という時点の金額は、同じ数字ではありません。
大事なのは、投資が増えたその年の営業活動で、全てを賄う構図だけではないことです。準備したお金を使う計画まで含めて、投資と還元を説明しています。
ただし、会社が還元の元手を確保する計画を示すことと、その計画がどんな環境でも崩れないことは別です。資料冒頭にも原油・天然ガス価格、為替、開発・生産関連費用などの不確実性が記されています。
参照:INPEX「INPEXの伸び代」p.2・5、冒頭の注意事項。
積立てと取り崩しを、利益と混同しない
8月の2026年投資キャッシュ・フロー予想には、アバディ開発準備資金の積立て2,000億円が含まれます。投資CFの金額を見て、全額がその年の工事代として外へ出ると説明すると、資金の動きを取り違えます。
一方、後でその準備資金を取り崩すことも、新しい利益を生み出すことではありません。前に用意した資金を、投資に充てる段階へ進むということです。
家計でいえば、別にしていたお金を使った日に、給料が増えたとは数えません。使えるお金の流れと、その年に稼いだ利益は分けて見る、というたとえです。
もう1つ注意が必要です。この決算説明会の資金指標は、イクシス下流事業会社を含み、探鉱(たんこう)活動への支出を営業CFから投資CFへ組み替えています。短信に載る制度会計のキャッシュ・フローと同じ定義ではありません。
| 指標を読むときの確認 | 今回の扱い |
|---|---|
| 対象範囲 | イクシス下流事業会社込みの会社管理指標 |
| 支出の区分 | 探鉱支出を投資CFへ組み替え |
| 投資CFに含むもの | 開発投資に加えて、準備資金の積立て等 |
| 取り崩しの意味 | 用意した資金を使うことで、新たな利益とは別 |
積立ての存在は、資金表を正しく読むための説明です。「積立てを除けば残りは全部配当に回せる」という結論を出すためではありません。必要な投資や借入返済もあるためです。
参照:INPEX「中間期決算説明会」p.20脚注1・3・6、p.21、同社「INPEXの伸び代」p.5。
待つ間の配当は、どこまでの約束なのか
現在明示されている株主還元方針は、2025年度から2027年度の中期経営計画期間について、1株当たり年間90円を起点とする累進配当(るいしんはいとう)と、機動的な自己株式取得によって総還元性向50%以上を目指すものです。
累進配当は、配当を維持または増やす方針として読みます。ただし、将来の具体的配当額や株価を保証するものではありません。「90円を起点」と「現在の年間予想112円」も、別の情報です。
では、中計が終わると配当方針も必ず終わるのでしょうか。会社のVision 2035 FAQは、2028年以降も維持または強化していきたいという意向を示しています。その一方で、一時的な業績不振や事業環境の大幅悪化時など、例外にも言及しています。
| 情報 | 言えること | 言えないこと |
|---|---|---|
| 現行の中計方針 | 2025-2027年度の方針が明示されている | 元本や将来の配当が保証された |
| 2028年以降のFAQ | 維持・強化の意向がある | 年度別配当額が確定している |
| 将来の資金配分図 | 投資と還元の両立を目指す計画 | どんな費用・価格環境でも減配しない |
期限だけを拾って「2027年で必ず終わる」とするのも、意向だけを拾って「永久に大丈夫」とするのも、資料より強い言い方です。
配当を受け取りながら将来を待つ考え方はできます。しかし、配当が出ることによって、保有株の値下がりや事業の遅れまでなくなるわけではありません。受取額と、待つ間に負うリスクは別々に確認します。
参照:INPEX「株主還元・配当情報」、「INPEX Vision 2035 FAQ」Q11-12。
自己株式取得を、現金配当と足し間違えない
2026年8月7日に決定した自己株式取得は、取得価額1,400億円、株式数5,000万株をそれぞれ上限とする枠です。取得期間は8月10日から12月31日までとされています。枠の設定を、その全額の実行完了とは呼びません。
総還元性向は、配当だけでなく自己株式取得も含めた還元の物差しです。「50%以上を目指す」を「利益の半分以上が、持っている株数に応じて現金で振り込まれる」とは読めません。
| 還元の方法 | 株主が確認するもの |
|---|---|
| 現金配当 | 1株配当、対象の基準日、予想と決定の区別 |
| 自己株式取得 | 取得枠、期間、実際の取得状況 |
| 総還元性向 | 何を含めた割合か、目標か実績か |
ここで、8月説明資料の還元2,703億円と資金表の2,730億円を、数字が近いから同じものだと入れ替えないことも重要です。前者は当期配当予想と取得枠の説明、後者は前期末と当期中間の配当等を使った資金支出の集計で、対象時期が異なります。
この違いを覚える必要はありません。還元の金額を見たときに、「配当の年度か、現金を払う時期か」「取得枠か、実行額か」を確認する。それだけで、受取配当の期待を膨らませすぎずに済みます。
参照:INPEX「自己株式の取得に係る事項の決定」2026年8月7日、同社「中間期決算説明会」p.11・20。
今から買う人は、年間配当予想をどう使うか
年間予想112円の内訳は、中間実績56円と期末予想56円です。中間の基準日は6月30日で、支払効力発生日も9月1日。10月に買う人へ過去の中間分が付いてくる仕組みではありません。
| 100株で換算 | 金額 | 意味 |
|---|---|---|
| 今期の年間配当予想 | 11,200円 | 中間実績と期末予想を合計した年度全体の参考額 |
| 今期の期末配当予想分 | 5,600円 | 期末の配当権利を取得し、予想どおり実施された場合 |
| 購入後の将来12か月 | 本記事では算定しない | 翌年度の配当額・権利取得条件も必要 |
※いずれも税引前。普通株式の公表情報を使った換算です。実際の受取は権利取得・配当の決定によります。基準日の12月31日と、株を買う必要がある最終取引日は同じ意味ではありません。本記事は権利取り日の案内ではありません。
予想利回り約2.90%は、銘柄の価格と年間配当の規模感を見るためには使えます。しかし、自分の口座にいつ、いくら入るかは、それだけでは分かりません。
候補を比べるときは年間予想、自分の受取額を考えるときは権利と支払の対象を確認する。同じ配当の数字でも、使う目的を分けます。
参照:INPEX「配当修正」p.1-2、公式「株式情報(株式の状況)」。
期待を持つ前に、見直す条件も決めておく
今回の投資先を見るときに、原油・天然ガス価格、為替、開発費、工程を確認するのは、弱点を並べるためではありません。会社が描く将来像の条件が変わったとき、自分の読み方を更新するためです。
例えば費用の新しい見積もりが出れば、同じ生産開始時期でも資金負担の見方が変わるかもしれません。工程が変われば、利益を待つ期間も変わります。販売契約が進めば、まだ未確定だった条件が1つ固まったと読めます。
ただし、どれも現時点でその変化が起きたと断定する話ではありません。「何が変わったら確認し直すか」という当方の点検項目です。会社が出していない原因や、将来の減配をこちらで付け加えません。
この準備があると、株価が動いた日に、すぐ答えを決めずに済みます。事業の計画が変わったのか、外部条件が変わったのか、それとも今回確認した範囲では事業側の変更を確認できないのか。分からない部分は、分からないまま区別できます。
「何年でも待つ」より、「どの条件を見ながら待つか」。これが、目立つ将来の数字を株選びの材料に変えるための読み方です。
次の決算では、この確認表を更新する
会社のIRカレンダーでは、第3四半期の決算発表を11月12日15時30分、説明会を翌13日10時に予定しています。以下は、そのとき結果を確認するための表であり、決算の内容を先に予想するものではありません。
| 確認する柱 | 今回の確認起点 | 新しい資料で見る点 |
|---|---|---|
| 今の稼ぎ | イクシスの生産・出荷、設備接続の会社見通し | 計画に対する実績と、作業予定の更新 |
| 将来の稼ぎ | アバディは最終投資決定前 | 費用・工程・販売契約・資金手当て等の進展 |
| 待つ間のお金 | 準備資金、投資、借入、還元の資金配分 | どの配分が変わり、会社が何を理由に挙げたか |
発表のたびに会社の説明を最初から読み直すのではなく、変わった欄を確認する。この表は、株を持っている人だけでなく、候補として調べ続けたい人にも使えます。
新たな事実が出ていなければ、未確定の条件は未確定のままです。カレンダーだけが先へ進んでも、契約が自動的に決まるわけではありません。進んだことと、まだ待つことを分けます。
参照:INPEX「IRカレンダー」、同社「中間期決算説明会」p.7・9・29、「INPEXの伸び代」p.5。発表日時は予定です。
まとめ:大きな数字を、確認できる条件へ戻す
INPEXの約6,300円は、会社の成長戦略が市場に評価される場合を想定した試算です。2026年の1株利益予想を使っており、2035年の予想株価や、値上がりを保証する数字ではありません。
投資額は、その用途と稼ぎ始める時期まで分けて読む必要があります。維持・更新等を、新しい利益の上乗せと同じようには数えません。また、準備資金の積立てと取り崩しは、資金の流れであって新しい利益ではありません。
配当は、明示された中計の方針と、その先の維持・強化意向、実際の年度別予想を分けて見ます。年間予想を、自分が今から受け取る額と混同しないことも大切です。
持ち帰るのは「6,300円」という答えではなく、何に使い、いつ稼ぎ、待つ間をどう支えるかを確認する見方です。このチャンネル・ブログでも、大きな会社計画をそのまま期待に変えず、確認できる事実と残る条件へ分けて解説します。次の候補を調べるときにも、この見方を使ってください。
主な参照資料と確認範囲
- INPEX 「INPEXの伸び代」2026年10月21日:試算、投資区分、資金配分。
- INPEX 「2026年12月期 第2四半期(中間期)決算短信」:2026年1-6月実績、2026年通期予想。IFRS連結。
- INPEX 「同 決算説明会資料」:アバディ工程、イクシスの見通し、会社管理CF。
- INPEX 「通期連結業績予想の修正」2026年8月7日。
- INPEX 「配当修正」2026年8月7日、「自己株式取得決定」同日。
- INPEX 「INPEX Vision 2035 FAQ」Q11-12、「株主還元・配当情報」。
- INPEX 「株式情報」、「株価情報」、「IRカレンダー」、9月25日イクシス追加取得開示。
※Investor Day動画の質疑応答全編は未照合です。会社モデルの導出全過程、利益貢献図からの投資回収年数、アバディの確定総費用、将来の具体的配当額は独自に補っていません。株価の期間騰落率や市場平均に対する優劣は今回は扱いません。