※この記事は、武田薬品工業の決算短信・決算説明会資料・半期報告書・有価証券報告書・お知らせをもとにした情報の整理です。特定の銘柄の売買をすすめるものではありません。
※株価は2026年10月30日終値(株探。Yahoo!ファイナンスの日足と一致を確認)です。
武田薬品の株を持っている方、高配当株として気になっている方にとって、答え合わせの日が来ました。2026年10月29日、武田薬品工業が中間決算(4〜9月)を発表したのです。
武田は、利益よりも多い配当を払っている会社です。7月の時点の予想では、1年の利益に対する配当の割合(配当性向)は約196%でした(204円÷1株あたり利益の予想104.26円、私の計算)。前の期(2026年3月期)は、最終的な損益が約1,524億円の赤字でした。それでも配当は200円を払い、今期は204円に増やす予想を出していました。
では、10月29日の決算で、204円は守られたのか。結論から言うと、守られました。しかも、利益の予想は上がりました。半年の利益は、もう1年分の予想を超えています。
ただ、中身を読むと、「絶好調」とは少し違う姿も見えてきます。会社が自分で決めた「配当を続けるための利益の目安」には、まだ届いていないのです。今回は、会社の資料だけを使って、その中身を確かめます。
1. まず結論
- 配当は守られた。年204円(前期200円)の予想は変えず、半年分の102円を正式に決めた。支払いは12月1日から(100株なら10,200円、税引前)
- 半年で1年分の利益を超えた。4〜9月の純利益は3,056億円で、1年の予想の2,090億円をもう上回った。1年の予想も1,660億円から2,090億円に上方修正
- ただし上振れの中身は、主に円安と税金。会社の言葉は「主に為替のプラス影響」。為替の影響を除くと、売上はまだ1.0%減っている
- 配当を払うもとの現金は足りている計算。1年の配当の総額は約3,300億円。1年に残る現金の予想は7,000億〜8,000億円に引き上げ
- それでも、会社自身の「配当を続ける目安」まで、あと約1,600億円。会社は「配当の持続性を確保する、ROE5%を上回る水準」の利益を目標にしている。今期の予想は約2.8%
つまり、今期の204円は守られました。ただ、来年以降も続けられるかは、会社自身が決めた目安に届くかどうかにかかっています。
2. 武田の配当は、赤字の年も減らさなかった
まず、武田の配当の歩みを見ておきます。
| 期 | 1年の配当 | うち中間 |
|---|---|---|
| 2019年3月期〜2023年3月期 | 180円(5年続けて同じ) | 90円 |
| 2024年3月期 | 188円 | 94円 |
| 2025年3月期 | 196円 | 98円 |
| 2026年3月期 | 200円 | 100円 |
| 2027年3月期(今期) | 204円(予想) | 102円(10月29日に決定) |
(有価証券報告書、決算短信。2019年3月期より前は、この記事では確かめていません)
180円が5年続いたあと、4年続けて増やす予想です。会社は「毎年の1株当たり年間配当金を増額または維持する累進配当の方針」(2026年3月期決算短信)を出しています。累進配当(るいしんはいとう)は、配当を減らさず、維持するか増やすという方針です。
目をひくのは、前の期(2026年3月期)です。最終的な損益は約1,524億円の赤字(1株あたり△96.75円)でした。大きな原因は、AMITIZA(アミティーザ、便秘の薬)をめぐる米国の独占禁止法の裁判です。2026年5月の陪審(ばいしん)評決を受けて、会社は4,025億円の引当金(ひきあてきん)を前の期の決算に積みました。引当金は、まだ払っていないけれど払うことになりそうなお金を、先に費用にしておくものです。
実は、5月13日に発表した前の期の決算では、純利益は約1,918億円の黒字でした。そのあとの評決を受けて、6月5日に約1,524億円の赤字に直したのです(2026年3月期決算短信と、その修正)。
それでも会社は、「2025年度の期末配当金は、1株当たり100円から変更ありません」(2026年6月5日のお知らせ)として、1年で200円を払いました。
武田の個人の株主は、約62万人です(2026年3月末、有価証券報告書の「所有者別状況」の株主数)。1年前の約56万人から、約5万人増えました。この配当がどうなるかは、たくさんの人に関係する話です。
3. 10月29日の答え:配当204円は変えず、中間102円を決めた
10月29日の中間決算短信には、配当予想について「直近に公表されている配当予想からの修正の有無:無」と書かれています。1年の配当は204円の予想のままです。
そして、半年分の中間配当102円を、取締役会で正式に決めました。支払いが始まるのは2026年12月1日です。中間配当の総額は1,634億円あまりです(半期報告書)。
100株を持っている方なら、12月1日から10,200円(税引前)を受け取れる計算です。1年では20,400円の予想です。
4. 1年の利益予想を上方修正。でも中身は円安と税金
1年の予想は、5月13日に出したものから、次のように変わりました。7月30日の第1四半期の決算では変えていなかったので、今回が今期はじめての修正です。
| 項目 | 5月13日の予想 | 10月29日の予想 |
|---|---|---|
| 売上収益 | 4兆6,400億円 | 4兆7,000億円 |
| 営業利益 | 4,200億円 | 4,530億円 |
| 純利益(親会社の所有者に帰属) | 1,660億円 | 2,090億円 |
| 1株あたり利益(EPS) | 104.26円 | 131.28円 |
| 1年に残る現金(調整後フリー・キャッシュ・フロー) | 6,500億〜7,500億円 | 7,000億〜8,000億円 |
| 前提の為替(1年の平均) | 1ドル156円 | 1ドル158円 |
(決算短信)
純利益の予想は430億円、率にして25.9%上がりました。数字だけ見ると、とても良い決算です。
ところが、会社が書いている理由は、薬が売れたからではありません。説明会資料の見出しは「主に為替のプラス影響により上方修正」です。純利益については「主に繰延税金資産の計上による税率の低下」と書いています。繰延税金資産(くりのべぜいきんしさん)は、将来の税金を減らせる分を、前もって資産として計上するものです。これを増やすと、その期の税金の費用が減ります。つまり、税金の計算の見直しで、税金が少なく済んだということです。
為替の影響を外して、薬そのものが売れたかを見る数字もあります。会社が出している1年の目安(為替の影響を除いた増減)は、次のとおりです。
| 項目 | 5月の目安 | 10月の目安 |
|---|---|---|
| 本業の売上(Core売上収益) | 一桁台前半%の減少 | 一桁台前半%の減少(変えず) |
| 本業の利益(Core営業利益) | 5%から8%の減少 | 一桁台半ば%の減少 |
| 1株あたりの本業の利益(Core EPS) | 10%台半ばの減少 | 10%台前半の減少 |
(Coreは、会社が本業の力を見るために、一時的な費用などを外した利益。会計のルールで決まった数字ではありません)
減り方は小さくなりましたが、為替を除けば「減少」のままです。会社は今期を「引き続き、2026年度を成長投資に注力する一年と位置づける」(説明会資料)としています。
5. 半年で、1年分の予想利益を超えた
4〜9月の半年の実績です。
| 項目 | 前の年の4〜9月 | 今年の4〜9月 | 円で見た増減 | 為替を除いた増減 |
|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 2兆2,195億円 | 2兆4,070億円 | +8.4% | △1.0% |
| 営業利益 | 2,536億円 | 4,067億円 | +60.4% | +45.0% |
| 純利益 | 1,124億円 | 3,056億円 | +171.8% | +148.9% |
(決算短信)
半年の純利益3,056億円は、1年の予想2,090億円を、もう上回っています。
ただし、ここにも円安と税金が効いています。売上の増収は「主に円安による増収影響によるもの」と会社は書いています。税金の費用は、前の年の4〜9月の663億円から、130億円に減りました。
営業利益が60%増えた理由もあります。VYVANSE(ビバンセ、注意欠陥・多動性障害の薬)の権利の償却が、2026年1月に終わりました。償却(しょうきゃく)は、買った薬の権利の値段を、何年かに分けて費用にすることです。この費用がなくなった分、利益が増えました。また、前の年に計上した減損(細胞療法の研究の中止による582億円など)が、今年はありませんでした。
6. 引き算すると、下期(10〜3月)は966億円の赤字
半年でもう1年分を超えたなら、残りの半年はどうなるのでしょうか。会社は下期(10〜3月)だけの予想は出していません。そこで、1年の予想から4〜9月の実績を引いてみます。
| 項目 | 1年の予想 | 4〜9月の実績 | 10〜3月(引き算) |
|---|---|---|---|
| 研究開発費 | 7,520億円 | 3,386億円 | 4,134億円 |
| 薬の権利の償却 | 4,090億円 | 2,123億円 | 1,967億円 |
| 薬の権利の減損 | 1,000億円 | 62億円 | 938億円 |
| 事業構造再編費用 | 1,600億円 | 798億円 | 802億円 |
| 営業利益 | 4,530億円 | 4,067億円 | 463億円 |
| 税引前利益 | 2,700億円 | 3,187億円 | △487億円 |
| 純利益 | 2,090億円 | 3,056億円 | △966億円 |
(1年の予想と4〜9月の実績は決算短信。引き算は私の計算)
会社の予想どおりなら、10〜3月は966億円の赤字になる計算です。
理由は、予想の中身にあります。研究開発費は、4〜9月より約22%多くなります。新しい薬を売り出すための費用も増やします。会社は「ザソシチニブを中心とした新製品の上市に向けた投資の加速」と書いています。上市(じょうし)は、薬を発売することです。
もうひとつは、減損(げんそん)の枠です。減損は、買った薬の権利が思ったほど稼げないと分かったとき、帳簿の値段を下げて一度に費用にすることです。会社は1年の予想に1,000億円の減損を入れています(開発中の薬の権利も含みます)。4〜9月に使ったのは62億円だけでした。
ここで大事なのは、これは「会社が下期は赤字と言った」わけではない、ということです。あくまで、1年の予想から半年分を引いた結果です。
7. 帳簿の費用は2種類:もう払った現金と、これから払うかもしれない現金
では、下期の赤字の計算は、配当にとって危ない話なのでしょうか。ここが今回いちばん大事なところです。
帳簿に書く費用には、大きく分けて2種類あります。
1つ目は、もう払い終わった現金を、あとから費用にするものです。薬の権利の償却と減損がこれにあたります。武田は、ほかの会社を買って、たくさんの薬の権利を手に入れてきました。その代金は、買ったときに払い終わっています。それを何年もかけて、帳簿の費用に書いているのです。
家計簿にたとえると、何年も前にまとめて払った10年分の保険料を、毎年1年分ずつ費用として書き込むようなものです。書き込んでも、今年の財布からお金は出ていきません。
10〜3月の償却と減損を足すと、約2,900億円です(1,967億円+938億円、私の計算)。引き算で出た赤字の966億円より、ずっと大きい額です。つまり、10〜3月の赤字の計算は、財布からお金が出ていかない費用が大きいことで生まれています。
2つ目は、これから払うかもしれない現金を、先に費用にしておくものです。前の期の赤字の大もとになった、便秘の薬の裁判の4,025億円がこれにあたります。帳簿には前の期に載せましたが、会社は控訴する方針で、「当社に最終的に課され得る負債の金額は確定していません」(2026年6月5日)としています。
家計簿で言えば、まだ請求書は来ていないけれど、来そうな分を先に書いておくようなものです。こちらは、いつか本当に財布からお金が出ていく可能性があります。今期の予想の金融費用にも、「AMITIZA訴訟判決に関連する利息の引当計上」が入っています。
つまり、武田の配当を考えるときは、「帳簿の利益」だけでなく、「もう払った費用」と「これから払うかもしれない費用」を分けて見る必要があります。
8. 配当を払う現金は足りているか
では、実際に配当を払うもとになる現金を見ます。武田は「調整後フリー・キャッシュ・フロー」という数字を出しています。1年に入ってきた現金から、工場や薬の権利に使った分を引いて残る現金です(会社が決めた数字です)。
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 1年の配当の総額 | 約3,300億円(中間1,634億円×2、私の計算) |
| 1年に残る現金の予想 | 7,000億〜8,000億円(配当の総額の約2.1〜2.4倍) |
| 4〜9月に残った現金 | 3,257億円(前の年の4〜9月は5,254億円) |
| 4〜9月に配当で払ったお金 | 1,579億円 |
(決算短信。倍率は私の計算)
1年に残る現金の予想は、配当の総額の2倍あまりです。しかも、予想は6,500億〜7,500億円から引き上げられました。今期の配当は、会社の現金の予想の中で払える計算です。
気をつけたいのは、4〜9月に残った現金が、前の年より38%少ないことです。会社は理由を、「売上債権及びその他の債権の増加による運転資本の変動」と「先物為替予約の決済(純額)が支出に転じた」ことだとしています。売ったけれどまだ代金を受け取っていない分が増えたこと、為替の取引で現金が出ていったことが主な理由です。4〜9月で、1年の予想の4〜5割まで来ています。
配当性向155%は「高すぎる」のか
10月29日の予想で計算し直すと、配当性向は204円÷131.28円で約155%です(私の計算)。7月の予想(1株あたり利益104.26円)では約196%でしたから、少し下がりました。
それでも100%を超えています。「利益より多く配当を払っている」状態です。これだけを見ると心配になりますが、ここまで見てきたとおり、帳簿の利益は、もう払った費用(償却・減損)で小さく出ています。現金で見ると、配当の2倍あまりが残る予想です。
ただし、これは会社の予想どおりに現金が入った場合の話です。そして、もうひとつ、会社自身が出している物差しがあります。
9. 会社自身の「配当を続ける目安」まで、あと1,600億円
武田は、2026年3月期の決算短信の「経営方針」に、こう書いています。
「まずは、配当の持続性を確保する、ROE5%を上回る水準の財務上当期利益を達成することを目標とします」
ROE(アールオーイー)は、株主が出したお金に対して、1年でどれだけ利益を出したかの割合です。会社は、配当を続けていくためには、この割合で5%を上回る利益が必要だと考えている、ということです。
これを金額に直してみます。武田の株主のお金(親会社の所有者に帰属する持分)は、9月末で約7兆4,162億円です。この5%は約3,700億円です。今期の純利益の予想は2,090億円なので、割合にすると約2.8%。目安まで、あと約1,600億円足りません(どれも私の計算。期中の平均ではなく9月末の数字で割った、おおまかな計算です)。
もうひとつの目安は借金です。会社は、借金から手元の現金を引いた額が、1年の稼ぎ(利息・税金・償却を引く前)の2年分になることを目指しています(調整後純有利子負債/調整後EBITDA倍率「2倍を目指す」)。この倍率は、3月末2.6倍、6月末2.7倍、9月末2.5倍と、少し下がりました。9月23日には、2016年に出した米ドルの社債15億ドルを返しています。
つまり、204円は今期は守られましたが、会社自身の目安に照らすと、利益はまだ足りていません。来年以降も配当を続けられるかは、この1,600億円を積み上げられるかにかかっています。
10. 7月に書いた「7つの確認点」の答え合わせ
7月31日の記事では、第1四半期(4〜6月)の決算を見て、「次に確かめたい7つのポイント」を書きました。4〜9月の資料で答え合わせをします。
| # | 確かめること | 4〜6月(7月30日の資料) | 4〜9月(10月29日の資料) | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 為替を除く売上 | △0.5% | △1.0%(1年の目安も「減少」のまま) | まだ |
| 2 | エンタイビオ | +3.8% | +2.7%(会社は「想定通りの成長」) | 変わらず |
| 3 | 新製品の売上の割合 | 約4% | 4%のまま | まだ |
| 4 | 特許切れの穴を補えるか | 「概ね横ばい」 | 「減収がこれらを上回りました」 | まだ |
| 5 | 新薬の承認と発売 | 承認前 | 2つが発売済み、1つが審査中 | 良くなった |
| 6 | 1年の現金の予想 | 6,500億〜7,500億円 | 7,000億〜8,000億円に引き上げ | 良くなった |
| 7 | 配当と借金の両立 | 倍率2.7倍 | 配当204円を維持、倍率2.5倍 | 良くなった |
(エンタイビオと為替を除く数字は、為替の影響を除いた増減。判定は私の見方です)
良くなったのは3つ、まだなのは3つ、変わらずが1つです。
会社の言葉が、3か月で変わった
いちばん気になるのは4つ目です。特許が切れて、まねした安い薬が出てくると、その薬の売上は大きく減ります。この穴を、ほかの薬で埋められるかどうかです。
7月30日の第1四半期の決算短信には、為替を除くと、主力の薬と新しい薬が伸びたものの、特許切れの薬などの減収「により相殺され、Core売上収益は概ね横ばいとなりました」と書かれていました。
10月29日の中間決算短信では、主力の薬の売上が「概ね横ばいとなり」、新しい薬は伸びたものの、特許切れの薬などの「減収がこれらを上回りました」に変わりました。
主力の薬(会社が「既存主力製品」と呼ぶ7つ)の伸びは、為替を除いて4〜6月の+2.3%から、4〜9月は+0.5%に鈍りました。会社の説明会資料によると、血液から作る薬(免疫グロブリン)で米国の売上の時期のずれと値段の動きがあったこと、アルブミンという血液の製剤で中国の需要が弱かったことなどが理由です。会社はアルブミンの1年の目安を「概ね横ばい」から「一桁台半ば%の減少」に下げました。一方で、免疫グロブリンは「下期は、米国における大型契約が牽引し成長が加速する見込み」としています。
11. 新しい薬3つの今
特許切れの穴を埋める役は、新しい薬です。会社が「成長の加速が期待される」とする3つの薬の状況です(説明会資料)。
| 薬 | 何の病気の薬か | いまの段階 |
|---|---|---|
| MIMRYLO | 真性多血症(しんせいたけつしょう、血液の病気) | 米国で2026年8月に承認・発売 |
| オーゼイフル(ORZEYFUL) | ナルコレプシータイプ1(昼間に強い眠気が起きる病気) | 日本・中国で2026年10月に発売。米国は11月に発売予定(米国の麻薬取締局の審査中) |
| ザソシチニブ | 乾癬(かんせん、皮膚の病気) | 米国と欧州で申請済み。米国の審査の終了目標は2026年度第4四半期(2027年1〜3月) |
ただ、新しい薬(会社が「新製品」と呼ぶもの)の売上は、まだ全体の4%です。4〜9月は為替を除いて17.3%伸びましたが、全体を引っ張るにはまだ小さい規模です。
12. 気をつけること:2つの裁判
会社の資料には、気をつけておきたい裁判が2つ書かれています。
ひとつ目は、一番の稼ぎ頭エンタイビオ(潰瘍性大腸炎=かいようせいだいちょうえん、クローン病の薬)の特許です。エンタイビオの4〜9月の売上は5,417億円で、全体の2割強(約22.5%、私の計算)を占めます。10月29日の半期報告書によると、2026年2月以降、欧州の複数の国で、第三者がエンタイビオの特許を無効にするよう求める裁判を起こしています。また、2026年8月以降、武田は、エンタイビオをまねした薬(バイオシミラー)の候補が特許を侵害しているとして、米国とカナダで裁判を起こしました。会社は「これらの訴訟はいずれも係属中であり、現時点では初期段階にあります」としています。
ふたつ目は、前の期の赤字の大もとになった便秘の薬の裁判です。払う額はまだ決まっていません。
どちらも結果は分かりません。ただ、配当の先行きを考えるうえでは、見ておきたいところです。
13. 株価は約8年10か月ぶりの高さ
決算を受けた10月30日は+2.78%
決算の発表は10月29日15時30分、東京証券取引所の取引が終わった時刻でした。そのため、決算を受けた最初の取引は10月30日です。
| 10月30日 | 値 |
|---|---|
| 武田の始値 | 6,371円(前の日の終値6,471円より安く始まった) |
| 高値 | 6,712円 |
| 終値 | 6,651円(前の日より+180円、+2.78%) |
| 同じ日の日経平均 | △2.12% |
| 同じ日のTOPIX(トピックス) | △0.95% |
(株探)
朝は前の日より安く始まりましたが、そのあと上がり、日経平均とTOPIXが下げた日に、終値は2.78%高くなりました。7月31日(第1四半期の決算の翌日)は3.59%下げていたので、今回は逆の動きです。ただ、1日の動きだけで、配当の先行きは決められません。
2018年1月以来の高さ
10月30日の終値6,651円は、終値で見ると2018年1月10日(6,666円)以来の高さです(Yahoo!ファイナンスの日足)。約8年10か月ぶりになります。
| 期間 | 武田 | 日経平均 | TOPIX |
|---|---|---|---|
| 1年(2025年10月30日→) | +56.2% | +23.3% | +20.1% |
| 年初来(2025年12月30日→) | +37.6% | +25.7% | +16.3% |
| 7月31日(第1四半期の決算の翌日)→ | +20.6% | △1.7% | △1.0% |
(株探の終値。変化率は私の計算)
この1年で5割あまり上がり、日経平均やTOPIXの2倍以上の上がり方です。
10月は、日経平均が下げた日に上がっていた
10月の動きには特徴がありました。10月1日から30日までの21営業日のうち、日経平均が前の日より下げたのは13日。そのうち11日で、武田は上がっていました。TOPIXが下げた10日のうちでは7日です。
いちばん目立ったのは10月15日です。日経平均が4.90%(3,318円)下げた日に、武田は4.99%上がりました。
なお、10月の間、武田の適時開示(東京証券取引所を通じた会社の発表)は、10月29日の決算までありませんでした。学会では、乾癬の薬ザソシチニブの試験の結果(9月30日〜10月3日の欧州の学会)などを発表しています(説明会資料)。ただ、株価が上がった理由は、会社の資料からは分かりません。ここでは動きを並べるだけにします。
10月30日の終値6,651円で計算すると、配当利回りは3.07%です(年204円の予想で計算)。
14. 次に見るところ
- 12月11日:投資家向けの説明会(Capital Markets Day)。会社は「今後の成長加速に向けた長期的な構想と戦略について紹介」としています
- 11月:オーゼイフルの米国での発売(予定)
- 2027年1〜3月:ザソシチニブの米国の審査の終了目標
- 2027年5月ごろ:本決算。期末配当102円(予想)と、来期の配当予想
15. 自分で確かめるときの3つ
- 決算短信の1ページ目の「配当の状況」:「直近に公表されている配当予想からの修正の有無」が「無」か「有」か
- 1年に残る現金の予想(調整後フリー・キャッシュ・フロー):配当の総額の何倍か
- 会社自身の目安:ROE5%を上回る利益(いまの株主のお金なら約3,700億円)に近づいているか
16. よくある疑問
Q. 配当性向が100%を超えているのに、なぜ配当を払えるの?
帳簿の利益が、もう払い終わった費用(買った薬の権利の償却・減損)で小さく出ているからです。現金で見ると、今期は配当の総額の2倍あまりが残る予想です。ただし、会社自身は「ROE5%を上回る水準」の利益を、配当を続けるための目標にしています。
Q. 下期は赤字と会社が言ったの?
言っていません。会社は下期だけの予想は出していません。1年の予想(純利益2,090億円)から、4〜9月の実績(3,056億円)を引くと、△966億円になる、という計算です。
Q. 減配の心配はないの?
会社は、配当を「増額または維持する累進配当の方針」を出していて、今期は204円の予想を変えませんでした。ただ、方針は将来の配当の約束ではありません。会社自身の目安(ROE5%)に届くか、便秘の薬の裁判でいくら払うか、新しい薬が特許切れの穴を埋められるかで、先行きは変わります。
Q. 中間配当はいつもらえる?
2026年12月1日から支払いが始まります。1株102円です。
17. まとめ
- 武田は10月29日の中間決算で、年204円の配当予想を変えず、中間102円を正式に決めた(12月1日から支払い)
- 半年の純利益3,056億円は、1年の予想2,090億円をもう超えた。1年の予想も1,660億円から上方修正
- ただし上振れの中身は主に円安と税金。為替を除くと売上は1.0%減
- 1年の予想から引き算すると、下期は966億円の赤字。ただし、その中には、もう払った現金をあとから費用にする分(償却・減損)が約2,900億円入っている
- 1年に残る現金の予想は7,000億〜8,000億円で、配当の総額の2倍あまり
- 会社自身の「配当の持続性を確保する、ROE5%を上回る水準」まで、あと約1,600億円
- 株価は約8年10か月ぶりの高さ。決算の翌日(10月30日)は、日経平均とTOPIXが下げるなかで+2.78%。10月は、日経平均が下げた13日のうち11日で上がった
今期の204円は守られました。ただ、来年以降も続けられるかを見るなら、配当性向の数字だけでなく、会社自身が決めた目安と、新しい薬の育ち方を追っていくことが大切です。
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この記事で見た資料
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- 武田薬品工業「2026年度第2四半期決算 プレゼンテーション」「2026年度上期業績」(2026年10月29日)
- 武田薬品工業「半期報告書(第150期中)」(2026年10月29日)
- 武田薬品工業「2027年3月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」(2026年7月30日)
- 武田薬品工業「2026年3月期決算短信〔IFRS〕(連結)」(2026年5月13日)、「(訂正・数値データ訂正)修正後発事象による引当金の計上および『2026年3月期決算短信〔IFRS〕(連結)』の修正について」(2026年6月5日)、「AMITIZA®(ルビプロストン)に係る米国の反トラスト訴訟における陪審評決および関連する2026年3月期(2025年度)決算値の修正について」(2026年5月19日)
- 武田薬品工業「有価証券報告書」(2023年3月期・2025年3月期・2026年3月期)
- 株価・指数:株探(2026年10月30日終値。Yahoo!ファイナンスと一致を確認)。2018年の株価はYahoo!ファイナンス
※配当の総額、倍率、配当性向、ROE、下期の引き算、株価の変化率は、資料の数字をもとに私が計算したものです。投資の判断はご自身でお願いします。