情報基準日:2026年10月29日。株価は同日の東証終値です。対象は株式会社アドバンテスト(6857)の2027年3月期第2四半期決算。連結・国際会計基準(IFRS、アイファース)で、会社資料の「2026年度」は2026年4月〜2027年3月を指します。本記事は公開資料の読み解きと情報提供であり、特定の株式の購入・売却を勧めるものではありません。予想は将来の実績や株価を保証しません。
売上100円に対して、本業の利益が約56円残る。アドバンテストの2026年7〜9月の営業利益率は55.9%でした。税金などを引いた最終利益率ではありませんが、検査装置を売る会社の稼ぎ方が気になる数字です。
「AI向けの需要が強いから」で終わらせると、この会社の決算の面白い部分を読み落とします。半導体の検査は必要でも、買う側が検査にいくらでも費用をかけたいわけではないからです。顧客は難しい検査に対応したい。同時に、検査の負担は抑えたい。その両立に、装置のどんな機能が応えているのでしょうか。
さらに今回、会社は検査装置市場の規模予想を据え置く一方、自社の年間売上予想を引き上げました。利益率が足元より低い下半期計画でも、利益の金額は上半期実績より多くなる予想です。どちらも、見出しだけでは気づきにくい違いです。
この記事では、顧客が装置を選ぶ理由、今回の利益の増え方、作って届ける力の変化を順に確かめます。すでに保有している人だけでなく、AI関連株をこれから調べる人が、何を確認すればよいかを整理します。
先に結論:需要・製品の価値・利益への表れを分けて見る
今回の決算から持ち帰りたいことは、次の3点です。
- 半導体の数量だけでなく、1個に必要な検査の変化も需要を左右します。顧客はその検査を、高い性能と低いコストの両方でこなしたいと考えています。
- 会社は機能の組み替えや従来の検査プログラム等を活用できる設計を説明しています。ただし、これだけで55.9%の利益率を説明し切ることはできません。決算では、何が売れ、費用がどう動いたかを別に確認します。
- 市場の追い風だけでなく、需要を取り込む生産能力の変化が今回の自社予想増額の主因です。また、最高の四半期の利益率を、将来の利益額や購入価格の判断にそのまま延長しないことが重要です。
会社の仕事への理解と、株式をいくらで買うかの判断は別です。好調な決算を、購入を急ぐ理由にするのではなく、今後を確かめる物差しとして使います。
1.まず期間をそろえる:今回の「約56%」は7〜9月単独
今回の決算には、4〜9月の上半期実績、7〜9月の四半期実績、年間予想、下半期予想が並んでいます。どれも同じ会社の数字ですが、期間は同じではありません。
営業利益率55.9%は、7〜9月の3か月単独の実績です。4〜9月の上半期全体は54.0%、年間予想は51.9%です。「中間決算だから半年分の利益率が55.9%」と読むと、最初から基準がずれてしまいます。
| 項目 | 2026年4〜6月実績 | 2026年7〜9月実績 | 前四半期比 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 3,675億円 | 4,777億円 | 30.0%増 |
| 売上総利益 | 2,556億円 | 3,398億円 | 33.0%増 |
| 営業利益 | 1,900億円 | 2,668億円 | 40.4%増 |
| 営業利益率 | 51.7% | 55.9% | 4.2ポイント上昇 |
金額は会社説明資料の丸め済みの表に基づきます。丸め前の金額で計算した会社表示と、表の表示額だけを差し引いた数値では、端数がわずかに異なる場合があります。
この表で注目するのは、売上より営業利益の伸び率が高いことです。利益の金額が売上より大きい、という意味ではありません。また、前年同期比ではなく、4〜6月から7〜9月への比較です。
出所:アドバンテスト「2026年度第2四半期 決算説明会資料」PDF5・8・14ページ。
2.検査の仕事は、半導体の個数だけで決まらない
アドバンテストは、半導体の検査装置や関連製品などを提供する会社です。半導体そのものを製造する会社と、仕事の位置づけが異なります。製造の中で、性能や品質を確かめる仕事を支えています。
会社は今回、AI関連の高性能半導体の生産数量が増え、複雑化も進む中、顧客の設備投資が継続したと説明しました。需要を考えるときには、ここに含まれる別々の変化を分けると理解しやすくなります。
数量が増えることと、検査内容が増えること
ひとつは、検査する半導体の個数が増えること。もうひとつは、世代が進むにつれ、検査する内容や検査を入れる工程が増えることです。会社の説明ノートでは、両方が検査装置市場の成長を支える要素として挙げられています。
学校の試験でたとえるなら、受験する人が増えるだけでなく、出される問題も増えるようなものです。採点する側は、人数だけ見て準備していると忙しさを読み違えます。受験生にも採点する人にも、なかなか厳しい変更です。
ただし、これは仕事の変化を理解するためのたとえです。検査する内容が2倍なら装置も2倍必要になる、という数量の関係を示すものではありません。装置の性能や検査の効率も変わるため、検査量から販売台数を単純に換算することはできません。
「AI向け」という名前から、仕事内容へ進む
会社は今回、AIの計算を担う半導体の種類にも需要が広がっていると説明しています。難しい略語を覚えることより、何を調べる仕事が増え、どの装置に販売が表れたかを見る方が、決算の理解につながります。
半導体の数量だけを追っていると、1個に必要な検査の変化を見落とします。しかし、それが分かっただけで「検査装置の会社は何でも利益が増える」とは言えません。次に必要なのは、顧客がどのような検査を、どのような負担で行いたいかという視点です。
出所:アドバンテスト「2026年度第2四半期 決算説明会資料(ノート付)」PDF2・5・9ページ、同「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信」PDF4ページ。
3.お客さんは、検査の性能を上げたい。でも、費用は抑えたい
検査が必要になるほど、顧客は装置メーカーの言う値段を何でも受け入れる。そう考えると、買う側の事情が抜けてしまいます。
アドバンテストの公式説明は、半導体が高速・高機能・複雑になる中でも、低い検査コストと高い性能を両立する必要があるとしています。将来の半導体の変化に対応できる拡張性も求められます。
高性能な機械を買うこと自体が、顧客の目的ではありません。自分が作る半導体に必要な検査を行い、その検査にかかる負担も抑えることが目的です。この違いを、具体的な製品の設計で確かめます。
必要な機能を、カード単位で組み替えられる
例として取り上げるのは、SoC(エスオーシー)テストシステム V93000です。SoCは複数の機能をまとめた半導体を指します。
会社は、検査に必要な機能をカード単位で柔軟に組み替えられると説明しています。調べたい半導体に合わせ、必要な機能を組み合わせる考え方です。
ここから分かるのは、単に機能の数を増やすのではなく、用途に合った構成を考える製品だということです。すべての装置が同じ構造、どんなカードでも無制限に取り付けられる、という話ではありません。
「高い技術力」という言葉だけでは、顧客が何を評価するかは見えません。機能を組み替えるという具体例まで進むと、調べる半導体の種類が変わるときに、どのような対応を想定した製品かが見えてきます。
新しくするたび、準備を全部やり直すとは限らない
もうひとつは、従来機種との互換性です。会社のV93000製品ページは、V93000 EXA Scaleについて、旧世代の検査プログラムや、指定された周辺機器を利用できると説明しています。
会社が挙げる利点には、従来機種からの移行を進めやすいこと、検査用の機器や準備、ノウハウ、訓練などへの再投資を効率化することが含まれます。装置の代金だけでなく、新しくする際の準備も顧客の負担になる、という視点です。
例えば、新しい装置の導入に際して、使い慣れた検査の準備を毎回すべて作り直す場合と、活用できる部分がある場合とでは、考えることが変わります。製品説明は、後者の利点を示しています。
もちろん、古いものが全部そのまま使える、追加費用は一切不要という意味ではありません。特定の顧客がいくら削減したかまで示す説明でもありません。ここでは会社が説明する設計上の利点を読み解いています。
装置の値札と、検査全体の負担は同じではない
この章から持ち帰りたいのは、顧客が求めるのは「ただ安い機械」だけではないということです。必要な性能に対応できるか、次の製品へ移るときに何を活用できるかも、装置の価値を理解する材料になります。
一方、この便利さだけで今回の利益率55.9%の原因を説明したことにはなりません。顧客の評価する機能と、会社が実際にどの製品で利益を増やしたかは、別の資料で確かめる必要があります。ここから、製品の説明を決算の検証へ移します。
出所:アドバンテスト公式「事業を通じた価値提供のための取り組み」内「多様な顧客ニーズに応じるテスト・ソリューション」「V93000シリーズ」、同「V93000」内「優位性とメリット」(2026年10月29日確認)。
4.売上より速く利益が増えた。その中身は?
7〜9月は、前四半期比で売上が約3割、営業利益が約4割増えました。重要なのは、この結果を「よく売れたから」のひとことで終わらせないことです。
営業利益が増える中身には、売上の量、売れる製品の組み合わせ、原価、販売や研究開発などの費用、為替などが関係します。今回、会社が説明している要素と、表から計算できる部分を分けます。
会社が説明したのは、高収益な主力製品の販売増
会社は、収益性の高いハイエンドのSoC向けテストシステムの販売が伸びたことを主因に、売上総利益率が前四半期から上昇したと説明しています。売上総利益とは、売上から製品などの原価を引いた段階の利益です。
同じ売上でも、何が売れたかによって残る利益は変わります。今回の説明は、単純な販売数量だけでなく、売れた製品の構成にも注目する内容です。ただし、個々の装置の販売価格や利益率を外から作ることはできません。特定の製品の機能が、利益率を何ポイント押し上げたという計算でもありません。
費用も増えたが、売上ほどの増え方ではない
売上総利益が増えても、それ以外の費用が大きく増えれば、営業利益に残る部分は小さくなります。そこで、会社の同じ四半期表から、売上総利益と営業利益の差を並べます。
| 項目 | 2026年4〜6月 | 2026年7〜9月 |
|---|---|---|
| 売上総利益 | 2,556億円 | 3,398億円 |
| 営業利益 | 1,900億円 | 2,668億円 |
| 差し引きの販売・管理等の費用 | 656億円 | 730億円 |
差し引きの費用は、その他の収益・費用も含む額です。会社全体のすべての費用、固定費だけ、研究開発費だけの金額ではありません。丸め済みの表から計算しており、7〜9月の730億円は会社の説明ノートの数値とも一致します。
この差額も増えていますが、増加率は独自計算で約11.3%です。売上の約30%増と比べると、増え方は小さくなっています。費用が減ったわけではありません。費用も増えながら、売上や売上総利益との伸び方に差が出た、という比較です。
一般的には、販売が増えるたびに研究開発や管理などの費用が、まったく同じ割合で増えるとは限りません。会社も今回の年間計画では、売上拡大による規模の効果と売上総利益率の上昇を、営業利益率改善の理由に挙げています。この年間計画の説明を、そのまま四半期の全要因の金額へ置き換えることはしません。
「100円売って約56円」の読み方
7〜9月の営業利益率を、売上100円に置き換えると約56円です。図で概数にするなら、原価が約29円、販売・管理等の費用が約15円、営業利益が約56円となります。
これは、製品を1個売るごとに必ず同じ現金が残るという意味ではありません。全社の四半期実績を100円に換算した説明です。税金を引く前の営業利益であり、代金の入金時期や設備投資などを含む現金の動きとも異なります。
会社は円安の寄与も説明しています。さらに、投資有価証券の評価益を主因とする金融収益は、営業利益とは別の項目です。上半期の最終利益が大きく増えたことを、すべて検査装置の販売力へまとめることもできません。
ここまで見ると、何が売れ、費用がどれだけ増えたかによって、利益が売上より速く増えた中身を理解できます。製品の仕組みを知るだけでも、決算の数字を並べるだけでも足りず、両方を照らし合わせることが大切です。
出所:アドバンテスト「2026年度第2四半期 決算説明会資料」PDF5・8・14ページ、同ノート付PDF4・6・11ページ。差額・増加率・100円換算は独自計算です。
5.市場予想は据え置きなのに、自社予想を引き上げた理由
今回もうひとつ注目したいのは、市場と会社自身の見通しの違いです。会社は、2026年1〜12月の検査装置市場の規模予想を7月から据え置きました。一方で、自社の2026年度の売上予想は増額しました。
据え置きは「市場が伸びない」という意味ではない
ここで据え置かれたのは、前回示していた市場規模の予想です。市場の前年からの成長がゼロ、という意味ではありません。会社はもともと力強い市場環境を見込んでおり、その予想をさらに引き上げなかったという比較です。
会社は、主力のSoC検査装置市場について、予想レンジの上限近辺、メモリ検査装置市場について中央値近辺を見込んでいます。数字の大小だけでなく、前回予想に対する位置づけを見る必要があります。
また、市場予想は1〜12月、自社の年度は4月〜翌年3月です。市場全体と会社の売上をそのまま割り、市場シェアがどれだけ変わったと計算することはできません。市場が伸びない中で独占的に伸びた、という読み方も適切ではありません。
自社売上予想の増額は、作る側の変化が主因
| 2026年度・会社予想 | 7月時点 | 10月時点 | 増額 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆7,140億円 | 1兆8,630億円 | 1,490億円 |
| 営業利益 | 8,460億円 | 9,670億円 | 1,210億円 |
会社の説明ノートは、主力のSoCテストシステムの生産能力増強の加速を主因として、売上予想を引き上げたとしています。市場の成長予想をさらに上げたから自社も上げた、というだけの話ではありません。
お店に注文したい人が並んでいても、作って渡せる量が足りなければ売上にはなりません。これは一般的な仕組みのたとえですが、今回の説明も、需要の強さに加えて、その需要に応える会社側の変化を見る内容です。
市場のニュースばかり追っていると、会社自身が変えた準備を見落とします。どの分野の需要を取り込み、何が可能になったために計画を変えたか。そこまで読むと、上方修正の中身が具体的になります。
5,000台以上と1万台は、販売実績ではない
会社は主力のSoC検査装置について、年間5,000台以上の生産能力を達成したと説明しました。さらに、年間1万台という能力目標も、当初の計画から大幅に前倒しすることを目指しています。
この2つを、達成した販売台数と今後の販売予想に読み替えないことが重要です。能力は作れる量を示し、販売や受注とは別です。1万台も、すでに達成した能力ではありません。
また、増産の方法は大きな自社工場だけではありません。会社は、外部委託と自社生産を組み合わせる体制、部材の供給先や製造委託先との連携を説明しています。柔軟な需要対応と供給リスクの分散を図る考え方です。
自社設備だけを見ても、供給する力の全体は分かりません。一方、外部に任せれば部材や品質の問題がすべてなくなるわけでもありません。作る能力の拡張と、実際に届けることの間にある仕事まで見る必要があります。
出所:アドバンテスト「2026年度第2四半期 決算説明会資料」PDF12〜15ページ、同ノート付PDF3・9〜12ページ。
6.利益率が下がる計画でも、利益の金額は増える
7〜9月の営業利益率は55.9%でした。一方、会社の2026年10月〜2027年3月の下半期予想は50.1%です。会社自身、最高の四半期をそのまま延長した計画にはしていません。
ただ、率が下がるというだけで「下半期は減益予想」と読むのは早計です。営業利益の金額を、同じ6か月同士で比べてみます。
| 項目 | 上半期実績:2026年4〜9月 | 下半期予想:2026年10月〜2027年3月 |
|---|---|---|
| 売上高 | 8,452億円 | 1兆178億円 |
| 営業利益 | 4,568億円 | 5,102億円 |
| 営業利益率 | 54.0% | 50.1% |
下半期の営業利益予想は、上半期実績より534億円多く、増加率は独自計算で約11.7%です。四捨五入すれば約12%増となります。営業利益率は低くても、売上の規模が異なるため、利益の金額が大きくなる組み合わせです。
この比較は、会社の予想がすでに実現したという意味ではありません。また、7〜9月の3か月の利益額と、下半期6か月の利益額をそのまま比べたものでもありません。率の比較と、同じ期間の金額の比較を分けています。
下半期は「足元より低い」が「前回予想より高い」
会社は下半期について、メモリ半導体を中心とする部材コストの上昇を織り込んでいます。一方、主力検査装置の売上拡大や売れる製品の構成の改善も踏まえています。
この組み合わせで、下半期の営業利益率予想は7月時点から引き上げられました。比較先を変えると、足元の四半期実績よりは低いが、前回の計画よりは高いという位置づけです。率が低く見えるという印象だけで、会社の見通しの変更方向は決まりません。
下半期の為替前提は1米ドル150円、1ユーロ170円です。実績期間と同じ条件ではありません。利益率の差を部材費だけ、為替だけで説明し切らず、会社が置いた製品構成や販売規模などと合わせて読む必要があります。
費用が上がるという情報と、利益の計画が改善するという情報は、同時に成り立つことがあります。どちらかの見出しだけを採用するのでなく、同じ計画の中でどう組み合わせているかを見ることが、今回の判断に使える点です。
出所:アドバンテスト「2026年度第2四半期 決算説明会資料」PDF14ページ、同ノート付PDF11ページ。差額と増加率は丸め済みの会社表による独自計算です。
7.10月29日終値で、会社の強さと購入価格を分ける
決算を読むと、会社が顧客の要望にどう対応し、どこで利益を増やしたかが分かります。ただし、利益の残り方がよいことと、その日の株価が有利な購入価格であることは同じではありません。
| 項目 | 2026年10月29日基準 |
|---|---|
| 東証終値 | 37,030円 |
| 通常の100株に必要な金額 | 3,703,000円・手数料別 |
| 時価総額 | 約27兆1,060億円 |
| 会社公表の通期予想1株利益 | 1,027.08円 |
| 上記利益による予想PER | 約36.05倍 |
| 9月末の持分と自己株式控除後株数による参考PBR | 約23.35倍 |
| 年間予想配当利回り | 年間配当未定のため計算しない |
予想PER(ピーイーアール)は、株価を会社の予想1株利益で割った倍率です。ここでは37,030円÷1,027.08円で計算しています。これを36年で投資額が回収できるという約束に読み替えることはできません。将来の利益や配当は変わるからです。
通常の100株単位では、必要額は約370万円です。単元未満株など別の取引方法を使う場合は購入単位が異なりますが、この表は通常の単位を比較の基準にしています。時価総額も1,000億円を十分上回る単独銘柄の分析です。
PBR(ピービーアール)は、株価と1株当たりの純資産を比べる倍率です。ここでは9月末の親会社所有者帰属持分を、期末発行済株式数から自己株式を除いた株数で割った参考値を使っています。将来の利益を評価するPERとは、見ているものが異なります。
情報サイトと予想PERが少し違う理由
株探の表示は36.1倍、Yahoo!ファイナンスは36.11倍でした。Yahoo!の予想1株利益は1,025.35円で、会社公表の1,027.08円と少し異なります。
会社は9月末の自己株式控除後株数を用いて、予想1株利益を計算すると明記しています。一方、会社の予想利益を中間期の期中平均株数で割ると、独自照合で1,025.35円が再現できます。株数の基準の差で倍率の小さな違いが生じることを確かめ、本記事では会社公表値を採用しました。情報サイトの内部の計算仕様まで確認したという意味ではありません。
決算翌日の上昇と、市場全体の動きを並べる
| 価格・指数 | 2026年10月28日終値 | 2026年10月29日終値 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| アドバンテスト | 34,930円 | 37,030円 | +6.01% |
| 日経平均株価 | 63,954.19円 | 64,659.47円 | +1.10% |
| TOPIX | 3,991.71 | 4,003.28 | +0.29% |
同じ1営業日の終値同士で、配当を含まない価格の変化を比較しています。アドバンテストの上昇率は、両指数を上回りました。ただし、この1日だけで、決算が株価上昇の唯一の原因だった、今後も同じ強さが続くとは断定できません。
会社の利益計画をどこまで実現できると考えるか、その先の成長をどこまで見込むかで、株価の受け止め方も変わります。製品の良さを理解したことを、購入価格の検討が終わったことにしないのが、この章の要点です。
出所:株探「アドバンテスト株価」、Yahoo!ファイナンス「アドバンテスト時系列」、日経平均時系列、TOPIX時系列、アドバンテスト決算短信PDF1〜2ページ。購入額・倍率・変化率は独自計算です。
8.配当と自社株買いは、決定した中身を短く確認する
今回、中間配当の増配と新たな自己株式取得が決まりました。ここでも、自分が今から受け取れるものと、会社がこれから行うものを分けます。
| 項目 | 今回確認する中身 |
|---|---|
| 中間配当 | 1株49円。2026年9月30日基準、12月1日支払開始予定 |
| 期末・年間配当 | 未定。中間分を2倍して年間配当予想にしない |
| 自己株式取得 | 取得価額上限2,800億円、株数上限1,100万株 |
| 取得期間 | 2026年10月29日〜2027年3月24日 |
中間配当の支払いがこれからでも、権利の基準日はすでに過ぎています。今から購入して、今回決定した中間分を受け取れるわけではありません。また、中間49円を単純に2倍して、年間98円の予想配当や利回りを作ることもしません。
自己株式取得は、新たに決めた上限の枠です。上限金額をすでに使い切った、全株数の取得を終えたという発表ではありません。株価が下がらない保証でもありません。
会社の総還元性向は、配当と自己株式取得を合わせたもので、中期経営計画の3年間合計で50%以上を目途とする方針です。毎年の配当だけで利益の半分を配るという意味ではありません。投資や事業環境などの条件もあるため、方針と確定済みの支払額は区別します。
好調な業績に伴う還元の決定を受け止めつつ、還元の見出しだけで将来の受取額や購入判断まで決めないことが大切です。今回の稼ぎ方の変化が今後も計画に沿って進むかと、還元の決定内容を分けて確かめます。
出所:アドバンテスト「剰余金の配当(中間配当)に関するお知らせ」「自己株式の取得に係る事項の決定に関するお知らせ」各2026年10月28日、PDF1ページ、公式「配当・株主還元」。
9.次に見るのは、大きな能力目標と最高利益率の更新だけではない
これから候補を調べる人は、今回の決算をどんな確認に使えるでしょうか。一般的な「次の決算も見る」ではなく、この会社の今回の変化に沿って整理します。
生産能力の目標から、納入と売上の進み方へ
会社は今回、7月時点の想定以上の製品納入ができたと説明しました。そして、能力増強の加速を主因に売上予想を引き上げました。次は、その増額した売上計画に対して、実際の納入や売上がどう進むかを確かめる段階です。
能力の大きな目標を示したというニュースと、実際に販売できたというニュースでは、確認している場所が違います。「準備が進んだ→届けた→売上に表れた」という順番を持つと、目立つ能力の数字だけで期待を膨らませずに済みます。この矢印は確認する順序で、能力が自動的に全量販売へ変わるという意味ではありません。
利益率の最高記録ではなく、会社の下半期計画へ照らす
次の実績の利益率が今回の四半期を下回っただけで、直ちに失速とは呼べません。会社は、部材費や為替、売れる製品などの条件を置いて、下半期の利益計画を示しているからです。
その計画に対して、売れる製品の構成がどう変わったか。費用の増え方がどこに出たか。利益の割合と金額はどうだったか。これらを一緒に確かめます。計画の達成と株価の上昇は同じ意味ではなく、自分が株価に置く期待も別に考える必要があります。
顧客が装置を選ぶ理由と、決算で確かめる項目がつながると、製品の説明を宣伝として読むだけでも、数字の一覧を眺めるだけでもない見方になります。株を持っていない段階でも、この順番は候補を理解するために使えます。
まとめ:AI関連という名前より、利益の生まれ方を見る
アドバンテストの今回の高い営業利益率を理解するには、顧客の要望、製品の設計、決算の変化を分けてから照らし合わせることが役立ちます。
半導体の個数だけでなく、検査の中身も変わる。顧客はその検査を、性能と費用の両方を考えて行いたい。会社は機能の組み替えや従来の準備を活用できる設計を説明しています。
決算では、高収益な主力装置の販売、費用の増え方、円安などを確認しました。市場予想の据え置きと自社の上方修正の間には、生産能力増強の加速という会社の説明がありました。下半期は、足元より低い利益率でも上半期より多い営業利益を予想しています。
AI関連という名前より、お客さんの何の困りごとを解決し、それが決算のどこに出たかを見る。好決算という見出しを、その先の株選びに使える理解へ変えることが、今回の読み方です。
主な参照資料
- アドバンテスト「2027年3月期 第2四半期(中間期)決算短信」2026年10月28日、全11ページ。
- アドバンテスト「2026年度第2四半期 決算説明会資料」2026年10月28日、全20ページ。
- アドバンテスト「同 決算説明会資料(ノート付)」全14ページ。
- アドバンテスト「剰余金の配当(中間配当)に関するお知らせ」「自己株式の取得に係る事項の決定に関するお知らせ」各2026年10月28日、全1ページ。
- アドバンテスト公式「解説:半導体テスト」「事業を通じた価値提供のための取り組み」「V93000」「配当・株主還元」。
- 株探・Yahoo!ファイナンスのアドバンテスト株価、Yahoo!ファイナンスの日経平均株価・TOPIX時系列。価格基準は2026年10月29日東証終値。
本文中の製品の利点は会社による説明、差額や倍率は明記した独自計算です。将来の業績予想と実績を混同せず、最新の開示や価格を確認して、ご自身の判断に役立ててください。