※本記事は2026年7月13日時点の公開資料をもとに作成しています。特定銘柄の購入・売却を勧めるものではありません。株価、金利、業績予想は変動します。投資判断はご自身の責任でお願いします。
日本の長期金利が上昇しています。
2026年7月3日には、新発10年国債利回りが取引時間中に一時2.81%まで上昇したと報じられました。三井住友DSアセットマネジメントは、年末に3%水準へ達する可能性を示しています。
一方、財務省のコンスタントマチュリティベースの10年金利は、直近公表日の2026年7月10日で2.761%です。「3%目前」は現在値が3%に達したという意味ではなく、7月3日の一時2.81%と民間運用会社の年末見通しを踏まえた企画上の表現です。
では、長期金利が3%に近づくと、日本株は全部下がるのでしょうか。
結論から言うと、そんなに単純ではありません。
金利上昇が収益改善につながりやすい銀行、借入コストの影響を受けやすい不動産、業績への直接影響より株価評価への影響が意識されやすい成長株では、見るべき数字が違います。
今回は、次の3社を比較します。
- 三菱UFJフィナンシャル・グループ:銀行株
- 三井不動産:不動産株
- MonotaRO:成長株
「金利が上がったから銀行を買う」「金利が上がったから成長株を売る」と短絡的に考えるのではなく、決算資料のどこを見るべきかを初心者向けに整理します。
まず結論:3社への影響はこう違う
| 会社 | 金利上昇で注目される点 | 主な追い風 | 主な注意点 |
|---|---|---|---|
| 三菱UFJ | 預貸金利ざや、債券評価、与信費用 | 国内金利上昇による収益機会 | 調達金利上昇、債券損益、景気悪化 |
| 三井不動産 | 有利子負債、支払利息、賃料 | 物価上昇下の賃料改定、資産価値 | 借換コスト、住宅需要、還元利回り上昇 |
| MonotaRO | 成長率、利益率、株価評価 | 高い売上・利益成長 | 割引率上昇によるバリュエーション調整 |
金利上昇は、企業の業績だけでなく「その利益に投資家が何倍の値段を払うか」にも影響します。
そもそも長期金利とは?
ニュースでいう日本の長期金利は、一般に新発10年国債の利回りを指します。
国債が売られて価格が下がると、利回りは上がります。逆に国債が買われて価格が上がると、利回りは下がります。
長期金利は、住宅ローン、企業の長期借入、社債、不動産の期待利回り、株式の評価など、さまざまな資産価格の基準になります。
ただし、ニュースの長期金利と財務省が公表する10年金利が、必ず同じ数字になるわけではありません。
2.81%と2.768%、どちらが正しい?
ここは重要なファクトチェックです。
2026年7月3日について、次の2つの数字があります。
- 新発10年国債利回り:取引時間中に一時2.81%
- 財務省の10年金利:2.768%
この2つは、測っているものと時点が違います。
三井住友DSアセットマネジメントのレポートが示す2.81%は、新発10年国債が取引時間中につけた一時的な水準です。
一方、財務省の国債金利情報は、流通市場の実勢価格をもとに、午後3時の市場終了時点におけるコンスタントマチュリティベースの金利を算出したものです。個別の新発債そのものの取引中高値ではありません。
したがって、「2.81%は誤りで、2.768%だけが正しい」という整理は適切ではありません。
安全な表現は次のとおりです。
2026年7月3日、新発10年国債利回りは取引時間中に一時2.81%へ上昇した。一方、財務省が公表する同日の10年・コンスタントマチュリティ金利は2.768%だった。
動画やブログでは、「一時」「新発10年債」「財務省公表値」という言葉を省略しないことが大切です。数字は同じ10年でも、名札を外すと別人になってしまいます。
日銀は政策金利を1.0%へ
日本銀行は2026年6月の金融政策決定会合で、無担保コールレート・オーバーナイト物を1.0%程度で推移させる方針を決定しました。基準貸付利率は1.25%です。
日銀は、経済・物価・金融情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく考えも示しています。
次回の金融政策決定会合は2026年7月30日、31日に予定されています。
短期の政策金利と10年国債利回りは同じものではありません。しかし、日銀の政策方針、物価見通し、財政への見方などを通じて相互に影響します。
金利上昇が株に効く3つの経路
1. 企業の収益が変わる
銀行では貸出金利や運用利回り、不動産会社では借入金利、一般企業では設備投資の資金調達コストが変化します。
2. 景気が変わる
金利が上がると、住宅購入や企業投資の負担が増えることがあります。一方、金利上昇が物価と賃金を伴う経済正常化の結果なら、名目売上や賃料に追い風となる場合もあります。
3. 株価の評価が変わる
株価は将来の利益やキャッシュフローを現在価値に割り引いて考えます。割引率が上がると、遠い将来の利益の現在価値は小さくなります。そのため、高い成長期待を織り込んだ株は、業績が悪化していなくても評価倍率が下がることがあります。
1社目:三菱UFJは金利上昇の恩恵を受ける?
三菱UFJフィナンシャル・グループの2026年3月期決算は、経常収益14兆6,208億円、経常利益3兆4,101億円、親会社株主に帰属する当期純利益2兆4,272億円でした。
純利益は前期比30.3%増、自己資本利益率は11.3%です。
銀行にとっての追い風
銀行は預金を集め、企業や個人へ貸し出し、国債などでも運用します。市場金利が上がると、貸出金利や運用利回りが上昇し、資金利益の改善が期待されます。
特に長く低金利が続いた日本では、金利正常化によって国内銀行ビジネスの採算が改善するとの期待が生まれやすくなります。
ただし「金利上昇=自動的に増益」ではない
預金金利などの調達コストも上がります。貸出金利がどれだけ上がるか、預金金利がどれだけ追随するかで利ざやは変わります。
また、金利上昇で保有債券の価格が下がると、評価損や売却損が生じる場合があります。景気が悪化すれば貸倒れに備える与信費用が増える可能性もあります。
MUFGで確認したい数字
- 国内預貸金利ざや
- 資金利益
- 円金利上昇の収益影響試算
- 保有債券の含み損益
- 与信関係費用
- 普通預金など低コスト預金の構成
- 株主還元と自己資本比率
銀行株を見るときは、金利の方向だけでなく「収益への伝わり方」を確認しましょう。
2社目:三井不動産は4.6兆円の有利子負債をどう扱う?
三井不動産の2026年3月期は、営業収益約2兆7,097億円、事業利益約4,451億円、経常利益約3,133億円、親会社株主に帰属する当期純利益約2,787億円でした。
いずれも過去最高を更新しています。
一方、2026年3月末の有利子負債は4兆6,325億円。前期末から2,164億円増えました。会社は2027年3月末に4兆8,000億円程度を見込んでいます。
不動産会社にとっての向かい風
不動産事業は、物件の取得・開発に大きな資金が必要です。金利が上がると、新規借入や借換えのコストが上がり、時間をかけて支払利息に反映されます。
また、不動産投資家が求める利回りが上がると、同じ賃料を生む物件でも評価額に下押し圧力がかかる場合があります。
住宅ローン金利の上昇は、分譲住宅の購入意欲に影響する可能性もあります。
追い風もある
金利が上がる局面で物価や賃金も上昇していれば、オフィスや商業施設の賃料改定が進む可能性があります。優良立地の物件、ホテル、物流施設などは、需要や価格転嫁力によって金利負担を吸収できる場合があります。
三井不動産は実物資産を持つため、インフレへの耐性が注目されることもあります。
三井不動産で確認したい数字
- 有利子負債残高
- 固定金利と変動金利の比率
- 平均調達金利
- 借入金・社債の平均残存年数
- 支払利息と純金利負担
- オフィス空室率、賃料改定率
- 物件売却益に依存していないか
- 分譲住宅の契約進捗
有利子負債が大きいという理由だけで危険と決めつけるのではなく、固定化と返済期限の分散、資産の収益力を見ます。
3社目:MonotaROは借金より「評価倍率」に注目
MonotaROの2026年12月期第1四半期は、売上高約956億円、営業利益約132億円、親会社株主に帰属する四半期純利益約89億円でした。
前年同期比では、売上高20.8%増、営業利益22.6%増、純利益18.2%増と高い成長を続けています。自己資本比率は62.7%です。
会社の2026年12月期通期予想は、売上高3,813億円、営業利益530億円、純利益361億円です。
直接の借入負担だけでは測れない
MonotaROのような成長株は、不動産会社のように巨額の借入金を使って事業を行う会社とは構造が違います。
それでも金利上昇の影響を受ける理由は、株価評価です。
投資家が「安全な国債でも高い利回りを得られる」と考えるようになると、株式に求める期待収益率も上がりやすくなります。遠い将来の成長まで高く評価されている企業ほど、割引率上昇の影響が大きくなりがちです。
業績が強ければ吸収できる可能性
株価評価への逆風があっても、売上成長、利益率改善、顧客増加が市場予想を上回れば、企業価値が伸びる可能性があります。
MonotaROでは「金利が上がったからダメ」ではなく、利益成長が評価倍率の低下を補えるかがポイントです。
MonotaROで確認したい数字
- 売上高成長率
- 営業利益率
- 新規顧客獲得と既存顧客の購入額
- エンタープライズ事業の成長
- 物流投資と減価償却費
- キャッシュフロー
- 会社予想に対する進捗
- PERなどの評価倍率
成長株は、良い会社と良い株価が同じとは限りません。事業の成長性と、株価に織り込まれた期待を分けて考えます。
3社を初心者向けに比較
三菱UFJ
金利上昇が本業の収益改善につながりやすい一方、預金金利、債券損益、与信費用に注意します。
三井不動産
借入コスト上昇は逆風ですが、固定金利化、返済期限の分散、賃料上昇、資産売却などで吸収できるかを見ます。
MonotaRO
借入コストより、割引率上昇による株価評価への影響が中心です。利益成長が期待値を上回れるかが重要です。
長期金利3%で危ない株・強い株を決めつけない
長期金利が3%に達しても、株価が機械的に同じ方向へ動くわけではありません。
重要なのは、なぜ金利が上がっているかです。
- 景気成長と賃金上昇を伴う金利上昇
- インフレ懸念による金利上昇
- 財政への不安による金利上昇
- 国債需給の悪化による金利上昇
同じ3%でも背景が違えば、企業業績、為替、株価への影響も変わります。
さらに、金利上昇がすでに株価へ織り込まれている可能性もあります。ニュースを見てから売買しても、株価は先に動いているかもしれません。
決算資料で使えるチェックリスト
銀行株
- 預貸金利ざやは改善しているか
- 資金利益は増えているか
- 預金コストはどの程度上がったか
- 債券損益と与信費用は悪化していないか
不動産株
- 有利子負債はいくらか
- 固定金利比率と平均残存年数はどうか
- 支払利息はどの程度増える見込みか
- 賃料上昇で吸収できるか
- 住宅契約や空室率に悪化がないか
成長株
- 売上・利益成長率は維持されているか
- 営業利益率は改善しているか
- キャッシュフローを伴う成長か
- PERなどの評価倍率に無理がないか
- 市場期待を上回る材料があるか
3つの金利シナリオで考える
金利がどこまで上がるかを一点予想するより、複数のシナリオを考える方が実践的です。
シナリオ1:長期金利が3%前後で落ち着く
景気と賃金が緩やかに伸び、日銀が段階的に金融政策を調整するケースです。
MUFGでは貸出・運用利回りの改善が期待されます。預金金利の上昇が緩やかなら、資金利益に追い風となる可能性があります。
三井不動産では借換コストが上昇しますが、賃料やホテル収益、物件売却などで吸収できるかが焦点です。固定金利の割合が高ければ、影響は一度に出ず、時間をかけて表れます。
MonotaROでは高い利益成長が続く一方、以前より高い割引率が定着するため、株価評価倍率がどの水準で落ち着くかがポイントになります。
シナリオ2:景気悪化で金利が低下する
金利低下だけを見れば、成長株や不動産株の評価に追い風となる可能性があります。しかし、景気悪化が原因なら、企業の売上や信用コストが悪化する場合があります。
MUFGでは貸出需要や利ざやへの期待が後退し、与信費用が増える可能性があります。
三井不動産では借入金利の負担は軽くなる方向でも、オフィス需要、ホテル稼働、住宅販売が弱くなるかもしれません。
MonotaROは間接資材を扱うため、企業活動や顧客の購買動向に注意が必要です。割引率低下と業績減速のどちらが株価へ強く効くかを見ます。
シナリオ3:財政不安やインフレ懸念で金利が急上昇する
最も注意したいのは、実体経済の成長を伴わず金利だけが急上昇するケースです。
銀行は短期的に金利上昇期待で注目されても、債券評価損、資金調達コスト、景気悪化による与信費用が重くなる可能性があります。
不動産は調達コストと期待利回り上昇の両面から影響を受けます。成長株は割引率上昇に加え、市場全体のリスク回避の影響を受けやすくなります。
このように「金利上昇=銀行だけ勝つ」とは限りません。金利上昇の速度と理由をセットで確認します。
3社の次回決算で確認したいこと
2026年7月13日時点で、次回決算はMUFGが8月3日、MonotaROが8月4日、三井不動産が8月7日に予定されています。
MUFG:国内金利上昇が実際に利益へ届いたか
注目したいのは、国内資金利益と預貸金利ざやです。会社が示す金利感応度と実績に差がないか、預金金利の上昇が想定より速くないかを確認します。国債など円債ポートフォリオの評価・実現損益も重要です。
MonotaRO:高成長を維持できたか
第1四半期は売上、営業利益ともに20%を超える伸びでした。第2四半期でも売上成長率、営業利益率、エンタープライズ事業の進捗が維持されるかを確認します。高い期待が株価へ織り込まれている場合、「良い決算」だけでなく「期待を上回る決算」が求められることがあります。
三井不動産:金利負担と賃料上昇の綱引き
有利子負債の増減、平均調達金利、支払利息を確認します。同時に、オフィス賃料、空室率、ホテル、商業施設、住宅分譲の進捗も見ます。金利コストだけでなく、それを吸収する事業利益の伸びが重要です。
初心者が避けたい3つの思い込み
思い込み1:金利が上がれば銀行株は必ず上がる
金利上昇は銀行収益の追い風になり得ますが、株価は事前に期待を織り込みます。決算が市場予想へ届かなければ、利益が増えても株価が下がることがあります。
思い込み2:借金が多い会社は全部危険
借入金の大きさだけでは判断できません。固定・変動の比率、平均金利、返済期限、借入に対応する資産と収益を確認します。不動産会社は事業構造上、借入金を活用するため、他業種と単純比較できません。
思い込み3:好決算なら成長株は上がる
成長株の株価は、好調な業績をすでに織り込んでいる場合があります。売上20%増でも、市場が25%増を期待していれば失望される可能性があります。会社計画、過去の成長率、市場期待を分けて考えます。
よくある質問
Q1. 長期金利が3%になったら株を売るべきですか?
金利水準だけで一律に売買を決めることはできません。企業ごとの収益構造、財務、株価評価、金利上昇の背景を確認する必要があります。本記事は売買を推奨するものではありません。
Q2. 政策金利1%と長期金利3%はなぜ違うのですか?
政策金利は日銀が誘導する短期金利です。長期金利は、将来の政策金利予想、物価、景気、財政、国債需給、期間に応じたリスクなどを反映して市場で形成されます。そのため、同じ水準にはなりません。
Q3. 2.81%は終値ですか?
ここで使用した2.81%は、新発10年国債利回りが取引時間中につけた一時的な水準です。財務省の同日10年金利2.768%は、午後3時時点の市場価格をもとに算出するコンスタントマチュリティ金利です。
Q4. 金利上昇に一番強いのはMUFGですか?
銀行は金利上昇の恩恵を受けやすい業種ですが、どの銘柄が最も強いかは金利感応度、預金構成、債券ポートフォリオ、海外事業、株価評価などで変わります。MUFGだけで銀行セクター全体を代表できるとは限りません。
Q5. 三井不動産の有利子負債4.6兆円は危険ですか?
金額だけでは判断できません。保有・開発資産の規模、事業利益、固定金利比率、平均残存期間、返済期限の分散などと合わせて評価します。金利上昇下では、支払利息の増加ペースを継続的に確認する必要があります。
Q6. MonotaROは金利と関係がないのでは?
借入コストへの直接影響が小さくても、株式の割引率を通じて評価倍率に影響する可能性があります。成長株では、金利上昇による評価倍率の低下を利益成長で補えるかが重要です。
まとめ
長期金利上昇の影響は、業種によって異なります。
三菱UFJでは、貸出金利や運用利回りの上昇が収益機会になります。ただし、預金金利、債券損益、与信費用も確認が必要です。
三井不動産では、4.6兆円を超える有利子負債と借換コストが注目されます。一方、固定金利化、賃料上昇、優良資産の収益力によって影響を吸収できる可能性があります。
MonotaROでは、直接的な金利負担よりも、成長株に対する評価倍率の変化がポイントです。高い利益成長が続けば、割引率上昇の逆風を補える場合があります。
そして、2026年7月3日の「2.81%」と「2.768%」は、どちらか一方が誤りなのではありません。取引時間中の新発10年債利回りと、財務省が算出する午後3時時点のコンスタントマチュリティ金利という違いがあります。
金利ニュースを見るときは、数字だけでなく、時点、対象債券、算出方法まで確認する。これが、初心者が相場の見出しに振り回されないための第一歩です。
使用した主な一次資料・参考資料
- 日本銀行「金融市場調節方針の変更について」
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2026/k260616a.pdf - 日本銀行「金融政策決定会合の運営」
https://www.boj.or.jp/mopo/mpmsche_minu/index.htm - 財務省「国債金利情報」
https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/interest_rate/index.htm - 財務省「国債金利情報Q&A」
https://www.mof.go.jp/english/policy/jgbs/reference/interest_rate/qa.htm - 三井住友DSアセットマネジメント「長期金利は3%をうかがう展開か」
https://www.smd-am.co.jp/market/ichikawa/2026/07/irepo260706/ - MUFG「2026年3月期決算短信・IR資料」
https://www.mufg.jp/ir/fs/index.html - 三井不動産「2026年3月期業績推移」
https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/ir/finance/highlight_y/ - MonotaRO「2026年12月期第1四半期決算短信」
https://corp.monotaro.com/ir/upload_file/tdnrelease/3064_20260507517501_P01_.pdf