化学 日本株

化学6社、利益が3.8倍の会社より、+4.2%の会社のほうが儲かっていた|最新決算で確認

はじめに|伸び率の順番と、利益率の順番が逆だった

化学メーカー6社の決算を並べたら、少し不思議なことが起きていました。

営業利益がいちばん伸びた会社は、三井化学のプラス279.8%。約3.8倍です。次が住友化学のプラス139.8%。三菱ケミカルグループと東ソーが9割増、旭化成が5割増。

そのなかで1社だけ、プラス4.2%という会社がありました。信越化学工業です。

ところが営業利益率で並べ替えると、順番がひっくり返ります。信越化学が26.24%で断然のトップ。あとの5社は9.84%から11.79%の団子です。

伸びた会社と、儲かっている会社は、別でした。

今回取り上げるのは、時価総額(じかそうがく)1,000億円以上で、石油化学を手がける総合化学の大手を中心に6社です。信越化学工業(4063)、旭化成(3407)、三菱ケミカルグループ(4188)、住友化学(4005)、東ソー(4042)、三井化学(4183)。

6社とも2026年4月から6月までの3か月の決算を発表しました。数字はすべて各社の決算短信(けっさんたんしん)から取っています。株価と指標は2026年8月31日(月)の終値(おわりね)です。

結論

先に、この記事でわかることを4つにまとめます。

1. 営業利益の伸び率は、+279.8%から+4.2%まで開いた。

三井化学が約3.8倍、住友化学が2.4倍。一方で信越化学工業は+4.2%でした。

2. でも利益率で見ると、順番が逆になる。

信越化学が26.24%。5社は9.84%〜11.79%。信越化学の営業利益1,737億98百万円は、売上が1.5倍大きい三菱ケミカルの1,184億円より多いのです。

3. 5社が伸びた理由は、石油化学が赤字から戻ったから。

石油化学にあたる部門が、三菱ケミカル、住友化学、三井化学、東ソーの4社そろって前年赤字から黒字へ転換していました。急に強くなったというより、底から戻ったという形です。

4. 信越化学が伸びなかったのは、社内で綱引きが起きているから。

電子材料が+22.7%で伸びているのに、生活環境基盤材料が△34.1%で落ちて、打ち消し合っていました。

1. 今回の6社

会社 コード 会計基準 時価総額 株価
信越化学工業 4063 日本基準 11兆9,556億円 6,023円
旭化成 3407 日本基準 2兆2,453億円 1,644.0円
三菱ケミカルグループ 4188 IFRS 1兆7,384億円 1,206.0円
住友化学 4005 IFRS 9,516億円 572.2円
東ソー 4042 日本基準 8,672億円 2,667.5円
三井化学 4183 IFRS 8,345億円 2,187.0円

時価総額1,000億円以上で、石油化学(ナフサクラッカー)を手がける総合化学の大手を中心に選びました。信越化学工業だけは石油化学の上流を持ちませんが、国内の化学業界で収益性が飛び抜けているので、比べる相手として入れています。

信越化学の時価総額11兆9,556億円は、他の5社を全部足しても届きません。(5社の合計は約6兆8,370億円)

6社とも3月決算で、今回発表されたのは2026年4月1日から6月30日までの3か月です。期間は完全にそろっています。

2. 比較の前提|3つ注意してください

注意1:会計基準が2種類あります

三菱ケミカルグループ、住友化学、三井化学がIFRS(国際会計基準)。信越化学工業、旭化成、東ソーが日本基準です。

ただし今回は、そこまで気にしなくて大丈夫です。化学はどちらの基準でも「売上高(売上収益)」と「営業利益」を出すので、営業利益率で比べられます。

1つだけ引っかかるのが、IFRSの3社が「コア営業利益」という別の数字も併記していることです。

三菱ケミカルの決算短信の注記です。

コア営業利益は、営業利益から非経常的な要因により発生した損益(非経常項目)を除いて算出しております。

住友化学のほうは、こう書かれています。

コア営業利益は、持分法による投資損益を含む営業利益から非経常的な要因により発生した損益を控除した経常的な収益力を表す損益概念であります。

同じ「コア営業利益」でも、会社によって定義が違います。ですからこの記事では、6社を横に並べるときは正式な営業利益を使います。

注意2:石油化学は前の年が赤字でした

これがいちばん大事な前提です。

あとで詳しく見ますが、石油化学にあたる部門は、4社が前年赤字でした。今回の大幅増益は「急に強くなった」というより「底から戻った」という性格が強い。

増減率だけを見て「絶好調」と判断するのは危険です。

注意3:三井化学は株式分割をまたいでいます

三井化学は2026年1月1日に、1株を2株にする株式分割をしました。決算短信の配当欄には「75.00/37.50」という数字が並んでいて、一見すると半減したように見えます。

でも短信にこう書かれています。

当社は、2026年1月1日付で普通株式1株につき2株の割合で株式分割を行っております。(中略)なお、株式分割を考慮した場合の2026年3月期第2四半期末の1株当たり配当金は37円50銭、年間配当金合計は75円00銭となります。

前期の年間配当は分割後ベースで75円00銭。今期も75円00銭で据え置きです。減っていません。

3. 6社の決算一覧

まず全体の数字です。2026年4月から6月までの3か月です。

会社 売上高/売上収益 前年同期比 営業利益 前年同期比 営業利益率
三菱ケミカルグループ 4188 1兆42億46百万円 +14.0% 1,184億円 +94.4% 11.79%
旭化成 3407 8,261億57百万円 +11.9% 813億05百万円 +51.5% 9.84%
信越化学工業 4063 6,624億24百万円 +5.4% 1,737億98百万円 +4.2% 26.24%
住友化学 4005 5,781億99百万円 +9.9% 610億41百万円 +139.8% 10.56%
三井化学 4183 4,600億46百万円 +10.8% 484億32百万円 +279.8% 10.53%
東ソー 4042 2,741億74百万円 +11.8% 311億83百万円 +93.9% 11.37%

最終利益まで見るとこうなります。

会社 最終利益 前年同期比
三菱ケミカルグループ 4188 577億06百万円 +194.0%
旭化成 3407 537億66百万円 +172.7%
信越化学工業 4063 1,308億29百万円 +3.5%
住友化学 4005 407億82百万円 前年は45億23百万円の赤字
三井化学 4183 320億93百万円 前年7億29百万円の44倍
東ソー 4042 194億56百万円 +198.0%

5社が2倍から44倍。信越化学だけが+3.5%です。

ただし金額を見てください。信越化学の1,308億29百万円は、6社でいちばん多い。2番目の三菱ケミカル577億06百万円の2.3倍です。

4. 【本題】伸び率の順番と、利益率の順番が逆になる

営業利益率で並べ替えます。

会社 営業利益率 営業利益の増減率
信越化学工業 4063 26.24% +4.2%
三菱ケミカルグループ 4188 11.79% +94.4%
東ソー 4042 11.37% +93.9%
住友化学 4005 10.56% +139.8%
三井化学 4183 10.53% +279.8%
旭化成 3407 9.84% +51.5%

きれいに逆になっています。利益率が最も高い信越化学が、伸び率では最下位。伸び率トップの三井化学は、利益率では5番目です。

そして、5社の利益率が9.84%から11.79%の間に固まっていることにも注目したいところです。規模も事業構成も違うのに、ほぼ同じ水準に並んでいる。

もう1つ、金額で見ると差がはっきりします。

  • 信越化学の営業利益 1,737億98百万円
  • 三菱ケミカルの営業利益 1,184億円

三菱ケミカルの売上は信越化学の1.5倍あります。それでも営業利益は信越化学のほうが1.5倍多い。

では、なぜこうなるのか。それぞれの中を開けていきます。

5. 5社が伸びた理由|石油化学が赤字から黒字へ

各社が石油化学にあたる部門をどう呼んでいるか、まず整理します。名前はバラバラですが、中身は近いものです。

会社 石油化学にあたる部門の名前
三菱ケミカルグループ ベーシックマテリアルズ
住友化学 エッセンシャル&グリーンマテリアルズ
三井化学 ベーシック&グリーン・マテリアルズ
東ソー 基礎素材
旭化成 マテリアル

この部門の利益を、前の年と並べます。

会社 前年同期 当期 増減 当期の利益率
三菱ケミカルグループ △66億96百万円 148億14百万円 赤字→黒字 7.64%
住友化学 △54億63百万円 272億24百万円 赤字→黒字 15.84%
三井化学 △28億86百万円 198億42百万円 赤字→黒字 9.89%
東ソー △33億87百万円 56億61百万円 赤字→黒字 3.88%
旭化成 149億05百万円 388億09百万円 +160.4% 10.67%

4社が、そろって赤字から黒字に転換しています。

旭化成だけは前の年も黒字でしたが、利益率は4.65%でした。それが10.67%へ。やはり大きく改善しています。

5社の大幅増益は、ここで起きたことがほとんどです。急に強くなったのではなく、赤字だったところが黒字に戻った。だから増減率が大きく出ます。

※三菱ケミカル、住友化学、三井化学のセグメント利益は「コア営業利益」ベース、東ソーと旭化成は「営業利益」ベースです。

6. 三菱ケミカル|いちばん稼いでいるのは産業ガス

三菱ケミカルグループのセグメントを全部並べると、もう1つ発見があります。

セグメント 前年 利益 当期 利益 増減 当期利益率
産業ガス 450億09百万円 540億79百万円 +20.2% 14.95%
スペシャリティマテリアルズ 173億82百万円 383億40百万円 +120.6% 11.24%
ベーシックマテリアルズ △66億96百万円 148億14百万円 赤字→黒字 7.64%
MMA&デリバティブズ 36億55百万円 80億08百万円 +119.1% 7.82%

当期の利益で最大は、産業ガスの540億79百万円です。石油化学でも、スペシャリティマテリアルズでもありません。

利益率も14.95%で4部門のトップ。「国内最大の総合化学グループ」の一番の稼ぎ手が、産業ガスだったということです。

なお三菱ケミカルは、田辺三菱製薬(現・田辺ファーマ)とその子会社等の事業を非継続事業に分類しており、セグメント情報は継続事業の金額で表示されています。

7. 住友化学|農薬が3.3倍、石油化学が黒字転換

住友化学は、2つの部門が大きく伸びました。

セグメント 前年 利益 当期 利益 増減
エッセンシャル&グリーンマテリアルズ △54億63百万円 272億24百万円 赤字→黒字
アグロ&ライフソリューション 22億19百万円 96億31百万円 +334.0%
ICT&モビリティソリューション 183億70百万円 130億34百万円 △29.0%
住友ファーマ 210億03百万円 188億46百万円 △10.3%
アドバンストメディカルソリューション △10億24百万円 △19億38百万円 赤字が拡大

石油化学(エッセンシャル&グリーンマテリアルズ)の272億24百万円は、5部門で最大です。しかも利益率15.84%で、これも社内トップ。

農薬などのアグロ&ライフソリューションも3.3倍。

一方で、ICT&モビリティソリューションは△29.0%の減益でした。全部が良かったわけではありません。

8. 三井化学|3.8倍の中身

三井化学の営業利益プラス279.8%、約3.8倍。その中身です。

セグメント 前年 利益 当期 利益 増減 当期利益率
ベーシック&グリーン・マテリアルズ △28億86百万円 198億42百万円 赤字→黒字 9.89%
ICTソリューション 90億46百万円 110億97百万円 +22.7% 13.83%
モビリティソリューション 145億50百万円 147億78百万円 +1.6% 10.31%
ライフ&ヘルスケア・ソリューション 61億90百万円 67億57百万円 +9.2% 10.69%

赤字だった石油化学が198億42百万円の黒字になった。これがほぼすべてです。

他の3部門はプラス1.6%から22.7%で、ふつうの伸びです。「3.8倍」という数字だけを見て、会社全体が3.8倍良くなったと読むと、実態を見誤ります。

9. 旭化成|マテリアルが+160.4%、住宅は減益

旭化成は3つの事業を持っています。

セグメント 前年 利益 当期 利益 増減 当期利益率
マテリアル 149億05百万円 388億09百万円 +160.4% 10.67%
ヘルスケア 226億54百万円 297億60百万円 +31.4% 15.59%
住宅 223億53百万円 201億76百万円 △9.7% 7.46%

マテリアルが+160.4%で増益の主役。一方で住宅だけが△9.7%の減益です。

ヘルスケアも+31.4%と伸びていますが、ここは注意が必要です。旭化成は2026年4月17日に、ドイツの医薬品開発企業Aicuris Anti-infective Cures AGの買収を完了しています。のれんが445億73百万円増えており、買収の影響が入っています。

10. 東ソー|セグメントの区切りが変わりました

東ソーには、読むときの注意点があります。決算短信にこう書かれています。

従来、報告セグメントについては「石油化学」、「クロル・アルカリ」、「機能商品」、「エンジニアリング」の4区分を報告セグメントとしておりましたが、当第1四半期連結累計期間より「基礎素材」、「付加価値素材」、「バイオサイエンス」、「高機能材料」、「水処理エンジニアリング」の5区分に変更しております。

今期から区切り方が変わりました。ただし前の年の数字も新しい区分で作り直されているので、比較はできます。

セグメント 前年 利益 当期 利益 増減 当期利益率
基礎素材 △33億87百万円 56億61百万円 赤字→黒字 3.88%
付加価値素材 39億20百万円 81億97百万円 +109.1% 15.83%
バイオサイエンス 46億27百万円 57億38百万円 +24.0% 36.56%
高機能材料 24億54百万円 31億69百万円 +29.1% 9.06%
水処理エンジニアリング 71億81百万円 65億55百万円 △8.7% 15.47%

バイオサイエンスの利益率36.56%は、6社の全部門の中でもトップクラスです。ただし売上は156億96百万円と小さく、会社全体を動かすほどの規模ではありません。

11. 信越化学|なぜ+4.2%だったのか

さて、いちばん儲かっているのに、いちばん伸びなかった信越化学です。

セグメント 前年 利益 当期 利益 増減 前年利益率 当期利益率
電子材料事業 831億10百万円 1,019億35百万円 +22.7% 34.42% 36.29%
生活環境基盤材料事業 528億08百万円 348億24百万円 △34.1% 21.51% 15.21%
機能材料事業 240億41百万円 288億72百万円 +20.1% 21.28% 23.67%
加工・商事・技術サービス事業 71億21百万円 76億70百万円 +7.7% 10.17% 10.09%

電子材料が+22.7%で伸びています。機能材料も+20.1%。

ところが生活環境基盤材料が△34.1%。これが伸びを打ち消して、全体では+4.2%になりました。

信越化学が「伸びていない」のではありません。社内で綱引きが起きているのです。

そして注目すべきは電子材料の利益率36.29%。これは今回見た6社の全セグメントの中で最も高い数字です。しかも前年の34.42%からさらに上がっています。

参照した業界地図には、信越化学について「塩ビと半導体ウェハーで世界首位」と書かれています。ただし決算短信にはセグメントの中の製品別の内訳が載っていませんので、どの製品がいくら稼いだかは、ここでは断定しません。

12. 通期予想と進捗率

6社の今期(通期)の予想です。

会社 売上高/売上収益 前期比 営業利益 前期比 最終利益 前期比
三菱ケミカルグループ 4188 3兆8,000億円 +2.6% 3,000億円 +897.4% 1,270億円 +973.6%
旭化成 3407 3兆2,540億円 +5.8% 2,480億円 +7.3% 1,600億円 +0.8%
信越化学工業 4063 2兆7,000億円 +4.9% 7,000億円 +10.2% 5,250億円 +10.7%
住友化学 4005 2兆3,600億円 +1.4% 1,770億円 +16.6% 700億円 +14.9%
三井化学 4183 1兆9,000億円 +13.9% 830億円 +12.5% 450億円 +30.9%
東ソー 4042 1兆1,700億円 +14.7% 1,050億円 +9.9% 590億円 +41.8%

三菱ケミカルの営業利益+897.4%、最終利益+973.6%という数字が目を引きます。前の期が極端に低かったことの裏返しです。

第1四半期の営業利益の進捗率です。

会社 第1四半期の営業利益 通期予想 進捗率
三井化学 4183 484億32百万円 830億円 58.4%
三菱ケミカルグループ 4188 1,184億円 3,000億円 39.5%
住友化学 4005 610億41百万円 1,770億円 34.5%
旭化成 3407 813億05百万円 2,480億円 32.8%
東ソー 4042 311億83百万円 1,050億円 29.7%
信越化学工業 4063 1,737億98百万円 7,000億円 24.8%

1年を4等分すると25%です。信越化学以外の5社は前倒しで進んでいます。

三井化学の58.4%は、3か月で通期予想の6割近くを稼いだことになります。ただしこの数字は割り引いて見る必要があります。三井化学の通期予想は、コア営業利益が1,050億円なのに、営業利益は830億円です。営業利益のほうが220億円低い。会社が下期に一時的な損失を見込んでいるということです。

コア営業利益で進捗率を計算し直すと、三井化学は501億29百万円 ÷ 1,050億円で47.7%になります。それでも高いのですが、58.4%ほどではありません。同じ計算で三菱ケミカルは1,141億04百万円 ÷ 3,050億円で37.4%、住友化学は623億36百万円 ÷ 2,150億円で29.0%です。

13. 配当はどうなっているか

会社 前期の年間配当 今期の予想 増減 配当利回り
東ソー 4042 100.00円 100.00円 据え置き 3.75%
三井化学 4183 75.00円 75.00円 据え置き 3.43%
住友化学 4005 13.50円 16.00円 +18.5% 2.80%
旭化成 3407 42.00円 44.00円 +4.8% 2.68%
三菱ケミカルグループ 4188 32.00円 32.00円 据え置き 2.65%
信越化学工業 4063 106.00円 116.00円 +9.4% 1.93%

利回りがいちばん高いのは東ソーの3.75%、次が三井化学の3.43%です。

信越化学の1.93%が最も低いのですが、これは株価が高いためです。配当そのものは106円から116円へ+9.4%の増配です。

なお三井化学の75円は、先ほど触れた株式分割を考慮した金額です。増配でも減配でもなく据え置きです。

配当予想の修正は6社ともありません。

14. 株価はどう動いたか

決算発表日が7月24日から8月5日までばらついているので、全社の発表前である7月23日の終値から、直近の8月31日の終値までで比べます。

会社 7月23日終値 8月31日終値 騰落率
住友化学 4005 552.8円 572.2円 +3.51%
(参考)TOPIX 4,053.88 4,156.29 +2.53%
(参考)日経平均株価 66,422.60円 66,311.93円 △0.17%
三菱ケミカルグループ 4188 1,216.0円 1,206.0円 △0.82%
三井化学 4183 2,209.0円 2,187.0円 △1.00%
東ソー 4042 2,843.0円 2,667.5円 △6.17%
旭化成 3407 1,866.5円 1,644.0円 △11.92%
信越化学工業 4063 6,970.0円 6,023.0円 △13.59%

日経平均とTOPIXの両方を上回ったのは、住友化学だけです。

指数を2つ並べているのには理由があります。日経平均は225銘柄を株価の水準で重みづけするため、株価の高い銘柄に引っ張られやすい指数です。TOPIXは東証プライムの全銘柄を時価総額で重みづけするので、市場全体に近い動きになります。今回は日経平均が△0.17%、TOPIXが+2.53%と方向が分かれました。日経平均だけを見ていたら「市場も下げていた」と読んでしまうところです。

そして目を引くのが、営業利益+4.2%にとどまった信越化学が、6社でいちばん下げている(△13.59%)ことです。

決算の数字と株価の動きが、今回はある程度つながって見えます。ただし、なぜ下がったのかは決算資料からはわかりません。株価は決算だけで動くものではなく、相場全体、為替、金利、需給、ほかの材料でも動きます。理由を断定することはしません。

15. PER・PBR・配当利回り

2026年8月31日終値での指標です。

会社 株価 PER PBR 配当利回り
信越化学工業 4063 6,023円 20.8倍 2.40倍 1.93%
三井化学 4183 2,187.0円 17.6倍 0.91倍 3.43%
東ソー 4042 2,667.5円 13.9倍 0.98倍 3.75%
旭化成 3407 1,644.0円 13.7倍 1.04倍 2.68%
住友化学 4005 572.2円 13.6倍 0.86倍 2.80%
三菱ケミカルグループ 4188 1,206.0円 12.9倍 0.90倍 2.65%

PER(ピーイーアール)は利益の何年分の株価がついているか、PBR(ピービーアール)は会社の資産に対して株価が何倍かを表します。

PBRが1倍を割っているのが3社あります。住友化学0.86倍、三菱ケミカル0.90倍、三井化学0.91倍。東ソーも0.98倍で1倍すれすれです。

そのなかで信越化学だけが2.40倍。2.5倍以上の開きがあります。

これらの数値は自分で検算しました。株価を1株純資産で割った値は6社とも表示どおりでした。PERも、株価を会社予想の1株利益で割ったところ、6社ともほぼ一致しました。三井化学は2,187円 ÷ 124.48円で17.57倍です。

財務の安全性も見ておきます。

会社 自己資本比率(当四半期末)
信越化学工業 4063 79.0%
東ソー 4042 57.3%
旭化成 3407 47.5%
三井化学 4183 38.6%
三菱ケミカルグループ 4188 31.0%
住友化学 4005 30.5%

信越化学の79.0%は突出しています。借入に頼らずに稼いできた結果です。

16. 次の決算で見たい項目

第1四半期は3か月分でしかありません。次の決算で確かめたい点を挙げておきます。

1. 石油化学の黒字が続くか

4社そろって赤字から黒字に転換しました。これが一時的なものか、続くものか。参照した業界地図によれば、国内のエチレン生産能力616.2万トン/年に対してすでに28.5%の削減が決まっています(石油化学工業協会の資料をもとに東洋経済作成、2024年12月時点)。設備を減らせば需給は締まりますが、売上そのものは小さくなります。

2. 信越化学の生活環境基盤材料が下げ止まるか

△34.1%の落ち込みが、電子材料の伸びを打ち消しました。ここが戻れば、全体の数字は変わります。

3. 信越化学の電子材料が36.29%の利益率を保てるか

6社の全部門でいちばん高い水準です。

4. 三菱ケミカルの通期予想(営業利益+897.4%)に届くか

第1四半期の進捗率は39.5%。順調に見えますが、前の期が極端に低かったことの裏返しでもあります。

5. 旭化成の住宅が戻るか

3事業で唯一の減益(△9.7%)でした。

6. 三井化学の進捗率58.4%がどこまで続くか

第1四半期だけで通期営業利益予想830億円の6割近くを稼ぎました。ただし会社は下期に一時的な損失を見込んでいます。コア営業利益で見れば47.7%です。

まとめ

化学6社の決算を見てきました。

営業利益の伸び率は、三井化学の+279.8%から信越化学工業の+4.2%まで開きました。ところが利益率で並べ替えると、順番が逆になります。信越化学が26.24%で、他の5社は9.84%〜11.79%。

信越化学の営業利益1,737億98百万円は、売上が1.5倍大きい三菱ケミカルの1,184億円より多い。最終利益1,308億29百万円も6社で最大でした。

5社が伸びた理由は、石油化学が赤字から黒字へ戻ったからでした。三菱ケミカル、住友化学、三井化学、東ソーの4社がそろって前年赤字。旭化成も利益率4.65%から10.67%へ改善しています。急に強くなったのではなく、底から戻った形です。

信越化学が+4.2%にとどまったのは、社内で綱引きが起きていたから。電子材料が+22.7%で伸びているのに、生活環境基盤材料が△34.1%で落ちて打ち消し合っていました。伸びていないわけではありません。

そして株価では、営業利益+4.2%の信越化学が6社でいちばん下げました。日経平均とTOPIXの両方を上回ったのは住友化学だけです。

伸び率と、儲かっている度合いは、別のものでした。どちらを見るかで、まるで違う順番になります。

なお、この記事は決算の数字を確認したものであり、特定の銘柄の売買をすすめるものではありません。投資の判断はご自身でお願いします。

主な参照資料

  • 信越化学工業「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」2026年7月24日
  • 三菱ケミカルグループ「2027年3月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」2026年7月31日
  • 旭化成「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」2026年7月31日
  • 住友化学「2027年3月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」2026年8月4日
  • 東ソー「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」2026年8月4日
  • 三井化学「2027年3月期 第1四半期決算短信[IFRS](連結)」2026年8月5日
  • 株探(各銘柄ページ、日経平均株価・TOPIXの時系列ページ、2026年8月31日終値)
  • 東洋経済新報社『会社四季報 業界地図 2027年版』134〜135ページ「73 化学」

※株価・指標は2026年8月31日(月)終値。決算数値は各社の決算短信から引用しています。

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たぐ

コロナショック直前の2020年に投資をスタート。リアルタイムで暴落を経験しながら独学で投資の基礎を習得。 現在の運用総額5,000万円超・年間配当収入120万円超を達成。投資信託・ETF・個別株・米国株など100銘柄超に分散投資し、相場の波に強いポートフォリオを構築中。 高配当株の長期保有と新NISAの積立を組み合わせた"2刀流"スタイルで資産形成を実践。保有銘柄の決算・配当・株価をブログで赤裸々公開しています。YouTubeでも投資情報を発信中!

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