※本記事は2026年9月3日時点で公表されている資料をもとに作成しています。株価、時価総額、PER、PBR、予想配当利回りは2026年9月3日終値基準です。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身でお願いします。
国内のセメント需要は減っています。建設費の高騰、人手不足、工事の長期化、建設現場の週休2日制が重なり、2026年4月から6月の国内需要は前年同期比5.5%減の721万トンでした。
ところが最新決算を開くと、太平洋セメントのセメント営業利益は増加し、住友大阪セメントは赤字から黒字へ変わりました。トクヤマも国内出荷が減った中で、セメント利益を前年並みに保っています。
需要は減少、それでも四半期利益は改善。この逆向きの数字をつなぐのが、値上げ、原燃料コスト、子会社損益、そして業界再編です。
今回のポイントは3つです。
- 数量が減っても、値上げを営業利益へ残せたか
- 第1四半期が良くても、なぜ通期のセメント利益は減る予想なのか
- トクヤマの国内販売事業を取得する太平洋と、売却するトクヤマの投資テーマはどう変わるか
まず結論|同じセメント株でも、投資テーマは3社で違う
対象は、共通基準日の時価総額が1,000億円以上で、最新連結決算でセメント事業の売上高と営業利益を定量的に確認できる3社です。
- 太平洋セメント(5233)
- 住友大阪セメント(5232)
- トクヤマ(4043)
第1四半期の会社全体の営業利益は、太平洋が13.9%増、住友大阪が99.1%増、トクヤマが22.9%減です。ただし、トクヤマの全社減益は主に化成品の販売減や原燃料コスト増によるもので、セメントは25億円の営業利益を保っています。
会社別に短く整理すると、次の通りです。
| 会社 | 最新決算の読み方 | 投資テーマ |
|---|---|---|
| 太平洋 | 国内は値上げ、海外はアジア改善。ただし通期の国内利益は減益予想 | 業界再編の受け皿+米国生コン拡大 |
| 住友大阪 | セメントは値上げで黒字化。通期は石炭・原材料が負担 | 価格転嫁+高機能品への投資 |
| トクヤマ | セメント利益率は高いが、国内販売を譲渡し生産停止を検討 | セメント縮小+電子・ライフサイエンスへ資源移動 |
この3社は同じ業界に見えますが、株主が所有するリスクと成長源は異なります。太平洋は統合と海外投資、住友大阪は国内の採算改善と半導体関連の高機能品、トクヤマは既存の高利益事業から成長分野へ移る意思決定が主役です。
比較対象は時価総額1,000億円以上
2026年9月3日終値で揃えた時価総額です。
| 会社 | 終値 | 時価総額 |
|---|---|---|
| 太平洋 | 4,140円 | 4,893.13億円 |
| トクヤマ | 3,929円 | 2,832.35億円 |
| 住友大阪 | 5,408円 | 1,734.24億円 |
業界地図にはUBE三菱セメントも大手として載っていますが、この会社は上場していません。UBEと三菱マテリアルが各50%を保有する持分法適用会社です。UBE株や三菱マテリアル株を買うことはできますが、それはUBE三菱セメント株への直接投資ではありません。
さらに、親会社2社にとってセメントは連結子会社の売上と営業利益ではなく、持分法損益等を通じて反映されます。今回の「セメント事業の営業利益を横並びする」という目的に合わないため、3社比較には入れません。
東ソーのようにセメントを生産する上場会社もありますが、最新四半期開示でセメント単独の営業利益を同じ定義で取れない会社は対象外です。会社名を増やすために非対称な数字を混ぜないことを優先しました。
国内需要は2022年度比で約18%減
国内セメント需要は、2022年度の3,728万トンから2025年度の3,053万トンへ減りました。3年で675万トン、18.1%の減少です。
住友大阪は2026年度の需要を3,000万トンと予想しています。太平洋はさらに低い2,900万トンを前提としています。両社の数字が異なるため、「業界予想は一律に約2,900万トン」とひとまとめにはしません。共通しているのは、内需が前期より減ると見ている点です。
2026年4月から6月の実績は721万トン、前年同期比5.5%減でした。太平洋は需要減の理由に、建設コストの高騰、人手不足の常態化、週休2日制の浸透、一部大型案件を除く民間・公共工事の低迷を挙げています。
ここで重要なのは、セメントが「必要だから数量が安定する」とは限らないことです。社会インフラ、災害復旧、国土強靭化に必要な素材でも、工事を実行する人員や採算が不足すれば出荷は伸びません。
投資家が見るべきは、需要がいつ回復するかだけではありません。数量が戻らない前提で、何円値上げできたか、物流・修繕・石炭・電力を引いても利益が残るかです。
3社の最新決算|全社増収、営業利益は2社増益・1社減益
| 会社 | 売上高 | 前年比 | 営業利益 | 前年比 | 最終利益 | 前年比 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 太平洋 | 2,219.19億円 | +5.1% | 114.62億円 | +13.9% | 83.46億円 | +22.3% |
| 住友大阪 | 560.61億円 | +8.8% | 34.63億円 | +99.1% | 21.96億円 | +48.3% |
| トクヤマ | 856.54億円 | +4.7% | 60.76億円 | △22.9% | 52.04億円 | +6.0% |
会社全体の営業利益率は、トクヤマ7.09%、住友大阪6.18%、太平洋5.17%です。ただし、各社の事業構成は異なります。
太平洋はセメント、資源、環境、建材・建築土木、米国などを含む巨大な連結グループ。住友大阪には静電チャックなどの高機能品があります。トクヤマは化成品、電子先端材料、ライフサイエンスを持つ化学会社です。
したがって、全社利益率の順番をそのままセメントの競争力順とは読みません。次にセメント事業だけを切り出します。
セメント事業|住友大阪は赤字から黒字へ
| 会社 | セメント売上 | 営業利益 | 前年 | 営業利益率 |
|---|---|---|---|---|
| 太平洋 | 1,637.84億円 | 59.75億円 | 44.46億円 | 3.65% |
| 住友大阪 | 395億円 | 15.7億円 | △0.7億円 | 3.97% |
| トクヤマ | 160億円 | 25億円 | 25億円 | 15.63% |
太平洋のセメントは、国内だけでなく米国、ベトナム、フィリピンなどの海外子会社を含むセグメントです。一方、住友大阪とトクヤマは各社が定義するセメントセグメントで、商流や連結範囲は同じではありません。利益率は参考値として見ます。
それでも、住友大阪が前年の0.7億円の営業赤字から15.7億円の黒字に転じたことは大きな変化です。トクヤマは利益率15.63%で目立ちますが、国内出荷減に対して連結子会社の改善が補い、利益額は前年と同水準でした。
ここで「利益率が一番高い会社が最も有利」とは決めません。トクヤマはこの高利益の事業で、国内販売を太平洋へ譲渡し、2028年頃の生産停止を検討しています。現在の利益率と将来の事業継続性は別問題です。
太平洋セメント|数量減を値上げで補う
太平洋の国内セメント販売数量は、受託販売分を含む261.1万トンで、前年同期から19.2万トン、6.8%減りました。それでも国内セメント売上高は788.30億円から826.64億円へ増え、営業利益は31.17億円から38.92億円へ増えました。
会社は、セメント・固化材の販売価格値上げの通年寄与と子会社損益の改善を理由に挙げています。販売数量が減っているため、増益を需要回復と説明するのは不正確です。価格と体質改善で利益を残した決算です。
海外は、米国で金利高止まりや悪天候の影響があった一方、販売価格は前年を上回りました。アジアではベトナムの内需が回復し、フィリピンは数量増と原価低減に取り組んでいます。海外子会社等の営業利益は13.28億円から20.83億円に増えました。
一方、通期の国内セメント営業利益予想は、前期の280億円から170億円へ110億円減る計画です。トクヤマからの営業権取得で国内数量は1,117.3万トンから1,180万トンへ増える想定でも、石炭などの変動費、固定費、生コン関連などが負担になります。
太平洋の2026年度の国内輸入石炭等の平均調達価格想定は1トン当たり155ドル。前期実績130ドルから25ドル上がる前提です。第1四半期の改善だけを延長すると、通期のコスト前提を見落とします。
また、会社は米国で生コン工場41拠点等を7億12百万ドルで取得し、6月に完了しました。これはセメントの安定販売先を川下に持つ戦略です。買収で売上と数量が増えても、有利子負債は3月末の3,897.67億円から6月末の5,203.93億円へ増加しました。成長と財務負担を同時に見る必要があります。
住友大阪セメント|価格効果22億円で黒字化
住友大阪のセメントは、売上高366億円から395億円へ増加し、営業利益は0.7億円の赤字から15.7億円の黒字へ改善しました。営業利益率は△0.2%から4.0%です。
会社は増減要因を数字で開示しています。販売価格が22億円のプラス、為替が4億円、リサイクル・合理化が2億円です。一方、電力・原材料が5億円、販売・生産数量が1億円、石炭・石油が1億円のマイナスでした。その他を含めて約16億円の改善です。
この四半期は、「値上げで増えた22億円が、数量減とエネルギー・原材料増を上回った」と読めます。需要が増えたのではなく、単価とコストの差で黒字へ戻しました。
ただし、通期のセメント営業利益予想は前期55億円から50億円へ5億円減る計画です。通期の販売価格効果は46億円ですが、石炭・石油が22億円、電力・原材料が9億円、販売・生産数量が9億円のマイナスです。値上げの後からコストが追いかける構図です。
会社は感応度も示しています。石炭が1トン当たり1ドル下がると年間0.9億円、石油が1バレル1ドル下がると0.6億円、1ドルに対して1円の円高になると0.9億円の好転要因です。原燃料と為替が利益にどれくらい効くかを考える手掛かりになります。
住友大阪はセメント以外に、半導体製造装置で使われる静電チャックなどの高機能品事業を育てています。第1四半期の高機能品は増収減益でしたが、通期は営業利益42億円、前期比73.4%増を計画しています。セメントの採算だけでなく、高機能品の新棟投資が利益につながるかも評価を左右します。
トクヤマ|利益率16%でも、国内販売を譲渡
トクヤマのセメントは、売上高160億円、営業利益25億円でした。売上も利益もほぼ前年並み、営業利益率は約16%です。会社は、国内出荷が減った一方、連結子会社の収益改善で前年並みを保ったと説明しています。
一見すると、これほど利益率の高い事業をなぜ手放すのかと感じます。しかし会社の判断は、直近四半期の利益率だけではありません。長期の需要減、設備維持、二酸化炭素排出、社内廃棄物処理、そして成長事業への資本配分を合わせています。
トクヤマは、セメント・固化材の国内販売事業、トクヤマ通商、トクヤマエムテックをトクヤマセメントという新会社へ承継させ、その全株式を太平洋へ譲渡する予定です。実行予定日は2026年10月1日、譲渡予定額は370億円です。実際の額は契約に基づき調整されるため、370億円で確定とは書きません。
分割対象事業の2026年3月期売上高は461.65億円で、トクヤマ連結売上高の13.2%です。一方、対象事業の利益は開示されていません。セメントセグメント全体の利益95億円と、売却する販売事業の利益を同じだとみなすことはできません。
2026年10月の譲渡で、トクヤマがすぐにセメントを作らなくなるわけでもありません。2028年10月頃を目途に生産停止を検討し、それまでは南陽工場でセメントを製造して太平洋へOEM価格で販売する予定です。OEM価格にはマークアップを入れる基本合意ですが、利益配分やコスト上昇の負担はクロージングまでに決めるとしています。
会社は、セメント生産に伴う二酸化炭素排出を年間約280万トンと説明しています。生産停止でこれがゼロになる見込みです。つまり今回の譲渡は、目先の利益額だけでなく、環境負荷と将来設備負担を外し、電子先端材料やライフサイエンスへ資本を回す事業ポートフォリオ改革です。
ただし、この譲渡が必ず企業価値を高めると断定はできません。現在稼いでいる利益が減る一方、売却資金と投資余力が生まれます。電子・健康分野への投資が、手放す利益と費用を上回るかは今後の決算で確かめる必要があります。
Q1改善でも、通期セメント利益は3社とも減益予想
| 会社 | 前期のセメント営業利益 | 今期予想 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 太平洋 | 493億円 | 487億円 | △6億円 |
| 住友大阪 | 55億円 | 50億円 | △5億円 |
| トクヤマ | 95億円 | 70億円 | △25億円 |
ここが今回の決算で最も誤解しやすい部分です。第1四半期は太平洋と住友大阪が大きく改善しました。しかし通期では、3社ともセメント事業の営業利益減を想定しています。
共通する負担は、石炭・石油・電力・原材料・物流・修繕と、減少する内需です。値上げは第1四半期の利益を押し上げましたが、第2四半期以降のコスト上昇がその効果を削る前提です。
太平洋は国内が110億円減る一方、海外子会社等は214億円から317億円へ103億円増える計画です。そのためセメント全体では6億円の減益に留まります。国内の弱さを海外で補う構造です。
住友大阪は全社営業利益で150億円、9.9%増を見込みますが、その主役は高機能品の増益で、セメントは減益です。トクヤマはセメント譲渡の影響を現在の通期予想に織り込んでいません。税金、売却損益、OEM条件を含む最終影響は未確定です。
通期予想|太平洋の最終利益148%増は土地売却益入り
| 会社 | 売上高予想 | 営業利益予想 | 前期比 | 最終利益予想 | 前期比 | Q1営業進捗率 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 太平洋 | 1兆2,700億円 | 760億円 | +1.8% | 630億円 | +148.0% | 15.1% |
| 住友大阪 | 2,345億円 | 150億円 | +9.9% | 100億円 | △10.8% | 23.1% |
| トクヤマ | 3,920億円 | 340億円 | △8.2% | 260億円 | +17.1% | 17.9% |
太平洋の最終利益630億円は前期比2.48倍ですが、営業利益は1.8%増です。大きな差の主因は、東京都中央区晴海の土地譲渡で約187億円の固定資産売却益を特別利益に計上する見込みだからです。
会社は7月21日、売上高、営業利益、経常利益を据え置き、最終利益予想を480億円から630億円へ修正しました。つまり、最終利益148%増を「セメント本業が同じ割合で成長」とは説明できません。
住友大阪は第1四半期の営業利益がほぼ2倍で、通期計画に対する進捗率は23.1%です。しかし、値上げ効果が出やすい時期と下期の原燃料前提が異なるため、単純に4倍して上方修正余地を読むことはできません。
トクヤマは売上高12.2%増、営業利益8.2%減の計画です。増収にはトクヤマライフサイエンスグループの連結や半導体関連製品の増加が含まれます。減益要因はセメントだけでなく、化成品や原燃料コスト、研究開発費、減価償却費なども入ります。
財務と株主還元|配当利回りは2.22%〜3.36%
| 会社 | 年間配当予想 | 予想配当利回り | 予想配当性向 | 予想PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| トクヤマ | 132円 | 3.36% | 36.5% | 10.87倍 | 0.98倍 |
| 太平洋 | 120円 | 2.90% | 20.9% | 7.20倍 | 0.67倍 |
| 住友大阪 | 120円(分割前換算) | 2.22% | 38.0% | 17.14倍 | 0.88倍 |
太平洋は前期100円から120円へ増配予想です。ただし、予想PER7.20倍と予想配当性向20.9%に使ったEPS575.14円には、土地売却益が反映されています。一時利益で分母が大きくなるため、PERと配当性向が通常より低く見える点に注意が必要です。
住友大阪は2026年10月1日に1株を3株へ株式分割する予定です。中間配当は分割前60円、期末配当は分割後20円です。分割前に換算すると期末60円、年間120円で、実質的な減配ではありません。比較表は9月3日の分割前株価に合わせ、全て分割前に揃えました。
トクヤマは中間60円、期末72円、年間132円で4期連続の増配を予定しています。会社は2030年度にDOE、つまり株主資本配当率4%を目標にしています。今期予想は3.4%です。
PBRは太平洋と住友大阪が1倍未満ですが、それだけで割安と断定はできません。大規模な設備資産、資本コスト、将来の国内需要、環境投資をどう評価するかで、適切な株価純資産倍率の見方は変わります。
共通期間の株価|3社とも市場全体を下回る
最も早いトクヤマの決算発表前日の2026年7月28日から9月3日まで、全社同じ期間で比較します。
| 対象 | 騰落率 |
|---|---|
| 太平洋 | △1.69% |
| 住友大阪 | △2.87% |
| トクヤマ | △8.88% |
| 日経平均 | +2.97% |
| TOPIX | +3.49% |
3社はいずれも下落し、日経平均とTOPIXを下回りました。同じ期間の日経平均は2.97%、TOPIXは3.49%上昇しているため、絶対リターンだけでなく市場対比でも弱い動きです。
この騰落を決算だけの評価とは断定しません。トクヤマには業績予想と配当の公表、セメント譲渡、化成品や半導体関連の事業見通しが重なります。太平洋には土地売却、米国買収、有利子負債、原燃料があります。市場全体、為替、金利、需給も株価に影響します。
また、日経平均は値がさ株の影響が大きく、TOPIXは時価総額加重型です。今回は両方が上昇していますが、日経平均の上昇率がより大いため、片方だけでなく両指数を併記しています。
次の決算で確認する6項目
1. 値上げ後の販売数量
値上げで利益を保っても、数量減が長引けば工場稼働率や固定費負担が重くなります。国内需要だけでなく、自社の国内販売数量と輸出数量を分けて見ます。
2. 石炭と電力の前提
太平洋は石炭等の調達価格を1トン当たり155ドル、住友大阪は140ドルと見ています。同じ国内会社でも、調達契約、時期、品質、為替で前提は異なります。実績値と通期前提がどう変わったかを確認します。
3. 太平洋のトクヤマ取得効果
太平洋はトクヤマの国内販売事業を下期から取り込む想定です。数量は増えますが、取得費用、固定費、物流、OEM価格を引いて利益が残るかを見ます。
4. トクヤマの譲渡益とOEM条件
現在の通期予想に譲渡影響は織り込まれていません。370億円は譲渡予定額であり、そのまま利益になるわけではありません。帳簿価額、調整額、税金、関連費用、OEM条件が示されてから判断します。
5. 住友大阪の高機能品
セメントの通期減益を補う計画は高機能品です。静電チャック新棟の出荷開始後、販売数量増が減価償却費、開発費、移転一時費用を上回るかが重要です。
6. キャッシュフローと株主還元
大型買収、環境対応、設備維持に資金が必要な業界です。配当額だけでなく、営業キャッシュフロー、投資額、有利子負債、自社株買いを合わせて確認します。
まとめ|需要回復より、価格・コスト・再編を分けて見る
セメント関連3社の最新決算は、「国内需要が戻ったので利益が増えた」という単純な内容ではありませんでした。
国内需要は721万トンで5.5%減。太平洋の国内販売数量も6.8%減です。それでも、太平洋は値上げと子会社改善、住友大阪は22億円の価格効果で四半期利益を改善させました。トクヤマは国内出荷減でも子会社改善で25億円を保ちました。
ただし、通期のセメント利益は3社とも減益予想です。石炭、石油、電力、原材料、固定費が値上げ効果を削る前提だからです。第1四半期の方向だけで通期を決めないことが重要です。
そして業界再編により、各社の中身はさらに変わります。太平洋は国内シェアと海外生コンを拡大する会社、住友大阪はセメントの価格転嫁と高機能品の成長を両立させる会社、トクヤマはセメントを縮小し成長分野へ資本を移す会社になります。
セメント株を見るときは、出荷量だけでなく、販売価格、石炭価格、固定費、海外利益、買収と譲渡、キャッシュフローを分けて見る必要があります。次の決算では、値上げの残り方と、10月1日の再編後にどの会社にどの利益とコストが移ったかを確かめます。
主な参照資料
- 太平洋セメント 2027年3月期第1四半期決算短信
- 太平洋セメント 2026年度第1四半期決算説明資料
- 太平洋セメント 固定資産譲渡と業績予想修正
- 住友大阪セメント 2027年3月期第1四半期決算短信
- 住友大阪セメント 2026年度第1四半期決算説明資料
- トクヤマ 2027年3月期第1四半期決算短信
- トクヤマ 2027年3月期第1四半期決算説明資料
- トクヤマ セメント国内販売事業等の譲渡
- トクヤマ 譲渡に関する主な質疑応答
※本記事の利益率、進捗率、時価総額、PER、PBR、配当利回り、配当性向、株価騰落率は、各社開示値、Yahoo!ファイナンスの2026年9月3日東証終値、株探の時系列から再計算しています。