本記事は2026年8月16日時点で公表されている各社の決算短信・決算説明資料をもとに作成しています。株価・指標は2026年8月14日(金)終値基準です。特定の銘柄の購入や売却を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
はじめに|「AI関連株」という言葉が一番危ない
株のニュースを見ていると、毎日のように「AI関連株が買われた」という言葉が出てきます。
でも、ここで一度立ち止まってほしいのです。
「AI関連株」と呼ばれている会社は、儲け方もリスクも全く違います。
同じ「AI関連」でも、AIブームで売上が直接増える会社もあれば、AIを社内で使ってコストを下げている会社もあり、AIの会社に出資しているだけで自社の売上はAIと関係ない会社もあります。決算書の中で「AI」が顔を出す場所が、そもそも違うのです。
今回は、日本のAI関連株としてよく名前が挙がる7社について、2027年3月期第1四半期(2026年4月~6月)の決算を並べて確認しました。すべて公式の決算短信と決算説明資料から数字を拾い、比率は自分で計算し直しています。
対象は次の7社です。
- NTT(9432)
- ソフトバンクグループ(9984)
- KDDI(9433)
- NEC/日本電気(6701)
- 富士通(6702)
- さくらインターネット(3778)
- ディー・エヌ・エー/DeNA(2432)
この記事の結論
決算を全部読んだ結果、7社は「AIが決算のどこに出ているか」で4つのタイプに分かれました。
| タイプ | AIが出てくる場所 | 該当する会社 |
|---|---|---|
| ①売上に出ている | 売上高が直接増える | さくらインターネット |
| ②利益率に出ている | 売上はそこそこ、利益率が上がる | NEC、富士通 |
| ③まだ数字に出ていない | 本業が決算を動かしている | NTT、KDDI、DeNA |
| ④投資の評価損益に出る | 出資先の値動きが最終利益になる | ソフトバンクグループ |
そして、この記事で一番お伝えしたいのはここです。
「AI関連株だから上がる」ではなく、「その会社にとってAIは売上なのか、コスト削減なのか、投資なのか」を分けて見る。答え合わせは次の決算に出ます。
以下、1社ずつ数字で確認していきます。
前提|生成AIの市場規模と、日本勢の立ち位置
まず全体感です。日経『業界地図 2027年度版』によると、生成AIの市場規模は2026年予測で3,946.6億ドル、日本円で約64兆138億円(独スタティスタ調べ)とされています。業界の天気図は最高評価でした。
同誌は世界の構図を「先行していたオープンAIをアンソロピックが猛追し、グーグルなどの巨大テックや中国勢も性能を上げている」と整理し、日本勢については「小規模モデルに強みがあり、米企業との連携も進む」としています。
ここまでが全体像です。ただし、この市場規模は世界全体の数字であり、日本企業がどれだけ取れるかとは別の話です。ここから先は、各社が実際に開示した決算数値だけで見ていきます。
7社のQ1決算一覧
まず全体を並べます。
| 会社 | 売上高 | 前年同期比 | 営業利益 | 前年同期比 | 最終利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| NTT | 3兆6,177億円 | +10.9% | 4,251億円 | +4.9% | 2,748億円 | +5.8% |
| ソフトバンクG | 2兆196億円 | +10.9% | 開示なし | - | 3,473億円 | △17.7% |
| KDDI | 1兆4,873億円 | +5.1% | 3,142億円 | +21.1% | 1,955億円 | +22.1% |
| NEC | 8,198億円 | +14.5% | 588億円 | +66.1% | 497億円 | +157.4% |
| 富士通 | 7,794億円 | +3.9% | 525億円 | +56.9% | 401億円 | △76.6% |
| さくらインターネット | 111億円 | +48.6% | 12億円 | 黒字転換 | 9億円 | 黒字転換 |
| DeNA | 372億円 | △10.9% | 74億円 | △46.3% | 334億円 | +198.5% |
※億円未満は四捨五入しています。会計基準は、さくらインターネットが日本基準、他6社がIFRSです。IFRSには経常利益がありません。ソフトバンクグループは決算短信に営業利益の行がなく、比較できません。
この表を見ただけで、いくつか「あれ?」と思う箇所があるはずです。
- 富士通は営業利益が57%も増えているのに、最終利益は77%減っている
- DeNAは営業利益が46%減っているのに、最終利益は3倍近い
- ソフトバンクグループは売上が11%増えたのに、最終利益は18%減っている
この「あれ?」の中身こそが、初心者の方に一番知ってほしいところです。順番に見ていきます。
タイプ①|AIが売上に直接出ている会社
さくらインターネット(3778)|GPUの売上が約3.5倍
7社の中で、AIの影響が最もはっきり数字に出たのがさくらインターネットです。
Q1の売上高は111億3,400万円で前年同期比48.6%増。第1四半期としては過去最高です。営業利益は12億3,000万円で、前年同期の4億5,700万円の赤字から黒字に転換しました。
売上の中身を見ると、その理由が一目でわかります。
| サービス区分 | Q1売上高 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| GPUインフラストラクチャーサービス | 47億1,809万円 | +245.9% |
| クラウドサービス | 39億7,503万円 | +7.5% |
| その他サービス | 17億3,290万円 | +6.4% |
| 物理基盤サービス | 7億858万円 | △11.7% |
GPUインフラの売上が前年同期の約3.5倍です。会社の説明によると、前期に追加投資したNVIDIA製H200/B200 GPU、既存のH100 GPUが高い稼働率で動いたことが理由とされています。
注目していただきたいのは、GPUインフラが売上高全体の42.4%を占め、本業だったクラウドサービス(35.7%)を追い抜いたことです。会社の姿が1年で変わったと言えます。
同じ日に「上方修正」と「260億円の投資」を発表
さくらインターネットは2026年7月28日、通期業績予想の上方修正を発表しました。
| 通期予想 | 前回(4/27) | 今回(7/28) | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 450億円 | 455億円 | +1.1% |
| 営業利益 | 15億円 | 25億円 | +66.7% |
| 経常利益 | 12億円 | 23億円 | +91.7% |
| 当期純利益 | 8億5,000万円 | 15億円 | +76.5% |
ちなみに前期(2026年3月期)の通期営業利益は4億300万円の赤字でしたから、赤字から25億円の黒字への転換を見込んでいることになります。
そして、同じ7月28日に、もう1本の発表がありました。
生成AI向けサービス用として、NVIDIA HGX Rubin NVL8を搭載したサーバーラックシステム等に260億円を投資するという決議です。納入予定は2027年1月、資金は主に金融機関からの借入で調達するとされています。
ここが、設備を貸すタイプのビジネスの本質です。
通期の営業利益予想が25億円の会社が、その10倍以上にあたる260億円の設備投資を、借入で行う。
投資が実って稼働率が上がれば、来期以降の売上はさらに伸びます。逆に、需要が想定を下回ったり、稼働開始が遅れたりすれば、減価償却費と利息だけが先に発生します。会社自身も「本投資による当期業績への影響は現在精査中」としています。
なお、Q1末時点の自己資本比率は35.1%で、前期末の36.5%から低下しています。石狩データセンターのインフラ増強に伴う借入金・リース債務の増加が要因と説明されています。
このタイプは、ニュースで一番派手に扱われる一方、決算の数字として安定するまでが一番遠い。ここは押さえておきたいところです。
タイプ②|AIが利益率に出ている会社
NEC/日本電気(6701)|AI事業の構成比が上がって利益率が改善
NECのQ1は、売上収益8,198億円(+14.5%)、IFRSの営業利益588億円(+66.1%)、最終利益497億円(+157.4%)でした。
ここで大事な注意点があります。NECはNon-GAAP営業利益という独自指標も開示しており、こちらは747億円(+86.9%)です。IFRSの営業利益588億円とは別物で、買収で発生した無形資産の償却費、M&A関連費用、構造改革費用、減損、株式報酬などを除いた数字です。ニュースで「NECの営業利益747億円」と見かけたら、Non-GAAPのほうだと思ってください。
NECのAI事業は「BluStellar(ブルーステラ)」というブランドで、AIを活用したDX(デジタル変革)事業です。数字はこうなっています。
| BluStellar | 前年同期Q1 | 当期Q1 | 通期予想 |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 1,283億円 | 1,798億円(+40.1%) | 8,400億円(+19.1%) |
| Non-GAAP営業利益 | 156億円 | 249億円 | 1,430億円 |
| 利益率 | 12.1% | 13.8% | 17.0% |
ポイントは、BluStellarの利益率が、従来型の事業より高いことです。国内ITサービスの中でBluStellarの売上比率は27%から35%に上がっており、利益率の高い事業の構成比が上がることで、全社の利益率が押し上げられる構図になっています。
AIとの関係で言えば、NECは2026年4月にアンソロピック(Anthropic)との戦略的協業を開始しています。決算説明資料には次のような進捗が記載されています。
- 2026年6月、金融機関8社との取り組みを始動
- 2026年7月、「NEC AIインサイトレポーティングサービス」を提供開始
- Claudeを NECグループ3万人へ展開し、国内企業最大規模のAIネイティブエンジニア体制を構築
一方で、注意も必要です。Q1の最終利益が157.4%増えた最大の要因は、AIではなく社会インフラ事業の改善です。社会インフラの売上は1,204億円から1,653億円へ37.3%増え、その中で航空宇宙・防衛が49.6%増と大きく伸びています。「NECの好決算=AIのおかげ」とは言えません。
NECは通期予想も上方修正しました。Non-GAAP営業利益を4,200億円から4,300億円へ引き上げています。ただしこの修正には、2026年5月に新規連結した米CSG社の影響は反映されておらず、上期決算発表時に織り込む予定とされています。
富士通(6702)|営業利益+56.9%、最終利益△76.6%のからくり
富士通のQ1は、売上収益7,794億円(+3.9%)、営業利益525億円(+56.9%)、最終利益401億円(△76.6%)でした。
営業利益が57%増えて、最終利益が77%減る。矛盾しているように見えますが、理由ははっきりしています。
前年同期(2026年3月期Q1)の最終利益1,718億円が、前々年比で918%増という異常に大きな数字だったのです。大きな一時的な利益が含まれていました。今期が悪化したのではなく、前年が高すぎたことによる反動です。
証拠として、一時的な要因を除いた「調整後四半期利益」を見ると、298億円から419億円へ40.7%の増益です。
決算を読むときにこの区別ができるかどうかで、印象は正反対になります。ニュースの見出しだけを見て「富士通は最終利益が8割近く減った」と受け取ると、事実を取り違えます。
富士通のAIとの関係は、NECとは少し違う形で出ています。決算説明資料によると、主力のサービスソリューション事業でグロスマージン率(粗利率)が35.7%から37.2%へ1.5ポイント改善しており、その要因として次が挙げられています。
- SIプロジェクトのほぼ全てにおいてAIを活用
- 「AIトップガンプロジェクト」で特定案件にハイスキル人材を集中投入し工期を短縮
- 2026年7月から「AIドリブンモダナイゼーションサービス」を開始(移行期間を40%短縮)
AIを商品として売るのではなく、AIを使って自分たちの作業を速くし、利益率を上げている。これが富士通の形です。
なお、パソコンなどのユビキタスソリューション事業は売上344億円(△28.1%)、調整後営業利益44億円(△45.8%)と減っています。前年にあったWindows10サポート切れ需要の反動と説明されています。
タイプ③|AIは話題だが、まだ決算を動かしていない会社
NTT(9432)|伸びているのはデータセンターを含むセグメント
NTTのQ1は、営業収益3兆6,177億円(+10.9%)、営業利益4,251億円(+4.9%)、最終利益2,748億円(+5.8%)でした。増収増益です。
セグメント別に見ると、伸び方に差があります。
| セグメント | 売上(小計) | 前年同期比 | セグメント利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 総合ICT事業 | 1兆6,170億円 | +8.5% | 2,462億円 | +2.7% |
| グローバル・ソリューション事業 | 1兆2,789億円 | +15.8% | 635億円 | +9.9% |
| 地域通信事業 | 7,636億円 | +0.8% | 985億円 | +0.6% |
| その他(不動産・エネルギー等) | 4,424億円 | +14.6% | 234億円 | +29.3% |
売上の伸びが最も大きかったのはグローバル・ソリューション事業(+15.8%)です。このセグメントにはデータセンター事業が含まれています。
ただし、NTTの決算短信本文にはAIや生成AIに関する記述はありません。短信は「経営成績の概況は説明会資料を参照」という形式になっており、AI関連の売上金額も開示されていません。日本語LLM「tsuzumi」の商用化は業界地図にも載っていますが、Q1決算の数字とは結びつけられない、というのが正直なところです。
なお、NTTは2026年7月1日に海外市場で無担保社債を発行しています。総額55億米ドル、38.5億ユーロ、4億英ポンドという大型調達です。
通期予想は据え置きで、営業利益1兆7,100億円(+0.2%)、最終利益9,800億円(△5.5%)を見込んでいます。Q1時点の進捗率は営業利益で24.9%、最終利益で28.0%です。
KDDI(9433)|AI関連は伸びているが、まだ全体の一部
KDDIのQ1は、売上高1兆4,873億円(+5.1%)、営業利益3,142億円(+21.1%)、最終利益1,955億円(+22.1%)と、7社の中でも安定した増収増益でした。営業利益率は21.13%で7社トップです。
セグメント別の売上を見てみます。
| セグメント | Q1売上 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| テレコムコア(通信の本体) | 1兆837億円 | +3.4% |
| パーソナルグロース(金融・エネルギー等) | 2,808億円 | +8.6% |
| ビジネスグロース(法人向け) | 1,652億円 | +11.7% |
AI関連が入っているのはビジネスグロースで、伸び率は一番高いのですが、売上規模はテレコムコアの6分の1以下です。この中の一部がAI関連ですから、全社の業績を動かすところまでは、まだ来ていません。
個別には、海外コネクティビティのデータセンター事業が売上236億円から285億円へ20.6%増、調整後EBITDAが104億円から126億円へ増加し、マージン44.1%と高収益であることが開示されています。クラウド基盤の売上高は前年同期比30%超の伸びとされています。
また、2026年7月にauショップ約2,000店へ「auセールスサポートAI」を導入し、店舗スタッフの社内問い合わせ対応時間を、電話259秒・有人チャット128秒に対してAIで30秒に短縮した、という具体例も紹介されています。これは売上ではなく、業務効率の改善です。
一方で、KDDIには注意して見るべき事項もあります。決算説明資料には、グループ会社の不適切取引事案を受けたガバナンス強化の進捗と、メールシステムへの不正アクセスによりメールアドレス1,223万人分・パスワード762万人分が漏えいした件が記載されています。
なお、KDDIは発行済株式数が41億8,784万株から40億745万株へ、約1億8,040万株減っています。これは自己株式の消却によるものです。新たな自社株買いの発表とは別物ですので、混同しないようにしてください。
DeNA(2432)|「AIエージェント全社導入」と決算は別々に動いている
DeNAは業界地図で「全社規模でAIエージェントを導入」と紹介されている会社です。ただ、Q1決算の数字を動かしたのは、AIではありませんでした。
Q1は売上収益372億円(△10.9%)、営業利益74億円(△46.3%)、最終利益334億円(+198.5%)です。
営業利益が半分近くまで減っているのに、最終利益は3倍。理由は、営業利益の外側で大きな一時的利益が発生したからです。税引前利益が497億円と、営業利益74億円を大きく上回っていることからも、本業以外の要因だとわかります。
もしニュースで「DeNAの最終利益が3倍」という見出しだけを見たら、好決算だと思ってしまうかもしれません。でも本業の営業利益は46.3%減です。どちらの利益の話をしているのかを確認する。これが決算を読むときの基本になります。
もう一点、投資家として見逃せないのが配当です。DeNAの2027年3月期の配当予想は「未定」です。前期は期末66円が支払われましたが、今期は「業績動向等を精査のうえ、今後決定」とされています。無配が決まったわけではありませんが、現時点では配当利回りが計算できません。
タイプ④|AIへの投資額そのものが損益になる会社
ソフトバンクグループ(9984)|Intel株で1.3兆円の利益、それでも最終減益
ソフトバンクグループは、他の6社とは全く性質が違います。
まず、決算短信に営業利益の行がありません。投資会社としての性格が強く、損益計算書が事業会社とは違う作りになっているためです。
Q1の数字はこうです。
| 項目 | 当期Q1 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 2兆196億円 | +10.9% |
| 税引前利益 | 5,892億円 | △14.6% |
| 親会社の所有者に帰属する四半期利益 | 3,473億円 | △17.7% |
売上は増えているのに、最終利益は18%近く減りました。ここが投資会社の難しいところです。
Q1の投資利益は合計1兆8,594億円(前年同期は4,869億円)と、大きな利益が出ています。特にIntel株式で1兆3,329億円の投資利益を計上しました。
それでも減益になったのは、費用側に次のような重い項目が並んだためです。
- 販売費及び一般管理費 1兆2,869億円(前年同期比 +5,287億円)。AIコンピューティング事業の株式報酬費用の増加など
- 財務費用 3,287億円(+1,634億円)。借入増加と金利上昇
- 為替差損 1,461億円
- デリバティブ関連損失 3,916億円
ここで押さえておきたいのは、Intel株の1兆3,329億円は「評価益」であり、株を売って手にした現金ではないということです。株価が下がれば、次の四半期には評価損になります。
OpenAIへの投資はこうなっています。Q1に100億米ドルを追加出資し、Q1末時点で累計投資額446億米ドル、公正価値896億米ドル、累計投資利益450億米ドル。ただし評価額は前期末から変動していません。2026年7月に第2弾の100億米ドルを実行済みで、10月に予定される第3弾が完了すると累計出資額は646億米ドル、持分比率は約13%になる見込みです。
そして、ソフトバンクグループは通期の業績予想を出していません。投資先の評価額次第で利益が大きく振れるため、予想を立てられないのです。これは「AI関連株」として初心者が最初に手を出すには、かなり癖のある構造だと言えます。
なお、2026年1月1日に1株を4株にする株式分割を実施しています。過去の株価や配当と比べるときは、この調整を忘れないようにしてください。
通期予想への進捗率
各社の通期予想に対して、Q1がどこまで進んだかを計算しました。
| 会社 | 指標 | 進捗率 |
|---|---|---|
| DeNA | 営業利益 | 49.4% |
| さくらインターネット | 営業利益 | 49.2% |
| KDDI | 調整後営業利益 | 26.0% |
| NTT | 営業利益 | 24.9% |
| NEC | Non-GAAP営業利益 | 17.4% |
| 富士通 | 営業利益 | 12.7% |
| ソフトバンクG | - | 通期予想なしのため算出不可 |
※各社が予想を開示している基準(IFRS/Non-GAAP/調整後)に合わせて計算しています。基準をまたいだ比較はしていません。
進捗率が高ければ良い、というものではありません。DeNAとさくらインターネットが約50%と高いのは、通期予想が保守的である可能性と、下期に費用が集中する可能性の両方が考えられます。逆に富士通の12.7%は低く見えますが、富士通は例年下期に利益が偏る構造です。1年分を4等分した25%と比べるより、その会社の過去の四半期の出方と比べるほうが有効です。
財務と配当
自己資本の厚さ
| 会社 | 自己資本比率(親会社所有者帰属持分比率) |
|---|---|
| DeNA | 71.6% |
| 富士通 | 61.5% |
| NEC | 49.6% |
| さくらインターネット | 35.1% |
| ソフトバンクG | 28.3% |
| KDDI | 27.2% |
| NTT | 20.8%(株主資本比率) |
NTTとKDDIが低く見えますが、通信会社は安定した通信料収入があり、有利子負債を使ってインフラを持つビジネスモデルです。この数字だけで危険とは言えません。一方、さくらインターネットは設備投資の拡大で36.5%から35.1%へ低下しており、今後の借入増加でこの数字がどう動くかは見どころです。
配当予想と配当性向
| 会社 | 年間配当予想 | 前期 | 予想配当利回り | 配当性向 |
|---|---|---|---|---|
| NTT | 5.40円 | 5.30円 | 3.32% | 44.6% |
| KDDI | 84円 | 80円 | 2.92% | 42.8% |
| 富士通 | 55円 | 50円 | 1.43% | 30.1% |
| NEC | 40円 | 38円 | 0.77% | 18.3% |
| ソフトバンクG | 11円 | 11円(分割調整後) | 0.19% | 算出不可 |
| さくらインターネット | 5.50円 | 5.00円 | 0.14% | 14.7% |
| DeNA | 未定 | 66円 | - | - |
※配当利回りは2026年8月14日終値、配当性向は会社予想EPSから計算しています。
配当を重視する方から見ると、7社の中で選択肢になるのはNTT(3.32%)とKDDI(2.92%)の2社です。ただし、この2社は同時に「AIがまだ決算を動かしていないタイプ」でもあります。
ここに、この記事のもうひとつの発見があります。
AIの成長を取りに行くほど配当は少なく、配当を取りに行くほどAIの成長は薄い。7社の中で、両方を同時に満たす会社はありませんでした。どちらを優先するかは、投資家それぞれの考え方次第です。
株価の動き|共通期間で機械的に比較
7社の決算発表日は7月28日から8月7日までバラバラです。「決算翌日の株価」で比べると条件がそろわないため、全社の決算が出そろった後の8月7日終値を起点に、8月14日終値までの共通期間で比較しました。
| 会社 | 8/7終値 | 8/14終値 | 騰落率 |
|---|---|---|---|
| さくらインターネット | 3,440円 | 3,870円 | +12.50% |
| NEC | 4,862円 | 5,168円 | +6.29% |
| 富士通 | 3,675円 | 3,841円 | +4.52% |
| ソフトバンクG | 5,552円 | 5,739円 | +3.37% |
| DeNA | 2,462.0円 | 2,536.0円 | +3.01% |
| NTT | 158.5円 | 162.7円 | +2.65% |
| KDDI | 2,981.0円 | 2,877.5円 | △3.47% |
| (参考)日経平均 | 65,606.71 | 68,713.80 | +4.74% |
ここで必ず確認していただきたいのが、同じ期間に日経平均が4.74%上がっていることです。
つまり、7社のうち日経平均を上回ったのは、さくらインターネットとNECの2社だけです。富士通はほぼ同水準、ソフトバンクグループ・DeNA・NTTは上昇していますが相場全体には届いていません。
この期間にKDDIだけが下落しましたが、決算が悪かったから下がったとは言えません。株価は相場全体、為替、金利、需給、他の個別材料など、いろいろな要因で動きます。決算内容が意識された可能性はありますが、断定はできません。
PER・PBR・配当利回り
2026年8月14日終値で計算した指標です。
| 会社 | 株価 | 予想PER | PBR | 予想配当利回り |
|---|---|---|---|---|
| NTT | 162.7円 | 13.4倍 | 1.34倍 | 3.32% |
| KDDI | 2,877.5円 | 14.7倍 | 約2.1倍 | 2.92% |
| 富士通 | 3,841円 | 21.1倍 | 3.27倍 | 1.43% |
| NEC | 5,168円 | 23.6倍 | 3.07倍 | 0.77% |
| さくらインターネット | 3,870円 | 103.3倍 | 5.04倍 | 0.14% |
| ソフトバンクG | 5,739円 | 算出不可 | 1.78倍 | 0.19% |
| DeNA | 2,536.0円 | 算出不可 | 約1.1倍 | 未定 |
※PERは会社予想EPSから計算しています。KDDIは調整後EPS、NECはNon-GAAP EPSを使用しています。ソフトバンクグループは通期予想がないため、DeNAは当期利益の予想を開示していないため、それぞれ算出できません。
さくらインターネットのPER103.3倍は、他の6社とは明らかに違う水準です。これは「割高だから危ない」という単純な話ではなく、投資家が今の利益ではなく、数年先の利益を織り込んで買っているということです。裏を返せば、その期待が外れたときの下落幅も大きくなります。
一方、NTTのPER13.4倍・PBR1.34倍は7社で最も落ち着いた水準です。ここでも「成長期待の高さ」と「株価の落ち着き」は反対向きになっています。
次の決算で確認したい項目
7社をタイプ別に見てきましたが、次の四半期(2027年3月期第2四半期、11月発表予定)では、それぞれ見るポイントが変わります。
タイプ①(さくらインターネット)
- GPUインフラサービスの伸び率が続いているか
- 260億円の投資が業績予想にどう織り込まれるか(現在は「精査中」)
- 自己資本比率と有利子負債の水準
タイプ②(NEC・富士通)
- NEC:BluStellarの売上比率と利益率、CSG連結分を織り込んだ通期予想
- 富士通:グロスマージン率がさらに改善するか、下期偏重の計画どおり進むか
タイプ③(NTT・KDDI・DeNA)
- NTT:グローバル・ソリューション事業の伸びが続くか、通期予想の据え置きが維持されるか
- KDDI:ビジネスグロースの構成比が上がるか、不正アクセス事案への対応費用
- DeNA:配当予想が確定するか、本業(営業利益)が通期予想150億円に届くか
タイプ④(ソフトバンクグループ)
- 10月に予定されるOpenAI第3トランシェ100億米ドルの実行
- Intel株など保有株の評価額の動き
- 財務費用と有利子負債の水準
まとめ
長くなりましたので、要点を整理します。
- 「AI関連株」は1つの塊ではありません。AIが決算のどこに出るかで、少なくとも4タイプに分かれます。
- 売上に直接出ているのはさくらインターネットだけでした。GPUインフラ売上が約3.5倍、全売上の42.4%を占めました。同時に260億円の設備投資も決議しています。
- NECと富士通は、AIを使って利益率を上げているタイプです。ただしNECの最終利益増の主因は社会インフラ事業であり、AIだけでは説明できません。
- NTT・KDDI・DeNAは、AIの話題はあるものの、決算を動かしているのは本業や一時要因でした。
- ソフトバンクグループは、投資先の評価損益が最終利益を決める構造です。Intel株で1兆3,329億円の投資利益を計上しながら、最終利益は17.7%減でした。通期予想も開示していません。
- 配当利回りで3%台はNTTのみ、2%台はKDDIのみ。成長期待の高い会社ほど配当は少ないという関係が、はっきり出ました。
- 株価は共通期間(8/7~8/14)で日経平均が+4.74%。これを上回ったのはさくらインターネットとNECの2社だけでした。
最後に、この記事で一番お伝えしたいことをもう一度書きます。
「AI関連株」という言葉で判断せず、その会社の決算のどこにAIが出ているかを確認する。売上なのか、利益率なのか、投資の評価損益なのか、それともまだ出ていないのか。それによって、見るべき数字も、抱えるリスクも変わります。
そして、答え合わせは必ず次の決算に出ます。決算を読む習慣が、いちばんの武器になります。
主な参照資料
- NTT「2026年度 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」2026年8月6日
- ソフトバンクグループ「2027年3月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」2026年8月6日
- KDDI「2027年3月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」および「2027年3月期 第1四半期 決算説明会資料」2026年8月7日
- NEC「2027年3月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」および「2026年度 第1四半期決算概要」2026年7月29日
- 富士通「2027年3月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」および「2026年度 第1四半期決算概要」2026年7月30日
- さくらインターネット「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」「業績予想の修正に関するお知らせ」「生成AI向けサービスへの投資に関するお知らせ」2026年7月28日
- ディー・エヌ・エー「2027年3月期 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」2026年8月5日
- 株価・時価総額・日経平均:株探(2026年8月14日終値)
- 生成AIの市場規模および業界の全体像:日経『業界地図 2027年度版』生成AIページ(市場規模の出典は独スタティスタ、2026年予測)