こんにちは、たぐです。
2026年7月、日本の長期金利(10年国債利回り)が2.77%台まで上昇しました。この水準は1997年6月以来、約29年ぶりです。
「いま国債を買って満期まで持てば、2.7%台の利回りが見込める」——そんな時代が、およそ29年ぶりに戻ってきたことになります。
これは高配当株に投資している私たちにとって、無視できない変化です。なぜなら、高配当株の大きな魅力である「利回り」に、"ほぼ無リスク"の競争相手が現れたからです。
この記事では、煽りや予想は抜きにして、
- 何が起きたのか(確認できた事実だけ)
- 国債2.77%時代に高配当株を持つ意味をどう考えるか
- 金利上昇がセクターごとにどう波及しうるか(メカニズムの一般論)
- 投資スタイル別の向き合い方
を、初心者の方にもわかるように整理していきます。
何が起きたのか——事実の確認から
まずは事実関係を押さえましょう。ここで使う数字は、財務省と日銀の公表データにもとづいています。
日銀が2026年6月16日に利上げを決定
日銀の2026年6月16日公表文「金融市場調節方針の変更について」によると、この日の金融政策決定会合で、無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標を1.0%程度へ変更することが決まりました(賛成7・反対1)。新しい方針は6月17日から適用され、基準貸付利率は1.25%とされています。
同じ公表文の中で、日銀は景気について「中東情勢の影響もあって一部に弱めの動きもみられるが、緩やかに回復している」との認識を示し、原油価格の上昇を「景気の下押し要因」と位置づけています。景気に不安材料を認めつつも、利上げに踏み切った——これが6月16日の決定でした。
7月に入り、10年国債利回りが2.77%台へ
そして7月。財務省の「国債金利情報」によると、10年国債利回りは次のように推移しました。
| 日付 | 10年国債利回り |
|---|---|
| 2026年7月1日 | 2.711% |
| 2026年7月2日 | 2.778% |
| 2026年7月3日 | 2.768% |
(出典:財務省「国債金利情報」)
財務省が公表している過去の金利データをさかのぼると、10年国債利回りがこの水準にあったのは1997年(平成9年)6月が最後です。当時の1997年6月3日の利回りは2.777%でした。つまり、「1997年6月以来、約29年ぶりの水準」というのが正確な表現になります。
1997年といえば、消費税が5%になり、山一證券が自主廃業した年です。それ以来の金利水準と聞くと、いかに大きな節目かがイメージできるのではないでしょうか。
なお、この先金利がさらに上がるのか、それとも落ち着くのかは、誰にもわかりません。この記事では「今この水準にある」という事実を前提に、高配当株投資家として何を考えるべきかを整理します。
そもそも長期金利とは?株への影響をコンパクトに
金利の基礎は他のメディアでもよく解説されているので、ここでは高配当株投資に関係する部分だけをコンパクトにまとめます。すでにご存じの方は、次の章まで読み飛ばしていただいて大丈夫です。
長期金利=10年国債利回りのこと
ニュースで「長期金利」と言うとき、通常は10年物国債の利回りを指します。国が発行する債券なので、日本円で運用する限り"ほぼ無リスク"の利回りの代表格とされ、住宅ローンの固定金利や企業の借入金利など、世の中のさまざまな金利の「基準」になっています。
日銀が動かすのは短期の政策金利(今回なら無担保コールレートの誘導目標)ですが、長期金利は市場での国債の売買を通じて決まります。一般に、政策金利の変更や先行きの見方は、市場を通じて長期金利にも織り込まれていきます。
金利が上がると株に影響する2つの経路
金利上昇が株式市場に影響するルートは、大きく2つに整理できます。
| 経路 | 中身 |
|---|---|
| ① 企業への影響 | 借入の利息負担が増える(借金の多い企業ほど影響大)。一方、銀行など「金利で稼ぐ」業種には収益改善要因 |
| ② 投資家の比較対象の変化 | 国債利回りが上がると、「リスクを取って株を持つ理由」がより厳しく問われるようになる |
高配当株投資家にとって特に重要なのは②です。次の章で正面から扱います。
本題:「国債2.77%」時代に高配当株を持つ意味
ここからがこの記事の本題です。
「ほぼ無リスクで2.7%台」が意味すること
少し前まで、日本では「まとまった利回りが欲しければ、リスクを取って株や REIT を買うしかない」という状況が長く続いていました。銀行預金はほぼゼロ、国債もごくわずか。だからこそ、配当利回り3〜4%台の高配当株は「利回りを求めるならほぼ一択」の存在だったわけです。
ところがいまや、10年国債の利回りは2.7%台後半(7月2日に2.778%、7月3日に2.768%。財務省「国債金利情報」より)。満期まで持てば元本が返ってくる(※国の信用リスクを除く)国債で、この水準の利回りが取れる時代になりました。
そうなると、こういう問いが自然に生まれます。
「値下がりリスクのある高配当株を持たなくても、国債でよくない?」
この問いから目をそらさずに考えるのが、今の高配当株投資家に必要な姿勢だと私は思います。
イールドスプレッドという考え方
株と債券の利回りを比べるときの基本的なモノサシがイールドスプレッドです。難しい言葉に見えますが、考え方はシンプルです。
イールドスプレッド = 株の利回り − 国債の利回り
つまり「国債より、どれだけ余分な利回りが取れているか」です。この"上乗せ分"は、株価変動や減配といったリスクを引き受けることへの報酬(リスクプレミアム)と考えられます。
仮の数字で見てみましょう(※以下はあくまで計算例で、特定の銘柄の数字ではありません)。
| 仮の配当利回り | 10年国債2.77%との差(スプレッド) |
|---|---|
| 3.0% | 約0.2%ポイント |
| 3.5% | 約0.7%ポイント |
| 4.0% | 約1.2%ポイント |
| 4.5% | 約1.7%ポイント |
国債利回りがほぼゼロだった時代は、配当利回り3%の株でもスプレッドは丸ごと約3%ポイントありました。ところが国債利回りが2.7%台後半となった今、同じ配当利回り3%の株のスプレッドは紙一重です。「株のリスクを取る報酬として、その上乗せ幅で納得できるか?」——金利上昇は、この問いを一人ひとりの投資家に突きつけている、と整理できます。
ここで大事なのは、イールドスプレッドは「どちらが正解か」を決める道具ではないということです。何%ポイントの上乗せがあれば十分と感じるかは、投資家それぞれのリスク許容度によって違います。あくまで自分の基準を持つためのモノサシとして使うのがおすすめです。
実例:利回りが国債を「下回る」人気株も出てきた
これは机上の話ではありません。たとえばAIデータセンター需要で人気化した電線株では、株価の大幅上昇の結果、2026年7月3日終値時点の配当利回りが古河電工0.55%・フジクラ0.71%・住友電工1.46%と、いずれも同じ日の10年国債利回り2.768%を下回っています(各社の株価・業績の詳細は電線株4社の比較記事で解説しています)。
イールドスプレッドで言えばマイナス——つまり「配当目的では説明がつかない水準」です。それでも買われているのは、市場が配当ではなく利益の成長に期待しているからだと整理できます。逆に言えば、こうした銘柄を「昔のイメージのまま高配当株のつもり」で買うと、期待と現実がズレます。国債利回りというモノサシがあると、その株が「配当で選ぶ株」なのか「成長で選ぶ株」なのかがくっきり見えるようになる——金利のある世界の、こういう使い方もあるのです。
利回りを比べるときの注意点——数字の「性質」が違う
なお、国債利回りと配当利回りを比べるときは、数字の"性質"の違いにも注意が必要です。
- 国債の利回りは「確定」:満期まで持つ前提なら、買った時点で受け取れる金額が決まります
- 配当利回りは「予想」:一般に「予想配当 ÷ 今の株価」で計算されるため、会社が配当予想を変えれば変わりますし、株価が動けば同じ配当でも利回りの数字は日々変わります
- 税金や手数料の扱い:どちらも受け取り時に税金がかかりますが、NISA口座を使えるかどうかなど、口座の種類によって手取りは変わります
つまり、画面に表示される「配当利回り4%」は、国債の「利回り2.77%」と同じ確実さを持つ数字ではありません。イールドスプレッドを見るときは、株側の利回りには"予想が外れる可能性"という不確実さが織り込まれていることを忘れないようにしましょう。この不確実さこそが、上乗せ分(リスクプレミアム)を受け取る理由でもあります。
税引き後・NISAで見ると、景色が少し変わる
もうひとつ実務的に大事なのが税金です。課税口座(特定口座など)では、国債の利子も株の配当も、受け取り時に約20%が源泉徴収されます。仮に10年国債の2.77%なら、税引き後の手取りはおよそ2.2%です。
一方、株式の配当はNISA口座なら非課税で受け取れます(NISAの対象は上場株式や投資信託などです。制度の詳細は金融庁のサイト等でご確認ください)。なお、配当を非課税で受け取るには、配当金の受取方法を「株式数比例配分方式」(証券口座での受け取り)にしておく必要があります。設定状況はお使いの証券会社でご確認ください。
仮の計算例で比べてみます。
| 仮の計算例 | 課税口座の手取り | NISA口座の手取り |
|---|---|---|
| 国債2.77%(利回り) | 約2.2% | — |
| 配当4.0%(仮)の株 | 約3.2% | 4.0%のまま |
課税前のスプレッドが約1.2%ポイントだった「配当4.0%の株」は、NISAを使えば税引き後スプレッドが約1.8%ポイントに広がる計算です。非課税制度を活用できるかどうかで、国債と高配当株を比べたときの景色は変わってきます(※税率や制度は変更される可能性があります。個別の税務については税理士等にご確認ください)。
とはいえ、国債と高配当株は「別物」——3つの違い
利回りの数字だけを並べると国債が急に魅力的に見えますが、国債と高配当株は性質がかなり違う商品です。比較するときは、次の3点を押さえておく必要があります。
| 観点 | 国債(固定利付) | 高配当株 |
|---|---|---|
| 受け取る金額 | 満期まで固定(買った時点で確定) | 会社の判断で増えることも減ることもある |
| 元本 | 満期まで持てば額面で償還(途中売却は価格変動あり) | 株価は日々変動。減る可能性も増える可能性もある |
| インフレへの備え | 固定利回りのため、物価上昇分は目減りしうる | 企業が値上げ等で利益を伸ばせれば、配当や株価に反映される余地がある |
つまり、こう整理できます。
- 国債の強み:確実性。買った瞬間に、満期までの利回りが確定する
- 高配当株の強み:成長性。配当が増える可能性があり、インフレに強い面がある
国債の利回りは、買った時点で「上限」が決まっています。一方、高配当株の配当は上下どちらにも動きうる。この違いを踏まえると、次のポイントが見えてきます。
利回りより「増配力」——国債にはできないこと
国債2.77%時代に高配当株を評価する視点として、私が最も大事だと考えるのが増配力(配当を伸ばし続ける力)です。
これも仮の計算例で考えてみます(特定銘柄の数字ではありません)。
| 年 | 増配なしの株(利回り3.5%) | 毎年5%増配する株(当初利回り3.5%) |
|---|---|---|
| 1年目 | 3.5% | 3.5% |
| 5年目 | 3.5% | 約4.3% |
| 10年目 | 3.5% | 約5.4% |
※いずれも「買値に対する利回り」の計算例。増配は約束されたものではありません。1年目は増配前、5年目は増配4回後、10年目は増配9回後として計算しています。
固定利付の国債は、何年持っても買った時点の利回りのままです。一方、増配を続ける企業の株を持ち続けると、「買値に対する利回り」が年々育っていきます。これは国債には構造的にできないことです。
だからこそ、金利が上がった今の局面では、銘柄を見る目を「今の利回りの高さ」から「配当を伸ばし続ける力」へ少しシフトさせる価値があると考えています。増配力を確認するチェックポイントは、たとえば次のようなものです。
- 配当の実績:過去に増配を続けてきたか、減配の歴史はないか
- 配当方針:「累進配当(減配しない方針)」や配当性向の目安を会社が明言しているか
- 利益の裏付け:配当の原資となる利益やキャッシュフローが伸びているか(配当性向が無理な水準になっていないか)
逆に言うと、「利回りは高いが利益が伸びておらず、配当性向に余裕がない」タイプの銘柄は、国債という比較対象ができた今、以前より厳しい目で見られやすくなる——というのが一般的な整理です。
利回りの高さは、それ自体が魅力である一方、「市場がその会社の先行きに慎重で、株価が伸び悩んでいる結果として利回りが高く見えている」というケースもあります。国債でも2.7%台が取れる環境では、「なぜこの銘柄はそれより高い利回りで放置されているのか?」と一歩立ち止まって考えるクセをつけると、いわゆる"利回りのワナ"を避けやすくなります。決算資料で利益の推移と配当方針を確認する——この基本動作の価値が、金利のある世界では一段と高まっていると感じます。
セクター別の整理——金利上昇はどこにどう効くのか
次に、金利上昇が業種ごとにどういうメカニズムで波及しうるのかを整理します。
先にお断りしておくと、ここで書くのは「一般にこういう構図で語られる」というメカニズムの説明であって、個別の株価がどうなるかの予想ではありません。実際の株価は、金利以外の無数の要因(業績、為替、需給など)で動きます。
銀行・保険:金利で「稼ぐ側」の業種
銀行は、預金で集めたお金を貸し出したり運用したりして、その利ざやで稼ぐビジネスです。金利が上がると、貸出金利や国債運用の利回りが改善しやすく、一般に金利上昇の恩恵を受けやすい側と整理されます。メガバンクが「金利のある世界」の代表的な恩恵セクターとして語られるのはこのためです。この構図は、以前書いた三井住友FG(8316)の決算記事でも「金利上昇の恩恵」という切り口で詳しく取り上げているので、あわせてどうぞ。
保険(特に生命保険)も、契約者から預かった保険料を長期の債券などで運用するビジネスなので、新しく買う債券の利回りが上がることは、一般に運用環境の改善要因とされます。保険グループの決算の読み方(IFRSの赤字と修正純利益のカラクリ)は、ソニーFG(8729)の記事で解説していますので、保険株に興味のある方はそちらもご覧ください。
ただし、銀行も保険も「金利が上がれば自動的に儲かる」ほど単純ではありません。保有している既存債券の価格は金利上昇で下落しますし、貸出先の利息負担が増えれば貸倒れのリスクにも目配りが必要になります。恩恵と逆風の両面がある、という点は押さえておきましょう。
REIT・不動産:借入コストと「利回り比較」の両面から
REIT(不動産投資信託)は、投資家から集めた資金と借入金で不動産を買い、賃料収入を分配する仕組みです。金利上昇局面では、一般に次の2つの逆風メカニズムが語られます。
- 借入コストの増加:REITは借入を使って物件を保有しているため、金利が上がると支払利息が増え、分配金の原資を圧迫しうる
- 国債との利回り比較:REITは「利回り商品」として国債と比較されやすく、国債利回りが上がるほど相対的な魅力が薄れやすい(=先ほどのイールドスプレッドの話がダイレクトに効く)
一方で、賃料の引き上げが進めば収入側が増える余地もありますし、借入の金利を長期・固定で調達しているREITは影響が緩やかになるなど、個々の運用状況によって差が出ます。REITの基礎と、ETFを使って毎月の分配金を受け取る組み合わせ方は、J-REITのETF解説記事でまとめています。
不動産株も、借入を活用するビジネスモデルという点でREITと似た構図が語られますが、物件の売買益や開発事業など収益源が多様なぶん、一概には語れない面があります。
高PER成長株:将来の利益の「割引率」の話
配当よりも成長を重視する高PER(株価収益率が高い)銘柄にも、金利は理屈のうえで影響します。
株式の理論価値は「将来の利益を現在の価値に割り引いたもの」と考えられており、その割引に使う金利(割引率)が上がると、遠い将来の利益ほど現在価値が小さく計算される——という一般論があります。利益の多くが遠い将来に期待されている成長株は、この計算上の影響を相対的に受けやすい、と説明されるわけです。
高配当株中心の方には直接の話ではありませんが、「金利上昇局面では市場全体で"今の利益・今の配当"が見直されやすい」という文脈は、ポートフォリオ全体を考えるうえで知っておいて損はありません。
セクター整理のまとめ
| セクター | 一般に語られるメカニズム |
|---|---|
| 銀行 | 貸出金利・運用利回りの改善期待(既存債券の価格下落などの逆風もあり) |
| 保険 | 新規運用の利回り改善期待(同上) |
| REIT・不動産 | 借入コスト増+国債との利回り比較で逆風になりやすい構図(賃料上昇でカバーの余地も) |
| 高PER成長株 | 割引率上昇で理論価値が計算上目減りしやすいという一般論 |
繰り返しますが、これは「株価がこうなる」という予想ではなく、あくまで教科書的なメカニズムの整理です。
投資スタイル別・金利上昇との向き合い方
最後に、「じゃあ自分はどうすればいいの?」に対する考え方を、スタイル別に整理します。どれが正解ということはなく、ご自身の目的とリスク許容度に合うものを選ぶのが大前提です。
① 配当金で生活費を補いたい「インカム重視派」
配当というキャッシュフロー自体が目的なら、金利上昇で慌てて方針を変える必要はない、というのが一般的な考え方です。ただし、国債という比較対象ができた以上、保有銘柄の「増配力」と「減配リスク」の点検はより重要になります。利回りの数字だけで選んだ銘柄が混ざっていないか、配当方針や配当性向を見直すよい機会です。
また、「株式ほどのリスクは取りたくない資金」について、国債や預金金利など安全資産側の選択肢が現実的になってきたことは、資産全体の置き場所を考えるうえでプラスの変化とも言えます。
② 資産を増やしたい「トータルリターン派」
配当+値上がり益の合計で考える方にとっては、金利がポートフォリオ全体に与える影響(セクター配分)を意識する局面です。特定のセクターに偏っていないか、金利上昇の「恩恵側」と「逆風側」のバランスはどうか、を点検してみてください。もっとも、金利だけを理由に大きく売買を動かすのは、金利予想という「誰にも当てられないもの」に賭ける行為になりがちなので、その点は慎重に。
③ 個別株の分析は大変…という「手間をかけたくない派」
個別銘柄の増配力やセクターバランスを一つひとつ点検するのは大変、という方には、高配当株をパッケージで持てる高配当ETFという選択肢もあります。国内外の高配当ETFの比較は高配当ETF比較記事(435Aなど)にまとめているので、参考にしてみてください。
④ これから始める「新規参入派」
「金利が上がっている今、高配当株を始めていいの?」と迷う方もいると思います。この記事で見てきたとおり、国債2.77%時代は高配当株の敵というより、「銘柄を選ぶ基準がはっきりした時代」と捉えることもできます。国債利回りという明確なモノサシがあるからこそ、「その上乗せ分に見合うリスクか」「増配力はあるか」という王道の問いに立ち返りやすい環境です。始めるなら、時間分散(少しずつ買う)で焦らず進めるのが基本とされています。
よくある疑問に答えます
金利上昇のニュースを受けて、読者の方から寄せられそうな疑問を3つ、Q&A形式で整理しておきます。
Q1. いま持っている高配当株は売ったほうがいいですか?
この記事の立場として、売り・買いの推奨はしません。そのうえで考え方を整理すると、「金利が上がったから」という理由だけで売買を判断するのは、あまり筋がよくないとされています。理由は2つです。
1つめは、市場はすでに金利を織り込みながら動いているからです。ニュースを見てから行動する頃には、その情報は株価にある程度反映されていると考えるのが自然です。2つめは、売るかどうかの本質は金利ではなく、「その銘柄を持ち続ける理由が今も有効か」にあるからです。買ったときの理由(増配力、事業の強さ、配当方針など)が崩れていないなら金利だけで慌てる必要は薄く、逆に理由が崩れているなら金利に関係なく見直しの対象になる——という整理が一般的です。
Q2. 金利はこの先も上がりますか?
正直にお答えすると、わかりませんし、この記事では予想しません。金利の先行きは、物価や景気、日銀の判断など多くの要因で決まり、専門家の間でも見方が分かれるものです。確実に言えるのは「2026年7月2日時点で10年国債利回りは2.778%だった」という事実(財務省「国債金利情報」より)だけです。予想に賭けるのではなく、上がっても下がってもダメージが致命傷にならない資産配分にしておくことが、個人投資家にできる現実的な備えだと考えています。
Q3. 高配当株と国債、両方持つのはアリですか?
分散投資の一般論としては、性質の異なる資産を組み合わせること自体は王道の考え方です。この記事で見たとおり、国債は「確実性」、高配当株は「増配という成長性」と、得意分野が違います。生活防衛資金や近い将来使うお金は確実性の高い資産に、長期で育てるお金はリスク資産に——という役割分担は、金利のある世界でこそ組み立てやすくなりました。どういう比率にするかは、ご自身の年齢・収入・リスク許容度次第であり、唯一の正解はありません。
まとめ:金利は「敵」ではなく「モノサシ」
最後に、この記事のポイントを整理します。
- 事実:日銀の2026年6月16日公表文によると、同日の決定会合で政策金利(無担保コールレートの誘導目標)は1.0%程度へ引き上げられた(賛成7・反対1、6月17日適用)。財務省の国債金利情報によると、10年国債利回りは7月2日に2.778%となり、1997年6月以来、約29年ぶりの水準となった
- 考え方:国債で2.7%台が取れる今、高配当株は「国債利回り+どれだけの上乗せがあるか」(イールドスプレッド)で見る発想が役に立つ
- 銘柄選び:固定利回りの国債にできないのは「増配」。今の利回りの高さより、配当を伸ばし続ける力に注目する価値が高まっている
- セクター:銀行・保険は恩恵側、REIT・不動産は逆風側の構図が一般に語られるが、いずれもメカニズムの話であり、株価を保証するものではない
- スタイル別:インカム重視なら保有銘柄の増配力を点検、トータルリターン派はセクターバランスを確認、手間をかけたくないならETFも選択肢
約29年ぶりの金利水準というと身構えてしまいますが、見方を変えれば、「利回りとリスクを冷静に比べる基準」が久しぶりに戻ってきたということでもあります。金利を敵視するのでも無視するのでもなく、自分の投資基準を磨くモノサシとして付き合っていきたいですね。
【免責事項】
本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。記事中の金利データは財務省「国債金利情報」(2026年7月3日分まで、2026年7月6日取得)、金融政策に関する記述は日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2026年6月16日公表)にもとづいています。配当利回りやイールドスプレッドの数値例はすべて説明のための仮の計算であり、特定の銘柄の実際の数値ではありません。金利・株価等は今後変動する可能性があります。投資の最終判断は、ご自身の責任において行ってください。