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スーパー100店閉鎖へ。でも全国のスーパーは増えていた――ドラッグストアの食品拡大で何が起きている?

※2026年10月9日までに確認できた公表資料・報道に基づく記事です。個別銘柄の売買を勧めるものではありません。「100店閉鎖」はUSMHが示した将来の方針であり、閉鎖済み店舗数ではありません。

スーパーの店舗が減り、ドラッグストアが増えている。そんな印象を持つニュースが続いています。10月9日には、マルエツやカスミなどを抱えるユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)が、2030年までに不採算店およそ100店を閉鎖する方針だと報じられました。一方、ツルハホールディングスは、食品を強化したドラッグストアを3年間で400店へ広げる目標を掲げています。

「スーパーがドラッグストアに負けた」と考えたくなる組み合わせです。しかし、全国の統計と決算の中身を重ねると、話はもう少し複雑です。投資家にとって大切なのは店の看板の数よりも、その店がお客を増やし、費用を引いたあとに利益を残せるかです。

先に結論――「スーパー全体が減少」は事実と異なる

全国スーパーマーケット協会の「2026年版スーパーマーケット白書」によると、2025年末の広義のスーパーは23,264店で、前年末より232店増えました。この区分に含まれる「食品スーパーマーケット」も12,596店で64店増です。ただし「小型食品スーパーマーケット」は2,866店で72店減。つまり、スーパー全体は増えていても、店の種類や地域によっては縮小が進んでいます。

一方、経済産業省の調査では、2025年のドラッグストアの食品売上は3兆2,081億円で、前年比9.1%増でした。ドラッグストア全体の売上伸び率5.5%を上回ります。食品の取り扱いが成長の一翼を担っていることは確かです。ただし、これは金額の伸び。値上がり、出店、買い物客の増加を分けた数字ではなく、「スーパーから何人のお客が移ったか」までは示しません。

今回の結論は、スーパー消滅ではなく、食品を買う場所をめぐる競争が細かくなった、です。USMHの閉店方針は個社の店の入れ替え策。ツルハの400店は既存店を食品型へ転換する計画です。両方を「100店減る対400店増える」と引き算するのは正しくありません。

まず数字を同じ箱に入れない

数字 内容 注意点
23,264店 2025年末の広義のスーパー 全国スーパーマーケット協会の区分。前年末比232店増
12,596店 同区分の食品スーパー 前年末比64店増
2,866店 同区分の小型食品スーパー 前年末比72店減
3兆2,081億円 2025年のドラッグストア食品売上 経産省の調査対象。前年比9.1%増。名目金額
約100店 USMHの2030年までの不採算店閉鎖方針 2026年10月9日の会見報道。実績ではない
400店 ツルハの食品強化型店舗の3年間の目標 2026年8月時点の37店とは区別する

全国統計は全国統計、会社の計画は会社の計画です。また、スーパーの店数とドラッグストアの食品売上は、そもそも単位も母集団も違います。図にして並べると勢いの差は見えますが、これだけで業界の勝敗は決まりません。

USMHの「100店閉鎖へ」は何を意味するか

USMHはマルエツ、カスミ、いなげや、イオンフードスタイルを抱えるスーパーグループです。旧マックスバリュ関東は2026年3月に統合され、現在はイオンフードスタイルの一部です。報道によると、社長は10月9日の会見で、2030年までに不採算店およそ100店を閉鎖する方針を説明しました。合わせて新規出店や改装も進める意向です。したがって、「100店がすでに閉まった」「グループの店舗数が必ず100店減る」とは読めません。

なぜ閉める方針なのか。手掛かりは同日に発表した2027年2月期中間決算です。対象は2026年3月から8月。営業収益は5,447億7,900万円と前年同期比14.0%増えた一方、営業損益は32億8,300万円の赤字でした。前年同期は1億6,800万円の黒字です。

ここで「営業収益が14%増えているなら順調」と見るのは早計です。グループの営業収益には連結範囲の変更も影響します。より同じ条件で比べやすい既存店売上高は前年同期比0.1%増にとどまりました。グループの収益が増えたことと、以前からある店が強くなったことは別の話です。

会社は通期の営業利益予想も100億円から10億円へ引き下げました。修正幅は90億円。客数と買い上げ点数が計画を下回り、価格競争や店の運営費増が重荷になっています。商品価格が上がって売上高が増えても、客の数や1人が買う点数が減れば、店の運営費を吸収しにくくなります。さらに、閉店に伴う資産の減損などを特別損失に織り込むため、最終損益の予想は1億5,000万円の黒字から80億円の赤字へ変更されました。営業段階の苦しさと、特別損失による最終損益への影響は分けて確認します。

決算参考資料をもう1行だけ深く読むと、利益の苦しさが見えます。中間期の売上総利益は前年同期比13.6%増でしたが、販売費・一般管理費は16.3%増でした。商品を売って得た利益の伸びより、店を運営する費用の伸びが大きかったのです。USMH自身も、労務費、販促費、改装費用の増加を説明しています。ここで注意したいのは、前年と今年で統合による事業範囲の違いがあること。伸び率だけで「全店の費用が急に膨らんだ」とは言えません。それでも、今のグループ全体で売上増を営業利益に変えられていないことは、決算の数字から確認できます。

さらに、会社資料では不採算店の見直しだけで24億円、物流やほかのコスト改革を合わせて80億円の効果を目指しています。これは2030年度までの施策効果の目標で、すでに80億円の利益が増えたわけではありません。報道された新規出店は今後3年間で50店程度。100店閉鎖の方針と組み合わせれば、単純な店数では50店規模の純減を想定する説明ですが、開閉店の時期や実行数は今後変わり得ます。投資家は閉店数だけでなく、費用削減が実現し、残した店の売上が落ちないかを確認する必要があります。

逆に、将来の改装効果を期待できる材料もあります。会社の説明資料では、対象となった7店について売上高が20%、客数が15%増えた例が示されています。ただしあくまで対象7店の話。760店あるグループ全体で同じ伸びが出たわけではありません。改装投資を増やしたとき、その成果がほかの店にも広がるかが次の焦点です。

ツルハは「新店400店」ではなく、食品型への転換を狙う

対照的に、ツルハHDは「ドラッグ&フード」型を3年間で400店へ広げる目標を立てています。この400店を、何もない場所に400店の新店を建てる計画と読むと間違えます。2026年8月時点で37店となったうち、新店は2店で、中心は既存店の改装・転換でした。

改装した店舗の2026年8月の実績として、物販売上高は前年同月比11.3%増、客数は7.5%増、粗利益額は10.5%増と報じられています。ここで注目したいのは売上だけではなく、客数と粗利益も伸びた点です。商品を値上げして売上金額だけ伸ばすのと、来店が増えるのでは意味が違います。

ただし、これも改装対象店の実績であり、ツルハ全店の数字ではありません。さらに、粗利益額が増えても、冷蔵設備、改装費、人件費、食品ロスなどを差し引いた営業利益が同じように増えるとは限りません。「食品を置けば儲かる」という魔法の棚は、残念ながらまだ売っていないようです。

投資家が見るべき「もう一段深い」ポイント

「スーパー対ドラッグストア」を店数で比べるより、各社が1店の稼ぐ力をどう高めるかを見た方が投資に役立ちます。分けて見る項目は4つです。

第一に客数。値上げで売上だけ増えたのか、店に来る人も増えたのかを区別します。第二に買い上げ点数。食品を追加したことで、薬や日用品と一緒に買う品数が増えたかを見ます。第三に粗利益。安売りの結果だけで売上が伸びていないかを確認します。第四に、人件費・物流費・設備の減価償却費などを引いた営業利益です。ここまで見ると、店の運営費を上回る成果が出ているかが分かります。ただし、設備投資の回収が済んだかは、投じた金額とその後に得たお金も確認する必要があります。

USMHの場合は、閉める店舗数そのものより、閉店・改装を経て既存店の客数と買い上げ点数が改善するかが重要です。ツルハの場合は、食品型への転換を37店から400店へ広げても、改装対象店の成績が再現され、費用を引いた利益が残るかです。どちらにも共通するのは「店を増やした/減らした」の次の問いです。

「値上げして売上増」と「支持されて売上増」は違う

ここは家計の感覚に置き換えると分かりやすくなります。去年100円だったものが今年110円になり、同じ数だけ売れれば、売上金額は10%増えます。しかし買ってくれた人も商品の個数も増えていません。仕入れ価格が同じように上がれば、利益が増えるとも限りません。これが、食品を扱う会社の売上高を見るときの落とし穴です。

反対に、価格がほぼ同じでも来店客が増え、1人が買うものも増えたなら、店が選ばれる理由が強くなった可能性があります。もちろん、その場合でも安売りしすぎれば利益は残りません。そこで先ほどの4段階、客数、点数、粗利益、営業利益を順に見ます。

今回のUSMHでは、既存店売上が0.1%増でも、会社の説明する客数と買い上げ点数は計画に届いていません。金額だけなら前年をわずかに上回っても、会社が想定していた店の成長には足りなかったということです。だから通期営業利益の予想を大幅に下げました。ここで「既存店売上はプラスだから問題ない」と言ってしまうと、予想修正の意味を見落とします。

ツルハの改装対象店は、物販売上だけでなく客数も増えたと報じられています。この点はUSMHとは違った手応えです。ただし、客数が増えた1か月の実績と、3年間400店へ拡大した結果は同じではありません。改装に適した立地から先に着手すれば、初期の対象店の成績が良く出る可能性もあります。これは可能性の指摘であって、今回の対象店がそうだったと断定するものではありません。目標店舗数に近づく途中の成績を、継続して確認する必要があります。

出店と改装は、投資の重さも違う

新しい店舗をゼロから作る場合、場所の確保、建物や設備、開店準備などが必要です。既存店の改装なら、すでにある店舗や顧客基盤を生かせます。しかし改装でも売り場の工事や冷蔵・冷凍設備、スタッフの作業、品ぞろえの入れ替えには費用がかかります。どちらが有利かは一律には決まりません。

USMHの100店閉鎖方針は、利益が出にくい場所に投じ続ける費用を見直し、改装や新しい店舗へ資金を回す選択と捉えられます。ただし閉店した店の売上を、すべて残った店が受け取れるわけではありません。近くの競合店に流れる分もあります。店舗数を減らした後に、グループ全体の利益がどう変わるかは結果で確かめるしかありません。

ツルハの場合は、既存店を食品型に変えて来店頻度を上げる狙いです。薬は必要になったときだけ買う人でも、牛乳やパンなら何度も買いに来ます。もし「ついで買い」が増えれば、同じ店から得られる売上も増えます。しかし食品の粗利益率やロス率、冷蔵設備などの費用によって、利益への変換率は変わります。来店頻度が高まる話と、投資回収が済んだ話を混同しないことが大切です。

店舗数が増えても「近所に選ばれる」とは限らない

全国統計は市場全体の方向を見るのに便利ですが、投資判断には地図をもう少し拡大する必要があります。スーパーは生鮮食品、惣菜、まとめ買い、帰宅途中の立ち寄りなど、店によって強みが違います。ドラッグストアも、医薬品や化粧品が中心の店と、食品を大きく扱う店は別物です。

たとえばドラッグストアの食品売上が全国で伸びても、ある住宅地では近くのスーパーの惣菜が強く、客足が落ちないかもしれません。逆に、スーパーが残っていても駐車場や営業時間の点で近隣の食品型ドラッグストアが便利なら、買い物の一部が移るかもしれません。全国の売上数字だけから、USMHの個々の店舗とツルハの個々の店舗の勝敗は決められません。

今回の資料で明らかなのは、USMHが業績予想を大きく下げ、店の入れ替えを急ぐこと。ツルハが食品型の改装店舗で客数増の例を示し、転換数を増やす計画であること。この先どの地域で何が起こるかについては、まだ確定していません。投資では、確定した事実と将来の仮説を分けるだけでも判断の質が上がります。

事業の変化を確かめてから株価を見る

こうした業界記事では、すぐに「どちらの株が割安か」と比較したくなります。今回まず確かめたいのは、ニュースが各社の利益をどう変えるかです。閉店の方針や食品売場の拡大だけで、株の買い時までは決まりません。

また、USMHとツルハでは事業構成も会計期間も違います。仮に同じ日に株価を並べても、PERだけで「安い方が勝ち」とは言えません。利益が一時的な費用で下がっているのか、既存店の力が変わったのか。改装による客数増が利益にまで届くのか。それぞれの見通しが分かれて初めて、株価指標の比較に意味が出ます。

「ドラッグストアがスーパーの客を奪った」はまだ証明できない

ドラッグストアの食品売上が伸び、USMHの業績予想が下がった。両者を並べると因果関係があるように見えます。しかし、USMHの業績には食品の価格競争だけでなく、連結範囲、費用増、店舗ごとの状況が関わります。また、ドラッグストアの食品売上の増加には値上がりや新規出店も含まれ得ます。

実際、全国の広義のスーパー数は増加しています。減っているのは一部の区分であり、「スーパー全体がドラッグストアに押されて消えている」という構図ではありません。競争が激しくなることと、業態そのものが衰退することは違います。

地域差もあります。同じ住宅地でも、駐車場の有無、惣菜の強さ、生鮮品の品質、通勤帰りに寄りやすい立地で買い物先は変わります。全国の売上高だけでは、目の前の1店の勝敗は判断できません。

次の決算で確認すること

USMHでは、既存店売上の0.1%増が広がるか、客数と買い上げ点数が計画線へ戻るかを見ます。次に、100億円から10億円に引き下げた通期営業利益予想が守られるか。不採算店を閉めるだけでなく、残す店の利益率が上向くことが必要です。

ツルハでは、食品強化型の店舗数が目標に近づくだけでなく、改装店の客数、粗利益、さらに営業利益に相当する費用後の成果を確かめます。対象店の好調が400店規模でも続くのかが鍵です。

そして業界全体では、スーパーとドラッグストアの店舗数を同じ定義の時系列で追い、食品売上の金額と買い上げ数量を分けて見ること。値段が上がった年ほど、この区別は重要になります。

まとめ

USMHの約100店閉鎖方針は見出しとして強いものの、それは全国のスーパーが100店減るという意味ではありません。全国スーパーマーケット協会の統計では、2025年末の広義のスーパーはむしろ増えています。一方で、ドラッグストアの食品売上が伸びていることも事実です。

投資家が追うべき変化は「スーパーからドラッグストアへ」という一行の勝敗表ではありません。どの会社が、既存店の客数と買い上げ点数を伸ばし、費用を引いて利益を残せるか。次の開示では、その順番で確認したいと思います。

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たぐ

コロナショック直前の2020年に投資をスタート。リアルタイムで暴落を経験しながら独学で投資の基礎を習得。 現在の運用総額5,000万円超・年間配当収入120万円超を達成。投資信託・ETF・個別株・米国株など100銘柄超に分散投資し、相場の波に強いポートフォリオを構築中。 高配当株の長期保有と新NISAの積立を組み合わせた"2刀流"スタイルで資産形成を実践。保有銘柄の決算・配当・株価をブログで赤裸々公開しています。YouTubeでも投資情報を発信中!

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