2026年9月18日、日銀が利上げを決めました。政策金利は1.00%程度から1.25%程度へ。賛成7・反対2でした。
その日、日経平均は1.38%上がりました。ところがJリート(ジェイ・リート、不動産投資信託)は23本のうち21本が下げました。平均で1.37%の下落です。
同じ日に、株は上がって、リートだけが下げた。ここから話を始めます。
この記事では、時価総額の大きいJリート12本について、各投資法人が公表している借入のデータを調べました。数字はすべて決算説明資料と決算短信から取り、株価は2026年9月18日の終値です。
結論:1日の値動きは説明できなかった。でも半年で見たら、きれいに揃った
先に4つだけ。
- 利上げが決まった日、日経平均が1.38%上がったのに、リートは23本中21本が下げました。下げ幅は−3.85%から+0.24%まで、4ポイント以上開いています
- その差を「借入の中身」で説明しようとしましたが、できませんでした。いちばん下げた大和ハウスリートは、借金の92.3%を固定金利にしている「守りの堅い」リートです
- ところが半年ぶんで見たら、きれいに揃いました。調達金利の上がり方がいちばん小さかった4本は、いずれも固定金利比率が92%を超えていました。逆に固定比率80%未満の5本は、5本とも上がり方が大きい
- そして、12本のうち10本で、その固定金利比率が前の期より下がっていました。横ばいが1本、上がったのは1本だけです。利上げが来る直前の半年で、守りが薄くなっていたということです
1. 9月18日に日銀が決めたこと
一次資料から、決まったことをそのまま書きます。
「無担保コールレート(オーバーナイト物)を、1.25%程度で推移するよう促す」(日本銀行「金融市場調節方針の変更について」2026年9月18日)
従来は1.0%程度でした。0.25%の引き上げです。賛成7・反対2で決まりました。
あわせて、日本銀行に預けているお金に付く利息(補完当座預金制度の適用利率)が1.25%に、日本銀行から借りるときの金利(基準貸付利率)が1.5%になりました。
そして日程が重要です。
「新たな金融市場調節方針は、翌営業日(9月24 日)から適用する。」(同・脚注)
新しい金利が効き始めるのは9月24日(木)からです。この記事を書いている時点では、まだ来ていません。
もうひとつ、次があることも明記されています。
「経済・物価・金融情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整する」(同・参考資料)
「今回で終わり」とは書いていません。
2. その日、日経平均は上がったのにリートは下げた
利上げが決まった2026年9月18日の値動きです。
| 9月17日 | 9月18日 | 変化率 | |
|---|---|---|---|
| 日経平均株価 | 64,136.25 | 65,018.95 | +1.38% |
| TOPIX(トピックス) | 4,094.19 | 4,091.14 | −0.07% |
| Jリート23本の平均 | −1.37% |
23本のうち21本が下落しました。上がったのは日本プロロジスリート(+0.24%)と星野リゾート・リート(+0.13%)の2本だけです。
日経平均が1.38%上がった日に、リートだけが逆を向きました。
理由ははっきりしています。リートは、借りたお金で建物を買って、その家賃から分配金を出す仕組みだからです。金利が上がると、借入のコストが増えます。増えた分は、そのまま分配金を削ります。
株式会社なら、値上げをしたり新しい商品を出したりして金利上昇を吸収できます。リートにできるのは、家賃を上げるか、借り方を工夫するかのどちらかです。
3. 答え合わせは9月24日まで持ち越しです
ここで、少し変わったことが起きています。
2026年9月19日から23日まで、5連休です。日本取引所グループのカレンダーで確認すると、9月21日(月)が敬老の日、22日(火)が祝日法による休日、23日(水)が秋分の日。土日と合わせて11年ぶりの5連休です。
つまり、こうなります。
| 日付 | |
|---|---|
| 9月18日(金) | 日銀が利上げを決定。リートは21本が下落 |
| 9月19日〜23日 | 東証は休場 |
| 9月24日(木) | 市場再開。同じ日から新しい金利が適用 |
| 9月25日(金) | |
| 9月28日(月) | 9月末が権利確定日の銘柄の、権利付き最終日 |
利上げが決まってから市場が開くまで、5日空いています。そして市場が開く9月24日が、ちょうど新しい金利が適用される日です。リートがどう反応するかは、まだ誰も知りません。
(ついでに書いておくと、9月末の配当や分配金の権利を取りたい場合、売買できる日は9月24日・25日・28日の3日しかありません。「締切まであと1週間」と思っていると、意外と日がありません。)
4. 今回の12本と、選んだ理由
条件は1つだけにしました。時価総額の大きい順に12本です。
選び方に理由を足すと、どうしても恣意が入ります。「借金が多い順」にすれば借金の話に、「利回りが高い順」にすれば利回りの話になってしまう。大きい順なら、そういう偏りが入りません。
| リート | コード | タイプ | 時価総額 | 投資口価格 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 日本ビルファンド投資法人 | 8951 | オフィス | 1兆737億円 | 121,800円 |
| 2 | ジャパンリアルエステイト投資法人 | 8952 | オフィス | 8,267億円 | 113,500円 |
| 3 | 日本都市ファンド投資法人 | 8953 | 総合・商業 | 7,883億円 | 109,600円 |
| 4 | 日本プロロジスリート投資法人 | 3283 | 物流 | 7,114億円 | 84,800円 |
| 5 | 野村不動産マスターファンド投資法人 | 3462 | 総合 | 6,537億円 | 140,700円 |
| 6 | GLP投資法人 | 3281 | 物流 | 6,303億円 | 132,600円 |
| 7 | KDX不動産投資法人 | 8972 | 総合 | 5,780億円 | 143,100円 |
| 8 | 大和ハウスリート投資法人 | 8984 | 総合 | 4,985億円 | 109,800円 |
| 9 | ジャパン・ホテル・リート投資法人 | 8985 | ホテル | 4,924億円 | 83,400円 |
| 10 | ユナイテッド・アーバン投資法人 | 8960 | 総合 | 4,918億円 | 153,700円 |
| 11 | インヴィンシブル投資法人 | 8963 | ホテル | 4,611億円 | 60,300円 |
| 12 | アドバンス・レジデンス投資法人 | 3269 | 住宅 | 3,979億円 | 139,500円 |
結果として、オフィス・物流・住宅・商業・ホテル・総合が全部入りました。12本とも時価総額は1,000億円以上です。
スポンサー(リートに物件を供給する親会社)で言うと、日本ビルファンドは三井不動産、ジャパンリアルエステイトは三菱地所、野村不動産マスターファンドは野村不動産、大和ハウスリートは大和ハウス工業、ユナイテッド・アーバンは丸紅、アドバンス・レジデンスは伊藤忠商事です。名前を知っている会社が、裏側にいます。
投資口価格を見ると、いちばん安いインヴィンシブルが1口60,300円、いちばん高いユナイテッド・アーバンが153,700円。リートは1口から買えるので、6万円から15万円あれば、これらのビルや物流施設のオーナーの一人になれます。ただし、借金つきで。
5. 下げ方は、4ポイント以上ばらけていました
9月18日の下落率を、12本について並べます。
| リート | 9月18日 |
|---|---|
| 日本プロロジスリート | +0.24% |
| 日本ビルファンド | −0.65% |
| ジャパンリアルエステイト | −0.96% |
| GLP投資法人 | −0.97% |
| ユナイテッド・アーバン | −1.03% |
| 野村不動産マスターファンド | −1.47% |
| ジャパン・ホテル・リート | −1.53% |
| 日本都市ファンド | −1.62% |
| アドバンス・レジデンス | −2.04% |
| KDX不動産 | −2.45% |
| インヴィンシブル | −2.58% |
| 大和ハウスリート | −3.85% |
プラス0.24%からマイナス3.85%まで、4.09ポイント開いています。
同じ日に、同じ利上げのニュースを受けて、これだけ差がつきました。この差は何で決まったのか。それを調べるのが、この記事の本題です。
6. 「借入の中身で説明できるはず」と思いました。できませんでした
リートが利上げに強いか弱いかを決めるのは、借金のうちどれだけを固定金利にしてあるかです。
固定金利にしてあれば、市場の金利が上がっても、返済期限が来るまで支払う金利は変わりません。変動金利なら、上がった分がそのまま効きます。
だから「固定金利比率が低いリートほど大きく下げたはずだ」と予想しました。
結果はこうでした。
| リート | 9月18日 | 固定金利比率 |
|---|---|---|
| 大和ハウスリート | −3.85% | 92.3%(高い) |
| インヴィンシブル | −2.58% | 59.8%(低い) |
| KDX不動産 | −2.45% | 85.7% |
| 日本プロロジスリート | +0.24% | 93.2%(高い) |
| 日本ビルファンド | −0.65%(小さい) | 76.9%(低い) |
いちばん下げた大和ハウスリートは、借金の92.3%を固定してある「守りの堅い」リートです。逆に、固定比率が76.9%と低い日本ビルファンドは、ほとんど下げていません。
説明できませんでした。
正直に書きます。1日の値動きは、借入の中身では決まっていません。その日の需給、直前までの値上がり、機関投資家の持ち高、いろいろなものが混ざります。大和ハウスリートについて言えば、8月26日に分配金予想を上方修正していて、それまで買われていたという事情もあります。
株価の1日の動きを、たった1つの数字で説明しようとするのが間違いでした。
7. ところが、半年で見たら、きれいに揃いました
そこで、見る期間を変えました。
1日の値動きではなく、前の決算期から今の決算期にかけて、調達金利が実際にいくら上がったか。リートは半年ごとに決算をするので、これはおよそ半年ぶんの変化です。
| リート | 固定金利比率 | 調達金利の上昇 |
|---|---|---|
| 日本都市ファンド | 93.8% | +0.08pt |
| GLP投資法人 | 94.5% | +0.08pt |
| 日本プロロジスリート | 93.2% | +0.06pt |
| 大和ハウスリート | 92.3% | +0.05pt |
| アドバンス・レジデンス | 91.8% | +0.16pt |
| KDX不動産 | 85.7% | +0.08pt |
| 野村不動産マスターファンド | 81.2% | +0.12pt |
| ジャパン・ホテル・リート | 78.5% | +0.20pt |
| ユナイテッド・アーバン | 77.1% | +0.12pt |
| 日本ビルファンド | 76.9% | +0.15pt |
| ジャパンリアルエステイト | 75.7% | +0.20pt |
| インヴィンシブル | 59.8% | +0.17pt |
上昇幅がいちばん小さかった4本(大和ハウス+0.05、プロロジス+0.06、日本都市ファンド+0.08、GLP+0.08)は、いずれも固定金利比率が92%を超えています。
逆に、固定比率が80%を下回る5本は、5本とも上昇幅が0.12pt以上でした。
ただし、きれいに2つに分かれるわけではありません。KDX不動産は固定比率85.7%なのに上昇幅は0.08ptと小さいほうに入ります。そしてアドバンス・レジデンスは固定比率91.8%と高いのに、上昇幅は0.16pt。この2本は、固定比率だけでは説明できません。
1日では見えなかったものが、半年では見えました。
例外もあります。アドバンス・レジデンスは固定比率91.8%と高いのに、上昇幅が0.16ptと大きい。これには理由があって、後の章で触れます。
8. 固定金利比率とは何か
ここで用語をはっきりさせておきます。
固定金利比率とは、借金全体のうち、金利が固定されている部分の割合です。
たとえば1,000億円を借りていて、固定金利比率が90%なら、900億円は金利が決まっていて動きません。残り100億円が変動金利で、市場の金利が上がればその分の利息が増えます。
日銀が0.25%上げたとき、すぐに影響を受けるのはこの変動金利の部分だけです。固定の900億円は、返済期限が来て借り換えるまで、いまの金利のままです。
だから2つのことが大事になります。
- 固定金利比率(どれだけ固めてあるか)
- 平均残存年数(固めてある分が、あと何年もつか)
平均残存年数が5年なら、5年かけてゆっくり金利が入れ替わります。3年なら、その分早く効いてきます。
12本の平均残存年数は、日本ビルファンドの5.12年からKDX不動産の2.9年までです。
9. 12本のうち10本で、固定金利比率が下がっていました
ここが、今回いちばん驚いたところです。
前の決算期と比べて、固定金利比率がどう変わったかを並べます。
| リート | 前の期 | 今の期 | 変化 |
|---|---|---|---|
| KDX不動産 | 92.9% | 85.7% | −7.2pt |
| 日本ビルファンド | 83.9% | 76.9% | −7.0pt |
| ジャパンリアルエステイト | 82.7% | 75.7% | −7.0pt |
| ユナイテッド・アーバン | 81.4% | 77.1% | −4.3pt |
| 大和ハウスリート | 95.9% | 92.3% | −3.6pt |
| 日本プロロジスリート | 96.5% | 93.2% | −3.3pt |
| 野村不動産マスターファンド | 83.5% | 81.2% | −2.3pt |
| ジャパン・ホテル・リート | 80.1% | 78.5% | −1.6pt |
| GLP投資法人 | 94.8% | 94.5% | −0.3pt |
| アドバンス・レジデンス | 91.9% | 91.8% | −0.1pt |
| インヴィンシブル | 59.8% | 59.8% | ±0 |
| 日本都市ファンド | 93.0% | 93.8% | +0.8pt |
12本のうち10本で、固定金利比率が下がっています。インヴィンシブルは59.8%で横ばい、上がったのは日本都市ファンドの1本だけでした。
とくにKDX不動産が7.2ポイント、日本ビルファンドとジャパンリアルエステイトが揃って7.0ポイント。この3本は大きく落としています。日本ビルファンドと三菱地所系のジャパンリアルエステイトは、今回の12本でいちばん時価総額が大きい2本です。
なぜ下がったのか。各社の資料に理由は書かれていないので、ここは推測しません。固定金利の借入が返済期限を迎えて、借り換えのときに変動を選んだのか、固定の金利が高くなりすぎて変動にしたのか、いくつか考えられますが、書いていないことは書きません。
ただ、事実として言えることが1つあります。利上げが来る直前の半年で、12本中10本の守りが薄くなっていました。
10. 新しく借りるといくらになるか。答えが1本だけ開示されています
ここまでの数字は「いま借りている分の平均」です。では、これから新しく借りるといくらになるのか。
アドバンス・レジデンス投資法人が、それを開示していました。
同社の2026年7月期の決算説明会資料によると、期中に新しく調達した分の金利は2.12%でした。前の期(2026年1月期)は1.47%です。
一方、借入全体の平均支払金利は0.94%。
つまり、いま0.94%で借りている会社が、新しく借りると2.12%かかるという状態です。2倍以上です。
さきほど「アドバンス・レジデンスは固定比率91.8%と高いのに上昇幅が0.16ptと大きい」と書きました。理由はここにあります。この会社の決算期末は2026年7月31日で、12本の中でいちばん新しい。金利が上がっている最中なので、期末が新しいほど高い数字が出ます。
これは裏を返せば、他の11本も、期末が新しくなれば同じことが起きるということです。
11. 4本が「これから上がる」と、自分で予想を出しています
推測ではなく、会社自身が数字を出しているものがあります。
| リート | いまの調達金利 | 会社の予想 |
|---|---|---|
| インヴィンシブル | 1.63% | 1.74% → 1.86%(2027年6月期) |
| 日本プロロジスリート | 0.92% | 1.14%(2027年5月末想定) |
| 野村不動産マスターファンド | 0.93% | 1.01% → 1.10%(2027年2月期) |
| ジャパン・ホテル・リート | 1.9% | 2.0%(2026年12月期末想定) |
プロロジスは0.92%から1.14%へ、0.22ポイント上がると見ています。固定金利比率93.2%の「守りが堅い」リートでも、これだけ上がる見込みです。
インヴィンシブルは1.63%から1.86%へ。0.23ポイントです。
残りの8本については、将来の調達金利の予想値は開示されていません。決算説明資料を全ページ確認しましたが、金利感応度のシミュレーションや「+25bpのバッファを織り込み済み」という前提の記載はあっても、何%になるかという数字は出していません。開示していないものを、こちらで予想して書くことはしません。
12. では、0.25%の利上げは、分配金をどれだけ食うのか
ここからは、開示されていないので自分で計算した部分です。計算のしかたも書きます。
利上げの影響を「◯%上がりました」で終わらせると、自分の財布にどう効くのか分かりません。そこで、分配金の何%が消えるかに直しました。
計算のしかた
- 年間の分配金の総額 = 時価総額 × 分配金利回り
- 利払いの増加(上限) = 有利子負債 × 0.25%
- 利払いの増加(すぐ効く分) = 変動金利の部分 × 0.25%
- 変動金利の部分 = 有利子負債 × (100% − 固定金利比率)
電力10社のときと同じで、上限とすぐ効く分の2段で出します。上限は「借金全部の金利が0.25%上がったら」という、何年もかけて実現する数字。すぐ効く分は「変動金利のところだけが上がったら」という、いま起きる数字です。
| リート | 借金 | 変動部分 | 上限で分配金の | すぐ効く分で |
|---|---|---|---|---|
| インヴィンシブル | 3,487億円 | 1,402億円 | 2.6% | 1.0% |
| 日本ビルファンド | 6,290億円 | 1,453億円 | 3.6% | 0.8% |
| ジャパンリアルエステイト | 5,032億円 | 1,223億円 | 3.4% | 0.8% |
| 野村不動産マスターファンド | 5,222億円 | 982億円 | 3.8% | 0.7% |
| ユナイテッド・アーバン | 3,389億円 | 776億円 | 2.9% | 0.7% |
| KDX不動産 | 5,844億円 | 836億円 | 4.3% | 0.6% |
| ジャパン・ホテル・リート | 3,343億円 | 719億円 | 2.4% | 0.5% |
| 大和ハウスリート | 4,080億円 | 314億円 | 3.7% | 0.3% |
| アドバンス・レジデンス | 2,524億円 | 207億円 | 3.4% | 0.3% |
| 日本都市ファンド | 6,296億円 | 390億円 | 3.7% | 0.2% |
| 日本プロロジスリート | 3,623億円 | 246億円 | 2.7% | 0.2% |
| GLP投資法人 | 3,966億円 | 218億円 | 2.9% | 0.2% |
すぐ効く分で見ると、インヴィンシブルの1.0%に対して、GLP・プロロジス・日本都市ファンドは0.2%。5倍の差があります。
同じ0.25%の利上げが、リートによって5倍違う効き方をする。これが固定金利比率の意味です。
上限で見ると、順番が変わります。いちばん大きいのはKDX不動産の4.3%で、インヴィンシブルは2.6%と小さいほうです。これは借金の大きさと分配金の大きさの比率が効いているためで、時間をかければこちらに近づいていきます。
なお、この計算は「金利が0.25%上がったら」を機械的に当てはめたものです。実際には借り換えのタイミング、金利スワップ、融資手数料などが絡みます。目安として見てください。
13. 12本の借金を全部足すと、5兆3,096億円
規模の感覚をつかむために、合計してみます。
| 12本の有利子負債の合計 | 5兆3,096億円 |
| うち変動金利の部分 | 8,766億円 |
| 12本の年間分配金の総額(概算) | 約4,036億円 |
| 0.25%が全額に効いた場合(上限) | 年132.7億円 |
| 変動金利の部分だけに効いた場合 | 年21.9億円 |
上限の132.7億円は、分配金の総額の3.3%にあたります。すぐ効く分の21.9億円は0.5%です。
つまり、いますぐ0.5%、時間をかけて3.3%。これが今回の0.25%の利上げが、この12本の分配金に対して持つ重さです。
そして日銀は「引き続き政策金利を引き上げる」と書いています。この0.25%は1回目ではなく、6月に続く2回目です。
14. ここで、正直に書いておかないといけないことがあります
この記事を書くうえで、いちばん苦労したところです。
12本は、それぞれ違う言葉で、違う定義の数字を出しています。
| リート | 会社が使っている呼び方 | 手数料込みか |
|---|---|---|
| 日本ビルファンド | 平均調達金利 | 記載なし |
| ジャパンリアルエステイト | 平均利率 | 記載なし |
| 日本都市ファンド | 平均デットコスト | 込み(表面は0.84%) |
| 日本プロロジスリート | 平均負債コスト | 込み |
| 野村不動産マスターファンド | 平均借入金利 | 記載なし |
| GLP投資法人 | All-in Cost | 込み |
| KDX不動産 | 平均負債コスト | 込み |
| 大和ハウスリート | 平均利率 | 記載なし |
| ジャパン・ホテル・リート | 有利子負債コスト | 込み |
| ユナイテッド・アーバン | 平均有利子負債コスト | 込み(表面は0.91%) |
| インヴィンシブル | 平均借入利率 | 記載なし |
| アドバンス・レジデンス | 平均支払金利 | 記載なし |
融資手数料を含んでいるのが6本、含んでいないか記載がないのが6本です。
含んでいるほうが高く出ます。だから「GLPの0.99%はジャパンリアルエステイトの0.82%より高い」とは言えません。GLPは手数料込み、ジャパンリアルエステイトは記載なしだからです。
この記事で絶対値の順位をつけなかったのは、このためです。使ったのは「前の期からいくら上がったか」と「固定金利比率」の2つ。どちらも同じ会社の中での比較なので、定義の違いが打ち消されます。
決算期もバラバラです。日本都市ファンドは2026年2月末、アドバンス・レジデンスは2026年7月末。5か月ずれています。金利は上がり続けているので、期末が新しいほど高く出ます。この記事の表には、すべて期末日を書いておきます。
15. LTVにも2通りあります
もうひとつ、混乱しやすいものがあります。LTV(エルティーブイ)です。
LTVは「資産に対して借金がどれくらいあるか」を表す数字で、リートの安全性を見るときによく使われます。ところが計算のしかたが2通りあります。
- 簿価ベース(総資産LTV):借金 ÷ 総資産(買ったときの値段が基準)
- 鑑定ベース(時価LTV):借金 ÷ 鑑定評価額(いまの値段が基準)
不動産の値段が上がっている局面では、鑑定ベースのほうが低く出ます。
具体例を出します。ジャパンリアルエステイトの2026年3月期末は、簿価ベースで44.8%、鑑定ベースで34.8%。10ポイント違います。
GLP投資法人は簿価45.5%、鑑定34.9%。日本プロロジスリートは簿価40.5%、鑑定28.5%です。
「うちのLTVは30%台です」と言っているリートと「40%台です」と言っているリートが、実は同じくらいということが起こります。どちらの数字か確かめずに比べると、間違えます。
16. 分配金利回りと、1口いくらで買えるか(2026年9月18日終値)
最後に、いちばん見られている数字を出します。
| リート | 投資口価格 | 分配金利回り | 固定金利比率 | すぐ効く分 |
|---|---|---|---|---|
| インヴィンシブル | 60,300円 | 7.25% | 59.8% | 1.0% |
| ジャパン・ホテル・リート | 83,400円 | 6.97% | 78.5% | 0.5% |
| ユナイテッド・アーバン | 153,700円 | 6.04% | 77.1% | 0.7% |
| KDX不動産 | 143,100円 | 5.91% | 85.7% | 0.6% |
| 大和ハウスリート | 109,800円 | 5.59% | 92.3% | 0.3% |
| GLP投資法人 | 132,600円 | 5.48% | 94.5% | 0.2% |
| 日本都市ファンド | 109,600円 | 5.44% | 93.8% | 0.2% |
| 野村不動産マスターファンド | 140,700円 | 5.25% | 81.2% | 0.7% |
| アドバンス・レジデンス | 139,500円 | 4.66% | 91.8% | 0.3% |
| 日本プロロジスリート | 84,800円 | 4.65% | 93.2% | 0.2% |
| ジャパンリアルエステイト | 113,500円 | 4.51% | 75.7% | 0.8% |
| 日本ビルファンド | 121,800円 | 4.05% | 76.9% | 0.8% |
この表の見方を書きます。
利回りがいちばん高いインヴィンシブルは、固定金利比率もいちばん低い。7.25%という数字の裏側に、借金の40%が変動金利という構造があります。
逆に、GLP投資法人は利回り5.48%で12本中6番目ですが、固定金利比率は94.5%で最も高い。利上げの影響がいちばん小さいのはこのリートです。
利回りの高さと、利上げへの強さは、別のものです。そして利回りだけを見ていると、この違いは一生見えません。
17. 9月24日に何を見るか
5連休が明ける9月24日、新しい金利が適用されます。
見ておくと面白いのは、9月18日に下げた順番と、24日以降の動き方が同じかどうかです。
この記事で分かったのは、1日の値動きは借入の中身では説明できないということでした。もし24日以降も説明できないなら、それは「リートの値動きは金利以外の要因でかなり動く」という話になります。逆に、固定金利比率の低いリートから順に戻りが鈍いようなら、市場は借入の中身を見ている、ということになります。
どちらになるかは、いまの時点では分かりません。分からないことは、分からないと書いておきます。
18. まとめ
何が起きたか
- 2026年9月18日、日銀が政策金利を1.00%程度から1.25%程度へ引き上げた(賛成7・反対2)。適用は9月24日から
- 公表文に「引き続き政策金利を引き上げ」と明記。今回で終わりとは書いていない
- その日、日経平均は+1.38%。ところがJリートは23本中21本が下落し、平均−1.37%
調べて分かったこと
- 9月18日の下げ幅は+0.24%から−3.85%まで4ポイント以上ばらけた
- その差を借入の中身で説明することはできなかった。いちばん下げた大和ハウスリートは固定金利比率92.3%の「守りの堅い」リート
- ただし半年ぶんで見ると、きれいに揃った。調達金利の上昇幅がいちばん小さかった4本は、いずれも固定金利比率が92%超。固定比率80%未満の5本は5本とも0.12pt以上
- 12本のうち10本で、固定金利比率が前の期より下がっていた。KDX不動産−7.2pt、日本ビルファンドとジャパンリアルエステイトが揃って−7.0pt(横ばいが1本、上がったのは1本だけ)
これから何が起きるか
- アドバンス・レジデンスは新しく借りた分の金利が2.12%と開示。全体の平均0.94%の2倍以上
- 4本が将来の調達金利の予想を公表(プロロジス0.92→1.14%、インヴィンシブル1.63→1.86%、野村マスター0.93→1.10%、ジャパン・ホテル1.9→2.0%)
- 残る8本は将来の予想を開示していない
金額に直すと
- 12本の借金は合計5兆3,096億円、うち変動金利が8,766億円
- 0.25%が全額に効けば年132.7億円(分配金の3.3%)、変動部分だけなら年21.9億円(同0.5%)
- すぐ効く分はインヴィンシブルの1.0%からGLPの0.2%まで、5倍の差
読むときの注意
- 調達金利の呼び方と定義が12本すべて違う。手数料込みが6本。絶対値で順位をつけてはいけない
- LTVにも簿価ベースと鑑定ベースがあり、10ポイント違うことがある
- 決算期は2026年2月末から7月末までバラバラ。期末が新しいほど金利は高く出る
数字はすべて各投資法人の決算説明資料・決算短信と、日本銀行の公表文、日本取引所グループのカレンダー、2026年9月18日の終値から取りました。
利回りの高さは、利上げへの強さとは別のものです。同じ0.25%が5倍違う効き方をするのは、借入の中身が違うからでした。実際に買うかどうかは、ご自身で判断してください。