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ニデックの配当と上場廃止の可能性|5,646億円の赤字、監査法人は2年連続で意見不表明。4年の利益は発表の27%、配当の元手は約1,755億円のマイナス

2026年9月30日、ニデック(6594)がようやく2026年3月期の決算を発表しました。期末から半年遅れの発表です。

結果は、最終的なもうけが5,646億円の赤字。さらに、決算をチェックする監査法人は、2年続けて「意見を出さない(意見不表明)」としました。

翌日の10月1日、株価は前の日より10.8%安い2,100円で終わりました。日経平均が3.3%上がった日です。

この記事では、9月30日に出た開示10本、有価証券報告書、そして2つの調査報告書(会計の不正を調べた第三者委員会の報告書と、品質の不正を調べた調査委員会の報告書)を読み、高配当株を持つ人がいちばん気になる2つの点を整理しました。

「配当はいつ戻るのか」と「上場は続くのか」です。

先に結論を書きます。

  1. 黒字に戻っても、配当はすぐには戻りにくい。配当は、ニデック本体の決算で「配当に回せる額」の範囲でしか出せません。本体の数字から計算すると、その額は約1,755億円のマイナスです(私の簡易計算)。穴のいちばんの原因は、過去の自社株買いでした。
  2. 4年間の利益は、発表の27%しかなかった。2022〜2025年3月期の4年間、発表していた最終利益は合計4,616億円。直したあとは1,266億円です。その間に、配当と自社株買いで約2,205億円を株主に返していました。
  3. 上場の行方は、10月末から始まる審査しだい。ニデックは2025年10月から「特別注意銘柄」です。会社は10月末に、社内の管理の仕組みについての書類を東京証券取引所に出す予定です。仕組みが整っていないと判断されれば、上場廃止になる決まりです。

9月30日に分かったこと

2026年3月期の決算

項目 2025年3月期(直した後) 2026年3月期
売上高 2兆6,063億円 2兆7,087億円(+3.9%)
営業利益(本業のもうけ) 1,282億円 △5,190億円
最終的なもうけ 847億円 △5,646億円
株主の持ち分 1兆2,398億円 7,942億円
自己資本比率 42.5% 25.6%
1株あたりの配当 40円(株式分割後の基準) 0円

赤字の大きな理由は、資産の価値の引き下げ(減損損失)6,321億円です。部門別では、家電・商業・産業用モーター(ACIM)が2,988億円、グループ会社が1,897億円、モーション&エナジー(MOEN)が1,163億円でした。このほか、将来の赤字の契約への備え225億円、一連の調査の費用305億円も入っています。

一方、事業そのものは止まっていません。売上は3.9%増えています。今期(2027年3月期)の会社の予想は、売上高2兆8,000億円、営業利益2,000億円、最終的なもうけ1,000億円の黒字です。

監査法人は2年続けて「意見を出さない」

監査法人(PwC Japan)は、2026年3月期の決算について「意見を表明しない」とする監査報告書を出しました。2025年3月期に続いて、2年連続です。

意見不表明とは、「この決算が正しいかどうか、判断できる材料がそろわなかった」という意味です。理由として、監査報告書は次のように書いています。

  • 会計の不正に関わった人や、監査法人にうその説明をした人の一部が、今も決算を作る仕事の責任ある立場にいる
  • そのため、まだ見つかっていない間違いが決算全体に大きな影響を与えている可能性を否定できない

会社の不正は、過去の分も含めて決算に反映されています。それでも、「その数字を作る仕組みが信用できない」というのが、監査法人の判断です。

ほかにも分かったこと

  • 品質の不正:複数の工場で、検査記録の偽造や、基準に合わない材料の無断使用が見つかった
  • 関税の過少申告:輸入の関税を約141億6,000万円(9,410万ドル、利息を含む)少なく申告していた
  • 社長の辞任:岸田光哉社長が9月29日に辞任。会社は、財務報告について「必ずしも適切とは言いかねる言動もあった」と説明している
  • 子会社の売却:ニデックコンポーネンツの売却を検討していることは事実だが、まだ決まっていない(9月30日の会社の発表)
  • 課徴金の可能性:有価証券報告書に、金融商品取引法の開示の決まりに違反したとして「当局による調査や課徴金納付命令の対象になる可能性」があると書かれている。金額は見積もれないとして、決算には入っていない
  • 決算のあとの出来事:車載インバーター事業で、2026年9月に顧客と契約の条件を変える覚書を結んだ。赤字の契約への備えは減る見込みの一方、部品の仕入れ先からの請求に備えるお金が必要になる見込みで、影響の大きさは「調査中」(決算短信より)

深掘り1:4年間の利益は、発表の27%だった

過去の決算を直した結果、利益はどれくらい変わったのか。1年前(2025年9月)の有価証券報告書と、今回の有価証券報告書を並べました。

決算期 発表していた最終利益 直した後
2022年3月期 1,358億円 1,074億円
2023年3月期 370億円 △1,638億円
2024年3月期 1,245億円 984億円
2025年3月期 1,644億円 847億円
4年間の合計 4,616億円 1,266億円(27.4%)

※有価証券報告書の「主要な経営指標等の推移」から。直した後の数字には、不正の訂正のほか、それに伴う減損や税金の見直しなども含まれます。

4年間に、ニデックは配当と自社株買いで合計約2,205億円を株主に返していました。直した後の利益1,266億円より多い額です。

有価証券報告書には、株主の成績(株主総利回り:5年前に株を買って配当も受け取った場合の成績)も載っています。2026年3月期の値は、ニデックが31.4%、比べる指標の配当込みTOPIXが202.2%でした。100万円が、ニデックでは31万円、TOPIXなら202万円になった計算です。

深掘り2:不正の正体は「損失の後回し」

第三者委員会の最終報告(2026年4月17日)は、不正の大きさを2つの数字で示しています。

  • 純資産を減らした影響:1,607億円(2025年度第1四半期末まで)
  • 不正そのものの大きさ(参考値):4,498億円

数字が違うのは、不正の多くが「本当は今年出すべき損失を、来年以降に回す」ものだったからです。後の年に回した損失は後の年に出てくるので、年をまたいで足し合わせると一部が打ち消し合います。

不正の中身(参考値)は次のとおりです。

不正の種類 金額
減損(資産の価値の引き下げ)を避けた 1,287億円
将来の支払いへの備え(引当金)を少なく見せた 1,056億円
在庫の価値の引き下げを避けた 491億円
架空の売上・売上の前倒し 424億円
費用を資産に付け替えた 422億円

部門別では、車載事業が2,022億円でいちばん大きく、次がグループ会社事業の1,589億円でした。

なぜ起きたのか

第三者委員会は、原因を「過度な業績プレッシャー」とまとめています。報告書によると、社内では長く「赤字は悪」とされ、営業利益率10%未満は「赤字」とみなされていました。目標は創業者の永守重信氏が上から決め、事業部門の実力を超えるものだったとしています。

価値がなくなった資産は、社内で「負の遺産」と呼ばれていました。2022年度には1,600億円あまりの申告がありましたが、営業利益を1,000億円より下げないことが前提とされ、処理されたのは約566億円だけでした。2024年度には、岸田氏が負の遺産をまとめて処理する案を繰り返し出しましたが、永守氏が退けたと書かれています。

報告書には、ほかにも見過ごせない話が書かれています。

  • 「特命監査」:2011年ごろから2020年6月ごろまで、永守氏の指示で秘密の監査が行われていた。結果は永守氏ら一部の幹部だけに報告され、社内の監査部門や監査法人には共有されていなかった。大きな不正は、すぐ直さずに何年かに分けて処理するよう指導されることもあった
  • 公表されなかった不正:毎年のように不正が見つかっていたが、決算の日程が延びることはなく、どれも公表されていなかった。元役員は「どこよりも早く決算発表をすること」が永守氏の信条だったと話している
  • 監査法人の見られ方:社員が当時の監査法人(PwC京都)を「説得しやすい相手」「与しやすい相手」と見ていたことを示す証拠が多く見つかった

報告書は、永守氏が不正を指示した事実は見つからなかったとしたうえで、直すべき不正を後回しにすることを受け入れていたとして、「最も責めを負うべきなのは、永守氏であると言わざるを得ない」と結論づけています。永守氏は2025年12月に代表取締役を、2026年2月に名誉会長を辞めています。

今回の6,321億円の減損は、会社の説明では「将来の回収可能性を見直した結果」です。全部が不正のせいとは言えません。ただ、長年後回しにしてきた損失の見直しが、その一部になっていると読めます。

品質の不正は844件

品質の調査委員会の報告書(2026年9月2日)では、品質の不正は844件でした。

  • 重要な事案:60件
  • それ以外の事案:784件
  • いちばん多いのは、材料や作り方を顧客に断らずに変えたもの:805件(95.4%)
  • 試験・検査結果の改ざん・ねつ造:22件
  • 製品の産地表示などの不正:6件

調査では、生産・開発拠点で働く9万7,663人にアンケートをとり、92.1%が答えています。会社は5月の時点で、「直ちに製品機能・安全性に影響する事象は確認されていない」としています。

深掘り3:配当はいつ戻るのか

ここが、高配当株を持つ人にとっていちばん大事なところです。

今期の予想は1,000億円の黒字です。でも、黒字に戻れば配当も戻る、とは限りません。

配当は、会社法の決まりで、ニデック本体(親会社)の決算の「配当に回せる額(分配可能額)」の範囲でしか出せないからです。グループ全体の利益ではありません。

本体の決算はほぼ空っぽ

有価証券報告書の本体の貸借対照表を見ると、2026年3月末の本体の純資産は190億円、自己資本比率は1.0%です(1年前は2,030億円)。

本体だけでも、最終的なもうけは1,670億円の赤字でした。いちばん大きいのは、子会社の株の価値の引き下げ(関係会社株式評価損)1,835億円です。子会社の決算を直した結果、子会社の純資産が減り、本体が持っている子会社の株の価値も下がりました。このほか、子会社の借金の保証に備えるお金217億円、子会社の事業の損失に備えるお金284億円、調査の費用305億円などが入っています。

配当に回せる額を、本体の数字から簡単に計算すると、こうなります。

項目 金額
その他資本剰余金 +568億円
別途積立金 +577億円
繰越利益剰余金 △1,126億円
自己株式(買い戻した自社の株) △1,773億円
配当に回せる額(私の簡易計算) 約△1,755億円

※正式な計算には細かい調整があります。あくまで目安です。

穴のいちばん大きな原因は、過去の自社株買いで持っている自己株式1,773億円です。株主に報いるつもりで続けてきた自社株買いが、いまは配当の壁になっています。

配当が戻る道は2つ

  1. 本体がもうけて穴を埋める:子会社から受け取る配当なども含め、本体の利益で約1,755億円の穴を埋める。今期の連結の黒字予想は1,000億円なので、1年では難しそうです。
  2. 株主総会で準備金などを取り崩す:本体には資本準備金920億円、資本金878億円があります。株主総会の決議でこれを「配当に回せる額」に振り替えれば、穴を小さくできます。

会社は今のところ、どちらについても発表していません。配当の予想は、中間・期末とも「未定」です。

最初の手がかりは、9月30日を基準日として3か月以内に開く予定の臨時株主総会です。議案にこうした取り崩しが入るかどうかを見ておきたいところです。

過去の配当は「出してはいけない額」だった

決算を直した結果、2022年3月期から2026年3月期までの配当と自社株買い、合計約2,434億円が、会社法の上限を超えていたことも分かりました。

これについて、個人の株主1人が、永守氏と元会長の小部博志氏に対し、約287億円を会社に払うよう求める株主代表訴訟を起こしています(会社への訴訟告知は2026年9月9日)。会社には、元役員の責任を調べる委員会もあり、その結果を受けて損害賠償を求めるかを決めるとしています。

深掘り4:上場は続くのか

特別注意銘柄の審査の流れ

ニデックは2025年10月28日に、東京証券取引所から特別注意銘柄に指定されました。理由は、監査報告書に意見不表明が書かれ、社内の管理の仕組みを直す必要が高いと判断されたためです。

取引所の決まりでは、指定から1年たつと、会社が「内部管理体制確認書」を出し、取引所が審査します。ニデックは2026年10月末に提出する予定です(決算短信より)。

審査の結果 どうなるか
仕組みが整い、運用もできている 指定が外れる
仕組みは整ったが、運用はまだ(できる見込みはある) 指定が続き、あとで審査し直す
仕組みが整っていない、または運用の見込みがない 上場廃止

※日本取引所グループ「特別注意銘柄への指定」より。

過去に指定された17社のその後

取引所の記録では、2019〜2023年に指定された会社は17社でした。

  • 指定が外れた会社:8社
  • 上場廃止になった会社:9社(廃止の理由は会社ごとに異なる)

ただし、この17社はほとんどが規模の小さい会社です。時価総額2兆5,044億円(10月1日終値)のニデックとは、事情がかなり違います。

審査で問われそうな点

監査法人は9月30日の時点で、「不正に関わった人の一部が、今も決算の責任ある立場にいる」と書きました。会社自身も、人事の是正は「一部は完了しておりません」と認めています。

10月末の書類までに、この点をどこまで直せるか。そこが審査の焦点になりそうです。

株価はどう動いてきたか

日付 出来事 終値 前日比
2025年9月4日 前日に第三者委員会の設置を発表 2,420円 △22.4%
2025年10月28日 特別注意銘柄に指定 2,070円 △19.5%
2026年9月28日 大規模な減損の報道 2,340円 △17.6%
2026年10月1日 決算発表の翌日 2,100円 △10.8%

10月1日は、取引の途中で1,888円(△19.8%)まで下げる場面もありました。売買代金は1,042億円です。

第三者委員会を設置する前の日(2025年9月3日)から10月1日までの動きを、日経平均とTOPIXと比べました。

2025年9月3日 → 2026年10月1日
ニデック △32.7%
日経平均 +64.4%
TOPIX(連動するETF 1306で計算) +37.1%

10月1日の終値で見ると、PBR(株価÷1株あたりの株主の持ち分)は3.03倍、今期の予想利益に対するPER(株価÷1株あたり利益)は24.1倍です。

PBRが3倍ということは、株価が、決算書の上の株主の持ち分(1株692.80円)の3倍で取引されているということです。市場は、事業の力や今後の立て直しにまだ期待している、と読めます。ただ、その持ち分の数字そのものについて、監査法人は「正しいか判断できない」としています。この点は覚えておきたいところです。

投資家が次に確認すること

  1. 10月末の内部管理体制確認書:提出されたか。中身で、不正に関わった人の配置換えが終わったか
  2. 取引所の審査結果:指定が外れるのか、続くのか、それとも上場廃止か
  3. 臨時株主総会の議案:準備金の取り崩しなど、配当に回せる額を増やす議案があるか
  4. 次の決算:2027年3月期の中間決算(4〜9月期)を、遅れずに出せるか。予想の営業利益2,000億円に向けて進んでいるか
  5. お金の出入り:子会社の売却、課徴金、元役員への請求

まとめ

  • 2026年3月期:最終的なもうけは△5,646億円。監査法人は2年続けて意見不表明
  • 過去の決算:4年間の利益は、発表4,616億円に対して直した後1,266億円(27.4%)
  • 不正の正体:損失の後回し。不正の大きさは4,498億円、純資産への影響は1,607億円
  • 配当:今期は黒字予想でも、本体の配当に回せる額は約△1,755億円(私の簡易計算)。中間・期末とも未定
  • 上場:10月末に書類を提出し、取引所が審査。仕組みが整っていなければ上場廃止
  • 株価:10月1日は2,100円(△10.8%)。この1年で△32.7%、同じ期間に日経平均は+64.4%

第三者委員会は報告書の最後で、今回の問題は「モノづくり企業としてのニデックの実力に疑問符を投げかけるものではない」と書いています(2026年2月時点)。ただその後、品質の不正も見つかりました。売上が伸びている事業の力と、決算を信じられる仕組みを取り戻せるか。この2つは別の問題です。高配当株として見るなら、まずは10月末の審査と臨時株主総会の議案を確認してからでも遅くありません。

ニデックについての過去の記事

この記事で見た資料

  • ニデック「2026年3月期決算短信〔IFRS〕(連結)」(2026年9月30日)
  • ニデック「2026年3月期有価証券報告書」(2026年9月30日提出)、「2025年3月期有価証券報告書」(2025年9月26日提出)
  • ニデック 2026年9月30日の適時開示(監査報告書の意見不表明、内部統制、減損、分配可能額超過、決算短信の開示遅延ほか)、9月29日(社長の辞任)、9月30日(一部報道について)、9月10日(株主代表訴訟)、9月15日(臨時株主総会の基準日)
  • 第三者委員会「調査報告書(概要版)」(2026年2月27日)、「調査報告書(追補)」(2026年4月17日)
  • 調査委員会「調査報告書(概要版)」(品質、2026年9月2日)
  • 日本取引所グループ「特別注意銘柄の指定:ニデック(株)」(2025年10月27日)、「特別注意銘柄への指定」、「特別注意銘柄一覧」(指定履歴)

※株価は2026年10月1日終値。配当に回せる額、4年間の合計、株価の変化率は、資料の数字をもとに私が計算したものです。この記事は特定の銘柄の売買をすすめるものではありません。投資の判断はご自身でお願いします。

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たぐ

コロナショック直前の2020年に投資をスタート。リアルタイムで暴落を経験しながら独学で投資の基礎を習得。 現在の運用総額5,000万円超・年間配当収入120万円超を達成。投資信託・ETF・個別株・米国株など100銘柄超に分散投資し、相場の波に強いポートフォリオを構築中。 高配当株の長期保有と新NISAの積立を組み合わせた"2刀流"スタイルで資産形成を実践。保有銘柄の決算・配当・株価をブログで赤裸々公開しています。YouTubeでも投資情報を発信中!

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