日本株 銀行業

メガバンク3社、純利益目標は合計5.8兆円 利上げだけでは説明できないQ1増益の中身

本記事は2026年9月4日終値を基準に、2027年3月期第1四半期の会社開示資料を整理したものです。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。株価や業績予想は変動します。最終的な投資判断はご自身でお願いします。

三菱UFJフィナンシャル・グループ、三井住友フィナンシャルグループ、みずほフィナンシャルグループ。国内を代表するメガバンク3社の2027年3月期第1四半期は、そろって30%を超える最終増益になりました。

3社が掲げる今期の親会社株主純利益の目標・予想を合計すると、5兆8,000億円です。数字だけを見ると「日銀の利上げで銀行が一気にもうかるようになった」と考えたくなります。

しかし、決算資料を一段深く読むと、増益の中身は3社で同じではありません。国内の預貸金収益だけでなく、手数料、市場部門、持分法投資損益、株式関係損益が混ざっています。反対側には、預金金利の上昇、保有債券の評価悪化、与信費用、経費増という負担もあります。

今回は、時価総額1,000億円以上という基準を満たす企業のうち、事業構造が近いメガバンク3社に絞り、利益が増えた場所、再現性を慎重に見る必要がある場所、株主還元、株価の評価を横並びで確認します。

まず結論:全社増益でも、増益エンジンは同じではない

今回の結論は、次の5点です。

  1. 第1四半期の親会社株主純利益は、三菱UFJ8,094億円、三井住友FG5,014億円、みずほFG4,229億円。3社合計は1兆7,337億円で、全社が前年同期比30%超の増益です。
  2. 通期純利益の目標・予想は合計5兆8,000億円。第1四半期の単純進捗率は3社とも約30%ですが、四半期ごとの変動が大きいため、上方修正を保証する数字ではありません。
  3. 国内金利の上昇は確かに追い風です。ただし、三菱UFJの業務純益増加2,660億円に対し、会社が示した円金利上昇効果は約600億円。利上げだけで全増益を説明できません。
  4. 増益率が最も大きかったみずほFGでは、国内法人の非金利収益、セールス&トレーディング、バンキング収益も伸びました。市場部門の利益は追い風である一方、毎四半期同じペースが続くとは限りません。
  5. 9月4日終値の予想配当利回りは三菱UFJと三井住友FGが約2.54%、みずほFGが約1.71%。3社をひとまとめに「高配当株」と呼ぶより、増配と自社株買いを合わせて見る方が実態に近いです。

要するに、今回の見出しは「3社そろって大幅増益」ですが、投資家が見るべき中身は「どの利益が繰り返せそうか」です。銀行決算は、金利という大きな風だけでなく、それぞれの帆の張り方まで見て初めて違いが分かります。

今回の対象と比較の前提

対象は次の3社です。

会社 コード 主な特徴 9月4日時価総額
三菱UFJフィナンシャル・グループ 8306 国内最大手。銀行、信託、証券、カード、海外持分法会社 44兆9,192億円
三井住友フィナンシャルグループ 8316 銀行に加えカード・消費者金融が強い。資本効率を重視 26兆9,233億円
みずほフィナンシャルグループ 8411 銀行・信託・証券の一体運営。法人・市場部門に特徴 21兆4,334億円

3社とも日本基準、連結、対象期間は2026年4月1日から6月30日までです。決算期と期間はそろっています。

ただし、業務純益の定義は完全には同じではありません。みずほFGは「連結業務純益+ETF関係損益等」、三菱UFJと三井住友FGも各社の管理会計上の調整を含みます。業務純益は銀行の本業を見るうえで有用ですが、絶対額だけで単純な順位をつけるのではなく、各社の前年同期比と増減理由を見る必要があります。

また、りそなHD、三井住友トラストグループ、SBI新生銀行、あおぞら銀行なども上場銀行として重要です。ただし、信託銀行中心、ネット金融との連携、再上場直後といった事業構造の違いが大きいため、今回はメガバンク3社の比較に絞っています。

主要決算:純利益は3社合計1兆7,337億円

単位は億円です。

会社 業務粗利益等 前年同期比 業務純益等 前年同期比 親会社株主純利益 前年同期比
三菱UFJ FG 17,360 +27.8% 8,090 +49.0% 8,094 +48.2%
三井住友FG 14,034 +29.0% 7,223 +32.7% 5,014 +33.0%
みずほFG 10,701 +39.1% 5,758 +81.9% 4,229 +45.5%

最終利益の金額では三菱UFJ、三井住友FG、みずほFGの順です。一方、業務純益の伸び率はみずほFGが81.9%増で最も大きく、三菱UFJが49.0%増、三井住友FGが32.7%増でした。

ただし、ここで「みずほFGが最も優れている」と結論づけるのは早計です。前年の利益水準、部門構成、管理会計の調整が違うからです。大切なのは、増えた利益が預貸金から来たのか、手数料から来たのか、市場取引や株式売却から来たのかを分けることです。

なぜ利上げが銀行の追い風になるのか

銀行の基本は、預金などで集めた資金を、企業や個人へ貸し出すことです。貸出金利と預金金利などの差が、資金利益の土台になります。

日本銀行は2026年6月17日以降、政策金利を1.0%としています。金利のある世界が戻ると、変動金利貸出や新規貸出の金利が上がり、資金利益が増えやすくなります。長い間ゼロ近辺だった国内金利が上がること自体は、銀行にとって大きな環境変化です。

一方で、金利上昇には裏面があります。

  • 預金者へ払う金利も上がる
  • 市場から資金を調達するコストも上がる
  • 金利上昇で債券価格が下がり、保有債券の評価損益が悪化することがある
  • 借り手の返済負担が増え、将来の与信費用につながる可能性がある

したがって、「利上げ=銀行利益が機械的に増える」ではありません。貸出金利がどれだけ先に上がり、預金金利がどの速度で追いつくか。債券ポートフォリオをどう管理しているか。貸出先の健全性が保たれるかまで見る必要があります。

三菱UFJ FG:規模に加え、収益源の広さが効いた

三菱UFJ FGの第1四半期純利益は8,094億円で、前年同期比2,633億円、48.2%増えました。3社で最大の利益額です。

業務純益は8,090億円で、前年同期比2,660億円増。会社は円金利上昇の効果を約600億円と説明しています。円金利は明確な追い風ですが、増益額の4分の1弱です。残りは手数料、市場部門、海外や持分法適用会社など、複数の収益源から来ています。

特徴的なのは持分法投資損益です。持分法投資損益は2,615億円で、前年同期比1,036億円増えました。モルガン・スタンレーを含む持分法適用会社の利益が、銀行本体とは別のエンジンとして働きます。国内預貸金だけを見ていると、三菱UFJの決算を半分しか見ていないことになります。

市場部門も増益に寄与しました。相場変動を捉えたトレーディングや顧客取引は強みですが、市場環境によって振れやすい利益でもあります。預貸金収益と同じ再現性を置かない方が安全です。

また、株式等関係損益は989億円で、前年同期比686億円増えました。政策保有株式の売却を含む利益は資本効率改善に結びつく一方、毎年同じ銘柄を同じ額だけ売ることはできません。一時性のある利益として、本業の伸びと分けて見る必要があります。

注意点は与信関係費用です。与信関係費用総額はマイナス720億円で、前年同期のマイナス469億円から251億円悪化しました。利益全体が大きく伸びたため目立ちにくいものの、貸倒関連費用が完全に消えたわけではありません。

三菱UFJを見るポイントは、「国内金利の恩恵を受けながら、海外・市場・持分法会社で利益源を分散できるか」です。規模の大きさだけでなく、利益の入口が多いことが強みです。その反面、海外景気や金融市場の変動も受けやすくなります。

三井住友FG:国内の預貸金利ざや改善が最も見えやすい

三井住友FGの第1四半期純利益は5,014億円で、前年同期比1,245億円、33.0%増えました。検索結果では前年同期の3,769億円が現在の数字のように表示されることがあるため注意が必要ですが、当期実績は5,014億円です。

連結業務純益は7,223億円で、前年同期比1,780億円増。国内預貸金利ざやは1.31%となり、前年同期から0.23ポイント改善しました。預貸金利ざやは、貸出金利と預金などの資金コストの差を示す指標です。三井住友FGでは、金利の追い風が数字として比較的見えやすくなっています。

会社は国内金利上昇の第1四半期の効果を約300億円、6月の追加利上げを含む年間の利益影響を約800億円と説明しています。さらに資金利益の年間増益効果を約1,800億円と見込んでいます。金利の影響はすぐに全部出るわけではなく、貸出金利の改定や預金金利の動きに応じて年度を通じて表れます。

一方、すべての部門が増益だったわけではありません。グローバル事業部門は、低採算資産の削減などで減益でした。これは単純な悪化とは限りません。利益額を一時的に減らしても、少ない資本で高い収益を得る体質へ入れ替えるなら、資本効率の改善につながる可能性があります。

三井住友FGは新しい中期経営計画で、国内を中心とする高採算分野へ資本を振り向ける方針です。カード、決済、消費者金融を持つ点も、金利収益だけに依存しない特徴です。銀行の預貸金が太くなる局面で、非金利収益をどこまで伸ばせるかが次の焦点です。

与信関係費用はマイナス748億円で、前年同期比9億円の費用増にとどまりました。株式等損益は755億円、前年同期比344億円増です。純利益増加のすべてを預貸金利ざやで説明せず、株式関係損益も含めて見る必要があります。

みずほFG:業務純益81.9%増、金利以外の伸びも大きい

みずほFGの第1四半期純利益は4,229億円で、前年同期比1,323億円、45.5%増えました。利益額は3社で最小ですが、業務純益の伸び率は最大です。

連結粗利益+ETF関係損益等は1兆701億円で、前年同期比3,010億円、39.1%増。会社は増益要因として、国内法人を中心とした非金利ビジネス、国内外のセールス&トレーディング、市場環境を捉えたバンキング収益、円金利上昇を挙げています。

連結業務純益+ETF関係損益等は5,758億円で、前年同期比2,593億円、81.9%増でした。経費は507億円増えましたが、粗利益の増加がそれを大きく上回り、経費率は改善しています。

国内法人の非金利ビジネスが伸びたことは重要です。銀行は貸出金利だけでなく、M&A、資金調達、証券、決済、資産運用などの手数料を得ます。金利が上がっても預金コストの上昇で利ざやが圧迫される場面があり得るため、非金利収益は利益の安定性を支える役割を持ちます。

一方、セールス&トレーディングや市場環境を捉えたバンキング収益は、相場環境の影響を受けます。第1四半期の高い伸びを12か月へそのまま延ばすのは危険です。利益の質を見るなら、顧客取引に基づく継続収益と、市場環境による変動収益を分けて追う必要があります。

与信関係費用はマイナス61億円でした。前年同期には戻入益があったため、前年同期比では176億円悪化しています。ただし、年間見通しマイナス1,100億円に対し、第1四半期の費用発生は限定的です。これは良い出だしですが、後半に大口案件が発生する可能性まで消えたわけではありません。

みずほFGは第1四半期に、通期純利益予想を1兆3,000億円から1兆4,000億円へ上方修正しました。3社の中で第1四半期時点に通期予想を引き上げた点は目立ちます。しかし、上方修正後でも第1四半期の単純進捗率は30.2%です。市場利益の変動や与信費用を考えると、今後も利益構成の確認が必要です。

通期は3社合計5.8兆円、でも進捗率だけで決めない

会社 通期純利益目標・予想 Q1純利益 単純進捗率
三菱UFJ FG 2兆7,000億円 8,094億円 30.0%
三井住友FG 1兆7,000億円 5,014億円 29.5%
みずほFG 1兆4,000億円 4,229億円 30.2%
3社合計 5兆8,000億円 1兆7,337億円 29.9%

3社とも約30%です。1年を4分割した25%を上回るため、順調な出だしに見えます。

ただし、銀行の利益は四半期ごとに均等ではありません。政策保有株式の売却、債券の入れ替え、税金、持分法会社の決算、市場部門、与信費用の発生時期で振れます。第1四半期の進捗率が高いことはプラス材料ですが、上方修正を断定する材料ではありません。

また、三菱UFJは通期の「予想」ではなく純利益の「目標」と表現しています。金融サービスには市場や経済情勢による不確実性が大きいためです。表では横並びにしていますが、会社の表現は残しておく必要があります。

株主還元:配当だけでなく、自社株買いも見る

会社 今期年間配当予想 前期実績 増配額 自己株式取得
三菱UFJ FG 96円 86円 +10円 上期上限1,000億円、取得済み
三井住友FG 180円 157円 +23円 上限1,800億円、追加も検討
みずほFG 150円 145円 +5円 5月・7月合計上限2,000億円

3社とも増配予想です。

三菱UFJは配当性向40%程度を基本とし、年間96円を予想しています。上期の自己株式取得は上限1,000億円で、5月18日から6月25日に約1,000億円を取得済みです。「上限枠」と「取得実績」を別々に足して2,000億円としない点に注意が必要です。

三井住友FGは累進的配当方針と配当性向40%を掲げ、年間180円を予想しています。5月に上限1,800億円の自己株式取得を公表し、業績進捗や資本活用を踏まえて追加も検討するとしています。

みずほFGは毎期5円を目安に増配する方針で、年間150円を予想します。自己株式取得は5月の上限1,000億円に、7月の上限1,000億円を加え、合計上限2,000億円。取得株式は全株消却予定です。

自社株買いは1株当たり利益の押し上げや資本効率の改善に役立ちますが、発表枠がすべて将来の恒常配当になるわけではありません。配当は継続性、自社株買いは機動性という違いがあります。

9月4日終値のPER・PBR・配当利回り

会社 終値 予想PER PBR 予想配当利回り
三菱UFJ FG 3,785円 15.7倍 1.88倍 2.54%
三井住友FG 7,083円 15.7倍 1.67倍 2.54%
みずほFG 8,774円 15.1倍 1.85倍 1.71%

予想配当利回りは、会社予想配当を9月4日終値で割って再計算しました。三菱UFJは96円÷3,785円で2.54%、三井住友FGは180円÷7,083円で2.54%、みずほFGは150円÷8,774円で1.71%です。

3社ともPBRは1倍を上回っています。銀行株が長くPBR1倍割れで評価されていた時代と比べると、市場は金利正常化、利益成長、資本効率改善、株主還元をある程度織り込んでいると考えられます。

ここで「PBRが低い会社が必ず割安」とは言えません。PBRは純資産に対する株価の倍率ですが、同じ純資産からどれだけ利益を生むかを示すROE、規制資本、保有有価証券の評価差額、将来の信用コストでも評価は変わります。

PERも同様です。現在の3社は15倍前後で近いものの、分母となる純利益には市場部門や株式関係損益が含まれます。一時的な利益が大きい年は、見かけのPERが低くなる場合があります。

株価はみずほFGが両指数を上回った

3社で最初の決算発表は、みずほFGの7月30日でした。そこで、全社発表前日の7月29日終値から9月4日終値までを共通期間として比較します。

対象 7月29日 9月4日 騰落率
三菱UFJ FG 3,647円 3,785円 +3.78%
三井住友FG 6,876円 7,083円 +3.01%
みずほFG 8,112円 8,774円 +8.16%
日経平均 61,434.19円 65,020.94円 +5.84%
TOPIX 3,974.03 4,103.23 +3.25%

みずほFGは8.16%上昇し、日経平均とTOPIXの両方を上回りました。三菱UFJはTOPIXを小幅に上回りましたが、日経平均には届きませんでした。三井住友FGは両指数をわずかに下回っています。

ただし、この期間には決算以外に、日本銀行の金融政策、長期金利、米国市場、為替、需給など多くの材料が含まれます。「みずほの決算が最も良かったから株価が上がった」と因果を断定することはできません。市場が上方修正や利益の伸びを意識した可能性はありますが、株価は複数要因の結果です。

投資家が次に見るべき5項目

1. 国内預貸金利ざや

貸出金利の上昇が、預金金利と調達コストの上昇をどれだけ上回るか。金利1.0%の効果が第2四半期以降にどの速度で表れるかを確認します。

2. 非金利収益の持続性

法人手数料、決済、カード、資産運用、証券などが伸びれば、金利だけに依存しない利益になります。顧客基盤に基づく収益か、市場環境による一時的な収益かも分けます。

3. 市場部門と債券損益

トレーディング収益の好調が続くか。反対に、金利上昇による債券価格下落が評価差額や売却損益にどう出るかを見ます。会社ごとに開示範囲が違うため、金額の単純順位は避けます。

4. 与信関係費用

第1四半期は大きな利益に対して与信費用が抑えられました。しかし、国内外の景気や金利上昇による返済負担、大口先の悪化は後から表れることがあります。通期計画に対する費用進捗も確認します。

5. 追加還元と資本の使い道

自社株買いの追加、政策保有株式の削減、成長投資の配分を見ます。還元が大きいことだけでなく、規制上必要な資本を保ちながら、将来利益を増やせる投資ができるかが重要です。

まとめ

メガバンク3社の2027年3月期第1四半期は、全社が大幅増益でした。親会社株主純利益は三菱UFJ8,094億円、三井住友FG5,014億円、みずほFG4,229億円。合計は1兆7,337億円です。

通期純利益の目標・予想は合計5兆8,000億円で、単純進捗率は3社とも約30%。数字は順調ですが、上方修正が確実という意味ではありません。

三菱UFJは国内金利に加え、市場部門と持分法会社を含む収益源の広さが強み。三井住友FGは国内預貸金利ざやの改善が見えやすく、低採算資産から高採算分野への入れ替えが焦点。みずほFGは非金利収益と市場部門も伸び、通期予想を上方修正しました。

そして、金利上昇は一方向の追い風ではありません。預金コスト、債券評価、与信費用という反対側があります。銀行株を見るときは「利上げだから」という一言で終わらせず、国内金利、非金利収益、市場利益、信用コスト、株主還元の5つへ分解することが大切です。

主な参照資料

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たぐ

コロナショック直前の2020年に投資をスタート。リアルタイムで暴落を経験しながら独学で投資の基礎を習得。 現在の運用総額5,000万円超・年間配当収入120万円超を達成。投資信託・ETF・個別株・米国株など100銘柄超に分散投資し、相場の波に強いポートフォリオを構築中。 高配当株の長期保有と新NISAの積立を組み合わせた"2刀流"スタイルで資産形成を実践。保有銘柄の決算・配当・株価をブログで赤裸々公開しています。YouTubeでも投資情報を発信中!

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