日本株 繊維業

繊維7社、全社が増益。でも東レの中で繊維は1位から落ちていた|最新決算で確認

『会社四季報 業界地図 2027年版』の繊維のページを開くと、こんな見出しが並んでいます。

「海外勢と競争厳しく業界再編続く」

たしかに国内の化学繊維の生産量は61.1万トンで、前の年より減っています。グラフを見ると2012年からずっと右肩下がりです。

ところが、各社の最新の決算を開いてみたら、7社すべてが増益でした。

「厳しい」と書かれている業界で、全社がもうけを増やしている。どういうことなのか。決算を1社ずつ開いて確かめてみました。

そうしたら、もっと意外なことが分かりました。

1. なぜこの7社なのか

先に、どうやって7社を選んだかを書いておきます。「なぜあの会社がないのか」と思われそうなので。

基準は2つです。上場していること。時価総額が1,000億円以上あること。

業界地図に載っている会社を全部調べた結果がこちらです。

会社 コード 時価総額 判定
東レ 3402 1兆8,723億円 ○
クラレ 3405 5,703億円 除外(下記)
日東紡 3110 5,772億円 ○
帝人 3401 3,438億円 ○
ダイワボウHD 3107 3,335億円 除外(下記)
セーレン 3569 2,201億円 ○
クラボウ 3106 1,860億円 ○
東洋紡 3101 1,457億円 ○
グンゼ 3002 1,293億円 ○
GSIクレオス 8101 338億円 基準未満
SUMINOE 3501 181億円 基準未満

時価総額が足りなかったのはGSIクレオスとSUMINOEの2社です。

基準を満たしたのに外した会社が4社あります。理由を書きます。

ダイワボウホールディングス(3107)は、もう繊維会社ではありません。

業界地図は「大和紡績【3107】」として載せていますが、上場している3107の会社概要にはこう書かれています。「ダイワボウ情報システムが主力。祖業の紡績事業は譲渡」。業種の分類も「卸売業」です。

業界地図の本文にも「24年3月に投資会社・アスパラントグループ傘下入り」とあります。繊維事業のほうは譲渡されていて、上場していません。だから比較の対象になりません。

クラレ(3405)は決算期が違います。

クラレは12月決算なので、第1四半期は1月から3月です。他の6社は4月から6月。3か月ずれた数字を同じ表に並べても比べられないので、今回は外しました。

旭化成(3407)と三菱ケミカルグループ(4188)は、繊維では脇役です。

どちらも業界地図には載っていますが、繊維は事業のごく一部で、本体は化学会社です。しかもこの2社は9月1日に公開した「化学6社」の記事で主役として取り上げたばかりなので、今回は外しました。

残った7社は全社が3月決算で、第1四半期はいずれも2026年4月1日から6月30日まで。期間がぴったりそろっています。

2. 決算を開いたら、7社とも増益でした

会社 売上(収益) 前年比 利益 前年比
東レ 3402 6,790億円 +14.0% 事業利益484億円 +66.6%
帝人 3401 2,219億円 △8.7% 事業利益123億円 +56.8%
東洋紡 3101 1,104億円 +7.3% 営業利益71億円 +28.1%
セーレン 3569 491億円 +21.0% 営業利益67億円 +23.5%
クラボウ 3106 376億円 +5.2% 営業利益29億円 +32.1%
日東紡 3110 340億円 +20.6% 営業利益79億円 +84.8%
グンゼ 3002 314億円 △2.7% 営業利益34億円 +87.6%

7社すべてプラスです。しかも帝人とグンゼは売上が減っているのに利益が増えています。

ひとつ断っておきます。東レと帝人はIFRS(アイエフアールエス)という国際的な会計ルールを使っていて、「事業利益」という数字を出しています。これは営業利益から一時的な損益を除いたものです。他の5社は日本のルールで「営業利益」。厳密には同じものではないので、この記事では必ずどちらか書くようにします。

3. 利益率で並べ替えると、順番が変わります

売上に対してどれだけ利益が残ったかを計算しました。

会社 利益率 売上
日東紡 3110 23.34% 340億円
セーレン 3569 13.57% 491億円
グンゼ 3002 10.80% 314億円
クラボウ 3106 7.58% 376億円
東レ 3402 7.13% 6,790億円
東洋紡 3101 6.46% 1,104億円
帝人 3401 5.55% 2,219億円

いちばん利益率が高いのは、いちばん売上が小さい日東紡でした。

売上は東レが日東紡の20倍あります。それでも利益率は日東紡が3倍以上高い。

この日東紡が何で稼いでいるのかは、あとで出てきます。

4. ここからが本題です

7社の決算を、事業の部門ごとに開いてみました。

そうしたら、7社とも、いちばん儲かっている部門が「衣料の繊維」ではありませんでした。

1社ずつ見ていきます。

5. 東レの中で、繊維が1位から落ちていました

まず業界最大手の東レです。

セグメント 前年同期 今期 増減
機能化成品事業 136億円 231億円 +69.4%
繊維事業 152億円 180億円 +18.3%
炭素繊維複合材料事業 46億円 79億円 +71.3%
水処理・ヘルスケア事業 14億円 31億円 +126.6%
合計(事業利益) 291億円 484億円 +66.6%

前の年は繊維事業が152億円で1位でした。今期は機能化成品事業が231億円で逆転しています。

ここが大事なのですが、繊維事業も+18.3%で増えているんです。減ったから抜かれたのではなく、他がもっと伸びたから抜かれた。

さらに面白いのが売上です。売上は繊維事業が2,599億円、機能化成品事業が2,511億円で、繊維のほうが多い。それなのに利益は逆になっています。

機能化成品事業は、樹脂やフィルム、電子情報材料などをつくる部門です。

6. 帝人は、繊維の部門が3位でした

セグメント 前年同期 今期 増減
エレクトロニクス&エナジー 51億円 85億円 +67.7%
アパレル&インダストリーズ 41億円 48億円 +16.7%
ヘルスケア&ライフソリューションズ 40億円 46億円 +14.5%
スペシャリティマテリアルズ △18億円 △10億円 2期連続の赤字
合計(事業利益) 78億円 123億円 +56.8%

繊維製品をつくる「アパレル&インダストリーズ」は48億円で3位。1位は樹脂や電池部材の「エレクトロニクス&エナジー」85億円でした。

そしてスペシャリティマテリアルズが2期連続の赤字です。ここはアラミド繊維や炭素繊維をつくる部門で、売上は479億円もあるのに利益が出ていません。業界地図では「テイジンアラミドはアラミド生産の世界最大手級」と紹介されている、いわば看板の分野です。

この赤字には裏付けがあります。帝人は2026年5月11日の開示で、Teijin Aramid B.V.の固定資産について減損損失を認識したと明かしています。その影響で同社の株式を持つ子会社の財政状態が悪化し、個別決算で関係会社株式評価損289億円を計上しました(連結損益への影響はなし)。

同じ開示で、医薬品でも減損損失254億円を計上しています。2型糖尿病治療剤の販売権と設備で、希少疾患・難病領域へ絞り込む構造改革の一環だそうです。

7. 東洋紡とクラボウは、繊維が赤字でした

東洋紡

セグメント 前年同期 今期 増減
フィルム 40億円 51億円 +29.1%
環境・機能材 14億円 27億円 +90.2%
不動産 4億円 5億円 +7.6%
ライフサイエンス 1億円 △4億円 赤字に転落
繊維 △0.8億円 △3.6億円 赤字が拡大
合計(営業利益) 55億円 71億円 +28.1%

繊維の赤字が4.6倍に広がっています。

決算短信にはこう書かれていました。

衣料繊維事業では、中東向け特化生地は、中東情勢悪化に伴う販売の減少とコストアップにより、収益性が大きく低下しました。

一方でフィルムが51億円と全体を支えています。

クラボウ

セグメント 前年同期 今期 増減
化成品事業 8億円 18億円 2.3倍
環境メカトロニクス事業 11億円 7億円 △37.9%
不動産事業 6億円 6億円 +1.1%
食品・サービス事業 1億円 1億円 +21.5%
繊維事業 △2.5億円 △2.1億円 2期連続の赤字
合計(営業利益) 21億円 28億円 +32.1%

クラボウはジーンズ地に強い会社として知られていますが、繊維事業は2期連続の赤字です。稼いでいるのは化成品でした。

8. 日東紡は、利益の88.6%が半導体向けでした

利益率23.34%でトップだった日東紡です。

セグメント 前年同期 今期 今期の売上
電子材料事業 41億円 70億円(+70.0%) 145億円(+29.5%)
メディカル事業 4億円 7億円(+66.8%) 38億円
断熱材事業 △0.5億円 2.5億円(黒字転換) 43億円
資材・ケミカル事業 1億円 2億円(+103.3%) 26億円
その他事業 1億円 2億円(+90.8%) 47億円
複合材事業 △0.15億円 0億円(黒字転換) 38億円

営業利益79億43百万円のうち、電子材料事業だけで70億36百万円。88.6%です。

電子材料は半導体の基板に使う特殊なガラス繊維です。業界地図によれば世界シェアは9割とされています(これは二次資料の数字です)。

繊維であることは間違いないのですが、着るものではありません。

9. セーレンはAIと宇宙で伸びていました

セグメント 前年同期 今期 増減
車輌資材 41億円 45億円 +8.2%
エレクトロニクス 6億円 10億円 +60.1%
環境・生活資材 2億円 5億円 +131.7%
ハイファッション 4億円 4億円 +7.3%
メディカル 2億円 2億円 +24.7%
合計(営業利益) 53億円 66億円 +23.5%

1位は自動車のシート素材などをつくる車輌資材です。衣料にあたる「ハイファッション」は4億69百万円で4位でした。

伸び率がいちばん大きかったエレクトロニクスの中身が面白いです。決算短信にはこう書かれていました。

モバイル機器関連向け商材やAI関連向けサーバー用途の資材が好調に推移したほか、宇宙システム事業の売上が寄与したこと等により(中略)データセンター向けHDDワイピングクロス「ザヴィーナ」の需要が回復するとともに、海外半導体メーカー向け防塵衣用導電糸「ベルトロン」が順調に推移しました。

AI、宇宙、データセンター、半導体。繊維会社の決算とは思えない単語が並んでいます。

10. ただし、グンゼは違いました

ここまで「繊維は苦しい」という話が続きましたが、1社だけ例外があります。

セグメント 前年同期 今期 増減
機能ソリューション事業 16億円 25億円 +59.7%
アパレル事業 3.6億円 11.9億円 3.3倍
ライフクリエイト事業 2億円 3億円 +30.5%
メディカル事業 5億円 3億円 △41.7%
合計(営業利益) 18億円 34億円 +87.6%

グンゼのアパレル事業は3億63百万円から11億85百万円へ、3.3倍に伸びています。

肌着でおなじみの会社です。売上は減っているのに利益が3倍を超えました。決算短信によれば「アパレルの事業構造改革」が進んだ結果だそうです。

とはいえ1位はやはり機能ソリューション事業(プラスチックフィルムなど)でした。

11. まとめると、こうなります

7社の「いちばん儲かっている部門」を並べます。

会社 1位の部門 今期の利益
東レ 3402 機能化成品事業 231億円
帝人 3401 エレクトロニクス&エナジー 85億円
日東紡 3110 電子材料事業(半導体向け) 70億円
東洋紡 3101 フィルム 51億円
セーレン 3569 車輌資材 45億円
グンゼ 3002 機能ソリューション事業 25億円
クラボウ 3106 化成品事業 18億円
衣料の繊維が1位の会社 — 0社

7社とも、いちばん儲かっているのは着るものの繊維ではありませんでした。

業界地図の見出しにあった「産業用に活路」というのは、決算の数字でもそのとおりでした。

12. 帝人の営業利益26倍には、からくりがあります

ここで数字の読み方をひとつ。

帝人の営業利益は、前の年の22億95百万円から599億59百万円へ。26倍です。最終利益も451億円で、売上が3倍ある東レの312億円を上回りました。

でも中身を見ると、こうなっています。

項目 金額
事業利益 123億円
固定資産売却益 +50億円
関係会社株式売却損益 +455億円
特別退職金 △21億円
その他 △5億円
営業利益 599億円

599億円のうち455億円、75.8%が関係会社の株式を売った利益でした。

では、何を売ったのか。開示に書いてありました。

デュポン帝人アドバンスドペーパー株式会社(DTPJ)およびDuPont Teijin Advanced Papers (Asia) Limited(DTPA)の株式を共同出資者であるDuPont de Nemours, Inc.へ譲渡する契約を締結しておりました。2026年4月1日付で(中略)関係会社株式売却益約455億円をその他収益に(計上)

デュポンとの合弁を解消し、アラミド紙の会社をデュポンに売ったお金でした。しかもこの開示は2026年5月11日に出ていて、「第1四半期に計上する予定」と3か月前に予告されていました。

会社を売って得たお金なので、来年も同じように出るものではありません。本業の実力を示す事業利益は123億円で+56.8%です。

同じことを東レで見ると、事業利益484億円に対して営業利益473億円。差がほとんどありません。この違いは覚えておく価値があると思います。

13. 通期の予想はどうか

会社 売上 前期比 利益 前期比 最終利益 前期比
東レ 3402 2兆8,300億円 +9.5% 事業利益1,600億円 +12.7% 900億円 +13.2%
帝人 3401 9,000億円 +3.1% 事業利益300億円 +16.4% 450億円 —
セーレン 3569 1,953億円 +13.7% 営業利益226億円 +8.5% 157億円 +0.6%
日東紡 3110 1,410億円 +19.3% 営業利益300億円 +44.1% 200億円 △52.1%
クラボウ 3106 1,600億円 +11.3% 営業利益120億円 +30.7% 148億円 +14.9%
グンゼ 3002 1,320億円 +0.8% 営業利益88億円 +80.3% 52億円 +921.6%
東洋紡 3101 4,350億円 +3.2% 営業利益230億円 △17.6% 70億円 △37.4%

日東紡の「最終利益△52.1%」を、減益と読んではいけません。

営業利益は+44.1%、経常利益は+39.2%の増益予想です。なぜ最終利益だけマイナスなのか。前の期の決算短信を確かめたら、答えがありました。

2026年3月期(前期)の実績 金額
経常利益 215億44百万円
固定資産売却益 341億65百万円
投資有価証券売却益 38億32百万円
特別利益 合計 381億49百万円
最終利益 417億70百万円

前期の最終利益417億円は、経常利益215億円の1.94倍でした。土地や建物を売った利益が341億円入っていたからです。

今期の予想200億円は、その反動にすぎません。本業は増益予想です。

14. 予想を据え置いたのは1社だけでした

決算短信には「業績予想の修正の有無」という欄があります。

会社 業績予想の修正
東レ・帝人・東洋紡・日東紡・セーレン・クラボウ 有(6社)
グンゼ 3002 無

6社が予想を修正し、据え置いたのはグンゼだけでした。

そして修正の中身を調べたら、記事の軸そのものが出てきました。

クラボウは8月7日に通期を上方修正しています。

項目 前回(5月14日) 今回(8月7日) 増減
売上高 1,540億円 1,600億円 +3.9%
営業利益 112億円 120億円 +7.1%
最終利益 130億円 148億円 +13.8%

中間期はもっと大きく、営業利益32億円→46億円で+43.8%でした。

理由として会社が挙げたのがこれです。

化成品事業で半導体製造装置向け高機能樹脂製品の受注が好調に推移していることなどから、また、環境メカトロニクス事業では工事物件の進捗が計画より早期に推移していることなどから

ジーンズ地の会社が上方修正した理由が、半導体製造装置向けの樹脂でした。

セーレンは、減益予想から増益予想に変わっていました。

項目 前回(5月13日) 今回(8月3日) 前期比の変化
売上高 1,903億円 1,953億円 +10.8% → +13.7%
営業利益 209億円 226億円 +0.3% → +8.5%
経常利益 211億円 230億円 △4.1% → +4.5%
最終利益 150億円 157億円 △3.8% → +0.6%

セーレンは修正のお知らせを出しておらず、決算短信の中で静かに直しています。前の期の短信と突き合わせないと気づけません。

ここで2社について補足します。

東レの「有」は、上期だけ上げて通期は据え置いたというものでした。5月に出した予想と突き合わせると、通期の売上2兆8,300億円、事業利益1,600億円、最終利益900億円はすべて同額です。変わったのは第2四半期までの予想で、事業利益730億円→870億円、最終利益400億円→450億円に引き上げられていました。

東洋紡の「有」は、そもそも予想を出していなかったからです。2026年8月6日の開示にこう書かれています。

2027年3月期の連結業績予想については、中東情勢緊迫化に伴い、事業への影響を適正かつ合理的に算定することが困難であることから未定としていましたが、現時点で入手可能な情報や予測等に基づき連結業績予想を算定しましたので、公表いたします。

7社のうち、5月の時点で1年間の予想を出せなかったのは東洋紡だけでした。

15. 配当は東レが+30%の増配です

会社 前期の年間配当 今期の予想 増減 配当利回り
グンゼ 3002 216.00円 216.00円 据え置き 5.27%
クラボウ 3106 307.00円 331.00円相当 +7.8% 3.03%
帝人 3401 50.00円 50.00円 据え置き 2.88%
東洋紡 3101 40.00円 40.00円 据え置き 2.44%
セーレン 3569 76.00円 76.00円 据え置き 2.23%
東レ 3402 20.00円 26.00円 +30.0% 2.09%
日東紡 3110 127.00円 140.00円相当 +10.2% 0.92%

東レの+30%増配には理由がありました。

2026年5月13日の開示に、こう書かれています。

当社は、2026年4月16日に創立100周年を迎えました。(中略)株主の皆様への感謝の意を表すため、2027年3月期の中間配当において1株当たり3円の記念配当の実施を予定いたします。

年間26円のうち3円が100周年の記念配当です。ただし記念配当を除いた普通配当だけでも、20円から23円へ+15.0%の増配になっています。

そしてこの開示には、もうひとつ大事なことが書かれていました。

今年度より開始した新中期経営課題"IGNITION 2028"における株主還元の考え方として、安定的かつ継続的な配当の維持を基本に、利益成長による累進配当に取り組む

累進配当というのは、減配せずに配当を維持または増やしていく方針のことです。記念配当そのものより、こちらのほうが長く効いてくる話だと思います。

グンゼの5.27%には注意が必要です。

期末216円の内訳は、普通配当147円+特別配当69円です。特別配当は毎年出るとは限らないので、普通配当だけで計算すると利回りは3.59%になります。それでも7社で最も高い水準ではあります。

日東紡とクラボウの配当は、株式分割で見かけが変わっています。

日東紡は2026年7月1日に1株を5株にする分割を実施しました。短信の28円は分割後の金額で、分割前に直すと140円です。前期127円からの増配になります。

クラボウは2026年10月1日に同じく1株を5株にする分割を予定しています。短信の配当欄は第2四半期末が166円(分割前)、期末が33円(分割後)で、合計欄は会社自身が「-」としています。混ざっているためです。分割前にそろえると331円で、前期307円からの増配です。

16. 株価は7社とも日経平均を上回りました

決算発表前の7月31日から、9月4日までを比べます。

対象 7月31日 9月4日 騰落率
クラボウ 3106 9,900円 10,940円 +10.51%
日東紡 3110 2,800円 3,060円 +9.29%
東洋紡 3101 1,520円 1,636円 +7.63%
東レ 3402 1,158円 1,244.5円 +7.47%
セーレン 3569 3,180円 3,405円 +7.08%
帝人 3401 1,637円 1,737円 +6.11%
TOPIX 4,003.30 4,103.23 +2.50%
グンゼ 3002 4,020円 4,095円 +1.87%
日経平均 64,362.02円 65,020.94円 +1.02%

7社すべてが日経平均を上回りました。この期間は日経平均も+1.02%と上げているのですが、それを7社とも上回っています。

TOPIXは+2.50%で、こちらを上回ったのは6社。グンゼだけが+1.87%でわずかに届きませんでした。

「厳しい業界」と言われながら、市場は7社とも評価していたことになります。

17. 指標を見ておきます

会社 株価 PER PBR 配当利回り 自己資本比率
東レ 3402 1,244.5円 20.1倍 1.00倍 2.09% 52.0%
帝人 3401 1,737.0円 7.5倍 0.81倍 2.88% 43.7%
東洋紡 3101 1,636円 20.6倍 0.68倍 2.44% 34.3%
日東紡 3110 3,060円 27.9倍 3.14倍 0.92% 63.2%
セーレン 3569 3,405円 12.7倍 1.21倍 2.23% 72.3%
クラボウ 3106 10,940円 11.6倍 1.27倍 3.03% 65.4%
グンゼ 3002 4,095円 24.7倍 1.19倍 5.27% 69.8%

PBRは日東紡の3.14倍と東洋紡の0.68倍で4.6倍の開きがあります。同じ「繊維」に分類されている会社なのに、市場のつけた値段はまったく違います。1倍を割っているのは東洋紡と帝人の2社です。

帝人のPER7.5倍が目を引きますが、これは今期の最終利益450億円に関係会社株式の売却益が含まれているためです。予想の利益が大きいほどPERは低く出ます。

これらの数字は自分で検算しました。株価を会社予想の1株利益で割った値も、年間配当を株価で割った値も、7社とも表示どおりでした。

ひとつだけ、そのまま計算すると間違えるものがあります。クラボウです。

短信に載っている予想1株利益は186.80円。株価10,940円をこれで割ると58.6倍になってしまいます。実際は11.6倍です。

理由は、この186.80円が2026年10月1日の株式分割「後」の数字だから。検算してみると、通期予想の最終利益148億円÷186.80円=約7,923万株で、これは今の株数(約1,582万株)のちょうど5倍でした。分割前に直すと1株利益は934円で、PERは11.71倍。表示と合います。

18. これから何を見るか

1. 東レの繊維が1位に戻るか

今期は機能化成品に抜かれましたが、繊維も+18.3%で伸びています。差は51億円です。

2. 東洋紡とクラボウの繊維が黒字に戻るか

東洋紡は赤字が4.6倍に広がり、クラボウは2期連続の赤字です。

3. 日東紡の電子材料がどこまで伸びるか

利益の88.6%を1つの部門が支えています。半導体の需要次第という面もあります。

4. グンゼのアパレルが続くか

3.3倍の伸びは構造改革の効果です。一過性でないかどうかは次の四半期で分かります。

5. TAフロンティアがどうなるか

帝人フロンティアと旭化成アドバンスの統合は、2026年7月30日に吸収合併契約が締結済みです。帝人の開示によると、こうなっています。

項目 内容
新社名 TAフロンティア株式会社
統合効力発生日 2026年10月1日(予定)
存続会社 帝人フロンティア(旭化成アドバンスが消滅)
出資比率 帝人80%、旭化成20%
所在地 大阪市北区中之島
資本金 20億円

今回の決算にはまだ出ていません。ただし帝人は「本件による当社連結業績に与える影響については、2027年3月期の通期連結業績予想に織り込み済み」と書いています。

6. 東レの香料子会社の売却が完了するか

帝人が第1四半期に事業売却を計上したのに対し、東レはこれからです。2026年5月29日の開示で、香料事業の曽田香料(東レ66%、三井物産34%)の全株式を、韓国サムヤンコーポレーションの子会社へ売却すると発表しています。譲渡価額は企業価値410億円、実行は2027年3月期の上半期中の予定です。

会社は「中期経営課題"IGNITION 2028"において、事業ポートフォリオの最適化を通じた資本効率の向上」を理由に挙げています。累進配当の宣言と同じ中期経営課題です。

まとめ

繊維7社の決算を見てきました。

業界地図には「海外勢と競争厳しく」と書かれていましたが、決算は7社すべてが増益でした。売上が減った帝人とグンゼも、利益は増やしています。

ただし中身を開けると、7社とも、いちばん儲かっている部門は「衣料の繊維」ではありませんでした。東レは機能化成品、帝人はエレクトロニクス、日東紡は半導体向けガラス繊維、セーレンは自動車のシート素材。東洋紡とクラボウにいたっては繊維そのものが赤字です。

そのなかでグンゼのアパレルだけが3.3倍に伸びていました。構造改革が効いたそうです。

数字の読み方で気をつけたい点も3つありました。帝人の営業利益26倍は75.8%が株式売却益、日東紡の最終利益△52.1%は前期の資産売却の反動で本業は増益、クラボウのPERは株式分割で見かけが5倍ずれる。どれも決算を開かないと分からないことです。

配当では東レが+30%の増配。創立100周年の記念配当3円を含みますが、それを除いても+15.0%で、累進配当への取り組みも宣言しています。

株価は決算発表前から7社すべてが日経平均を上回りました。

第1四半期は3か月分です。通期の姿はこれから変わります。この記事の数字は2026年9月4日終値時点のものです。投資の判断はご自身でお願いします。

情報基準日:2026年9月4日終値

出典:各社2027年3月期第1四半期決算短信、東レ「創立100周年記念配当及び2027年3月期の配当予想に関するお知らせ」、東洋紡「通期連結業績予想および配当予想に関するお知らせ」、日東紡2026年3月期決算短信、株探

参照:『会社四季報 業界地図 2027年版』(東洋経済新報社)

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たぐ

コロナショック直前の2020年に投資をスタート。リアルタイムで暴落を経験しながら独学で投資の基礎を習得。 現在の運用総額5,000万円超・年間配当収入120万円超を達成。投資信託・ETF・個別株・米国株など100銘柄超に分散投資し、相場の波に強いポートフォリオを構築中。 高配当株の長期保有と新NISAの積立を組み合わせた"2刀流"スタイルで資産形成を実践。保有銘柄の決算・配当・株価をブログで赤裸々公開しています。YouTubeでも投資情報を発信中!

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