保険 日本株

損保大手3社、最終利益は全社増でも修正利益は1社減|自動車・海外・株売却を比較

※本記事は、2026年8月22日時点で公表されている資料をもとに作成しています。株価と指標は2026年8月21日終値です。特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身でお願いします。

損保大手3社、最終利益は全社増でも修正利益は1社減

今回は、東京海上ホールディングス、MS&ADインシュアランスグループホールディングス、SOMPOホールディングスの2027年3月期第1四半期決算を比較します。

損害保険会社を見るとき、最初に思い浮かぶのは自動車保険かもしれません。

実際、日本損害保険協会の2024年度データでは、自動車保険の正味収入保険料は4兆4,586億円で、業界全体の46.5%を占めました。損保業界最大の保険種目です。

ところが近年は、部品価格、塗装費、工賃、先進安全装備の校正費などが上がり、事故1件当たりの修理費が増えています。保険料を引き上げても、保険金の単価が同じかそれ以上に増えれば採算は改善しません。

その一方で、損保大手3社の利益は自動車保険だけで決まりません。

海外保険、火災保険、傷害保険、生命保険、介護などを持ち、政策保有株式の売却益も利益へ大きく影響します。国内で自然災害が増えても、海外保険や株式売却が補うことがあります。

今回の第1四半期は、その違いがよく表れました。

IFRSで共通比較できる親会社の所有者に帰属する四半期利益は、3社とも増えています。しかし、各社が本業の実力を見るために示す独自の修正利益では、東京海上だけが前年同期を下回りました。

さらに、自動車保険も3社一律に赤字という状態ではありません。MS&ADとSOMPOは採算指標が改善し、東京海上は修理費上昇の影響でやや悪化しました。

この記事では、表面の最終利益、会社定義の修正利益、自動車保険、海外保険、政策保有株式の売却、配当と株価指標を順番に分けて見ます。

まず結論

親会社の所有者に帰属する第1四半期利益は3社とも増えました。

会社 親会社帰属Q1利益 前年比 会社定義の修正利益 前年比
東京海上HD 2,643億円 +3.3% 2,614億円 △3.6%
MS&AD 3,286億円 +33.4% 3,106億円 +29.7%
SOMPO HD 1,812億円 +52.8% 1,197億円 +20.0%

金額ではMS&AD、増益率ではSOMPOが首位です。

しかし、会社独自の修正利益では東京海上だけ減益でした。海外保険は増益でも、国内自然災害と自動車保険の修理費上昇が重かったためです。

MS&ADは、自動車保険の損害率が改善し、海外修正利益は前年同期比94.5%増えました。政策保有株式の売却益を除いた参考値でも修正利益は34.7%増えており、増益を株式売却だけで説明するのは不正確です。

SOMPOは、国内損保のコンバインドレシオが改善しました。日本基準の自動車コンバインドレシオは99.1%まで下がり、100%をわずかに下回っています。ただし余裕は0.9ポイントしかなく、「自動車の採算問題は完全に解決した」とまでは言えません。

今回のポイントは3つです。

1つ目は、最終利益と会社定義の修正利益を分けることです。

2つ目は、自動車保険を保険料の増加だけで見ず、損害率とコンバインドレシオまで確認することです。

3つ目は、海外利益と政策保有株式の売却益を分け、継続して稼げる利益を考えることです。

比較の前提|「最終利益」と「修正利益」は同じではない

3社はすべてIFRSで連結決算を作っています。

そのため、保険収益、税引前利益、親会社の所有者に帰属する利益は、会計基準が共通です。会社の規模や事業構成は違いますが、比較の出発点として使えます。

一方、各社は投資家向けに独自の利益指標も示しています。

  • 東京海上:修正純利益
  • MS&AD:グループ修正利益
  • SOMPO:修正連結利益

これらは、会社が一時的、会計的、または市場変動によると判断した項目を調整し、株主還元や経営目標の基準として使う非IFRS指標です。

重要なのは、3社の定義が同じではないことです。

したがって、修正利益の金額を横に並べて「1位だから最も稼ぐ力が強い」と断定するのは避けます。本記事では、各社の修正利益が前年から増えたか減ったか、通期計画に対してどこまで進んだかを見るために使います。

同じ理由で、政策保有株式の売却も注意が必要です。

東京海上とSOMPOが示す売却益は税引前、MS&ADがグループ修正利益の内訳として示す売却益は税後です。さらに、株式の売却額と売却益も別の数字です。3社を同じ単位にそろえず順位を作ると、比較を誤ります。

損保業界では自動車保険が最大

日本損害保険協会の「FACT BOOK 2025」によると、2024年度の正味収入保険料は9兆5,782億円でした。

このうち自動車保険は4兆4,586億円で46.5%。火災保険や新種保険を上回り、業界のほぼ半分を占めます。

自動車保険の採算を見る代表的な指標が、損害率とコンバインドレシオです。

損害率は、受け取った保険料に対して保険金や損害調査費がどれほど発生したかを見るものです。低いほど保険金負担が軽い方向です。

コンバインドレシオは、損害率に事業費率を加えた指標です。一般には100%を下回れば、保険引受段階で保険料が保険金と経費を上回っていると読めます。

ただし、各社の資料にはIFRS、日本基準、対象会社、異常危険準備金の扱いなどが異なる複数のコンバインドレシオが載っています。数字の高さだけを会社間で競わせるより、同じ会社の前年から改善したかを確認するほうが安全です。

自動車保険では、料率改定で保険料収入が増えても、それだけで採算が良くなったとは言えません。

事故件数が増えたのか、1件当たり保険金が上がったのか、保険料単価がどこまで上がったのかを分ける必要があります。

今回、MS&ADでは事故件数が前年同期比1.7%減り、損害率が改善しました。一方、東京海上は対物・車両の1件当たり保険金が7.5%上がり、会社の通期想定である6%増を上回りました。

同じ料率改定の局面でも、結果はそろっていません。

第1四半期の共通決算を比較

単位は億円です。

会社 保険収益 前年比 税引前利益 前年比 親会社帰属利益 前年比
東京海上HD 20,471 +12.3% 3,782 +11.5% 2,643 +3.3%
MS&AD 16,862 +14.1% 4,409 +33.4% 3,286 +33.4%
SOMPO HD 16,170 +28.0% 2,403 +59.3% 1,812 +52.8%

保険収益の金額は東京海上が最大です。

一方、税引前利益と親会社帰属利益の金額はMS&ADが最大。増益率はSOMPOが最も高くなりました。

ただし、保険収益を一般企業の売上高と完全に同じものとして扱わない点には注意が必要です。IFRS第17号では、契約期間中に提供した保険サービスに対応する収益を認識します。契約時に受け取った保険料の総額を、そのまま一度に売上として計上するものではありません。

また、SOMPOの保険収益28.0%増には、買収したAspen Insuranceの連結効果が入っています。既存事業だけが同じ率で伸びたとは限りません。

数字の見出しは3社とも強い決算です。しかし、中身を見ると東京海上は国内の負担、MS&ADは国内外の改善、SOMPOは買収効果と国内採算の改善という違いがあります。

東京海上HD|海外は増益、国内損保が重荷

東京海上HDの第1四半期は、保険収益2兆471億円、税引前利益3,782億円、親会社帰属利益2,643億円でした。

親会社帰属利益は前年同期比3.3%増です。

ところが、会社定義の修正純利益は2,614億円で3.6%減りました。

この逆方向が、今回の東京海上を見るうえで最も重要です。

海外保険の修正純利益は1,643億円で9.2%増えました。3社の海外修正利益のなかで金額は最大です。海外保険収益も1兆2,258億円で18.9%増えています。

一方、国内損保の修正純利益は772億円で20.8%減りました。

国内損保のコンバインドレシオは88.7%で、前年同期の86.6%から2.1ポイント悪化しています。それでも100%は下回っていますから、国内損保全体を「赤字」と表現するのは正しくありません。

自動車保険の正味収入保険料は3,425億円で2.5%増えました。料率改定などで収入は増えています。

しかし、自動車保険の損害率は62.9%で0.6ポイント悪化しました。

対物・車両の1件当たり保険金は7.5%増です。会社の通期想定は6%増でしたから、修理費インフレは計画をやや上回って進んでいます。

国内自然災害の正味発生保険金も147億円となり、前年同期の41億円から増えました。

つまり東京海上は、海外保険が伸びても、国内の自然災害と自動車保険金単価の上昇が修正利益を押し下げました。

もう1つ大きいのが政策保有株式です。

第1四半期の売却額は2,354億円で、通期計画4,300億円の54.7%まで進みました。税引前の株式売却益は2,094億円です。

株式売却は資本効率を改善し、現金を生みます。ただし、保険料から継続的に稼ぐ利益ではありません。親会社帰属利益が増えたことだけで国内保険の採算まで良くなったと判断しないことが大切です。

通期予想は、親会社帰属利益8,300億円、修正純利益9,500億円で据え置きです。年間配当予想も245円を維持しました。前期の218円から27円、12.4%の増配予想です。

東京海上の次の焦点は、海外の増益が続くか、自動車の料率効果が7%台の保険金単価上昇へ追いつくか、政策保有株式売却後の資本をどう使うかです。

MS&AD|自動車と海外がともに改善

MS&ADの第1四半期は、保険収益1兆6,862億円、税引前利益4,409億円、親会社帰属利益3,286億円でした。

親会社帰属利益は33.4%増です。金額では3社最大でした。

グループ修正利益は3,106億円で29.7%増。さらに、政策保有株式の売却益を除く参考値でも2,510億円となり、前年同期比34.7%増えています。

このため、「MS&ADの増益は株式を売っただけ」と説明するのは不正確です。

国内損保2社、三井住友海上とあいおいニッセイ同和損保の合計では、保険収益が9,332億円、保険サービス損益が1,306億円でした。

コンバインドレシオは84.8%で、前年同期の85.5%から0.7ポイント改善しています。

自動車保険の保険収益は3,852億円で4.7%増えました。損害率は59.4%で1.5ポイント改善。事故件数は1.7%減っています。

一方で、修理費の上昇は続いています。

三井住友海上では1契約当たり保険料が7.1%増えましたが、1件当たり保険金も対物で6.0%、車両で7.7%増えました。

あいおいニッセイ同和損保では1契約当たり保険料が5.9%増え、1件当たり保険金は対物で6.3%、車両で6.6%増えています。

料率改定の効果は出ていますが、保険金単価もほぼ同じ速度で上がっています。今回の改善には事故件数の減少も効いており、修理費インフレが止まったわけではありません。

海外事業はさらに強い内容でした。

海外保険収益は6,907億円で31.4%増。海外事業の修正利益は1,088億円で94.5%増えました。利益額では東京海上を下回りますが、増益率は3社最大です。

政策保有株式の売却益がグループ修正利益へ与えた税後寄与は596億円で、前年同期の532億円から増えました。ただし、売却益を除いた修正利益も伸びています。

通期の親会社帰属利益予想は4,250億円です。Q1だけで77.3%まで進んだ計算になります。

この進捗率は非常に高く見えますが、政策保有株式の売却時期や季節性を含みます。会社定義の修正利益8,000億円に対する進捗率は38.8%、政策保有株式売却益を除く参考進捗率は47.4%です。

したがって、77.3%だけで通期の上方修正を確実視するのは避けます。

MS&ADには、もう1つ大きな変化があります。

2027年4月1日に、三井住友海上とあいおいニッセイ同和損保を合併する計画です。存続会社は三井住友海上で、新しい社名は三井住友海上あいおい損害保険株式会社となる予定です。

会社は2030年度に年間1,500億円の統合シナジーを目標としています。一方、2025年度から2027年度の一時費用は累計1,700億円を見込みます。

統合は、重複コスト、システム、商品、代理店対応を効率化できる可能性があります。しかし、短期的には移行費用や実務負担も発生します。「統合するからすぐ利益が1,500億円増える」とは考えないほうが安全です。

年間配当予想は170円。前期160円から10円増配ですが、内訳は普通配当140円と特別配当30円です。特別配当を含む総額であることを確認しておきます。

SOMPO HD|自動車は100%をわずかに下回る

SOMPO HDの第1四半期は、保険収益1兆6,170億円、税引前利益2,403億円、親会社帰属利益1,812億円でした。

親会社帰属利益は52.8%増。3社で最大の増益率です。

修正連結利益も1,197億円で20.0%増え、第1四半期として過去最高になりました。

国内損保の修正利益は440億円で、前年同期から約99億円増。海外保険の修正利益は686億円で26.9%増えました。

国内損保のIFRSベースのコンバインドレシオは93.9%で、前年同期の96.1%から2.1ポイント改善しています。

自動車保険収益は2,925億円で5.6%増。自動車保険の損害率は64.5%で1.6ポイント改善しました。

さらに日本基準の自動車E/Iコンバインドレシオは99.1%です。

100%を下回ったため、このQ1を「自動車保険は赤字」と断定するのは不正確です。

ただし、100%との差は0.9ポイントだけです。修理費が想定以上に上がる、事故件数が増える、料率改定の浸透が遅れるといった変化で、採算は再び圧迫されます。

今回の国内損保は、自然災害の影響が前年より約109億円悪化しました。それでも、基礎的な収支の改善が約235億円あり、自然災害の負担を上回りました。

つまり、SOMPOの国内損保は、災害が少なかったから増益になったのではありません。災害負担が増えても、それ以外の採算改善で補っています。

海外保険収益は8,947億円で、前年同期の5,628億円から大幅に増えました。

ただし、この増収にはAspen Insuranceの買収と連結効果が含まれます。すべてを既存事業の自然成長として扱わないことが重要です。

買収は、保険種目、地域、顧客の分散を進める一方、大口事故、自然災害、再保険、買収会計、統合作業という新しいリスクも持ち込みます。今後は、Aspenを含む海外事業のコンバインドレシオと修正利益が安定するかを確認します。

政策保有株式は第1四半期に746億円を削減し、通期計画2,500億円超に対して約30%進みました。税引前の株式売却益は574億円で、前年同期の809億円を下回っています。

それでも修正連結利益は20%増ですから、SOMPOの増益を株式売却益の増加で説明することはできません。

通期の親会社帰属利益予想は4,900億円、修正連結利益予想は5,000億円で据え置き。年間配当予想も200円を維持しました。前期150円から50円、33.3%の増配予想です。

自動車保険|料率改定と修理費の競争

3社の自動車保険を並べます。

会社 収入・収益 増減 損害率 前年差 Q1の方向
東京海上HD 3,425億円 +2.5% 62.9% +0.6pt 悪化
MS&AD 3,852億円 +4.7% 59.4% △1.5pt 改善
SOMPO HD 2,925億円 +5.6% 64.5% △1.6pt 改善

ここで金額をそのまま順位にしないでください。

東京海上は日本基準の正味収入保険料、MS&ADとSOMPOはIFRSの保険収益です。対象会社や計算方法も異なります。比較したいのは、同じ会社の前年からどちらへ動いたかです。

東京海上は保険料収入が増えても損害率が悪化しました。修理単価の上昇が大きな理由です。

MS&ADは料率改定に加えて事故件数が減り、損害率が改善しました。ただし、1件当たり保険金は6%から8%近く増えています。

SOMPOは損害率が改善し、日本基準のコンバインドレシオが99.1%まで下がりました。今回の3社で「100%線への近さ」が最も分かりやすい会社です。

自動車保険の投資家向けチェックポイントは、単純な値上げ率ではありません。

  • 1契約当たり保険料
  • 契約台数
  • 事故件数
  • 事故頻度
  • 1件当たり保険金
  • 損害率
  • コンバインドレシオ

この順に分けると、値上げが売上だけでなく利益へ残っているかが見えます。

海外利益|金額首位と伸び率首位は違う

各社が示す海外事業の修正利益を並べます。

会社 海外修正利益 前年比
東京海上HD 1,643億円 +9.2%
MS&AD 1,088億円 +94.5%
SOMPO HD 686億円 +26.9%

利益額では東京海上、増益率ではMS&ADが首位です。

東京海上は、海外の規模と利益額が大きく、国内の自然災害や自動車の負担を分散する力があります。その一方で、海外でも自然災害、大口事故、賠償責任、再保険価格、為替の影響を受けます。

MS&ADは増益率が大きく、今回の全社増益を強く支えました。ただし、前年の水準や一時要因もあるため、94.5%をそのまま長期成長率に置きません。

SOMPOはAspen買収によって海外の規模を拡大しています。利益も増えましたが、買収後の統合と収益の安定性を確認する段階です。

海外比率が高いことは、国内市場の成熟や災害リスクを分散する強みになります。しかし、海外には海外の災害、賠償、規制、買収リスクがあります。

「海外が大きいから安全」ではなく、地域、保険種目、利益率、買収の有無まで分けて見る必要があります。

政策保有株式|利益と資本効率を分ける

損保大手は、取引関係の維持などを目的に長く保有してきた政策保有株式の削減を進めています。

第1四半期の開示を整理すると、東京海上は売却額2,354億円、税引前売却益2,094億円。SOMPOは削減額746億円、税引前売却益574億円でした。

MS&ADでは、政策保有株式の売却益がグループ修正利益へ税後596億円寄与しています。

ここで気をつけたいのは、3つの違いです。

1つ目は、売却額と売却益は別です。

2つ目は、税引前と税後の数字をそのまま比べられないことです。

3つ目は、売却益は毎年同じ額を繰り返せる本業利益ではないことです。

それでも、政策保有株式の削減自体は重要です。

株式の価格変動リスクを減らし、得た現金を成長投資、配当、自社株買いへ振り向けられます。単に売却益が大きいかではなく、売却後の資本配分までを見る必要があります。

今回、MS&ADは売却益を除いた修正利益も34.7%増え、SOMPOも売却益が前年より減るなかで修正利益が20%増えました。東京海上は海外増益でも修正純利益が減っています。

政策保有株式の数字を取り除くと、3社の基礎的な方向がよりはっきり見えます。

通期予想と進捗率

会社 通期親会社帰属利益 Q1単純進捗率 通期修正利益 年間配当予想
東京海上HD 8,300億円 31.8% 9,500億円 245円
MS&AD 4,250億円 77.3% 8,000億円 170円
SOMPO HD 4,900億円 37.0% 5,000億円 200円

3社とも通期予想を据え置いています。

単純進捗率ではMS&ADの77.3%が突出しています。

ただし、保険会社は四半期ごとの自然災害、政策保有株式の売却時期、海外子会社の決算期、為替、税金で利益が大きく動きます。

MS&ADのグループ修正利益進捗率は38.8%。政策保有株式売却益を除く参考値では47.4%です。それでも高い水準ですが、IFRS利益の77.3%とは意味が違います。

東京海上の修正純利益進捗率は28%です。SOMPOの修正連結利益進捗率は24%で、会社はIFRSの季節性影響を除くと28%と説明しています。

進捗率だけで順位を作るより、自然災害が増える季節を通過した後も基礎的な採算が維持できるかを見るほうが大切です。

配当・PER・PBRを比較

2026年8月21日終値の市場指標です。

会社 株価 予想PER 実績PBR 年間配当 予想利回り
東京海上HD 7,347円 16.92倍 1.70倍 245円 3.33%
MS&AD 4,945円 16.86倍 1.07倍 170円 3.44%
SOMPO HD 6,757円 12.30倍 1.13倍 200円 2.96%

予想配当利回りは、MS&AD、東京海上、SOMPOの順です。

ただし、MS&ADの170円には普通配当140円と特別配当30円が含まれます。特別配当まで含めた今年度の予想利回りであることを確認しておきます。

年間配当は東京海上が前期218円から245円、MS&ADが160円から170円、SOMPOが150円から200円へ増える予想です。

増配率ではSOMPOが33.3%で最大です。ただし、今後も毎年同じ増配率が続くことを意味しません。

PERはSOMPOが12.30倍で最も低く、東京海上とMS&ADは16倍台です。

PBRは東京海上が1.70倍で最も高く、MS&ADが1.07倍、SOMPOが1.13倍です。

東京海上のPBRが高いことは、海外事業の規模、利益の質、資本効率への市場評価を反映している可能性があります。一方、高いPBRは、期待がすでに株価へ織り込まれている可能性も意味します。

低いPERや高い配当利回りだけで割安と断定せず、利益に含まれる株式売却益、自然災害の振れ、特別配当を確認する必要があります。

なお、会社予想EPSで単純計算したPERは、東京海上16.63倍、MS&AD16.72倍、SOMPO12.30倍です。東京海上とMS&ADは情報サイト表示と小差があります。自己株式を含む株数や予想EPSの更新時点が異なるため、本表は同一サイトの表示値に統一しました。

決算公表を含む期間の株価

東京海上は8月12日、MS&ADとSOMPOは8月14日に決算を公表しました。

3社の発表日が異なるため、全社の決算がそろう直前の8月14日終値から、8月21日終値までを共通期間として比較します。

銘柄・指数 8月14日終値 8月21日終値 変化率
東京海上HD 7,540円 7,347円 △2.6%
MS&AD 4,836円 4,945円 +2.3%
SOMPO HD 7,011円 6,757円 △3.6%
日経平均 68,713.80円 66,016.36円 △3.9%

この期間ではMS&ADだけが上昇しました。東京海上とSOMPOは下落しましたが、日経平均の下落率よりは小さくなっています。

ただし、東京海上の決算は8月14日より前に公表されています。この表は3社の決算翌日反応を同じ条件で比べたものではありません。

株価には、決算、市場全体、金利、為替、海外株、需給などが同時に影響します。「修正利益が減ったから東京海上が下がった」「増益率が最大なのにSOMPOが売られた」と原因を1つに決めつけないほうが安全です。

3社をどう見分けるか

今回の決算だけで3社の性格を整理すると、次のようになります。

東京海上HD

海外修正利益の金額が最大で、年間配当予想も245円と3社最大です。海外の規模と分散は強みですが、今期Q1は国内自然災害と自動車修理費の上昇で修正純利益が減りました。PBRは3社で最も高く、成長や収益の質への期待も相対的に大きいと考えられます。

MS&AD

親会社帰属Q1利益の金額が最大で、自動車損害率と海外利益がともに改善しました。2027年4月の中核損保2社合併は、大きな効率化余地と一時費用の両方があります。配当利回りは3社最高ですが、年間170円に特別配当30円を含みます。

SOMPO HD

親会社帰属利益の増益率が最大で、自動車保険のコンバインドレシオは99.1%まで改善しました。PERは3社で最も低い一方、配当利回りは最も低い水準です。Aspen買収で海外事業が拡大しており、買収後の収益安定と統合が重要になります。

どの会社が最も良いかは、見る軸で変わります。

  • 海外利益の絶対額:東京海上
  • Q1親会社帰属利益の金額:MS&AD
  • Q1親会社帰属利益の増益率:SOMPO
  • 予想配当利回り:MS&AD
  • 予想PERの低さ:SOMPO
  • PBRの高さ:東京海上

1つのランキングで結論を出すより、利益の継続性、配当の内訳、買収・統合の実行リスクを、自分の重視する項目に合わせて見る必要があります。

次の決算で確認したい6項目

1. 自動車の1件当たり保険金

料率改定による保険料単価の上昇が、部品・工賃・先進安全装備の修理費上昇を上回れるかを見ます。特に東京海上はQ1の7.5%増が通期想定6%を上回りました。

2. 自動車コンバインドレシオ

MS&ADとSOMPOの改善が続くか、東京海上の悪化が一時的かを確認します。会社ごとの定義をそろえ、前年同期比で見ます。

3. 自然災害の負担

台風や豪雨が増える時期には、発生保険金が利益を大きく動かします。Q1の進捗率だけで通期着地を判断しません。

4. 海外修正利益

東京海上は金額、MS&ADは伸び率、SOMPOはAspen統合が焦点です。為替や大口事故を除いた基礎的な収益を確認します。

5. 政策保有株式の削減と資金使途

売却額と売却益に加え、得た資金が配当、自社株買い、成長投資のどこへ配分されたかを見ます。

6. MS&ADの統合費用とSOMPOの買収統合

MS&ADは2027年4月の中核2社合併、SOMPOはAspenの連結後が重要です。発表されたシナジーではなく、実際の費用と利益に注目します。

まとめ

損保大手3社の2027年3月期第1四半期は、親会社の所有者に帰属する利益がそろって増えました。

金額はMS&AD、増益率はSOMPOが首位です。

しかし、会社定義の修正利益まで見ると、東京海上だけが3.6%減りました。海外保険は増益でも、国内自然災害と自動車保険金単価の上昇が負担になりました。

MS&ADは自動車保険の損害率が改善し、海外修正利益は94.5%増えました。政策保有株式の売却益を除いても修正利益は増えています。

SOMPOは国内損保の採算が改善し、日本基準の自動車コンバインドレシオが99.1%まで低下しました。一律に「自動車保険は赤字」と見る段階ではありませんが、100%線への余裕はまだ小さい状態です。

政策保有株式の売却は3社にとって重要な資本政策ですが、売却益は本業の継続利益ではありません。

損保株を見るときは、最終利益の増減だけではなく、会社定義の修正利益、自動車の損害率、海外利益、自然災害、政策保有株式、配当の内訳を分けて確認する必要があります。

3社とも増益でも、何で稼ぎ、どのリスクを抱え、どの形で株主へ返すかは大きく違います。

主な参照資料

▶ YouTubeでも発信中!

高配当株・株主優待の情報をわかりやすく動画で解説しています。
ブログとあわせてチェックしてみてください!

チャンネル登録はこちら
  • この記事を書いた人
  • 最新記事

たぐ

コロナショック直前の2020年に投資をスタート。リアルタイムで暴落を経験しながら独学で投資の基礎を習得。 現在の運用総額5,000万円超・年間配当収入120万円超を達成。投資信託・ETF・個別株・米国株など100銘柄超に分散投資し、相場の波に強いポートフォリオを構築中。 高配当株の長期保有と新NISAの積立を組み合わせた"2刀流"スタイルで資産形成を実践。保有銘柄の決算・配当・株価をブログで赤裸々公開しています。YouTubeでも投資情報を発信中!

-保険, 日本株

© 2026 タグの株ブログ Powered by AFFINGER5