※本記事は2026年8月14日終値と、ザ・パックが2026年8月7日に発表した2026年12月期第2四半期(中間期)決算を基に作成しています。特定銘柄の売買を推奨するものではありません。
ザ・パック(3950)の中間決算は、売上高が5.8%増、営業利益が3.9%増となりました。一方、親会社株主に帰属する中間純利益は16.1%減です。
「純利益16%減」と聞くと身構えますが、今回は本業が大きく崩れたわけではありません。前年に保有株式を売却して得た臨時収入がなくなった反動が主な理由です。
会社名は「ザ・パック」ですが、中身は紙袋だけではありません。お菓子の箱、ネット通販の段ボール、食品を包むフィルム、イベント用バッグまで、包装の詰め合わせです。
今回は、純利益減の理由、24.6%増収となった段ボール、全社費用の増加、年間配当42円、20億円の自社株買い、最後となるQUOカード、奈良工場への投資、8月14日終値の株価指標まで、株式投資初心者向けに整理します。
結論:本業は増益、還元は「優待から配当と自社株買いへ」
- 売上高は501億円で5.8%増
- 営業利益は29.7億円で3.9%増
- 純利益は20.4億円で16.1%減
- 純利益減は前年の政策保有株式売却益の反動が主因
- 商品別では段ボールが24.6%増収
- 3つの事業はすべて増益
- ただし本社などの全社費用が増加
- 通期予想は据え置きで、営業利益進捗率は39.7%
- 年間配当予想は42円、上限20億円の自社株買いを実施中
- 株主優待は2026年12月末のQUOカードを最後に廃止
- 8月14日終値は1,467円、予想配当利回りは2.86%
見出しの純利益は減りましたが、営業利益と経常利益は増えています。一方で、通期予想に対する利益進捗率は約38~40%です。好調ではあるものの、上方修正を当然視するほどの進み方ではありません。
株主還元は、優待を続けながら配当も増やす形ではなく、優待を終了して配当と自社株買いへ集約する方向です。この違いはしっかり押さえておきたいところです。
ザ・パックは包装材の総合メーカー
ザ・パックは、紙袋、紙箱、段ボール、食品用フィルムなどを製造・販売する包装材メーカーです。
事業は大きく3つに分かれます。
- 紙加工品事業:紙袋、紙器、段ボールなど
- 化成品事業:プラスチックフィルムを使った袋や食品包装など
- その他事業:イベント用バッグ、販促用品など
百貨店や専門店で受け取る紙袋だけでなく、通販商品が届くときの箱や、テイクアウト食品の容器にも関わっています。
ネット通販や持ち帰り需要が増えると包装材の出番は増えます。一方、原材料価格、物流費、人件費が上がると利益を圧迫しやすい事業でもあります。
中間決算は増収・営業増益
| 項目 | 中間期実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 売上高 | 501億3,400万円 | +5.8% |
| 営業利益 | 29億7,400万円 | +3.9% |
| 経常利益 | 30億7,600万円 | +1.2% |
| 親会社株主に帰属する中間純利益 | 20億3,800万円 | -16.1% |
売上高、営業利益、経常利益は前年同期を上回りました。
営業利益率は前年同期の約6.0%から約5.9%へわずかに低下しています。利益額は増えましたが、売上高ほどは伸びていません。ここは「大幅増益」というより「本業は堅調」と表現するのが適切です。
純利益16.1%減は前年の臨時収入の反動
前年同期には、政策保有株式の売却益4億8,800万円が特別利益に計上されていました。
政策保有株式とは、取引関係の維持などを目的に企業が保有している他社株式です。これを売却すると、その年だけの利益が発生することがあります。
今回は同じ規模の売却益がありません。さらに6,900万円の特別損失を計上したため、営業利益が増えていても最終的な純利益は減りました。
純利益16.1%減は事実ですが、「本業の利益も16%減った」という意味ではありません。決算を見るときは、営業利益と一時的な特別利益を分ける必要があります。
段ボールが24.6%増収
紙加工品事業の商品別売上高は次のとおりです。
| 商品 | 売上高 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 紙袋 | 148億8,200万円 | +2.7% |
| 紙器 | 127億5,900万円 | +0.4% |
| 段ボール | 84億300万円 | +24.6% |
| 印刷 | 7億2,100万円 | -23.7% |
今回、最も目立ったのは段ボールです。テイクアウト用の食品容器や、ネット通販で商品を発送するための包装材が好調でした。
紙袋は国内が堅調で、海外も増加。紙器は土産物、テイクアウト・デリバリー、ネット通販関連が安定して推移しました。
印刷は23.7%減りましたが、日幸印刷の合併に伴う区分変更の影響が含まれます。数字だけを見て、印刷需要が一気に4分の1減ったと受け取らないよう注意が必要です。
3事業はすべて増益
| 事業 | 売上高 | 前年同期比 | セグメント利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 紙加工品 | 367億6,700万円 | +5.4% | 27億8,200万円 | +11.8% |
| 化成品 | 63億6,400万円 | +0.4% | 3億3,300万円 | +16.4% |
| その他 | 70億200万円 | +13.6% | 5億2,900万円 | +35.9% |
3事業すべてで利益が増えました。主力の紙加工品だけでなく、イベント用バッグなどを含むその他事業も35.9%増益です。
化成品事業では、衛生用品向け包装は減りましたが、イベント用キャリーバッグや食品向けの軟包装が伸びました。軟包装とは、食品の袋のように柔らかく、形を変えられる包装材です。
各事業は好調でも、全社費用が増えた
3事業のセグメント利益を合計すると約36億4,500万円です。しかし、連結営業利益は約29億7,400万円でした。
差額の主な理由は、本社部門など会社全体にかかる費用です。全社費用は前年同期の約2億5,000万円から約6億5,700万円へ増えました。
各事業の利益は11.8~35.9%増えたのに、連結営業利益の伸びが3.9%にとどまった背景には、この全社費用の増加があります。
包装材が売れても、本社の箱まで大きくなりすぎると利益は残りにくくなります。次の決算では、増えた費用が一時的なのか、今後も続くのかを確認したいところです。
通期予想は据え置き
会社は2026年12月期の通期予想を変更していません。
| 項目 | 通期予想 | 前期比 | 中間期進捗率 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,060億円 | +2.8% | 47.3% |
| 営業利益 | 75億円 | +4.1% | 39.7% |
| 経常利益 | 77億円 | +2.2% | 40.0% |
| 純利益 | 53億円 | -12.0% | 38.5% |
売上高の進捗率は47.3%ですが、利益は約38~40%です。
下期の利益が上期より大きくなる計画ですが、中間時点で余裕たっぷりとはいえません。段ボールの伸びが続くか、全社費用を抑えられるか、原材料や物流費を販売価格へ反映できるかが重要になります。
奈良工場の建て替えへ約36億円の土地を取得
ザ・パックは、奈良県大和郡山市にある約6万5,111平方メートルの土地を約36億3,400万円で取得しました。
50年以上が経過した奈良工場を建て替え、生産能力の増強、働く環境の改善、自動化・省人化を進める計画です。
2026年12月期の業績への影響は軽微とされています。ただし、工場の建設が本格化すれば、今後も設備投資が続く可能性があります。
設備投資は将来の成長に必要ですが、土地を買っただけでは利益は増えません。新工場が予定どおり稼働し、生産性の向上につながるかを中長期で見る必要があります。
財務は安定しているが、投資で現金は減少
中間期末の主な財務数値は次のとおりです。
- 総資産:985億2,400万円
- 純資産:775億700万円
- 自己資本比率:78.6%
- 現金及び現金同等物:194億9,400万円
自己資本比率は前期末の73.9%から78.6%へ上昇しており、財務の安定性は高い水準です。
一方、投資キャッシュフローは46億5,300万円の支出でした。有形固定資産の取得に51億600万円を使っています。
営業活動では36億4,900万円の現金を稼ぎましたが、設備投資、配当、自社株買いに関連する支出が上回り、現金残高は前期末から減少しています。
現金が減ったこと自体を悪材料と決めつけるのではなく、投資と株主還元に使った資金が将来の利益や1株当たり価値へつながるかを確認します。
年間配当42円、実質的な増配は約0.67円
2026年12月期の配当予想は、中間17円、期末25円、年間42円です。
ザ・パックは2025年7月に1株を3株へ分割しました。株式分割を調整した前期の年間配当は約41.33円なので、今期の実質増配額は約0.67円です。
年間42円は今回の中間決算で新しく発表された増配ではなく、従来予想の据え置きです。
会社は2026年2月に、配当性向40%と累進配当を基本とする新しい還元方針を発表しました。累進配当とは、原則として配当を減らさず、維持または増配を目指す方針です。
上限20億円の自社株買い
2026年中の自社株買いは、上限180万株、20億円です。取得する株数の上限は、自己株式を除く発行済株式数の3.24%に相当します。
7月末までに92万8,900株、約12億6,500万円を取得しました。
- 株数ベースの進捗率:約51.6%
- 金額ベースの進捗率:約63.3%
会社は2026年から2030年までの5年間で合計100億円、各年おおむね20億円の自社株買いを行い、総還元性向70%を目標としています。
自社株買いは市場に出回る株式を減らし、1株当たり利益の改善につながる可能性があります。ただし、実施すれば株価が必ず上がるという制度ではありません。
株主優待は2026年12月のQUOカードで終了
株主優待の廃止は、今回の中間決算ではなく2026年2月13日に発表されました。
- 2026年6月末:図書カード500円分、今回で終了
- 2026年12月末:QUOカード1,000円分、今回が最後
- 2027年6月末以降:株主優待なし
100株以上を保有する株主にとって、2026年12月末のQUOカードが最後の優待です。
優待目的の投資家にはマイナスですが、会社は株主の平等性を重視し、配当と自社株買いへ還元を集約します。
優待がなくなるから還元がすべて減る、という単純な話ではありません。一方で、配当42円だけで廃止分を完全に補ったとも言い切れません。今後、利益成長に合わせて配当と自社株買いが継続するかが重要です。
決算直後は下落、その後は回復
決算発表日の8月7日終値は1,457円でした。翌営業日の8月10日は1,425円で、32円、約2.2%下落しました。
その後は持ち直し、8月14日終値は1,467円。決算発表日終値を10円上回っています。
最初は純利益減や予想据え置きが意識され、その後は本業増益や株主還元が見直された可能性もあります。ただし、日々の株価には相場全体や需給も影響するため、理由を一つに断定することはできません。
8月14日終値の株価とバリュエーション
| 項目 | 2026年8月14日時点 |
|---|---|
| 終値 | 1,467円 |
| 前日比 | +28円(+1.95%) |
| 予想PER | 15.37倍 |
| PBR | 1.05倍 |
| 予想配当利回り | 2.86% |
| 最低購入代金 | 14万6,700円 |
| 時価総額 | 約876億円 |
配当利回りは2.86%です。累進配当方針は確認できますが、現在の利回りだけを理由に「高配当株」と強く表現する水準ではありません。
PERやPBRだけで割安・割高を決めるのではなく、段ボールの成長、全社費用、新工場投資、優待廃止後の還元方針を合わせて確認する必要があります。
次の決算で確認したい8項目
- 段ボールの24.6%増収が続くか
- 紙器の低い成長率が改善するか
- 全社費用の増加が一時的か
- 営業利益75億円へ向けた進捗が改善するか
- 原材料費や物流費を販売価格へ反映できるか
- 奈良工場の建て替え計画と投資額
- 上限20億円の自社株買いの進捗
- 優待廃止後も累進配当方針を維持できるか
まとめ
ザ・パックの中間決算は、売上高が5.8%増、営業利益が3.9%増、純利益が16.1%減でした。
純利益減は、前年に計上した政策保有株式売却益の反動が主な理由です。本業が大きく崩れたわけではなく、商品別では段ボールが24.6%増収、3つの事業はすべて増益でした。
一方、全社費用が増え、連結営業利益の伸びは3.9%にとどまりました。通期利益の進捗率も約38~40%で、上方修正を当然視できる決算ではありません。
株主還元は、年間配当42円と上限20億円の自社株買いを進める一方、株主優待を2026年12月末で終了します。
「優待廃止だから悪い」「累進配当だから安心」と一つの材料だけで判断せず、本業の成長、全社費用、設備投資、配当、自社株買いを一緒に点検することが大切です。