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【2026年6月】年初来安値の日本代表3社|トヨタ・NTT・ソフトバンクを「市場の評価(PER/PBR)×長期チャート」で読む

こんにちは、高配当株投資家のタグ(@kabu.tagu-blog)です。

株価が下がると、ちょっとドキッとしますよね。とくに「年初来安値(ねんしょらいやすね)」――その年に入ってからの最も安い値段――という言葉を見ると、つい身構えてしまうものです。

2026年6月23日、日本を代表する3つの銘柄が、そろってこの年初来安値をつけました。トヨタ自動車(7203)・NTT(9432)・ソフトバンク(9434)の3社です。自動車・通信と業種は違いますが、共通点は予想配当利回りがいずれも3.7〜4.3%の高配当であること。日本株の配当利回りは平均で2%台といわれるなか、3社そろって3.7%超はしっかり高い水準です。

ところが――ここからが今回いちばんお伝えしたいところです。同じ「年初来安値・高配当」という入口を通っても、市場がその会社につけている「評価」=割安度は、まるで違うのです。市場がその会社をどう評価しているかを映すPBRで見ると、トヨタは0.80倍、NTTは1.21倍、ソフトバンクは3.73倍。同じ高配当でも、市場のものさしはこれだけ開いています。

つまり、利回りの数字や「年初来安値・高配当」という見出しは、あくまで"入口"にすぎない。本当に見るべきは、「市場がその会社をどう評価しているか(PER・PBR)」「その評価の背景に、どんな業績の方向と配当の姿勢があるか」のほうだ――というのが、今回の記事の芯です。同じ年初来安値・高配当でも、市場の評価=割安度は三者三様、というお話を、1社ずつ各社の決算短信(一次資料)と長期チャートをもとに、正直に整理していきます。

※本記事は特定銘柄の売買を推奨するものではありません。株価・PER・PBR・配当利回り・時価総額・月足高値は2026年6月23日時点、業績・配当方針は各社の決算短信(IFRS・連結)に基づきます。決算期は3社とも前期=2026年3月期(実績)・当期=2027年3月期(会社予想)です。3社が2026年6月23日に年初来安値をつけた直接の引き金は、各社の決算短信に記載がないため本記事では断定していません。3社の比較は「対決」ではなく、それぞれの個性をフラットに整理する趣旨で、市場評価の高低で優劣を順位づけするものでもありません。

目次

まず前提|「年初来安値」「当期」「前期」と各指標の意味をそろえる

具体的な銘柄に入る前に、この記事で使う言葉の意味をそろえさせてください。ここを押さえておくと、このあとの話がぐっと分かりやすくなります。

  • 年初来安値(ねんしょらいやすね)…その年に入ってから株価がつけた最も安い値段のことです。今回の3社は、いずれも2026年6月23日にこの年初来安値をつけました。「年初来安値をつけた=悪い」と一言で決まるものではなく、なぜそこまで水準が下がったのかを中身で見ていくことが大切です。
  • 前期(ぜんき)…直近で締まった本決算のこと。この記事では3社とも2026年3月期(2025年4月〜2026年3月)を指します。すでに実績が確定している、いちばん新しい「答え合わせ済み」の1年です。
  • 当期(とうき)…いま進行中の決算のこと。この記事では3社とも2027年3月期(2026年4月〜2027年3月)を指します。まだ終わっていないので、数字は「会社予想(会社が見込んでいる数字)」です。
  • PER(株価収益率)…「株価 ÷ 1株あたり利益(EPS)」。株価が「1年分のもうけの何倍か」を表します。一般に低いほど割安とされますが、業種や成長性によって適正な水準は変わります。この記事のPERは、いずれも当期(2027年3月期)の会社予想利益をもとにした数字です。
  • PBR(株価純資産倍率)…「株価 ÷ 1株あたり純資産(BPS)」。株価が「会社の純資産(解散したら株主に残る価値)の何倍か」を表します。読み方は次の章でくわしく整理します。
  • 配当利回り(はいとうりまわり)…「1株あたりの配当 ÷ 株価」。投資したお金に対して、1年で何%の配当がもらえるかを表します。配当が同じでも株価が下がれば、利回りは自動的に上がります。

ひとつ注意があります。決算書には「当期純利益(とうきじゅんりえき)」という会計用語が出てきますが、これは上で説明した「当期(=2027年3月期)」とは別物です。会計の「当期純利益」は「その期の最終的なもうけ」を指す科目名で、いつの期の話かは文脈で決まります。混乱しやすいので、この記事では「最終利益」と言いかえることもあります。

そしてもう1つ、今回いちばん大事な前提を先に置いておきます。3社が2026年6月23日に年初来安値をつけた直接の理由・引き金を、私はこの記事では断定しません。なぜなら、3社の決算短信には「年初来安値」や「株価が下がった理由」への直接の記載がないからです。地合いがどうとか、為替がどうとか、需給がどうとか――もっともらしい理由はいくらでも語れますが、それは推測であって事実ではありません。だから本記事では、「いつの高値から、どれくらいの期間をかけて水準を切り下げ、本日年初来安値をつけたか」という事実だけを確認していきます。

PBRの読み方|「1倍割れ」と「1倍超」を中立に押さえる

今回いちばん効いてくるPBRを、中立に押さえておきます。PBRは「株価 ÷ 1株あたり純資産」。会社が今もっている純資産(解散したら株主に残る価値)に対して、株価が何倍ついているかを表す数字です。

  • PBRが1倍を割れているとは、株価が1株あたりの純資産を下回っている水準のこと。会社が今もっている純資産より株価が安い、という状態です。
  • PBRが1倍を超えているとは、市場がその会社の「将来の稼ぐ力」を純資産に上乗せして評価している、と読めます。

ここで大事なのは、PBR1倍割れを「割安だから買い」とは断定しないことです。1倍割れは「市場がその会社の将来に慎重」というサインでもあり、見方は分かれます。会社が抱えるリスクや、利益が減る局面を市場が織り込んでいると、純資産を下回る評価になることもあるからです。逆に1倍を大きく超えていても、それは成長期待が高いという意味であって、即「割高で売り」でもありません。

つまりPBRは、「市場がその会社をどう評価しているか」を映すであって、買い・売りの結論そのものではない――この前提で3社を見ていきます。本記事では、PBRが1倍を割れているか超えているかを「割安・割高」と決めつけず、「株価が1株純資産を下回る水準/上回る水準」「市場の評価が分かれている」と、あくまで中立に整理します。

なお、PBRやPERは事業構成によって適正な水準が変わる点にも注意が必要です。今回の3社は、トヨタが製造+金融、NTTが通信+銀行+IT、ソフトバンクが通信+金融+メディアと、事業の中身がまるで違います。だから3社のPER・PBRを単純に並べて「どちらが優れているか」を決めることはできません。この早見表は「市場が3社をどう違って評価しているか、その差を見る」目的に限定して使う、という前提でご覧ください。

まず結論|市場の評価は三者三様、業績の方向も違う

先に結論です。市場の評価=PBRとPERを並べると、3社できれいに開きます。

銘柄 株価 PER(当期予想) PBR 配当利回り
トヨタ(7203) 2,706円 10.7倍 0.80倍(純資産を下回る水準) 3.70%
NTT(9432) 144.2円 12.0倍 1.21倍(純資産をやや上回る水準) 3.74%
ソフトバンク(9434) 205.6円 17.8倍 3.73倍(純資産を大きく上回る水準) 4.28%

※株価・PER・PBR・利回りは2026年6月23日時点のスクショ正本。3社とも本日(2026/6/23)年初来安値。

市場の評価=PBRは、トヨタが0.80倍と純資産を下回る水準、NTTが1.21倍と中間、ソフトバンクが3.73倍と純資産を大きく上回る水準。PERも、トヨタ10.7倍・NTT12.0倍・ソフトバンク17.8倍と、この順に高くなります。

そして、この市場評価の差の背景には、業績の方向の違いがあります。

  • トヨタ…前期も当期予想も減益(前期は米国関税の影響が重し)
  • NTT…前期は増益でも、当期は最終減益予想
  • ソフトバンク…前期も当期予想も増収増益

市場の評価の高さと、業績の方向は、ゆるやかに対応しています。ただし、これは「優劣の順位づけ」ではありません。事業構成も違う3社を、あくまで「市場の評価の差を見る」目的でフラットに並べているだけ、という前提でご覧ください。それでは1社ずつ、長期チャート・最新決算・バリュエーション&配当の順に見ていきます。

① トヨタ自動車(7203)|PBR0.80・PER10.7と3社最低の評価、減益局面でも増配

どんな会社か

1社めはトヨタ自動車。言わずと知れた日本最大の自動車メーカーですが、投資の観点で押さえたいのは、トヨタが自動車事業+金融事業の複合体だということです。前期(2026年3月期)の営業利益の内訳を見ると、自動車事業が2兆7,770億円、金融事業が8,517億円、その他が1,320億円。クルマを作って売るだけでなく、自動車ローンやリースといった金融でもしっかり稼いでいます。

時価総額は42兆7,412億円と3社のなかで圧倒的に大きく、まさに日本を代表する企業です。このあとPERやPBRを見ていきますが、トヨタのように製造と金融が混ざった複合体は、純粋な1業種の会社とは利益やバランスシートの構造が違います。だからPERやPBRの単純な3社比較には、事業構成の違いがある点に留意しながら見ていきます。

長期チャート|4,000円から2,706円へ、約4か月で年初来安値

トヨタの長期チャートを見ます。月足の高値は4,000円で、つけたのは2026年2月。そこから本日2026年6月23日の現値は2,706円まで下がり、年初来安値を更新しました。

項目 数値
月足高値(時期) 4,000円(2026年2月)
現値(2026/6/23) 2,706円・年初来安値
局面 高値から約4か月で水準を切り下げ

高値4,000円から現値2,706円まで、おおよそ4か月という比較的短い期間で、大きく水準を切り下げた局面です。ここで大事なお断りを1つ。この下落の理由や引き金を、私はこの記事で断定しません。トヨタの決算短信には「年初来安値」や「株価が下がった理由」への直接の記載がないからです。だから「4か月で高値から水準を切り下げ、本日年初来安値をつけた」という事実だけを、ここでは確認します。

最新決算|前期は増収だが2桁減益、当期もさらに減益予想

トヨタの業績は「増収だが減益」という形です。まず前期(2026年3月期・IFRS連結)の実績から見ていきます。

2026年3月期(前期・実績) 金額 前期比
営業収益 50兆6,849億円 +5.5%
営業利益 3兆7,662億円 △21.5%
税引前利益 5兆1,529億円 △19.7%
親会社所有者帰属当期利益(最終利益) 3兆8,480億円 △19.2%

営業収益は+5.5%と増収でしたが、営業利益は△21.5%、最終利益は△19.2%と2桁の減益でした。短信が特記しているのは、米国の関税政策による当期の営業利益への減益影響額が1兆3,800億円にのぼること。これが利益を大きく押し下げる要因として明記されています。前期のEPS(1株あたり利益)は295.25円(前々期359.56円)でした。

続いて当期(2027年3月期・会社予想)です。

2027年3月期(当期・会社予想) 金額 前期比
営業収益 51兆円 +0.6%
営業利益 3兆円 △20.3%
税引前利益 4兆2,300億円 △17.9%
親会社所有者帰属当期利益(最終利益) 3兆円 △22.0%
EPS 251.25円

当期も、さらに減益の見通しです。営業利益は3兆円(△20.3%)、最終利益も3兆円(△22.0%)と、前期からもう一段下がる予想。会社は損益分岐台数の上昇・人や未来への投資拡大・米国関税の影響などを背景に挙げています。なお、この当期予想は為替が1ドル150円・1ユーロ180円という前提に立っている点も押さえておきます。為替前提が動けば予想も変わります。

バリュエーション&配当|PBR0.80・PER10.7と3社最低、95→100円へ増配

ここがトヨタを読むポイントです。市場の評価=PBRは0.80倍で、株価が1株あたりの純資産(1株あたり親会社所有者帰属持分3,062.82円)を下回る水準にあります。PERは10.7倍と3社のなかで最も低い。配当利回りは3.70%です。

配当の動きも見ておきます。

1株配当 配当性向(連結)
前々期(2025年3月期)実績 90.00円 25.0%
前期(2026年3月期)実績 95.00円 32.1%
当期(2027年3月期)予想 100.00円 39.8%

配当は前期95円→当期予想100円(中間50円+期末50円予想)へ増配方向です。減益のなかでの増配、という形ですね。なお、累進配当や総還元性向といった数値目標は、短信本文には明記がありません。自己株買いについては、前期(2026年3月期)の自己株式取得が約400億円で、前々期(2025年3月期)の約1.18兆円から大きく縮小しています。当期の新たな取得枠の決議は短信に記載がありません。

では、この「3社で最も低い評価」を、どう読むか。ここで断定は禁物です。PBR0.80倍・PER10.7倍という低めの評価を、そのまま「割安だから買い」とは私は言いません。トヨタは前期も当期予想も減益局面で、米国関税という重しも抱えています。市場はこの減益をどこまで織り込むかで評価が分かれている、と中立に見るのが妥当です。純資産を下回る株価を「お買い得」と見るか、「減益を映した慎重な評価」と見るか――その評価軸は、読者のみなさんにお渡しします。

② NTT(9432)|PBR1.21・PER12.0と3社の中間、当期減益予想でも増配+自社株買い枠

どんな会社か

2社めはNTT。日本を代表する通信会社ですが、今のNTTは通信に加えて銀行・ITへと事業の範囲を広げている点が大きな特徴です。前期に、住信SBIネット銀行を連結子会社化(2025年10月)、そしてNTTデータグループを完全子会社化(2025年9月)しました。これにより資産は30.1兆円から46.7兆円へと急増しています。銀行業の貸出金や預金が新たにバランスシートに乗ってきたためで、財務の構造そのものが大きく変わりました。

ここで注意してほしいのは、こうした連結範囲の拡大でB/S(バランスシート)が大きく変化しているため、過去との単純な比較がしづらいということ。「資産が増えた=事業が一気に伸びた」と単純には読めず、連結の範囲が広がった影響が大きい、という前提でNTTの数字を見ていきます。時価総額は13兆574億円です。

長期チャート|192.9円から144.2円へ、約2年半かけて年初来安値

NTTの長期チャートです。月足の高値は192.9円で、つけたのは2024年1月。そこから本日2026年6月23日の現値は144.2円まで下がり、年初来安値を更新しました。

項目 数値
月足高値(時期) 192.9円(2024年1月)
現値(2026/6/23) 144.2円・年初来安値
局面 高値から約2年半かけて水準を切り下げ

トヨタが約4か月という短期間で下げたのに対し、NTTは高値から約2年半をかけて、じわじわと水準を切り下げてきた局面です。同じ「本日年初来安値」でも、時間軸はずいぶん違いますね。ここでもお断りは同じです。この水準の切り下がりの理由を、私は断定しません。NTTの決算短信にも、年初来安値や株価下落の理由への直接の記載はないからです。「2024年1月の高値から約2年半かけて水準を切り下げ、本日年初来安値をつけた」という事実だけを、ここでは確認します。

最新決算|前期は増収増益、当期は最終減益予想

NTTの業績は、トヨタと少し形が違います。まず前期(2025年度=2026年3月期・IFRS連結)の実績です。

2026年3月期(前期・実績) 金額 前期比
営業収益 14兆4,091億円 +5.1%
営業利益 1兆7,062億円 +3.4%
税引前利益 1兆5,819億円 +1.1%
当社帰属当期利益(最終利益) 1兆370億円 +3.7%

トヨタが減益だったのに対し、NTTは前期は増収増益でした。ここで集計区分の注意です。前述の連結範囲拡大(住信SBIネット銀行・NTTデータの取り込み)に伴い、株主資本比率が34.0%から20.8%へ低下しています。1株あたり株主資本(BPS)も123.54円→119.47円へ。これも連結範囲の変化が大きく効いた数字なので、「財務が一気に悪化した」と短絡せず、構造変化の文脈で見るのがポイントです。前期のEPSは12.61円(前々期11.96円)でした。

続いて当期(2026年度=2027年3月期・会社予想)です。

2027年3月期(当期・会社予想) 金額 前期比
営業収益 15兆600億円 +4.5%
営業利益 1兆7,100億円 +0.2%
税引前利益 1兆5,000億円 △5.2%
当社帰属当期利益(最終利益) 9,800億円 △5.5%
EPS 12.10円

当期は、営業利益こそほぼ横ばいの+0.2%ですが、最終利益は9,800億円(△5.5%)と最終減益の予想です。前期は増益でも、当期は減益予想――この業績の方向の変化を押さえておきます。

バリュエーション&配当|PBR1.21・PER12.0と中間、2,000億円の自社株買い枠を決議

NTTの市場の評価を見ます。PBRは1.21倍で、株価が1株あたり純資産(BPS119.47円)をやや上回る水準。トヨタ(0.80倍)より高く、ソフトバンク(3.73倍)より低い、ちょうど3社の中間に位置します。PERは12.0倍、配当利回りは3.74%です。

配当の動きを見ておきます。

1株配当 配当性向(連結)
前々期(2024年度)実績 5.20円 43.5%
前期(2025年度)実績 5.30円 42.0%
当期(2026年度)予想 5.40円 44.6%

配当は前期5.30円→当期予想5.40円(中間2.70円+期末2.70円予想)へ増配方向です。当期は最終減益予想ながら、増配方向という形ですね。累進配当や総還元性向といった数値目標は、短信本文には明記がありません(「中長期的な企業価値向上」等の定性記述のみ)。

NTTでもう1つ押さえたいのが自社株買いです。決算短信に後発事象として、2026年5月の取締役会で「2026年5月11日から2027年3月31日まで、発行済株式総数14億株・取得総額2,000億円を上限とする自己株式取得枠」を決議したと記載されています。ただしこれは「枠の決議」段階であって、実際にそこまで買い戻したという実績ではない点に注意です。

PBR1.21倍・PER12.0倍という中間的な評価を、「前期は増益でも当期は最終減益予想」という業績の綱引きのなかで、市場がどう測っているか――という中立の見方になります。前期のB/S急拡大は連結範囲変更の影響が大きく、過去との単純比較に注意が要る点も、あわせて押さえておきたいところです。

③ ソフトバンク(9434)|PBR3.73・PER17.8と3社最高、前期も当期も増収増益

どんな会社か(9984ではなく通信子会社の9434)

3社めはソフトバンク。ここで必ず押さえてほしいのが、今回見るのは通信子会社の「ソフトバンク株式会社(9434)」だということです。投資の世界では、ソフトバンクという名前で2つの会社が混同されがちです。1つは投資会社としての性格が強いソフトバンクグループ(9984)。もう1つが、その傘下で携帯通信などを手がけるソフトバンク(9434)。今回のテーマである年初来安値・高配当の対象は、後者の通信子会社9434のほうです。

9984とは別の会社で、ビジネスの中身も株価の動きも別物なので、ここを取り違えると話がまったく変わってしまいます。9434は携帯通信を中核に、決済・メディアなど幅広い事業を持つ通信会社、という前提で見ていきます。時価総額は9兆8,687億円です。

長期チャート|247.9円から205.6円へ、約10か月で年初来安値(チャートは分割調整後)

ソフトバンク(9434)の長期チャートです。月足の高値は247.9円で、つけたのは2025年8月。そこから本日2026年6月23日の現値は205.6円まで下がり、年初来安値を更新しました。

項目 数値
月足高値(時期) 247.9円(2025年8月)
現値(2026/6/23) 205.6円・年初来安値
局面 高値から約10か月で水準を切り下げ

高値から約10か月で水準を切り下げた局面で、トヨタの約4か月、NTTの約2年半とちょうど中間くらいの時間軸です。ここで1つ技術的な注意があります。ソフトバンクは2024年10月1日付で、1株を10株に分ける「1→10の株式分割」を実施済みです。今お話ししている月足高値247.9円(2025年8月)は分割後ベースの数字なので問題ありませんが、もしご自身で過去のチャートをさかのぼる際は、分割調整がされているかどうかを必ず確認してください。調整前の古い株価とそのまま比べると、見かけ上は数字が大きくずれてしまいます。そして下落の理由は、これも決算短信に記載がないため、断定しません。

最新決算|前期は増収増益で営業利益初の1兆円超、当期も増収増益予想

ソフトバンクの業績は、トヨタ・NTTと並べると最も力強い形です。まず前期(2026年3月期・IFRS連結)の実績です。

2026年3月期(前期・実績) 金額 前期比
売上高 7兆386億円 +7.6%
営業利益 1兆426億円 +5.4%
税引前利益 9,300億円 +5.7%
親会社所有者帰属当期利益(最終利益) 5,508億円 +4.7%

前期は増収増益で、しかも営業利益は初めて1兆円台に乗りました。前期のEPS(基本的)は11.35円(前々期10.99円)でした。なお前期は連結範囲が変動(新規4社、除外2社)している点が短信注記にあります。

続いて当期(2027年3月期・会社予想)です。

2027年3月期(当期・会社予想) 金額 前期比
売上高 7兆5,000億円 +6.6%
営業利益 1兆1,000億円 +5.5%
親会社所有者帰属当期利益(最終利益) 5,600億円 +1.7%
EPS 11.54円

当期も、売上+6.6%・営業利益+5.5%・最終+1.7%と増収増益の見通しです。ここが3社の大きな分かれ目。前期も当期予想も増益基調なのは、3社のなかでソフトバンクだけです。トヨタは前期も当期も減益、NTTは前期は増益でも当期は最終減益予想。そのなかでソフトバンクだけが、前期・当期ともに増益の方向を描いている――この業績の方向の違いが、このあと見るバリュエーションの差の背景にあります。

バリュエーション&配当|PBR3.73・PER17.8と3社最高、中計で継続的増配を明記

ソフトバンクの市場の評価を見ます。PBRは3.73倍で、株価が1株あたり純資産(BPS55.13円)を大きく上回る水準。PERも17.8倍と3社で最も高い評価です。これは、当期も増収増益という成長期待が株価に織り込まれていると中立に読めます。

配当の動きを見ておきます。

1株配当 配当性向(連結)
前々期(2025年3月期)実績 ※分割影響で単純合計表示なし(年86円相当) 78.3%
前期(2026年3月期)実績 8.60円(中間4.30+期末4.30) 75.8%
当期(2027年3月期)予想 8.80円(中間4.40+期末4.40) 76.2%

配当は前期8.60円→当期予想8.80円へ増配方向で、利回りは4.28%と3社で最も高い。ただし1つ注意があります。ソフトバンクの配当性向は約76%と3社で突出して高い水準で、この高い利回りはその高い配当性向に支えられている、という構造です。

配当方針については、決算短信に「中期経営計画(2027年3月期〜2031年3月期)において、利益成長に合わせた普通株式1株当たり配当金の継続的な増配を目指す」と明記されています。3社のうち、配当方針をこうして中計で明文化しているのはソフトバンクだけです(なお「累進配当」という語そのものは使われておらず、「利益成長に合わせた継続的な増配を目指す」という表現です)。

PBR3.73倍という高い評価を、「当期も増益」という成長期待と、約76%という高めの配当性向の両面から見るのがポイントです。利回り4.28%は3社で最高ですが、これは高い配当性向に支えられている点に留意したいところです。なお、社債型種類株式(第1回・第2回)を別途発行しており、その配当は普通株式とは別建てである点も、頭の片隅に置いておくとよいと思います。

3社バリュエーション比較早見表

ここで3社の数字を一覧にします。まず市場の評価(2026年6月23日時点のスクショ正本)です。

銘柄 株価 PER(当期予想) PBR 配当利回り 時価総額 月足高値(時期)
トヨタ(7203) 2,706円 10.7倍 0.80倍 3.70% 42兆7,412億円 4,000円(2026/2)
NTT(9432) 144.2円 12.0倍 1.21倍 3.74% 13兆574億円 192.9円(2024/1)
ソフトバンク(9434) 205.6円 17.8倍 3.73倍 4.28% 9兆8,687億円 247.9円(2025/8)

※3社とも本日(2026/6/23)年初来安値。指標は株価が動けば変わります。

一覧にすると、PBRもPERもこの順にきれいに高くなっていくのが見えます。市場の評価は、トヨタが純資産を下回る水準、NTTが中間、ソフトバンクが純資産を大きく上回る水準――まさに三者三様です。

続いて、その評価の背景にある業績と配当の方向です。

銘柄 前期(2026/3期)業績 当期(2027/3期)予想
トヨタ 増収・減益(営業△21.5%・関税影響1.38兆円) さらに減益(営業△20.3%・最終△22.0%)
NTT 増収増益(最終+3.7%・連結範囲拡大) 最終減益(最終△5.5%・営業+0.2%)
ソフトバンク 増収増益(最終+4.7%・営業初の1兆円超) 増収増益(最終+1.7%・営業+5.5%)
銘柄 前期1株配当 当期予想1株配当 配当性向(連結) 配当方針の明記
トヨタ 95.00円 100.00円(増配) 32.1%→39.8% 数値目標なし
NTT 5.30円 5.40円(増配) 42.0%→44.6% 数値目標なし(+2,000億円の自社株買い枠を決議)
ソフトバンク 8.60円 8.80円(増配) 75.8%→76.2% 中計で継続的増配を明記

ただし大事な注意を、もう一度。3社は事業構成がまるで違います。トヨタは製造+金融、NTTは通信+銀行+IT、ソフトバンクは通信+金融+メディア。だからPERやPBRの単純な数値比較で優劣を決めることはできません。この早見表は「どちらが優れているか」を決めるためのものではなく、あくまで「市場が3社をどう違って評価しているか、その差を見る」目的に限定して使ってください。念のためにもう一度書きますが、この比較はどれが優れているという「順位づけ」ではなく、それぞれの個性を整理したものです。

業績と配当の方向まとめ|減益でも増配・減益予想でも増配・増益で増配

業績と配当の方向を整理します。

  • トヨタ…前期も当期予想も減益。それでも配当は95円→100円へ増配です。減益のなかでの増配、という形ですね。
  • NTT…当期は最終減益の予想。それでも配当は5.30円→5.40円へ増配し、さらに2,000億円の自社株買い枠を決議しています。減益予想でも株主還元の姿勢は前向き、という形です(ただし枠の決議段階)。
  • ソフトバンク…前期も当期も増益。その成長に合わせて配当も8.60円→8.80円へ増配。増益で素直に増配、という最もシンプルな形です。

注目したいのは、業績の方向は減益・減益予想・増益とバラバラなのに、3社とも配当は増配方向だということ。ただし、その増配を「何が支えているか」――トヨタとNTTは減益・減益予想のなかでの増配、ソフトバンクは増益に伴う増配と、中身はまるで違います。同じ増配でも背景が違う、というのが今回の整理です。

そして、市場の評価=PBR・PERの高低は、この業績の方向とゆるやかに対応していました。トヨタは減益局面でPBR0.80倍・PER10.7倍と最も低く、ソフトバンクは増益基調でPBR3.73倍・PER17.8倍と最も高い。NTTはその中間。市場は「今の純資産」だけでなく「これから稼ぐ力をどう見ているか」を、こうした評価の差に映している――そう読むと、年初来安値・高配当という同じ入口の先に、3社の違いが見えてきます。

「年初来安値×バリュエーション」の読み方チェックリスト

今回の3社から導ける、「年初来安値×バリュエーション」の読み方を、チェックリストの形にまとめておきます。気になる高配当株が年初来安値をつけたとき、この順番で確認すると、思考が整理しやすくなります。

  1. 年初来安値の理由を断定しない。 決算短信に記載がない以上、なぜ下げたかは推測にすぎません。事実(いつの高値からどれくらいの期間で水準が切り下がったか)と、推測(地合い・為替・需給など)を分けて考える。
  2. PBRが純資産との関係でどこにあるかを見る。 1倍割れか1倍超か。ただし1倍割れ=割安と決めつけない。1倍割れは「市場が将来に慎重」というサインでもあり、見方は分かれます。
  3. PERと業績の方向をセットで見る。 低いPERでも減益局面なら「減益を織り込んだ評価」かもしれない。高いPERは成長期待の織り込みかもしれない。PERの数字だけで割安・割高を決めない。
  4. その高い利回りを何が支えているかを見る。 増益に伴う増配か、減益のなかでの増配か。配当性向は高すぎないか(ソフトバンクは約76%)。利回りの数字の裏側にある「支え」を確認する。
  5. 事業構成の違いを忘れない。 製造+金融(トヨタ)、通信+銀行+IT(NTT)、通信+金融+メディア(ソフトバンク)を、同じものさしで単純比較しない。比較は「市場評価の差を見る」目的に限定する。

この5つを通すと、「年初来安値で高配当」という見出しの先にある、市場の評価の中身が見えてきます。年初来安値も高配当も、スタート地点であって、結論ではありません。

よくある質問(FAQ)

Q1. 3社とも年初来安値・高配当なら、どれを選んでも同じですか?
A. 利回りはいずれも3.7〜4.3%と近い水準ですが、市場の評価=割安度はまるで違います。PBRはトヨタ0.80倍(純資産を下回る水準)・NTT1.21倍(中間)・ソフトバンク3.73倍(純資産を大きく上回る水準)、PERもトヨタ10.7倍・NTT12.0倍・ソフトバンク17.8倍とこの順に高くなります。業績の方向も、トヨタは前期も当期も減益、NTTは当期が最終減益予想、ソフトバンクは前期も当期も増益と三者三様です。利回りの数字だけでなく、この「市場の評価」と「業績の方向」をセットで見ることをおすすめします。

Q2. トヨタはPBR0.80倍と純資産を下回っています。割安だから買い、ということですか?
A. 本記事では、PBR1倍割れを「割安だから買い」とは断定しません。PBR0.80倍は「株価が1株あたり純資産を下回る水準」という事実を示すもので、それ自体が買いの結論ではないからです。トヨタは前期も当期予想も減益局面で、米国関税という重しも抱えています。市場がこの減益をどこまで織り込んでいるか、純資産を下回る評価を「お買い得」と見るか「減益を映した慎重な評価」と見るかは、見方が分かれます。その評価軸は、読者ご自身にお渡しする趣旨です。

Q3. 3社が2026年6月23日に年初来安値をつけたのは、なぜですか?
A. 各社の決算短信には「年初来安値」や「株価が下がった理由」への直接の記載がないため、本記事では理由を断定していません。為替・金利・需給・地合いといった要因を挙げることはできても、それは推測であって事実ではありません。本記事では、「いつの高値から、どれくらいの期間をかけて水準を切り下げ、本日年初来安値をつけたか」という事実だけを確認しています(トヨタは約4か月、NTTは約2年半、ソフトバンクは約10か月)。

Q4. ソフトバンクのPBRは3.73倍と高いですが、割高で売り、ということですか?
A. これも断定はしません。PBR3.73倍・PER17.8倍という高い評価は、「当期も増収増益」という成長期待が株価に織り込まれている、と中立に読めます。一方で、配当性向は約76%と3社で突出して高く、利回り4.28%はその高い配当性向に支えられている構造です。高い評価を「成長期待の反映」と見るか「割高」と見るかは見方が分かれるため、成長の持続性と配当性向の両面から見ることをおすすめします。

Q5. NTTは当期が最終減益予想なのに、なぜ増配や自社株買いができるのですか?
A. NTTは当期(2027年3月期)に最終利益9,800億円(前期比△5.5%)と最終減益を見込みますが、配当は5.30円→5.40円へ増配方向で、加えて2026年5月に「2,000億円・14億株を上限とする自己株式取得枠」を決議しています(後発事象)。ただし、この自社株買いは「枠の決議」段階であって、実際にそこまで買い戻した実績ではない点に注意が必要です。減益予想のなかでの株主還元の前向きさをどう評価するかは、見方が分かれるところです。なお、前期はNTTデータ完全子会社化などで株主資本比率が34.0%→20.8%へ低下しており、財務面は連結範囲の変化が大きく効いている点も、あわせて押さえておきたいところです。

Q6. 結局、この3社のなかでどれを選べばいいですか?
A. 本記事は特定の銘柄をおすすめする趣旨ではないので、「これを買うべき」という答えは出しません。お伝えしたいのは、3社は「年初来安値・高配当」という入口こそ同じでも、市場の評価=割安度(PBR・PER)と業績の方向が三者三様だということです。トヨタなら「減益局面でPBR0.80倍という低い評価をどう読むか」、NTTなら「当期減益予想でも増配・自社株買い枠を決議した中間的な評価をどう見るか」、ソフトバンクなら「前期も当期も増益という成長期待が織り込まれたPBR3.73倍をどう受け止めるか」。利回りや年初来安値の数字を横並びで比べるのではなく、それぞれの「市場評価と業績の方向」を理解したうえで、自分が何を重視するかで判断するのが、遠回りなようでいちばんの近道だと考えています。

まとめ|同じ安値・高配当でも、市場の評価は三者三様

2026年6月23日に年初来安値をつけた、高配当の日本代表3社――トヨタ自動車(7203)・NTT(9432)・ソフトバンク(9434)。いずれも予想配当利回りは3.7〜4.3%の高配当ですが、市場の評価=割安度は、まるで違いました。

  • トヨタ(7203)…PBR0.80倍・PER10.7倍と3社で最も低い評価で、前期も当期予想も減益局面(前期は米国関税の影響1.38兆円が重し)。それでも配当は95円→100円へ増配。純資産を下回る評価を、減益をどう織り込むかで市場の見方が分かれている。
  • NTT(9432)…PBR1.21倍・PER12.0倍と3社の中間。前期は増収増益でも当期は最終減益予想。連結範囲拡大(住信SBIネット銀行・NTTデータ)で財務構造が変化中。配当は5.30円→5.40円へ増配し、2,000億円の自社株買い枠を決議(枠の決議段階)。
  • ソフトバンク(9434)…PBR3.73倍・PER17.8倍と3社で最も高い評価で、前期も当期予想も増収増益(前期は営業利益初の1兆円超)。配当は8.60円→8.80円へ増配、利回り4.28%は3社最高だが配当性向は約76%と高水準。中計で「継続的な増配」を明記。

3社に共通するのは、「年初来安値・高配当」という見かけの数字だけでは、市場がその会社をどう評価しているかも、業績の方向も分からないということです。純資産を下回るトヨタ、中間のNTT、純資産を大きく上回るソフトバンク――同じ入口を通っても、市場がつける評価はこれだけ違います。

大事なのは、「割安だから買い」「割高だから売り」と断定するのではなく、「なぜ市場はこの会社にこの評価をつけているのか」を見ること。年初来安値も高配当も、入口にすぎません。PBRが純資産との関係でどこにあるか、PERと業績の方向がどう対応しているか、利回りを何が支えているか――そこまで踏み込んで初めて、市場の評価の中身が見えてきます。その評価軸は、読者のみなさんにお渡しします。

なお今日お話しした指標は2026年6月23日時点のもので、株価が動けばPER・PBR・利回りはすべて変わります。3社とも、私は引き続きウォッチしていきます。状況が大きく動いたら、また決算や開示の数字をもとに、このブログで点検していくつもりです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

※本記事は2026年6月23日時点の株価・PER・PBR・配当利回り・時価総額・月足高値、および各社の決算短信(IFRS・連結)に基づき作成した個人の整理です。株価・指標は変動し、株価が動けばPER・PBR・利回りはすべて変わります。決算期は3社とも前期=2026年3月期(実績)・当期=2027年3月期(会社予想)です。3社が2026年6月23日に年初来安値をつけた直接の引き金は、各社の決算短信に記載がないため、本記事では断定していません。PBRが1倍を割れている/超えていることを「割安だから買い」「割高だから売り」と断定するものではなく、市場評価の高低で3社の優劣を順位づけするものでもありません。3社は事業構成(製造+金融/通信+銀行+IT/通信+金融+メディア)が異なるため、PER・PBRの単純比較は「市場評価の差を見る」目的に限定しています。記載の数値・見通しは将来を保証するものではなく、特定銘柄の売買を推奨するものでもありません。投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。

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たぐ

コロナショック直前の2020年に投資をスタート。リアルタイムで暴落を経験しながら独学で投資の基礎を習得。 現在の運用総額5,000万円超・年間配当収入120万円超を達成。投資信託・ETF・個別株・米国株など100銘柄超に分散投資し、相場の波に強いポートフォリオを構築中。 高配当株の長期保有と新NISAの積立を組み合わせた"2刀流"スタイルで資産形成を実践。保有銘柄の決算・配当・株価をブログで赤裸々公開しています。YouTubeでも投資情報を発信中!

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