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【9434】ソフトバンク 2026年3月期決算を徹底解説|営業利益初の1兆円超え・Activate AI for Societyで2031年3月期1兆7,000億円目標

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目次

ソフトバンク(9434)2026年3月期決算を徹底解説|営業利益初の1兆円超え、年間8.60円配当を据え置き新中期経営計画で2031年3月期営業利益1兆7,000億円へ

2026年5月11日、ソフトバンク株式会社(証券コード9434)が2026年3月期の決算短信を公表しました。本記事で取り上げるのは、ソフトバンクグループ株式会社(証券コード9984)ではなく、その通信子会社にあたる「ソフトバンク株式会社(9434)」です。同じ「ソフトバンク」を冠する上場会社が2社あるため混同されがちですが、9434は携帯電話「ソフトバンク」「ワイモバイル」「LINEMO」やブロードバンド「SoftBank 光」、PayPay、LINEヤフーを傘下に持つ純粋な通信・IT事業会社です。

結論から言うと、2026年3月期は売上高7兆387億円(前期比+7.6%)、営業利益1兆426億円(同+5.4%)と過去最高を更新し、ソフトバンクとして初めて営業利益が1兆円を超える節目の決算となりました。親会社の所有者に帰属する純利益も5,508億円(同+4.7%)と過去最高を更新し、2024年3月期に発表していた中期経営計画の最終年度目標5,430億円を上回って着地しました(決算短信P9より)。配当は普通株式1株当たり年間8.60円(中間4.30円・期末4.30円)と前期と同水準を維持しつつ、来期2027年3月期は年間8.80円(中間4.40円・期末4.40円)と1株当たり0.20円の増配を予想として開示しています(決算短信P2より)。

本記事では、決算短信の数字に忠実に基づき、業績・5セグメントの動向・配当方針・財務状況・キャッシュフロー・新中期経営計画「Activate AI for Society」までを、投資家の視点から1.4万字超の分量で詳しく整理します。

1. 9984ではなく9434|ソフトバンクの会社概要と本決算のサマリー

1-1. ソフトバンク(9434)は何の会社か

ソフトバンク株式会社は、東京都港区海岸一丁目7番1号に本社を置く通信・IT事業会社です。代表取締役社長執行役員 兼 CEOは宮川潤一氏(決算短信P1)。最終的な親会社はソフトバンクグループ株式会社(9984)であり、その間にソフトバンクグループジャパン株式会社が位置する3層構造になっています(決算短信P31)。

事業は「コンシューマ」「エンタープライズ」「ディストリビューション」「メディア・EC」「ファイナンス」の5つの報告セグメントから構成されており、傘下にはLINEヤフー、ZOZO、アスクル、PayPay、PayPayカード、PayPay銀行、PayPay証券、SBペイメントサービス、SB C&S、SBテクノロジー、Wireless City Planning、クラシル、LINE MAN(タイ)、LINE Bank Taiwan、Cubic Telecomなど、日本国内のIT産業を支える主要企業が並びます(決算短信P3〜P4)。

投資家の間で「ソフトバンク」と呼ばれるとき、しばしばソフトバンクグループ(9984、孫正義氏のAI・半導体投資会社)と混同されますが、両者の事業は大きく異なります。9434は通信事業と国内IT・決済プラットフォームを基盤とするキャッシュ創出型・配当重視の事業会社、9984はSVF(ソフトバンク・ビジョン・ファンド)を中心とする投資持株会社です。本記事は9434に限定して解説します。

1-2. 業績ハイライト

項目 2025年3月期 2026年3月期 増減額 増減率
売上高 6兆5,443億円 7兆387億円 +4,943億円 +7.6%
営業利益 9,890億円 1兆426億円 +536億円 +5.4%
税引前利益 8,801億円 9,300億円 +500億円 +5.7%
純利益 6,553億円 7,266億円 +713億円 +10.9%
親会社の所有者に帰属する当期利益 5,261億円 5,508億円 +246億円 +4.7%
調整後EBITDA 1兆7,531億円 1兆8,196億円 +664億円 +3.8%

※決算短信P12「b.連結経営成績の概況」より作成

ソフトバンクの売上高は7期連続で過去最高、営業利益も「営業利益1兆円」という象徴的な節目を初めて突破しました。前期2025年3月期の営業利益9,890億円から1兆426億円へと、わずか1年で1兆円ラインを越えてきた格好です。NTT(9432)の営業利益が約1.7兆円規模、KDDI(9433)が約1.1兆円規模であることを踏まえると、ソフトバンクは通信3社の中で最も小さい営業利益規模でしたが、ついに営業利益で「1兆円通信キャリアクラブ」入りを果たしたことになります。

営業利益率は14.8%(前期15.1%)と、売上構成の変化(低利益率のディストリビューション事業の急拡大)を反映して若干低下しているものの、依然として国内通信キャリアとして高水準を維持しています(決算短信P1)。親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)は19.3%(前期20.5%)と20%近辺を維持しており、自己資本比率は16.0%とやや低めなものの、これはPayPay銀行・LINE Bank Taiwanといった銀行子会社の預金(流動負債)が膨らんでいることが主因です(決算短信P1、P20)。

2. 5セグメント別損益|ファイナンス事業が大化け、メディア・ECは唯一の減益

ソフトバンクの2026年3月期セグメント別の状況を一覧化すると、以下のようになります。決算短信P9〜P15、P50に記載されたセグメント情報および「c.セグメント別の状況」を再構成しました。

セグメント 売上高 26/3期 前期比 セグメント利益 26/3期 前期比
コンシューマ 3兆151億円 +2.1% 5,508億円 +3.8%
エンタープライズ 1兆29億円 +8.7% 1,924億円 +13.0%
ディストリビューション 1兆563億円 +18.8% 353億円 +15.9%
メディア・EC 1兆6,680億円 +2.4% 2,404億円 ▲7.1%
ファイナンス 4,045億円 +24.3% 863億円 +107.1%

※決算短信P12〜P15「c.セグメント別の状況」より作成

注目したい論点は次の3つです。第一に、主力のコンシューマ事業が5,508億円と過去最高のセグメント利益を計上し、しかも親会社に帰属する純利益の数値(5,508億円)と偶然にも同額になっていること。第二に、エンタープライズ事業が+13.0%、ファイナンス事業が+107.1%と2桁以上の大幅増益を達成したこと。第三に、LINEヤフーを抱えるメディア・EC事業がアスクルのシステム障害影響などで唯一の減益になったことです。

2-1. コンシューマ事業|「ワイモバイル」けん引、でんきは縮小

コンシューマ事業は、主に国内の個人向けにモバイル(ソフトバンク・ワイモバイル・LINEMO)、ブロードバンド(SoftBank 光、SoftBank Air)、電力サービス(おうちでんき)、携帯端末販売を提供しています(決算短信P13)。

売上区分 2025年3月期 2026年3月期 増減率
モバイル 1兆5,745億円 1兆5,918億円 +1.1%
ブロードバンド 4,088億円 4,194億円 +2.6%
でんき 2,558億円 2,103億円 ▲17.8%
物販等売上 7,139億円 7,936億円 +11.2%
合計 2兆9,529億円 3兆151億円 +2.1%

※決算短信P13より作成

モバイル売上は前期比+173億円(+1.1%)と微増ながら、安価ブランドである「ワイモバイル」を中心にスマートフォン契約数が前期比で伸長しました。会社側は、顧客獲得施策影響を除いた各四半期のモバイル売上が、2024年3月期第3四半期以降前年同期比で増収に転じており、2026年3月期第4四半期も接続料の遡及精算影響を除けば増収を継続していると説明しています(決算短信P13)。料金値下げを通じてユーザー基盤を厚くしたうえで再び単価が安定基調に転換しつつあるという「日本の通信キャリアの定石パターン」をなぞる動きです。

2025年9月から「ワイモバイル」で新料金プラン「シンプル3 S/M/L」の提供を開始しており、データ容量、経済圏サービスのメリット、追加料金不要の海外データ通信などを拡充しています(決算短信P10)。また、2025年8月には物価高騰に伴う各種費用上昇を踏まえ、携帯電話およびブロードバンドサービスに関する各種手数料の改定を実施しました(同P10)。

ブロードバンドは「SoftBank 光」(SoftBank Air契約数含む)の契約数増加により+106億円。2026年1月には、加入者終端装置(OLT)および加入者回線の構築・管理・運用事業について、ソニーネットワークコミュニケーションズと合弁会社設立の最終契約を締結しました(決算短信P10)。光ファイバアクセス網のオペレーションを通信会社をまたいで共通化していく動きで、設備投資の効率化が見込まれます。

一方、でんき売上は▲454億円(▲17.8%)と大きく減少しています。電力市場での取引が減少したことが主因と説明されており、エネルギー価格の落ち着きに伴う卸取引の縮小と推察されます(決算短信P14)。物販等売上は携帯端末の平均単価上昇により+797億円(+11.2%)と大幅増加しました。

これらを合算した結果、コンシューマ事業のセグメント利益は5,508億円(前期比+204億円、+3.8%)と過去最高。減価償却費・償却費は3,743億円と前期から45億円減少しています(決算短信P13)。

2-2. エンタープライズ事業|法人DX・AX需要を取り込み13%増益

エンタープライズ事業は、法人向けにモバイル・固定通信に加え、データセンター、クラウド、セキュリティ、グローバル、AI、IoT、デジタルマーケティングなどのソリューションサービスを提供しています(決算短信P15)。Cubic Telecom(コネクテッドカー向けIoTプラットフォーム)、SBエンジニアリング、IDCフロンティア、SBテクノロジー、サイバートラスト、Gen-AX、そして2025年11月に発足したSB OAI Japan(OpenAIとの合弁)といった子会社群が事業を支えています(決算短信P3)。

売上区分 2025年3月期 2026年3月期 増減率
モバイル 3,159億円 3,406億円 +7.8%
固定 1,693億円 1,673億円 ▲1.2%
ソリューション等 4,372億円 4,950億円 +13.2%
合計 9,224億円 1兆29億円 +8.7%

※決算短信P15より作成

モバイル売上は法人向け契約数増加に伴う端末売上・通信売上の伸長で+248億円。固定売上は伝統的な電話サービスの契約数減少で▲21億円。ソリューション等売上はクラウド・セキュリティを中心に+578億円(+13.2%)と急拡大しています(決算短信P15)。営業費用は売上原価増加により+584億円となったものの、それを上回る増収効果によりセグメント利益は1,924億円(前期比+221億円、+13.0%)と大幅増益を達成しました。

注目すべき動きとして、2025年10月にオラクル・コーポレーションと「データ主権(ソブリン性)」を備えたクラウドサービスの協業を開始し、2026年4月より「Cloud PF Type A」の提供を順次開始。「Oracle Alloy」を活用したクラウド基盤をソフトバンクの日本国内データセンターに導入し、自社で管理・運用することで、政府・自治体・金融機関などソブリン要件の厳しい顧客向け市場を開拓します(決算短信P10)。

さらに2025年11月、SB Intuitions社と共同で、4,600億パラメーター規模の国産大規模言語モデル(LLM)「Sarashina」をベースとした軽量モデル「Sarashina mini」のAPIサービス「Sarashina API」を法人向けに提供開始。同月、ソフトバンク・ソフトバンクグループ・OpenAIの3社合弁会社「SB OAI Japan合同会社」を発足させ、OpenAIのエンタープライズ向け最新プロダクトと日本市場最適化された運用サポートを組み合わせたAIソリューション「Crystal intelligence(クリスタル・インテリジェンス)」を2026年に日本国内で独占展開予定とアナウンスしています(決算短信P10)。

2026年1月には、ソフトバンク独自開発のAIデータセンター向けソフトウェアスタック「Infrinia AI Cloud OS」を発表しました。マルチテナント環境に対応したKubernetes as a Service(KaaS)と、大規模言語モデルの推論機能をAPI提供するInference as a Service(Inf-aaS)を、自社のGPUクラウドサービスの機能として構築できるとしています(決算短信P10)。「GPU調達」「データセンター建設」だけでなく「クラウドOS」を自前で持つのがソフトバンクのエンタープライズ戦略の特徴です。

2-3. ディストリビューション事業|GIGAスクール第2期とWindows10移行で売上18%増

ディストリビューション事業は、法人向けクラウド・AI関連商材、個人向けソフトウェア・モバイルアクセサリー・IoTプロダクトなどを取り扱う、SB C&S株式会社が中心の事業です(決算短信P3、P16)。

項目 2025年3月期 2026年3月期 増減率
売上高 8,895億円 1兆563億円 +18.8%
営業費用 8,591億円 1兆211億円 +18.9%
セグメント利益 304億円 353億円 +15.9%

※決算短信P16より作成

ディストリビューション事業は売上規模で初めて1兆円を突破しました。背景は3つあります。(1) 法人向けICT関連の商材伸長、(2) クラウド・SaaSなど継続収入商材の堅調な伸長、(3) GIGAスクール構想第2期およびサポートが終了するWindows 10からWindows 11への移行に伴うPC売上の増加です(決算短信P16)。要は「法人ITの再投資サイクルがソフトバンクのディストリビューション事業に追い風となった1年だった」ということです。

ただし、ディストリビューション事業は商社的ビジネスモデルでもあるため、売上総利益率は低く、セグメント利益353億円(売上の3.3%)に留まります。営業費用も売上増に伴い同程度の比率で増加しています。ボリュームを取りつつ採算改善を進めるフェーズが続きます。

2-4. メディア・EC事業|アスクルのシステム障害で唯一の減益

メディア・EC事業は、LINEヤフー株式会社を中心に、Yahoo! JAPAN・LINE・Yahoo!ショッピング・ZOZOTOWN・Yahoo!オークションなどを展開する事業です。2025年6月からPayPay銀行がメディア・ECからファイナンスへ移管されたため、前年比較値は遡及修正されています(決算短信P17)。

売上区分 2025年3月期 2026年3月期 増減率
メディア 7,239億円 7,287億円 +0.7%
コマース 8,468億円 8,552億円 +1.0%
戦略 511億円 738億円 +44.4%
その他 71億円 102億円 +44.8%
合計 1兆6,289億円 1兆6,680億円 +2.4%

※決算短信P17より作成

メディア売上は検索広告が減収した一方、アカウント広告が増収したことで微増。コマース売上は2025年10月に発生したアスクルのシステム障害に伴い同社の取扱高が減少したものの、LINE MAN CORPORATION PTE. LTD.およびBEENOSの子会社化、ならびにZOZOグループにおける取扱高増加により+84億円。戦略売上は2025年6月に子会社化したLINE Bank Taiwanにより+227億円(+44.4%)と急増しています(決算短信P17)。

営業費用は4.2%増加。要因は4つです。(1) 前期に計上した子会社の支配喪失に伴う利益剥落、(2) アスクルグループのシステム障害に伴う営業費用減少、(3) LINE MAN・LINE Bank Taiwan・BEENOSの子会社化による営業費用増加、(4) 販売促進費の増加(決算短信P18)。特にLINE MAN CORPORATION PTE. LTD.の子会社化に伴っては、段階取得に係る差益443.77億円が「その他の営業収益」に計上されています(決算短信P46)。

これらの結果、メディア・EC事業のセグメント利益は2,404億円(前期比▲184億円、▲7.1%)と5セグメントで唯一の減益となりました。会社側は2027年3月期に2,640億円(+9.8%)への増益を見込んでおり、アスクル問題からの回復・固定費削減・プロダクト力強化で再成長軌道に戻る計画です(決算短信P20)。

2-5. ファイナンス事業|PayPay米国上場、セグメント利益107%増

ファイナンス事業は、PayPay株式会社(QRコード決済)、PayPayカード(クレジットカード)、PayPay銀行、PayPay証券、SBペイメントサービス(決済代行)を擁する事業です(決算短信P4)。2025年4月にPayPay株式会社がPayPay銀行株式会社を子会社化したことに伴い、PayPay銀行はメディア・ECからファイナンスへ移管され、前年数値は遡及修正されています(決算短信P19)。

項目 2025年3月期 2026年3月期 増減率
売上高 3,255億円 4,045億円 +24.3%
営業費用 2,838億円 3,182億円 +12.1%
セグメント利益 417億円 863億円 +107.1%

※決算短信P19より作成

ファイナンス事業のセグメント利益は417億円から863億円へと倍増(+107.1%)。売上高はPayPayおよびPayPayカードが展開するQRコード決済・クレジットカードの決済取扱高増加で+790億円、営業費用はポイント還元などの販売促進費およびPayPay米国上場に伴う費用が増加したものの+344億円に留まったため、増収幅が増費幅を大きく上回って利益が倍増しました(決算短信P19)。

本セグメントの最大のトピックは、PayPay株式会社の米国証券取引所への新規上場(2026年3月11日米国時間)です。同社の普通株式を対象とした合計63,235,295個の米国預託株式(ADS)の募集および売出しを行い、ソフトバンクの議決権所有割合は66.00%から62.16%となりました。差引手取概算額は引受手数料および募集関連費用控除後で946億円(603百万米ドル)。PayPayは引き続きソフトバンクの連結子会社です(決算短信P10〜P11)。

また、2025年5月にはソフトバンクと三井住友カード株式会社がデジタル分野における包括的業務提携の基本合意書を締結。SMBCグループの個人向け総合金融サービス「Olive」とソフトバンクグループの「PayPay」の相互連携を進めることで、キャッシュレス決済を超えた金融プラットフォーム化を目指しています(決算短信P10)。

2027年3月期予想ではセグメント利益1,100億円(+27.5%)を見込んでおり、決済領域のさらなる拡大と金融サービス領域の成長が続く計画です(決算短信P20)。

3. 配当方針|2026年3月期も「年間8.60円」を維持、2027年3月期は0.20円増配へ

3-1. 配当推移(株式分割考慮後)

ソフトバンクは2024年10月1日を効力発生日として、普通株式1株につき10株の株式分割を実施しました(決算短信P1、P52)。本記事では、分割後(現在)の基準で表記します。

中間配当 期末配当 年間配当 配当性向
2025年3月期 4.30円(注) 4.30円 分割影響あり 78.3%
2026年3月期 4.30円 4.30円 8.60円 75.8%
2027年3月期(予想) 4.40円 4.40円 8.80円 76.2%

※決算短信P2より作成。2025年3月期の中間配当は分割前43.00円、期末配当は分割後4.30円。株式分割を実施しなかったと仮定した場合の2025年3月期年間配当は86円。

2026年3月期の配当性向(連結)は75.8%、親会社所有者帰属持分配当率は16.2%となりました。配当金総額は4,108億円。前期4,082億円とほぼ横ばいです(決算短信P2)。

2027年3月期は予想EPSが11.54円(決算短信P2)に対して年間配当8.80円を予定しているため、予想配当性向は76.2%とほぼ前年と同水準を維持する計画です。配当の絶対水準は1株当たり0.20円の増額(+2.3%)ですが、株主視点では「過去最高益更新と歩調を合わせた連続増配計画」と評価できます。

3-2. 配当方針と中期経営計画における位置付け

会社側の配当方針は次のとおりです(決算短信P21)。「中長期的に企業価値を高めるとともに、株主の皆さまに利益を還元していくことを重要な経営課題の一つとして位置付け」、配当は中間・期末の年2回を基本方針とし、「業績動向、財政状態、キャッシュ・フローの状況などを総合的に勘案して安定性、継続性に配慮しながら実施」していくとされています。

そして決算短信P21では明確に、「2027年3月期から2031年3月期における中期経営計画においては、利益成長に合わせた普通株式1株当たり配当金の継続的な増配を目指します」と記載されています。これは、現状の年間8.60円配当を底として、今後5年間にわたって利益拡大に応じた増配を継続するという経営側のコミットメントです。

3-3. 株式分割の経緯

株式分割は、2024年10月1日を効力発生日として普通株式1株につき10株の割合で実施されました。これにより、自己株式が279,317千株増加(決算短信P52)し、発行済株式総数も42,911,435千株増加しました(決算短信P52)。投資単元(100株)の購入金額が大幅に低下し、若年層・新規個人投資家がエントリーしやすくなる効果がありました。NTT(9432)が2023年7月に1株→25株分割を行ったのと並んで、「個人投資家フレンドリー化」の取り組みとして記憶される動きです。

3-4. 社債型種類株式

ソフトバンクは普通株式とは別に、第1回社債型種類株式(2023年11月1日払込)、第2回社債型種類株式(2024年10月3日払込)を発行しています(決算短信P52)。これらは固定配当の期間定めがあり買戻し義務がない資本性金融商品で、ハイブリッド調達手段の一つです。

銘柄 2025年3月期 2026年3月期 2027年3月期(予想)
第1回社債型種類株式 100.00円 100.00円 100.00円
第2回社債型種類株式 126.24円 256.00円 256.00円

※決算短信P4より作成(年間配当合計、1株当たり)

第1回は配当年率2.500%(2029年3月31日以前に終了する各年度)、第2回は配当年率3.200%(2030年3月31日以前に終了する各年度)と、安定した固定配当を5年単位で受け取れる仕組みになっています(決算短信P49〜P50)。普通株式とは異なる利回り目的の商品設計であり、9434の財務戦略上の柔軟性を高めています。

4. 2027年3月期業績予想|売上7兆5,000億円、営業利益1兆1,000億円

項目 2026年3月期(実績) 2027年3月期(予想) 増減率
売上高 7兆387億円 7兆5,000億円 +6.6%
営業利益 1兆426億円 1兆1,000億円 +5.5%
親会社の所有者に帰属する当期利益 5,508億円 5,600億円 +1.7%
基本的1株当たり当期利益 11.35円 11.54円 +1.7%

※決算短信P2、P20より作成

4-1. セグメント別営業利益予想

セグメント 2026年3月期(実績) 2027年3月期(予想) 増減率
コンシューマ事業 5,508億円 5,600億円 +1.7%
エンタープライズ事業 1,924億円 2,300億円 +19.5%
ディストリビューション事業 353億円 360億円 +2.1%
メディア・EC事業 2,404億円 2,640億円 +9.8%
ファイナンス事業 863億円 1,100億円 +27.5%
その他 ▲626億円 ▲1,000億円
合計 1兆426億円 1兆1,000億円 +5.5%

※決算短信P20より作成

2027年3月期は全報告セグメントで増益を見込んでいます。会社側のコメントを要約すると以下のとおりです(決算短信P20)。

  • コンシューマ事業:過年度の販売手数料償却費・販促費が増加する一方、通信料金の改定による増収などで増益。
  • エンタープライズ事業:DX(デジタル変革)・AX(AI変革)の進展に伴い、クラウド・AIやモバイルを中心に増益。
  • メディア・EC事業:アスクルのシステム障害影響からの回復、固定費削減、プロダクト力強化で増益。
  • ファイナンス事業:決済領域のさらなる拡大、金融サービス領域の成長による増益。
  • その他:次世代社会インフラの構築に向けた研究開発費の増加等を見込み、損失幅が拡大。

注目したいのは、コンシューマ事業の予想増益率が+1.7%と控えめなのに対し、エンタープライズ事業+19.5%、ファイナンス事業+27.5%と非通信事業の伸びが目立つ構成になっていることです。営業利益のうちコンシューマ事業が占める比率は約51%(2026年3月期5,508億円÷1兆426億円)ですが、来期はこの構成が徐々に分散していく方向にあります。

5. 新中期経営計画「Activate AI for Society」|2031年3月期 営業利益1兆7,000億円目標

5-1. 旧中期経営計画(2024年3月期〜2026年3月期)は目標達成で完走

2026年3月期は、2024年3月期から2026年3月期までの旧中期経営計画の最終年度でした。親会社の所有者に帰属する純利益は5,508億円となり、目標5,430億円を上回り達成しています(決算短信P9)。なお、2023年5月の中期経営計画発表時の目標は5,350億円でしたが、好調な業績を背景に2025年5月、2026年2月の2回の修正を経て5,430億円へと引き上げられた経緯があります(決算短信P11)。

5-2. 新中期経営計画(2027年3月期〜2031年3月期)の骨子

2026年5月に発表された新中期経営計画では、新たな成長戦略「Activate AI for Society」を掲げています(決算短信P9)。これは、「全事業でAIの可能性を起動させ、社会への実装を推進し、企業価値の最大化を目指す」というコンセプトで、(1) AIインフラやAIサービスを収益化するとともに、(2) 全事業セグメントがAIで進化し成長することで、グループ全体での持続的な事業成長を推進する、というものです。

定量目標として明示されているのは次の2点です(決算短信P9)。

項目 2026年3月期(実績) 2031年3月期(目標) 増加額
連結営業利益 1兆426億円 1兆7,000億円 +6,574億円
親会社の所有者に帰属する純利益 5,508億円 7,000億円 +1,492億円

※決算短信P9より作成

営業利益で見ると2026年3月期から2031年3月期までの5年間で1兆426億円→1兆7,000億円へ約63%増、年率換算で約+10.3%の成長率を計画していることになります。純利益は5,508億円→7,000億円と約27%増(年率+4.9%)。「営業利益の伸びが純利益の伸びを大きく上回る計画」になっており、これは持株会社・パートナーシップを介した非支配持分の増加が背景にあると考えられます(PayPay米国上場で議決権比率が62.16%に低下したように、子会社上場が進めば非支配持分への利益配分が増えるため)。

長期ビジョンとしては、2030年までに「デジタル化社会の発展に不可欠な次世代社会インフラを提供する企業」になることを掲げています(決算短信P9)。AIの加速度的な進化により急増すると予見されるデータ処理・電力需要に対応できる構造を持ったインフラを構築し、未来の多様なデジタルサービスを支える不可欠な存在となることを目指す、というのが基本コンセプトです。

5-3. AIインフラ・AIサービス領域の主な取り組み

新中期経営計画期間に向けて、ソフトバンクは2026年3月期中にAI関連で多数の布石を打っています(決算短信P10)。

時期 取り組み パートナー
2025年10月 「Cloud PF Type A」協業開始(2026年4月提供開始) オラクル・コーポレーション
2025年11月 「Sarashina API」法人向け提供開始 SB Intuitions
2025年11月 SB OAI Japan合同会社 発足 ソフトバンクグループ、OpenAI
2026年1月 「Infrinia AI Cloud OS」開発・発表 自社

※決算短信P10より作成

「Crystal intelligence(クリスタル・インテリジェンス)」は、OpenAIのエンタープライズ向け最新プロダクトと、日本市場に最適化した導入支援・運用サポートを組み合わせたAIソリューションで、SB OAI Japanが2026年に日本国内で独占展開する予定です(決算短信P10)。日本企業の経営・業務プロセスに深く根差したAI活用を支援することを目指しています。

子会社Gen-AXのコンタクトセンター向け自律思考型AI音声応対ソリューション「X-Ghost(クロスゴースト)」も2025年11月に正式提供を開始しており、コールセンター業界のAIエージェント化という巨大なTAM(市場規模)に挑む構図が見えてきました。

5-4. HAPS(成層圏通信プラットフォーム)と6G時代への準備

通信インフラ側でも、2025年6月にソフトバンクはLTA型(空気より軽い)のHAPS(成層圏に飛行させた航空機などの無人機体を通信基地局のように運用するシステム)を開発するSceye, Inc.に出資し、日本国内におけるHAPSのサービス展開に係る独占権を取得する契約を締結しました(決算短信P10)。2026年にはHAPSのプレ商用サービスを日本国内で開始予定とされています。

HAPSの商用化により、大規模災害時の通信サービス提供に加え、6G(第6世代移動通信システム)時代を見据えてドローンやUAV(無人航空機)向けに安定した通信環境を提供する「次世代の3次元通信ネットワーク」の構築を目指す、という構想です。これは将来の災害対策・物流・自動運転インフラに直結する戦略投資といえます。

6. 連結財政状態|資産18.5兆円、銀行子会社化で預金が大幅増加

項目 2025年3月31日 2026年3月31日 増減額
流動資産 4兆8,587億円 5兆4,055億円 +5,469億円
非流動資産 11兆2,435億円 13兆966億円 +1兆8,531億円
資産合計 16兆1,022億円 18兆5,022億円 +2兆4,000億円
流動負債 6兆8,352億円 8兆5,252億円 +1兆6,900億円
非流動負債 5兆16億円 5兆3,085億円 +3,069億円
負債合計 11兆8,368億円 13兆8,337億円 +1兆9,969億円
資本合計 4兆2,654億円 4兆6,685億円 +4,031億円

※決算短信P20より作成

6-1. 資産・負債が大きく増加した理由

当期末の資産合計は18兆5,022億円と、前期末から+2兆4,000億円(+14.9%)の増加。主な内訳は、その他の金融資産の増加+1兆1,597億円、銀行事業の有価証券の増加+5,334億円、営業債権及びその他の債権の増加+2,204億円、のれんの増加+1,209億円です(決算短信P20)。

その他の金融資産の増加は(1) LINE Bank Taiwanの子会社化、(2) PayPay銀行における顧客への貸付金増加、銀行事業の有価証券増加はPayPay銀行の資金運用による有価証券取得とLINE Bank Taiwanの子会社化が主因です(決算短信P20)。

負債側では、銀行事業の預金が+7,600億円、有利子負債が+5,224億円、営業債務及びその他の債務が+4,567億円。預金増加もLINE Bank Taiwan子会社化とPayPay銀行の預金残高増加が主因。有利子負債増加は、債権流動化や米ドル建て無担保普通社債の発行などの各種資金調達によるものです(決算短信P20、P47)。

6-2. 有利子負債の内訳

項目 2025年3月31日 2026年3月31日
流動 短期借入金 3,532億円 6,258億円
流動 コマーシャル・ペーパー 1,080億円 730億円
流動 1年内返済予定の長期借入金 8,114億円 8,638億円
流動 1年内返済予定のリース負債 1,538億円 1,639億円
流動 1年内償還予定の社債 2,200億円 2,300億円
流動合計 1兆6,465億円 1兆9,564億円
非流動 長期借入金 2兆4,294億円 2兆4,741億円
非流動 リース負債 6,386億円 6,498億円
非流動 社債 1兆2,477億円 1兆4,043億円
非流動合計 4兆3,156億円 4兆5,282億円

※決算短信P47より作成

有利子負債合計は約6.5兆円規模で前期比5,200億円程度の増加。社債発行は1.4兆円規模に拡大しました。2025年7月にはソフトバンクが海外市場において初の米ドル建て無担保普通社債を発行しており、これに先立ちS&Pグローバル・レーティング・ジャパンから「BBB」、フィッチ・レーティングス・ジャパンから「BBB+」の格付けを取得しています(決算短信P11)。国内に限定されない資金調達手段を確保することで、為替や世界的な金利動向を踏まえた柔軟な財務戦略を可能とし、調達コストの改善や返済スケジュールの平準化を図るとされています。

6-3. 設備投資

項目 2025年3月期 2026年3月期
設備投資(検収ベース) 9,128億円 7,453億円
うちコンシューマ・エンタープライズ設備投資 3,218億円 3,412億円

※決算短信P20より作成

設備投資は前期比▲1,675億円減少。主因は、前期にAIデータセンター構築に向けたシャープ堺工場の土地建物取得約1,000億円および4.9GHz帯の特定基地局開設料665億円があったことの反動です(決算短信P20)。ただし、通信ネットワーク本体への投資(コンシューマ・エンタープライズ事業の設備投資)は3,218億円→3,412億円と+194億円の増加であり、5G SA(スタンドアローン)エリア拡大などへの本業設備投資は維持されています。

7. キャッシュフロー|営業CF1兆3,938億円、財務CF出超が9,564億円→1,369億円へ大幅縮小

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業活動によるキャッシュ・フロー 1兆3,679億円 1兆3,938億円
投資活動によるキャッシュ・フロー ▲9,952億円 ▲1兆2,708億円
財務活動によるキャッシュ・フロー ▲9,564億円 ▲1,369億円
現金及び現金同等物の期末残高 1兆4,355億円 1兆4,388億円
フリー・キャッシュ・フロー 3,727億円 1,230億円
調整後FCF(LINEヤフー/PayPay等除く) 4,365億円 6,092億円
プライマリーFCF 6,033億円 6,336億円

※決算短信P17、P19より作成

営業CFは+259億円増の1兆3,938億円。法人所得税支払が増加した一方、EBITDA増加と銀行・証券事業を含む運転資本改善で増加しました(決算短信P17)。

投資CFは▲1兆2,708億円とマイナス幅が▲2,756億円拡大。主因は銀行事業の有価証券取得であり、これはPayPay銀行とLINE Bank Taiwanの資金運用拡大を反映したものです(決算短信P17、P33)。なお、投資CFには長期性の成長投資に係る支出245億円(AI計算基盤・AIデータセンター関連投資)が含まれています。

財務CFは▲1,369億円と、前期の▲9,564億円から大幅にマイナス幅が縮小しました。これは、借入金弁済・配当金支払などの支出22,299億円があった一方で、銀行借入・リース・社債・債権流動化などの資金調達20,931億円があったためです(決算短信P17)。

7-1. 3種類のフリーキャッシュフロー指標

ソフトバンクの注目すべき点は、フリーキャッシュフロー(FCF)について3つの指標を開示していることです(決算短信P19)。

指標 意味 2026年3月期
FCF 営業CF+投資CF 1,230億円
調整後FCF(LYJ/PayPay等除く) 割賦債権流動化・LINEヤフー/PayPayグループのFCF除外 6,092億円
プライマリーFCF 調整後FCF+長期性の成長投資(AIインフラ) 6,336億円

※決算短信P19より作成

会社側はプライマリーFCFを「ソフトバンクおよびその完全子会社での既存事業における継続的な資金創出能力(債務返済能力や配当金の支払い能力)を評価するために有用な指標」と位置付けています。要するに、銀行子会社の資金運用変動やAI戦略投資の振れを除いた、純粋な配当・債務返済原資としてのキャッシュ創出力を示そうとしている指標です。2026年3月期のプライマリーFCFは6,336億円と、配当金総額4,108億円を十分にカバーする水準にあります。

8. 調整後EBITDA|営業利益1兆426億円+減価償却費等で1兆8,196億円

項目 2025年3月期 2026年3月期
営業利益 9,890億円 1兆426億円
+ 減価償却費及び償却費 7,700億円 8,059億円
+ 株式報酬費用 193億円 132億円
+ その他の調整項目(減損損失) 138億円 73億円
+ 企業結合に伴う再測定による利益 ▲589億円
+ 子会社の支配喪失に伴う利益 ▲390億円
+ その他 95億円
調整後EBITDA 1兆7,531億円 1兆8,196億円

※決算短信P18より作成

調整後EBITDAは1兆8,196億円(+664億円、+3.8%)。主に営業利益の増加によるものですが、企業結合に伴う再測定による利益▲589億円(LINEヤフーがLINE MAN・LINE Bank Taiwanを子会社化した際の段階取得差益)が控除されている点に注意が必要です。これは「営業利益には含まれているがキャッシュは伴わない一過性利益」のため、EBITDA算定上は除外する処理になっています(決算短信P18)。

9. M&A・連結範囲の変動|BEENOS・LINE Bank Taiwan・LINE MANを子会社化

2026年3月期は連結範囲に4社が新たに加わり、2社が除外されました(決算短信P2、P22)。

変動 社名 支配獲得日/除外日 主な手当
新規連結 BEENOS 2025年5月14日 LYJが現金446.75億円で公開買付け
新規連結 LINE Bank Taiwan 2025年6月17日 LYJ子会社LFTが増資により議決権51.2%取得
新規連結 LINE MAN CORPORATION PTE. LTD. 2025年9月30日 LYJ子会社LSEAが株式追加取得・株主間契約変更
新規連結 子会社2社(DECACORN/LINE MAN THAILAND) 2025年9月30日 LINE MANの子会社
除外 Zフィナンシャル 2025年8月1日 LYJに吸収合併
除外 LINE Pay 2026年3月31日 LYJに吸収合併

※決算短信P22、P36〜P44より作成。LYJ=LINEヤフー、LFT=LINE Financial Taiwan、LSEA=LINE SOUTHEAST ASIA CORP. PTE. LTD.。

とくに金額的に大きいのがLINE MAN CORPORATION PTE. LTD.の子会社化で、取得対価合計785.66億円(うち支配獲得時保有持分の公正価値632.39億円、支払現金153.27億円)、のれん476.80億円を計上しています。同社の子会社化に伴う段階取得差益443.77億円は「その他の営業収益」に計上されており、メディア・EC事業のセグメント利益に含まれています(決算短信P46、P50)。

BEENOSはのれん250.53億円、LINE Bank Taiwanはのれん99.84億円、それぞれ計上されています(決算短信P37、P40)。LINE Bank Taiwanの段階取得差益は145.02億円です(決算短信P39)。

こうしたM&Aを経て、ソフトバンクのアジア圏フードデリバリー(タイ)、台湾インターネット銀行、越境ECといった東南アジア・台湾の生活インフラプラットフォームが一段と厚みを増す格好となりました。

10. 法人所得税|PayPay繰延税金資産575億円見直しで純利益押し上げ

2026年3月期において、子会社PayPay株式会社の繰延税金資産の回収可能性の見直しを行い、その影響により法人所得税が575.35億円減少しています(決算短信P47)。これは、PayPayの将来収益見通しが改善し、過去の累積損失に対応する税効果資産を計上できるようになったことを意味します。当期純利益+713億円(+10.9%)の伸びの大きな要因の一つです。

営業利益の伸び+5.4%に対して純利益の伸び+10.9%とギャップが大きいのは、こうした税効果の一過性増益と、前期に計上した関係会社再編に係る税効果の反動消失の合算によるものです(決算短信P12)。

11. 株主資本|剰余金配当4,192億円、新株予約権行使で資本金等が324億円増加

項目 2025年3月31日 2026年3月31日
資本金 2,282億円 2,444億円
資本剰余金 9,271億円 9,623億円
利益剰余金 1兆5,949億円 1兆7,283億円
自己株式 ▲292億円 ▲271億円
その他の包括利益累計額 228億円 500億円
親会社の所有者に帰属する持分合計 2兆7,436億円 2兆9,579億円
非支配持分 1兆5,217億円 1兆7,106億円
資本合計 4兆2,654億円 4兆6,685億円

※決算短信P24より作成(百万円単位を億円に換算)

親会社の所有者に帰属する持分は+2,142億円増加し、2兆9,579億円となりました。剰余金の配当による減少▲4,192億円があった一方で、当期純利益の計上による増加+5,508億円、新株予約権の権利行使に伴う新株発行による増加+324億円、企業結合に伴う変動による非支配持分の増加+695億円などがあったことが要因です(決算短信P20、P32)。

発行済株式数は47,971,989,700株(2026年3月31日時点、自己株式含む)と前期末より2億2,050万株増加。新株予約権の権利行使に伴う新株発行が主因です(決算短信P2、P52)。自己株式数は170,724,817株です。

12. 投資家視点で押さえておきたいリスク・留意点

ここまではポジティブな材料が中心ですが、決算短信に記載された注意点・リスク要因も整理しておきます。

12-1. 配当性向の高さ

2026年3月期の配当性向は連結ベースで75.8%、2027年3月期予想で76.2%(決算短信P2)。これは通信業界の中でも高めの水準です。配当原資の余裕は調整後FCF・プライマリーFCFで十分カバーされているものの、業績下振れ時には配当を増やしにくい構造であることは留意しておきたい点です。逆に言えば、増配の継続性は「利益成長を伴う必要がある」ことを意味します。

12-2. アスクル問題

2025年10月に発生したアスクル株式会社のシステム障害は、メディア・EC事業のセグメント利益を▲184億円押し下げる主因となりました(決算短信P12、P18)。2027年3月期予想ではこの影響からの回復を見込んでいるものの、復旧進捗とコストは引き続き注視ポイントです。

12-3. 銀行子会社の規制リスク

PayPay銀行・LINE Bank Taiwanの預金は2兆5,560億円と前期から+7,600億円増加し、銀行事業の有価証券も1兆2,805億円と+5,334億円増加しています(決算短信P20、P23)。ソフトバンクは事実上、銀行業のリスクを連結バランスシートに取り込む構造になっており、金利動向・規制動向・信用リスクなど銀行業特有のリスクファクターが業績に与える影響度合いが上昇しつつあります。

12-4. 為替・国際金利

2025年7月に米ドル建て無担保普通社債を発行し、海外子会社(LINE Bank Taiwan、LINE MAN、Cubic Telecom)の連結が進んでいるため、為替変動の影響を直接受ける度合いが従来より大きくなっています(決算短信P10〜P11)。S&Pの格付けは「BBB」(スタンドアローン評価bbb+)、フィッチが「BBB+」で投資適格圏ですが、グローバル金利動向と格付け維持は引き続き重要な財務管理テーマです。

12-5. AI関連投資の回収リスク

長期性の成長投資(AI計算基盤・AIデータセンター関連投資)は2025年3月期1,669億円、2026年3月期245億円が計上されていますが(決算短信P19)、これは今後さらに大幅に拡大していくと見られます。Activate AI for Society戦略の収益化スピード、特にCrystal intelligence・Cloud PF Type A・Sarashina API・Infrinia AI Cloud OSなどがどの程度のARR(年間継続収益)を上げられるかは中期的な株価変数になります。

12-6. ソフトバンクグループ(9984)との取引関係

決算短信P3には「当社の事業を遂行する上での第三者(ソフトバンクグループ株式会社ならびにその子会社および関連会社、ならびに当社の主要な取引先および調達先を含みます。)への依存」がリスクとして明記されています。ソフトバンクグループ(9984)と一部事業(SB OAI Japanなど)で合弁関係にあり、また9984が9434の親会社グループにある点は、コーポレートガバナンス上のチェックポイントです。

13. まとめ|「初の営業利益1兆円超え」と「Activate AI for Society」の入口

2026年3月期のソフトバンク(9434)決算を投資家視点で要約すると、次のとおりです。

  • 売上高7兆387億円(+7.6%)、営業利益1兆426億円(+5.4%)と初の1兆円超え、親会社の所有者に帰属する純利益5,508億円(+4.7%)と過去最高を達成(決算短信P1、P12)。
  • 5セグメントのうち4セグメントが増益。コンシューマ事業5,508億円(+3.8%)、エンタープライズ事業1,924億円(+13.0%)、ディストリビューション事業353億円(+15.9%)、ファイナンス事業863億円(+107.1%、倍増)。メディア・EC事業のみアスクルのシステム障害影響などで2,404億円(▲7.1%)と減益(決算短信P12〜P19)。
  • 配当は2025年3月期・2026年3月期と1株当たり年間8.60円(分割考慮後)を維持し、2027年3月期は8.80円へ0.20円増配予想。配当性向76.2%を維持(決算短信P2)。
  • 2024年10月1日に普通株式1株→10株の株式分割を実施済み。個人投資家がエントリーしやすい単元価格に(決算短信P52)。
  • 2027年3月期業績予想は売上7兆5,000億円(+6.6%)、営業利益1兆1,000億円(+5.5%)、当期利益5,600億円(+1.7%)。全報告セグメントで増益見込み(決算短信P20)。
  • 新中期経営計画(2027年3月期〜2031年3月期)では「Activate AI for Society」戦略を掲げ、2031年3月期に連結営業利益1兆7,000億円・親会社の所有者に帰属する純利益7,000億円を目標とする(決算短信P9)。
  • PayPay株式会社は2026年3月11日(米国時間)に米国の証券取引所に上場、ソフトバンクの議決権比率は66.00%→62.16%に低下したものの引き続き連結子会社(決算短信P10〜P11)。
  • SB OAI Japan合同会社(OpenAIとの合弁)、Oracle Alloy活用の「Cloud PF Type A」、国産LLM「Sarashina API」、AIデータセンター向け「Infrinia AI Cloud OS」、HAPSのプレ商用化など、AI/通信インフラ領域で多数の布石を打った1年(決算短信P10)。

ソフトバンク(9434)は、「通信キャリアとしての安定収益+金融プラットフォーム(PayPay・PayPay銀行・PayPayカード)の成長+AIインフラへの先行投資」という3層構造の企業に進化しつつあります。営業利益1兆円突破は通過点であり、2031年3月期1兆7,000億円目標を見据えた中期5年間が新たな勝負期間です。連続増配を志向する経営方針もあわせ、配当・成長の両面で個人投資家にとって追いかけがいのある日本株の1社といえるでしょう。

なお、本記事はソフトバンク株式会社(9434)が2026年5月11日に開示した決算短信〔IFRS〕(連結)の記載内容のみに基づいて構成しています。中期経営計画資料・決算説明会資料・補足説明資料の詳細は、ソフトバンクIRサイト(https://www.softbank.jp/corp/ir/documents/presentations/)でご確認ください。

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免責事項

本記事は、ソフトバンク株式会社(証券コード9434)が2026年5月11日に開示した「2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」の記載内容に基づき、筆者個人の見解を整理した情報提供記事です。掲載されている数値・記述は決算短信開示時点のものであり、将来の業績や株価・配当を保証するものではありません。株式投資は元本割れの可能性を含むリスクを伴います。投資判断は必ずご自身の責任で行ってください。本記事の内容に基づく投資結果について、筆者および本サイトは一切の責任を負いません。


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たぐ

コロナショック直前の2020年に投資をスタート。リアルタイムで暴落を経験しながら独学で投資の基礎を習得。 現在の運用総額5,000万円超・年間配当収入120万円超を達成。投資信託・ETF・個別株・米国株など100銘柄超に分散投資し、相場の波に強いポートフォリオを構築中。 高配当株の長期保有と新NISAの積立を組み合わせた"2刀流"スタイルで資産形成を実践。保有銘柄の決算・配当・株価をブログで赤裸々公開しています。YouTubeでも投資情報を発信中!

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