NTT(9432)が、2027年3月期の第1四半期決算を発表しました。
営業収益は前年同期比10.9%増の3兆6,177億円となり、第1四半期として過去最高を更新。営業利益は4.9%増の4,251億円、NTTに帰属する四半期利益は5.8%増の2,748億円でした。
決算翌日の8月7日には、株価が前日比2.59%上昇しています。
年間配当は16期連続増配となる5.4円を予定し、上限2,000億円の自社株買いも進行中です。ここまで聞くと「NTT、いよいよ完全復活では?」と思いたくなります。
ただし、通期の最終利益予想は5.5%減益のままです。ドコモも全体では増益に転換しましたが、携帯電話を中心とする事業の利益はまだ減っています。
決算の通信状態は良好。ただし、すべてのアンテナが5本立っているわけではありません。
この記事では、投資初心者向けに次の点を整理します。
- 第1四半期として過去最高の売上になった理由
- NTTの4事業のうち、どこが伸びたのか
- ドコモは本当に底を打ったのか
- 年間配当5.4円と2,000億円の自社株買い
- 8月7日終値で見た株価指標
- 通期減益予想と今後の確認点
※決算情報は2026年8月6日公表資料、株価とバリュエーションは2026年8月7日終値を基準にしています。
先に結論:第1四半期は好調。ただし「完全復活」はまだ早い
今回の決算を一言でまとめると、次のようになります。
4事業すべてが増収増益となり、売上高は第1四半期として過去最高。ドコモも全体では増益に転換したが、携帯電話事業の利益減少と通期最終減益予想は残っている。
良かった点は、営業収益、EBITDA、営業利益、最終利益の4指標がすべて増えたことです。
ドコモでは、dカード、d払い、銀行などを含む金融分野が大きく伸びました。海外のITサービスやデータセンターなどを含むグローバル・ソリューション事業も増収増益です。
一方、携帯電話を中心とするコンシューマ通信事業の営業利益は18.4%減少しました。通期では支払利息の増加などにより、NTTに帰属する利益を5.5%減と見込んでいます。
したがって、今回の決算は「完全復活」ではなく、利益回復へ向けた前向きな第1歩を確認した決算と整理するのが適切です。
第1四半期業績:売上高は過去最高、4指標すべて増加
2027年3月期第1四半期の主な業績は次のとおりです。
| 項目 | 2027年3月期1Q | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 営業収益 | 3兆6,177億円 | 10.9%増 |
| EBITDA | 8,362億円 | 4.3%増 |
| 営業利益 | 4,251億円 | 4.9%増 |
| NTTに帰属する四半期利益 | 2,748億円 | 5.8%増 |
| 1株当たり四半期利益 | 3.38円 | 前年3.14円 |
営業収益は前年同期から3,557億円増加し、第1四半期として過去最高です。
EBITDAは、利息や税金、設備の減価償却費などを差し引く前の利益で、本業の稼ぐ力を比較するときに使われます。売上だけでなくEBITDA、営業利益、最終利益も増えているため、決算全体は好調です。
ただし、営業収益の10.9%増に対して営業利益は4.9%増です。売上と同じ勢いで利益が伸びたわけではありません。銀行の連結や企業買収による売上増も含まれるため、次に事業別の中身を見ます。
NTTは携帯電話だけではない:4事業すべてが増収増益
NTTの事業は、大きく4つに分かれています。
| 事業 | 主な内容 |
|---|---|
| 総合ICT事業 | ドコモの携帯電話、光回線、金融・決済、法人サービス |
| グローバル・ソリューション事業 | NTTデータを中心としたITサービス、システム開発、データセンター |
| 地域通信事業 | NTT東日本・西日本の光回線、固定電話、法人サービス |
| その他 | 不動産、エネルギーなど |
第1四半期は4事業すべてが増収増益でした。
| 事業 | 営業収益 | 前年同期比 | 営業利益 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 総合ICT | 1兆6,170億円 | 8.5%増 | 2,462億円 | 2.7%増 |
| グローバル・ソリューション | 1兆2,789億円 | 15.8%増 | 635億円 | 9.9%増 |
| 地域通信 | 7,636億円 | 0.8%増 | 985億円 | 0.6%増 |
| その他 | 4,424億円 | 14.6%増 | 234億円 | 29.3%増 |
携帯電話だけに頼らず、海外IT、不動産、エネルギーなど複数の事業が利益を支えています。
電話会社だと思って決算書を開くと、銀行、データセンター、不動産、発電まで登場します。NTTの決算は、通信会社というより小さな経済圏の健康診断に近くなっています。
ドコモが増益へ転換:営業利益は2.7%増
今回の重要ポイントは、NTTの利益の中心であるドコモグループが、前年同期比で増益に転換したことです。
| 項目 | 実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 営業収益 | 1兆6,170億円 | 8.5%増 |
| 営業利益 | 2,462億円 | 2.7%増 |
| ドコモ株主に帰属する四半期利益 | 1,763億円 | 0.8%増 |
| EBITDA | 4,473億円 | 4.5%増 |
ドコモは、顧客基盤と通信品質を立て直すための費用が増え、ここ数年は利益が伸び悩んでいました。
今回は、携帯電話以外のスマートライフ事業が大きく伸び、携帯電話事業の減益を補いました。
スマートライフ事業が急成長:金融が利益を支える
ドコモが「スマートライフ」と呼ぶ事業には、次のようなサービスが含まれます。
- dカード、d払いなどの金融・決済
- ドコモの銀行、証券などの金融サービス
- 動画配信やエンターテインメント
- マーケティング、ショッピングなど
第1四半期の実績は次のとおりです。
| スマートライフ事業 | 実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 営業収益 | 4,184億円 | 39.0%増 |
| 営業利益 | 910億円 | 53.3%増 |
このうち金融事業の営業収益は1,877億円で、前年同期比56.1%増でした。
dカードとd払いの取扱高は合計4兆5,900億円へ拡大。dカード GOLD・PLATINUMの契約数も1,224万件となりました。
ただし、金融事業の伸びには、ドコモSMTBネット銀行を連結した影響も含まれます。すべてが既存事業だけで自然に増えた売上ではありません。
それでも、カード、決済、銀行、証券を組み合わせ、携帯電話契約者に複数のサービスを利用してもらう戦略が利益へつながり始めた点は重要です。
スマホ料金だけで稼ぐのではなく、利用者のお財布の中にもアンテナを立てようとしている、と考えると分かりやすいでしょう。
携帯電話事業は完全復活ではない:営業利益18.4%減
ドコモ全体では増益ですが、携帯電話を中心とするコンシューマ通信事業はまだ厳しい状態です。
| コンシューマ通信事業 | 実績 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 営業収益 | 7,928億円 | 0.9%減 |
| 営業利益 | 854億円 | 18.4%減 |
| EBITDA | 2,120億円 | 9.7%減 |
減益の主な要因は、販売促進費やネットワーク強化費用の増加です。
一方、モバイル通信サービス収入の減少額は、前年同期の141億円から今回は14億円へ縮小しました。
顧客1人当たりの月間収入を示すARPUは3,990円となり、前年同期より70円上昇しています。ドコモMAXの契約数も400万件を突破しました。
つまり、状況は次のように整理できます。
- 通信料金収入の減少は底打ちに近づいている
- 料金プランと複数サービス利用で顧客単価は改善
- ただし販売促進と通信品質改善の費用で利益は減っている
利用者を増やしながら費用を抑え、携帯電話事業の利益まで反転できるかが次の確認点です。
グローバル事業も増収増益:売上15.8%増
NTTデータを中心とするグローバル・ソリューション事業は、営業収益1兆2,789億円で15.8%増、営業利益635億円で9.9%増でした。
この事業では、企業向けのコンサルティング、システム開発、クラウド、データセンターなどを世界で提供しています。
生成AIの普及によりデータ処理量が増えると、システム開発やデータセンターへの需要も拡大する可能性があります。
一方、世界各地で大型投資や企業買収を行うため、買収後に期待した利益を出せるか、金利負担や為替がどう動くかも確認が必要です。
地域通信は小幅増益:固定電話の減少をどう補うか
NTT東日本・西日本を中心とする地域通信事業は、営業収益7,636億円で0.8%増、営業利益985億円で0.6%増でした。
地域通信では、従来型の固定電話収入が長期的に減少しています。会社は光回線、法人向けDX、新規事業、AIを使った業務効率化によって利益を維持する方針です。
今回の利益はわずかながら増えましたが、高成長事業というより、減少する固定電話を新しい収益で補い、安定した利益とキャッシュを確保する役割です。
通期予想は据え置き:最終利益は5.5%減を見込む
NTTは今回、通期業績予想を変更していません。
| 項目 | 2027年3月期予想 | 前期比 | 1Q進捗率 |
|---|---|---|---|
| 営業収益 | 15兆600億円 | 4.5%増 | 24.0% |
| EBITDA | 3兆4,300億円 | 0.2%増 | 24.4% |
| 営業利益 | 1兆7,100億円 | 0.2%増 | 24.9% |
| NTTに帰属する利益 | 9,800億円 | 5.5%減 | 28.0% |
最終利益の進捗率は28.0%です。第1四半期の出だしとしては悪くありません。
ただし、四半期ごとの利益は季節性や一時要因で変わるため、28%を単純に4倍して上方修正を期待するのは早計です。会社も予想を据え置いています。
営業利益がほぼ横ばいなのに最終利益が減る主な理由として、会社は支払利息の増加を挙げています。
NTTはNTTデータの完全子会社化や成長投資などで資金需要が増えています。金利上昇局面では、事業で利益を増やしても利息負担が最終利益を圧迫する可能性があります。
年間配当5.4円:16期連続増配を予定
2027年3月期の年間配当予想は、前期より0.1円増の5.4円です。
- 中間配当予想:2.70円
- 期末配当予想:2.70円
- 年間配当予想:5.40円
- 予想配当性向:44.6%
- 実現すれば16期連続増配
ここは発表時期を正確に区別します。
年間5.4円への増配は、今回の8月6日に初めて発表されたものではありません。2026年5月8日の通期決算で公表済みで、今回の第1四半期では据え置かれました。
新しい増配サプライズではありませんが、最終減益を見込むなかでも16期連続増配の計画を維持したことは確認できます。
2,000億円の自社株買い:7月末までに331億円取得
NTTは2026年5月8日に、次の自社株買いを決議しています。
- 取得総額:2,000億円を上限
- 取得株式数:14億株を上限
- 取得期間:2026年5月11日~2027年3月31日
7月末までの取得実績は331億円です。上限2,000億円に対する金額ベースの進捗率は約16.6%になります。
自社株買いの計画も5月に公表済みです。今回新しく確認できたのは、7月末までに331億円を取得したという進捗です。
取得期間は2027年3月末まで残っています。今後、どの程度のペースで買い付けが進むかを確認します。
dポイントは毎年の優待ではない
NTTは、100株以上を一定期間保有する株主へdポイントを進呈しています。
- 2年以上3年未満:1,500ポイント
- 5年以上6年未満:3,000ポイント
- 同一株主番号で受け取れる上限:合計4,500ポイント
ただし、株主へ毎年進呈する制度ではありません。2年以上3年未満と5年以上6年未満の、それぞれ対象となる時期に受け取る仕組みです。
このため、1,500ポイントや3,000ポイントを毎年の配当へ足し、「総合利回りが毎年○%」と計算するのは適切ではありません。
保有期間は同一の株主番号で連続して記録される必要があります。貸株や証券会社の変更などで株主番号が変わる場合もあるため、利用する場合は公式条件を確認します。
8月7日終値で株価指標を確認
決算発表翌営業日の8月7日、NTT株は次のように動きました。
- 終値:158.5円
- 前日比:4.0円高、2.59%上昇
- 高値:159.3円
- 安値:154.0円
- 出来高:3億5,056万4,400株
株価指標は次のとおりです。
| 指標 | 8月7日時点 |
|---|---|
| 予想PER | 13.1倍 |
| PBR | 1.31倍 |
| 予想配当利回り | 3.41% |
| 時価総額 | 約14兆3,522億円 |
| 100株購入金額 | 1万5,850円 |
| 100株の年間配当予想 | 税引前540円 |
予想配当利回りは3.41%です。一定の配当水準ではありますが、4~5%台の銘柄と同じ感覚で「高配当」と強調する水準ではありません。
NTT株の特徴は、現在の利回りだけではなく、16期連続増配の予定、機動的な自社株買い、100株を2万円未満で購入できる点を合わせて考えることです。
8月7日の上昇は、今回の決算を市場が好意的に受け止めた可能性を示します。ただし、1日の値動きだけで長期的な株価の方向が決まったわけではありません。
IOWNとAIは将来材料。ただし現在の利益と混ぜない
NTTは、IOWNの海外展開や、IOWN APNを使った分散GPUの実証環境を進めています。
IOWNは、光技術を中心に大量のデータを低遅延・低消費電力で扱う次世代通信基盤の構想です。APNは、その中核となる光中心のネットワークです。
第1四半期には、チリの銅鉱山で重機の遠隔操作を高度化する実証や、全国8拠点のGPUを高速回線でつなぐ実証環境などが紹介されました。
AIの普及でデータセンターの電力消費が増えるなか、省電力と高速通信を両立できれば成長機会になります。
ただし、IOWNが現在の売上や利益をいくら押し上げているかは明確に開示されていません。将来の期待と、今回確認できた利益を混ぜないことが大切です。
中期目標は後ろ倒し:2030年度にEBITDA4兆円を目指す
NTTは以前、2027年度にEBITDA4兆円を目指していましたが、2026年5月に達成時期を2030年度へ変更しました。
AIや法人、金融などの成長分野は伸びている一方、携帯電話や地域通信など既存事業の利益が想定を下回ったためです。
今回の第1四半期は前向きな内容でしたが、中期目標の後ろ倒しが1四半期で解消されたわけではありません。
今後は、ドコモの携帯電話事業を立て直しながら、金融、法人、海外IT、IOWNなどの利益を増やし、2030年度の目標へ近づけるかを見ます。
今回の決算で確認したい6つのリスク
1.携帯電話事業の利益減少
通信料金収入の減少幅は縮小しましたが、販売促進費とネットワーク強化費用により、コンシューマ通信事業は18.4%減益でした。
2.支払利息の増加
通期の営業利益はほぼ横ばいでも、最終利益は5.5%減る予想です。借入金と金利負担を継続して確認します。
3.金融事業の成長とリスク
銀行、カード、決済、証券は成長分野ですが、貸倒れ、金利変動、システム障害など通信事業とは異なるリスクも増えます。
4.企業買収と大型投資
海外ITやデータセンターへの投資が、期待どおりの利益とキャッシュを生むかが重要です。
5.固定電話収入の減少
地域通信では、固定電話の減少を光回線、法人DX、新事業、コスト削減で補う必要があります。
6.将来技術の収益化
IOWNや光電融合デバイスは期待材料ですが、普及時期と利益貢献には不確実性があります。
次の決算で見る7項目
次回以降は、次の項目を確認します。
- 通期営業利益1兆7,100億円と最終利益9,800億円の進捗
- ドコモのコンシューマ通信事業が増益へ転換するか
- モバイル通信サービス収入の減少が止まるか
- スマートライフ事業、とくに金融の利益成長
- 支払利息と有利子負債の動き
- 2,000億円の自社株買いの進捗
- 年間配当5.4円と16期連続増配予想の維持
まとめ:好決算だが、復活の判定は次の利益成長を見てから
NTTの第1四半期は、営業収益3兆6,177億円で第1四半期として過去最高。営業利益は4.9%増、NTTに帰属する利益は5.8%増となりました。
4事業すべてが増収増益となり、ドコモも全体では増益に転換。金融・決済を中心とするスマートライフ事業が利益を支え、グローバル事業も伸びています。
一方、携帯電話を中心とする事業は18.4%減益で、通期最終利益は5.5%減益予想です。支払利息の増加や大型投資に伴う財務負担も確認する必要があります。
年間配当5.4円と上限2,000億円の自社株買いは5月に公表済みで、今回の新しいサプライズではありません。ただし、16期連続増配の予定を維持し、自社株買いも7月末までに331億円進んでいます。
今回の決算は「NTT完全復活」と断定する内容ではありませんが、回復へ向けた前向きな数字が増えた決算です。
売上高過去最高という大きな見出しだけでなく、携帯電話、金融、海外IT、利息負担を分けて、次の決算も点検していきましょう。
※本記事は公開資料をもとに企業の業績を確認するもので、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。業績予想や配当予想は今後変更される可能性があります。投資判断はご自身でお願いします。
参考資料
- NTT「2026年度 第1四半期決算について」
https://group.ntt/jp/ir/library/presentation/2026/260806.pdf
- NTT「2026年度 第1四半期決算短信〔IFRS〕(連結)」
https://group.ntt/jp/ir/library/results/2026/pdf/fy2026q1kessan0806.pdf
- NTTドコモ「2026年度 第1四半期決算について」
- NTT「業績予想概要」
https://group.ntt/jp/ir/fin/forecast.html
- NTT「株主還元」
https://group.ntt/jp/ir/library/nttis/dividend.html
- NTT「株主さまへのdポイント進呈」
https://www.group.ntt/jp/ir/private_investor/benefit/
- 株探「NTT(9432)株価・基本情報」