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【1812鹿島・1802大林組・5076インフロニア】ゼネコン大手3社決算分析|大幅増配の理由と今後の見通し

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Contents

1. 大手3社の決算から見える傾向:収益性重視の「利益が出るフェーズ」へ

これまでの建設業界は、資材価格や労務費の上昇に対し、以前に低い金額で受注した工事の採算が悪化し、利益が圧迫される状況が続いていました。しかし、今回の3社の決算資料を読み解くと、共通して「利益が出るフェーズ」に入ったことを示すいくつかの変化が確認できます。

特筆すべきは、売上高の伸びに対して、利益の伸びが非常に大きい点です。
各社の決算を見ると、採算重視の受注と価格交渉が進んでいることがうかがえます。
(※ここでは比較の正確性を期すため、有価証券の評価増減などを含む「包括利益」ではなく、本業の成果をより反映し配当の原資となる**「親会社株主に帰属する四半期純利益」**ベースで比較しています)

  • 鹿島建設:売上高 +5.9% に対し、親会社株主利益 +64.0% (国内土木の採算性が改善し、本業の稼ぐ力が急回復しているとみられます)
  • 大林組:売上高は微減(-3.6%)ながら、親会社株主利益 +37.3% (不採算案件の抑制などにより、利益率の高い案件に絞り込む「量より質」の経営が利益率改善に寄与していると考えられます)
  • インフロニア:売上高 +27.2% に対し、親会社株主利益 +149.3% (M&Aによる規模拡大に加え、関連会社株式の売却益などが利益を大きく押し上げました)

こうした「稼ぐ力」の回復の背景には、以下の要素があると考えられるでしょう。

① 採算重視の受注と価格交渉の進展

各社の決算を見ると、単に売上規模を追うのではなく、しっかりと利益が出る案件を厳選する姿勢や、適切な価格交渉が進んでいることがうかがえます。
これが完成工事総利益率の改善に直結しています。

② 国内建設需要・インフラ投資の高水準な推移

国内の建設需要は依然として高い水準にあります。
各社とも高水準の受注残を維持しており、良好な事業環境下で、より採算の良い条件で案件を選べる状況が続いています。
なお、インフロニアの資料では、データセンターや半導体工場などの需要についても具体的に言及されています。

③ 低採算案件から採算の良い案件へのシフト

かつての資材高騰前に低い金額で契約した「低採算案件」の比率が低下し、現在の適正な価格で契約した案件が売上の中心に移りつつあると考えられます。
この「案件の入れ替わり」が、利益を大きく押し上げる一因となっています。

こうした変化を背景に、3社とも期中に通期業績予想を上方修正しており、大手ゼネコンにおいて業績のトレンドが明確に上向いていることが事実として示されました。

 

2. 鹿島建設(1812):技術力と開発力で過去最高益を更新

鹿島建設は、業界トップの技術力を背景に、今期は圧倒的な数字を記録しています。その詳細を事実ベースで見ていきましょう。

決算のポイント:なぜこれほど利益が出たのか?

  • 第3四半期として過去最高益を更新
    2026年3月期 第3四半期の累計実績は、売上高2兆1,460億円(前年同期比+5.9%)、営業利益1,718億円(同+81.6%)、純利益1,222億円(同+64.0%)となりました。利益の伸びが売上の伸びを大幅に上回っており、効率的な収益確保が進んでいます。
  • 国内土木事業の採算が大幅改善
    国内土木事業の売上総利益率は24.6%(前年同期は14.4%)となりました。
    大型案件の進捗や工事採算の改善が背景にあり、設計変更交渉の適切な進展や施工の効率化などが寄与していると考えられます。
  • 不動産開発事業:市況に応じた戦略的な売却調整
    鹿島は国内外で不動産開発も手がけていますが、今期は市況や金利動向を見極めながら、戦略的に売却タイミングを調整しているとみられます。
    目先の利益確定を急がず、より良好な販売環境を待つ姿勢がうかがえます。

株主還元と資本政策:投資家へのメッセージ

  • 増配と機動的な自社株買い
    好調な業績を背景に、今期の年間配当予想は132円としています。
    また、数百億円規模の自社株買いを公表するなど、株主還元を積極的に強化する方針が鮮明になっています。
  • 政策保有株式の縮減
    資本効率の向上(ROE向上)を目的として、中期的に数百億円規模の政策保有株式の削減を掲げており、今期も着実に売却を進めています。
    得られた資金を成長投資や株主還元に充当していく、効率重視の経営姿勢がうかがえます。

3. 大林組(1802):採算重視の経営で増配を発表

東京スカイツリーなどの実績で知られる大林組は、現在「利益の質」を重視する経営にかじを切っています。今回の決算でも、その姿勢が明確に数字となって表れています。

決算のポイント:利益率の改善が際立つ「減収増益」

  • 「量より質」の経営が利益に貢献
    売上高は1兆8,324億円(前年同期比▲3.6%)と微減しましたが、営業利益は1,427億円(同+46.2%)、親会社株主利益は1,317億円(同+37.3%)と大きく伸びました。
    不採算案件の抑制や採算管理の徹底などにより、利益が出る仕事に集中できている状況が利益率改善に寄与しているとみられます。
  • 追加・変更工事への対応力
    工事の途中で設計が変わった際、適切に交渉して追加報酬を得るなどの収益管理が行われていると考えられます。
    説明資料からも、国内建築や国内土木の利益率が向上していることが示されており、受注時の適切な価格設定が利益を守る大きな要因となっていると推察されます。
  • 全体的な収益性の改善
    国内だけでなく海外事業も含めた全体で収益性が改善している状況がうかがえます。
    グローバルな展開の中でも、採算性を重視したプロジェクト管理が行われている姿勢が数字に表れています。

株主還元:業績連動による増配の実施

  • 年間配当予想を87円に引き上げ
    好調な業績推移を背景に、通期の業績予想を上方修正したことに伴い、年間配当予想を当初の81円から87円へと増額しました。
  • 安定的な還元への意識
    同社は従来から安定配当を掲げており、今回の増配もその方針と好調な業績を反映した動きといえます。
    本業の収益力の底上げが、配当の積み増しという形での株主還元につながっています。

4. インフロニアHD(5076):気になる「32円増配」の舞台裏

前田建設工業、前田道路、前田製作所を傘下に持つインフロニアHD。今回の決算で最も注目されたのが、配当予想を60円から92円へ、一気に32円引き上げたことです。

なぜこれほど劇的な増配が起きたのか?

決算資料に基づくと、今期の利益が急増し、それによって配当が押し上げられた背景には、主に3つの明確な要因があります。

① 三井住友建設の連結子会社化

インフロニアは2025年度中に、三井住友建設を連結子会社(グループの仲間)としました。
これにより、同社の売上や利益が決算に合算されるようになり、グループ全体の事業規模が大きく拡大しました。
決算サマリーにおける売上高27.2%増の背景には、この規模拡大効果が大きく寄与しています。

② 関連会社株式の売却益の計上

本業の儲け以外に、持分法適用関連会社の株式を売却したことで、約145億円の売却益(税引前利益ベース)が計上されました。
これは一時的な利益ではありますが、親会社株主に帰属する利益を大きく押し上げる要因となりました。

③ 透明性の高い還元方針と実績

インフロニアは、株主還元について明確な目安を設けています。

  • 配当の下限:年間60円
  • 配当の計算:親会社の所有者に帰属する当期利益の40%以上を目安
    今期の利益急増により、この「利益の40%」という計算結果が、当初予想の60円を大きく上回る「92円」となったため、ルールに則って大幅な増配が実施されました。
    また、同社はこれまでも配当と自社株買いを組み合わせ、実績として高い総還元性向を維持してきた経緯があります。

独自の強み:「脱請負」のインフラサービス企業へ

インフロニアの最大の特徴は、単なる建設会社(請負業者)から、インフラを自ら運営して稼ぐ**「総合インフラサービス企業」**への転換を急いでいる点です。

  • インフラ運営事業(コンセッション)
    道路や空港、下水道などの公共施設を長期間にわたって運営・管理し、安定した利用料収入を得るビジネスモデルです。
    景気に左右されやすい「作る(建設)」事業に加え、安定した「運営する(インフラ運営)」事業を両輪に据えることで、収益源の多様化を図っています。
  • 再エネ需要の取り込み
    同社の資料では、データセンターや半導体工場の稼働増加に伴う再生可能エネルギーの価値上昇に言及されています。
    日本風力開発(連結)を中核に据え、風力発電の開発・運営に注力することで、こうした時代の追い風を収益に結びつける構造を構築しています。

5. まとめ:高配当株投資としての視点

今回の大手ゼネコン3社の決算発表は、業界が長らく苦しんできた資材高騰や採算悪化を乗り越え、**「利益を伴う成長フェーズ」**に移行しつつあることを示唆しています。

3社の好調から読み取れるポイント

  • 鹿島・大林組:完成工事総利益や売上総利益が大きく増加しており、建設事業の採算改善が数字に表れています。これは大型案件の適切な価格交渉や施工管理などが背景にあると考えられます。
  • インフロニアHD:三井住友建設の連結子会社化や関連会社株式の売却益といった要因に加え、独自の還元ルール(利益の40%以上)が機能したことで、圧倒的な還元力を示しました。

長期投資家が意識すべきリスクと課題

今回の好決算の一方で、各社の決算・説明会資料や業界全体の論点としては、概ね次のような課題が意識されています。

  1. 担い手不足と労務費・資材価格の高騰:インフロニアの資料でも言及されている通り、人手不足やコスト高といった課題は依然として存在します。
  2. 2024年問題(働き方改革)への対応:時間外労働の規制強化に伴う労務コストの増加や、物流コストの上昇などは、業界全体の構造的なリスクとして注視されています。
  3. 金利動向や市況の影響:金利動向は、不動産開発における売却タイミングの判断や、発注者の投資意欲を左右する要因となり得ます。

投資判断への示唆

建設業界は「受注から売上計上まで数年かかる」という特性があるため、現在の高水準な「受注残」と「改善された受注時利益率」は、来期以降の収益の「貯金」となります。ただし、今回ご紹介したトレンドはあくまで大手3社の好業績から読み取れる傾向であり、建設業界全体に一律に当てはまるわけではありません。

高配当株投資としては、目先の利回りだけでなく、各社が掲げる配当方針(累進配当や配当下限の設定など)を改めて確認し、継続的な収益力が伴っているかをチェックすることが重要です。

※本記事は投資の勧誘を目的としたものではありません。投資判断は、必ずご自身で最新の決算資料をご確認の上、慎重に行ってください。

用語解説:

  • 親会社株主に帰属する四半期純利益:会社が稼いだ最終的な利益のうち、親会社の株主に帰属する取り分。配当金の主な原資となります。
  • 包括利益:純利益に、有価証券の含み損益などを加えたもの。企業の純資産がどれだけ増減したかを示しますが、配当原資とは直接結びつかない要素も含まれます。
  • 上方修正:期初に出していた業績予想を、実績が上回る見込みになったため引き上げること。
  • ROE(自己資本利益率):株主から預かったお金を使って、どれだけ効率よく利益を出したかを示す指標です。
  • 政策保有株式:投資目的ではなく、取引先との関係維持などのために保有している株式のこと。最近は資本効率を高めるためにこれらを売却する企業が増えています。
  • コンセッション方式:施設の所有権を公的機関に残したまま、運営権を民間企業に売却する仕組みのこと。
  • 2024年問題:働き方改革関連法により、2024年4月から建設業や運送業などで時間外労働の上限規制が適用されたこと。人手不足の加速やコスト増が懸念されています。

今後も別の個別株も解説していきますので、ひとつの参考にしてみてください(^^)

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