こんな方におすすめ
- 安定した収入源を求めている人
- 投資知識の向上をしたい人
- 投資判断の材料が欲しい人
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安定した収入源を求めている人、投資知識の向上をしたい人、投資判断の材料が欲しい人の参考になれば幸いです
Contents
業界全体の背景:なぜ今、鉄鋼は厳しいのか?
個別企業を見る前に、3社に共通する「逆風」の正体を詳しく知っておきましょう。主な要因は**「中国の構造的な供給過剰」と「利益指標(スプレッド)の悪化」**の2点です。
1. 中国の不動産不況と「余剰鋼材」の輸出
世界最大の鉄鋼生産・消費国である中国では、不動産市場の低迷やインフラ投資の鈍化により、国内の鉄鋼需要が大きく落ち込んでいます。
しかし、中国の製鉄所は生産能力を高く維持したままであるため、国内で使い切れない大量の鉄鋼が余る「構造的な供給過剰」に陥っています。
その余剰分が輸出に回された結果、中国の鋼材輸出量は2024年には年間1億トンを超える記録的な水準に達しています。
この安価な中国材がアジアを中心とした世界市場へ流入し、国際的な鋼材価格を押し下げています。
2. 「メタルスプレッド」の縮小
鉄鋼メーカーの利益水準を左右する代表的な指標に「メタルスプレッド」があります。
これは**「製品価格 - 主原料(鉄鉱石・原料炭など)の価格」**の差を指します。
現在は、安値の中国材の影響でアジア向けの製品価格が下がる一方、原料価格やエネルギー・物流コストが十分には下がっていないため、このスプレッド(利幅)が非常に細くなっています。
3. 日本メーカーへの影響:主戦場は「輸出」
日本の鉄鋼メーカーは、売上の約4割を輸出に依存しています。
日本国内市場は輸入材の比率が1割強程度と限定的ですが、主戦場であるアジア市場の価格が下がると、輸出マージンが削られ、全体の業績を大きく圧迫します。
現在の厳しい決算は、この「アジア市場での苦戦」が主因といえます。
1. 神戸製鋼所(5406):多角経営の強みと一時的なブレーキ
国内3位の神戸製鋼所は、日本製鉄やJFEとは異なる独自の事業構造を持っています。
業績のポイント
- 経常利益: 895億円(前年同期比 32.6%減)
- 当期純利益: 843億円(前年同期比 27.8%減)
- 現状: 前年同期の好決算から減益となりましたが、中身を見ると「一過性要因の反動」と「コスト増」が重なった形です。
減益の主な理由
- 一時的なプラス要因の剥落: 前期の業績には、建設機械のエンジン認証問題に関連する「補償金収入」などが利益を押し上げていた側面があり、今期はその特殊な利益がなくなったことによる「反動減」が発生しています。
- 固定費・在庫評価の悪化: 賃上げ対応に伴う人件費や修繕費といった「固定費の増加」に加え、材料価格の変動による「在庫評価損」が材料系(鉄鋼・アルミなど)の利益を圧迫しました。
- メタルスプレッドの圧縮: 鋼材の販売価格が軟調に推移する一方で、主原料価格が十分には下がらず、利益の指標となるスプレッドが細くなっています。
注目トピック:鉄鋼を支える「機械」と「電力」
神戸製鋼の最大の特徴は、**「素材(鉄・アルミ)」「機械(建機・エンジニアリング)」「電力」**の3つの柱があることです。
- 機械系事業の粘り: 鉄鋼が苦戦する中で、産業機械や建設機械のセグメントが増益・底堅さを見せており、会社全体の収益を下支えしています。
- 電力事業の現況: 本来は安定収益源である電力事業ですが、今期は神戸発電所3号機の定期点検の長期化に加え、燃料費調整の影響や販売価格要因などが重なり、一時的に利益が押し下げられました。
配当の状況
- 年間配当予想:80円(中間40円・期末40円)
- 還元スタンス: 中期経営計画では「配当性向30%程度」を目安に、安定的・継続的な配当を重視する方針を示しています。今期もその方針に則り、年間80円(配当性向は約31.5%)と無理のない範囲でしっかりと還元を継続する姿勢が見て取れます。
2. JFEホールディングス(5411):下限配当が守る「安定感」とインドへの「成長投資」
国内2位のJFEは、徹底的なコスト削減による「筋肉質な経営」と、成長市場であるインドへの「戦略的投資」を両立させています。
業績のポイント
- 事業利益: 974億円(前年同期 1,224億円、約2割減)
- 当期利益: 608億円(前年同期 999億円、約4割減)
- 現状: 前年同期比で減益となりました。最大の要因は「鉄鋼事業」におけるアジア市況の悪化と、円高進行による輸出採算の低下ですが、他部門の健闘が全体の落ち込みを緩和しています。
減益を食い止める「3つの力」
- 構造改革による固定費削減: 以前から進めてきた東日本製鉄所(京浜地区)の高炉休止などが完了したことで、年間約1,100億円規模の収益改善効果が着実に積み上がっています。このコスト削減が、厳しい市況下での大きな防波堤となっています。
- 多角化セグメントの貢献: 鉄鋼部門が苦しむ一方で、カーボンニュートラル関連(廃棄物処理や再生可能エネルギー等)を担う「エンジニアリング事業」や、機動的な商売を行う「商社事業」が堅調な利益を確保しています。これにより、会社全体での利益の急落が緩和されています。
- 国内マージンの確保: 海外市場(輸出)は中国材の影響で厳しい状況ですが、国内市場においては粘り強い価格転嫁交渉を継続しています。原材料価格の上昇分を適切に製品価格に反映させることで、一定の利益幅(マージン)を守る努力が続いています。
注目トピック:インド市場への「攻め」の布石
JFEは、人口増とインフラ需要が爆発的に伸びるインドを最重要市場と位置づけています。
- JSWスチールとの電磁鋼板JV: インド最大手のJSWスチールと合弁で「方向性電磁鋼板」の生産拠点を設立しています。これはEVモーターだけでなく、電力網に不可欠な「変圧器」などに使われる非常に高機能な鉄であり、インドの電力インフラ成長を直接取り込む狙いがあります。
- 一貫製鉄所への関与: 技術提供や運営面での関わりを深めることで、現地での一貫生産体制を強化し、インドの経済成長をダイレクトに利益に変える仕組みを構築しています。
配当の状況:投資家を守る「下限80円」の約束
- 年間配当予想:80円(中間40円・期末40円)
- 安心の「下限」設定: JFEの最大の特徴は、第8次中期経営計画において**「配当性向30%程度を目安としつつ、年間80円を下限配当とする」**と明文化している点です。
- なぜ可能なのか: 構造改革によって「市況が悪くても一定の利益が出る体質」へと筋肉質になった自信の表れといえます。配当の安定性を重視する投資家にとって、この80円という「防衛線」は非常に強力な安心材料となります。
3. 日本製鉄(5401):赤字の正体は「未来のための膿出し」
業界首位の日本製鉄。ニュース等で報じられている「親会社の所有者に帰属する当期利益(最終的な純損益)の赤字」の背景を詳しく読み解きます。
業績のポイント:本業はしっかりと黒字
決算資料を見ると、2025年度第3四半期累計の数字は以下の通りです。
- 事業利益:3,561億円(前年同期の実力ベース:約3,621億円) → こちらが「本業で稼いだ実力」を示す数字です。在庫評価などの一時的な影響を除いた「実力ベース」で比較すると、前年同期(約3,621億円)とほぼ同水準の極めて強固な収益力を維持しています。
- 当期利益:▲450億円(赤字) → こちらが全ての損失を差し引いた最終的な結果です
なぜ赤字になったのか?「事業再編損」の意味
本業が黒字なのに最終結果が赤字となった最大の理由は、今回計上した**2,490億円の「事業再編損」**です。 これには、国内の不採算設備の整理(減損処理)や、ブラジル・Usiminas社の持分譲渡に伴う損失、USスチール買収に関連する一時的な費用などが含まれます。
- ポイント: この損失の多くは「帳簿上の評価を下げる処理(非現金費用)」であり、手元から現金がなくなるわけではありません(※一部、持分売却などに伴う現金の流出を伴う損失も含みます)。
- 将来への効果: 今ここで「膿(うみ)」を出し切ることで、来期以降の減価償却費などの負担が軽くなり、**「将来の収益力や資本効率を高めるための戦略的な整理」**といえます。
注目トピック:グローバル戦略と高付加価値シフト
日本製鉄は、国内外の事業ポートフォリオを大胆に整理し、成長が見込める分野へ経営資源を集中させています。
- 重点製品への注力: EV向けの駆動モーター用電磁鋼板や、変圧器などの電力インフラ向け高級鋼板など、世界トップクラスの技術を要する高機能製品に特化しています。
- 米・印市場への集中: 米USスチールの買収計画や、成長著しいインド市場での生産体制強化を進めています。今回の国内設備の整理も、こうした**「グローバルでの収益の柱」を太くするための構造改革**の一環です。
配当の状況:株式分割後も「実力ベース」で還元を継続
- 年間配当予想:24円 (※2025年10月に実施した1株を5株に分ける「株式分割」後の数字です。分割前の水準に直すと「120円」となり、実質的な還元レベルは維持されています)
- 配当方針の仕組み: 日本製鉄は「一過性の特殊な損失(今回の再編損など)」を除いた、会社本来の稼ぐ力を示す「実力ベースの利益」に対して配当性向30%程度を目安にするという方針を公表しています。そのため、会計上の赤字が出ていても、本業が稼いでいる限り、配当をしっかりと支払う安定的な姿勢を崩していません。
まとめ:投資家がチェックすべきポイント
最後に、3社の状況を比較表にまとめました。
| 項目 | 神戸製鋼所 | JFE HD | 日本製鉄 |
|---|---|---|---|
| 会計基準 | 日本基準 | IFRS(国際会計基準) | IFRS(国際会計基準) |
| 主要利益指標 | 経常利益 | 事業利益 | 事業利益 |
| 今期の利益(3Q累計) | 895億円 | 974億円 | 3,561億円 |
| 最終利益(3Q累計) | 843億円 | 608億円 | ▲450億円 |
| 年間配当(予想) | 80円 | 80円 | 24円(分割後) |
投資判断のための詳細解説
今回の決算を読み解く上で、特に重要な「3つの比較視点」を整理しました。
1. 「稼ぐ実力」と「会計上の利益」のギャップ
表の「今期の利益」と「最終利益」の差に注目してください。
- 日本製鉄:本業は3,500億円超の黒字ですが、将来のための構造改革(事業再編損)を断行したため、最終利益はマイナスになっています。
- JFE・神戸製鋼:どちらも減益ではありますが、最終利益も黒字を維持しています。 高配当投資においては、一時的な「最終利益の赤字」よりも、配当の源泉となる「稼ぐ実力(事業利益・経常利益)」が維持されているかを見極めることが重要です。
2. 配当の「硬さ(安定性)」の違い
3社とも配当維持の姿勢を見せていますが、その根拠が異なります。
- JFE:「年間80円を下限」と明文化しており、3社の中で最も減配リスクに対する防衛線が明確です。
- 日本製鉄:基本的には実力ベース利益で判断するため、一過性の赤字だけで直ちに減配しない設計となっています。
- 神戸製鋼:多角化経営(材料・機械・電力)により収益源を分散しており、鉄が苦しくても他セグメントで配当原資を支える構造です。
3. 成長への「期待値」
- 攻めの日本製鉄・JFE:USスチール買収やインドへの戦略的投資など、将来の世界需要を取り込むための大きな勝負に出ています。
- 安定の神戸製鋼:国内寄りのポートフォリオをうまく組み合わせ、安定的な経営と多角化によるリスク分散を重視しています。
初心者のための用語集
- (※1)経常利益: 日本基準の指標。本業の儲けに、利息の支払いやグループ会社からの利益などを加えた、企業の総合的な実力を表す数字。
- (※2)配当性向: 利益のうち、何%を株主への配当に回すかを示す指標。一般的に30%程度が「無理のない還元」の目安とされます。
- (※3)事業利益: IFRS(国際会計基準)における、日本基準の営業利益+持分法利益等に近い指標。一過性の損益を除いた「継続的な稼ぐ力」を示します。
※本記事は各社の決算資料に基づいた事実の解説を目的としています。投資の最終判断はご自身の責任で行ってください。
今後も別の個別株も解説していきますので、ひとつの参考にしてみてください(^^)