
積水ハウスや住友林業の配当利回りは4%台。「株価が安くなった今、老後の配当を受け取る候補に入れてよいのか」。これから買う会社を探している人には、気になる水準ではないでしょうか。
ただし、利回りの数字が近くても、会社の状態は同じではありません。全社では増益でも海外の利益が大きく減った会社。買収で売上が増える一方、利益予想を引き下げた会社。配当の下限を守りながら、前年より配当が減る予想の会社もあります。
今回は積水ハウス、大和ハウス工業、住友林業、飯田グループホールディングスの4社を、値札、稼ぎ、配当の条件に分けて確認します。「この株を買えばよい」と決める記事ではなく、買う前に自分で確かめる場所を具体的にする記事です。
情報基準日は2026年10月15日、株価は同日の東証終値です。業績は各社の確認済み最新決算・会社予想を使用。予想配当、利益予想、配当方針は将来の実現や元本を保証しません。
先に結論:住宅株をひとまとめにしない
結論は3つです。
- 年初来では4社とも日経平均・TOPIX(トピックス、東証株価指数)より弱い。ただし、期間を短くすると見え方が変わります。「住宅株が全部、足元で急落した」という話ではありません。
- 増益・減益という見出しから、もう1枚めくります。どの事業の利益が増減したか、買収後に費用がどれだけ残るか、前年の利益に特別な押し上げがあったかが大切です。
- 配当4%台でも、配当を支える利益と条件は異なります。下限、前年維持、記念配当を区別し、次の決算で見る数字を決めておきます。
株価の弱さは、決算を調べる入口です。会社が説明する減益理由を、そのまま株価下落の唯一の原因とはしません。株価には複数の要因が関わるため、今回は確認できる業績上の材料と、実際の値動きを分けて扱います。
1.なぜ、この4社を取り上げるのか
選定条件は、住宅を主要な事業に持ち、共通価格基準日の時価総額が1,000億円以上であること。そのうえで、注文住宅以外に賃貸、管理、開発、海外住宅なども手掛ける大手3社と、国内の戸建分譲を主力とする飯田グループを比較役として選びました。
住宅関連の上場会社すべてを調べて残った4社、という意味ではありません。マンション建設など役割の違う会社まで同じ土俵に広げるより、「住宅株でも配当の元手が違う」と分かる組み合わせにしています。親会社と非上場の事業会社も混同せず、購入対象になる上場会社を記載します。
| 上場会社 | コード | 10月15日の時価総額 | 今回の比較上の役割 |
|---|---|---|---|
| 積水ハウス | 1928 | 約2兆2,115億円 | 国内の管理・改修・開発と国際事業の違い |
| 大和ハウス工業 | 1925 | 約2兆9,072億円 | 住宅以外も含む利益、前年の特殊要因 |
| 住友林業 | 1911 | 約7,222億円 | 海外住宅の拡大と買収後の利益・資金 |
| 飯田グループホールディングス | 3291 | 約5,996億円 | 国内戸建分譲の採算、在庫と資金 |
時価総額はYahoo!ファイナンスの同日表示と、終値×自己株式を含む発行済株式数で照合しています。4社とも1,000億円基準を満たします。大きい会社だから株価や配当が安全、という判定ではありません。
2.本当に市場より弱かった?期間を変えて確かめる
まず、株価だけを同じ日付で比べます。年初来は2025年12月30日終値から2026年10月15日終値まで。約3か月は7月14日から、約1か月は9月14日からです。
| 対象 | 年初来 | 約3か月 | 約1か月 |
|---|---|---|---|
| 積水ハウス | -2.97% | -3.25% | +0.83% |
| 大和ハウス工業 | -15.24% | -4.09% | -5.27% |
| 住友林業 | -27.24% | -13.13% | -7.27% |
| 飯田グループHD | -15.02% | -4.60% | -5.40% |
| 日経平均 | +27.98% | -4.90% | +1.47% |
| TOPIX | +17.32% | -0.98% | -1.45% |
出典:Yahoo!ファイナンス・積水ハウス時系列、大和ハウス工業時系列、住友林業時系列、飯田グループHD時系列、日経平均時系列、TOPIX時系列。式は「最新終値÷比較日終値−1」。株式分割を補正し、配当を含みません。年初来高値からの下落率ではありません。
年初来の差ははっきりしています。両指数が上昇する一方、今回の4社はいずれも前年末を下回っています。ただし積水ハウスの下落は約3%。全社を「暴落」と呼ぶのは正確ではありません。
さらに約3か月では、積水ハウス、大和ハウス、飯田グループは日経平均を上回っています。一方、TOPIXは4社とも下回ります。約1か月の積水ハウスは小幅なプラスで、TOPIXを上回っています。
「市場に取り残された」は、ここでは年初来の比較を指します。期間と物差しを明示しないと、同じ株が強くも弱くも見えてしまうのです。 これは買い時を証明する表ではなく、値動きの印象を数字で整える表です。
また、配当目的の投資でも株価変動はなくなりません。この表は配当を除いた価格比較ですが、「配当があるから価格の下落は気にしなくてよい」と言えるわけでもありません。必要な時期にお金を使う予定がある人ほど、配当とは別に値下がりを受け止められるか考える必要があります。
3.配当4%台。100株なら、いくら必要?
4社の会社予想配当を、10月15日終値で計算すると次のとおりです。
| 会社 | 終値 | 100株の株価代金 | 年換算の予想配当・1株 | 100株の年間配当相当 | 税引前予想利回り |
|---|---|---|---|---|---|
| 積水ハウス | 3,394円 | 339,400円 | 145円 | 14,500円 | 4.27% |
| 大和ハウス工業 | 2,203円 | 220,300円 | 89円 | 8,900円 | 4.04% |
| 住友林業 | 1,167.5円 | 116,750円 | 50円 | 5,000円 | 4.28% |
| 飯田グループHD | 2,138.5円 | 213,850円 | 92円 | 9,200円 | 4.30% |
株価代金は手数料等を含みません。年間配当相当は会社の当該年度の予想を100株換算した参考値です。今から100株買えば初年度に必ず全額入金される、という意味ではありません。中間配当の権利がすでに過ぎている場合など、購入時点によって受け取れる配当は異なります。
大和ハウスは2026年10月1日の1対2の株式分割後にそろえました。中間86円は分割前、期末46円は分割後なので、年換算は「86÷2+46=89円」です。分割前換算178円を現在の株価で割ってはいけません。利回りが突然2倍になる魔法ではなく、株数と1株の単位が変わっただけです。
出典:各社最新決算短信の配当欄と、積水ハウス、大和ハウス、住友林業、飯田グループの10月15日東証終値。利回り=年換算会社予想配当÷終値×100。
利回りが上がった理由を分ける
配当利回りは、会社が増配しなくても、株価が下がれば上がります。投資家にとって入口の価格が低くなることと、会社の配当を払う力が強くなることは別です。
例えば今回、住友林業の年間配当予想は前年実績より少なく、それでも利回りは4%台です。「高利回りになった=増配が進んだ」と読まないようにしたいところです。
参考に、利益や資産に対する株価の目安も確認します。
| 会社 | 予想PER(ピーイーアール) | 実績PBR(ピービーアール) | 予想配当÷予想1株利益 |
|---|---|---|---|
| 積水ハウス | 9.82倍 | 0.98倍 | 約42.0% |
| 大和ハウス工業 | 10.26倍 | 0.94倍 | 約41.4% |
| 住友林業 | 11.93倍 | 0.65倍 | 約51.1% |
| 飯田グループHD | 9.02倍 | 0.58倍 | 約38.8% |
PERは株価が会社予想の1株利益の何倍か、PBRは株価が実績の1株当たり自己資本等の何倍かを見る目安です。予想1株利益は最新短信を採用し、PBRの分母も最新短信の自己資本等・自己株式を除く株数から検算。決算期はそろっていません。
配当の利益負担の目安は、会社予想配当÷会社予想1株利益で計算しました。会社が公表する正式な配当性向と細かな算定差が生じる場合があります。この比率の低さだけで安全性の順位は付けません。
PBRが1倍未満でも、その資産が明日そのまま現金になるわけではありません。住宅会社の土地や建築中の物件には、売るまでの時間と費用があります。また、PERの分母は予想です。利益予想が下がれば、株価が同じでもPERは上がります。低い指標を見つけたら、次は数字の土台を確かめる順番です。
4.決算の見出しでは分からない、4社の違い
決算の対象期間は、積水ハウスが2026年2〜7月、住友林業が1〜6月、大和ハウスと飯田グループが4〜6月です。半年の会社と3か月の会社の利益額や増益率を、同じ競争の順位にはしません。
| 会社・決算 | 売上高・売上収益 | 営業利益 | 親会社に帰属する最終利益 |
|---|---|---|---|
| 積水ハウス・2027年1月期中間 | 1兆9,656.44億円(-2.5%) | 1,803.70億円(+16.0%) | 1,250.53億円(+23.1%) |
| 住友林業・2026年12月期中間 | 1兆2,632.48億円(+17.5%) | 599.21億円(-28.4%) | 268.85億円(-45.5%) |
| 大和ハウス・2027年3月期1Q | 1兆4,083.85億円(+9.0%) | 1,306.44億円(+10.6%) | 831.94億円(+9.1%) |
| 飯田グループ・2027年3月期1Q | 3,805.23億円(+16.7%) | 257.43億円(+81.3%) | 151.72億円(+89.2%) |
括弧内は前年同期間比。飯田グループはIFRS(アイファース、国際会計基準)、ほか3社は日本基準です。飯田グループに日本基準の「経常利益」はないため、存在しない項目を補いません。出典は以下の各社決算短信。
積水ハウス:増益の中で、国際事業は大幅減益
積水ハウスの中間期営業利益は16.0%増。ところが国際事業の営業利益は、前年152.34億円から10.36億円へ93.2%減っています。
同じ短信は、米国戸建住宅の販売・引渡戸数の減少、販売支援策、米国賃貸住宅開発の前年売却の反動などを説明しています。全社が増益だから米国も回復した、とは読めません。一方で、米国の事業すべてが同じ率で悪化したという意味でもありません。
全社を支えたのは、賃貸住宅管理、リフォーム、開発などの増益です。賃貸住宅管理の営業利益は417.45億円で12.7%増、リフォームは150.35億円で14.8%増、開発は598.65億円で114.1%増でした。
配当目的で見るなら、単に「国内が強い」で終わらせず、管理・改修のように既存の建物から続けて得る利益と、物件の引渡しや売却時期に左右される利益を分けたいところです。開発利益の大幅増加が、次の半期もそのまま繰り返されるとは限りません。
ここからの確認点は、国際事業の採算が改善するか、国内の利益がどの事業で続くかです。国際事業の回復前でも国内が支える構造はありますが、その支えがずっと同じ強さとは決めつけません。
出典:積水ハウス「2027年1月期 第2四半期決算短信」2026年9月10日、事業別表・経営成績の概況。
住友林業:売上の拡大と、株主に残る利益は別
住友林業の8月7日の通期予想修正は、売上高が前回予想2兆5,900億円から2兆9,500億円へ13.9%増。一方、親会社株主に帰属する最終利益は950億円から600億円へ36.8%減です。ここは「前回予想との比較」であり、前年実績との比較ではありません。
同じ修正資料は、米国住宅会社Tri Pointe Homes(トライ・ポイント・ホームズ)の子会社化で売上が増える一方、買収に伴う償却、株式取得関連費用、支払利息などが発生すると説明しています。さらに、米国の住宅ローン金利の高止まり、購入者の様子見、販売支援策、米国不動産の売却数減少や一部投資案件の評価損も挙げています。
「買収費用だから来年は全部なくなる」とは言えません。取得のための一時的な費用、買収後に計上する償却、資金を借りる利息は性質が違います。売上が増えても、それらを支払った後の利益まで同じ割合で増えるわけではないのです。
なお、10月掲載の個人投資家向け説明会資料でも、販売施策の活用、着工前の販売強化、在庫の回転改善などの方針が示されています。大きくなる計画と、その拡大を利益に変える作業は分けて見たいところです。
次に見るのは、販売戸数だけでなく、販売支援策を使った後の採算、買収後の費用、利息を含めた利益です。買収先を加えた数字と既存事業の動きも区別します。単に「売上が過去最大なら安心」とはしません。
出典:住友林業「業績予想の修正に関するお知らせ」2026年8月7日、「第2四半期決算短信」、「個人投資家向け会社説明会資料」2026年10月掲載、16・33ページ。
大和ハウス:25%減益予想を、そのまま本業の悪化率にしない
大和ハウスの第1四半期営業利益は10.6%増。一方、通期営業利益予想4,600億円は前期比25.2%減です。四半期は増益、年間は減益なので、どちらか片方だけでは見誤ります。
さらに会社は、前年に退職給付の計算上の要因で営業費用が1,156.75億円減少したことを注記しています。前年の利益には、この押し上げがありました。会社の注記によれば、この影響を除く前期実績と比べた営業利益予想の減少率は7.9%です。
言い換えると、「前年の比較対象が特別に大きかった部分」と「それを分けても残る減益予想」を両方見る必要があります。25.2%減の全部を現在の商売の悪化率とはせず、反対に、全部が前年の反動なので心配ないとも言いません。
これは会社が示した特定の調整であり、あらゆる一時要因を取り除いた純粋な実力を算出したという意味ではありません。まず比較対象を整え、その後、住宅・賃貸・商業施設など各事業の利益がどう動くかを見ます。
次の決算では、四半期の増益が続くかだけでなく、どの事業で計画との差が出たか、前年要因を分けた比較がどう変化したかを確認します。年金の専門的な計算方法を全部覚えなくても、短信の注記を見るだけで見出しの意味が変わります。
出典:大和ハウス工業「2027年3月期 第1四半期決算短信」2026年8月6日、表紙2ページ目注記・添付5ページ。
飯田グループ:81%増益でも、確認は終わらない
飯田グループの第1四半期営業利益は81.3%増。売上収益も16.7%増でした。同じ短信は、戸建分譲住宅市場の需給バランスが安定し、収益性が向上したことなどを説明しています。
ただし、今期の出だしが好調だったことと、これから1年間の利益が保証されることは別です。通期営業利益予想は前期比9.7%増。第1四半期の81.3%を、年間の成長率に引き延ばしません。
資金面も1枚めくります。棚卸資産(たなおろししさん、販売用の土地や住宅など)は、3月末9,660.39億円から6月末1兆305.26億円へ増加。現金及び預金は263.80億円減少し、社債及び借入金は626.95億円増加しました。
ここから「売れ残りが急増した」とは断定できません。棚卸資産には、販売を待つ完成物件だけでなく、仕入れた土地や建築中の物件も含まれます。仕入れを進める局面と、売れずに滞る局面は同じ残高増加でも違います。
投資家の確認点は、在庫の増減単独ではなく、販売・採算と資金をセットで見ることです。土地や住宅に置いた資金が販売で戻るか。借入が増える中でも利益を確保できるか。次の決算で、そのつながりを追います。在庫を全部悪者にしても、全部成長投資と片付けても判断を誤ります。
出典:飯田グループHD「2027年3月期 第1四半期決算短信」2026年8月7日、経営成績・財政状態・貸借対照表。
5.9月の注文は?「最新の数字」にも読み方がある
四半期決算の後の動きを補う材料として、3社の9月月次資料も確認しました。以下は金額ベースの前年同月比・前年同期間比です。集計範囲と累計の開始月は会社ごとに異なり、国内資料を海外や連結全体の成績に広げません。
| 公表資料の項目 | 9月単月 | 会社の当年度累計 | 読み違えないための注意 |
|---|---|---|---|
| 積水ハウス・受注速報「全体」 | -8% | -1%(2〜9月) | 原表は92%・99%。減少率92%ではない |
| 住友林業・国内受注「合計」 | -11% | +6%(1〜9月) | 国内3項目の合計。海外住宅を含む全社売上ではない |
| 大和ハウス・契約状況「合計」 | +17% | 0%(4〜9月) | 個別中心の資料。一部開発子会社の契約を加味 |
大和ハウスの9月は、合計が17%増である一方、戸建住宅・分譲住宅・土地を含む住宅小計は19%減でした。住友林業も、9月の国内受注合計は減少ですが、当年度累計はプラスです。
単月だけで「回復した」「全部悪化した」とは決めません。 合計と内訳、単月と累計を組み合わせて、次の決算を待つ間の観察材料にします。受注・契約は、すでに利益として計上された数字でもありません。
出典:積水ハウス「2026年9月度受注速報」、住友林業「国内受注速報」2026年9月、大和ハウス工業「2026年9月度契約状況」。いずれも速報値または各資料の注記に基づく範囲です。
6.いちばん大事な違い:配当の下限は「前年維持」ではない
配当目的の投資家が特に注意したいのは、方針の言葉です。
住友林業は現中期計画で、配当性向30%以上、1株当たり年間配当の下限50円を掲げています。10月の個人投資家向け説明会資料でも、方針に変更がなく、2026年12月期は下限を適用して50円を予定すると説明しています。
一方、2025年12月期の配当実績は、株式分割後換算で53円。今期予想は50円です。50円の下限を守ることと、前年53円を下回らないことは別。 下限方針を、前年から減らさない方針と読み替えてはいけません。
積水ハウスは第7次中期計画期間に年間145円を下限とする方針で、今期予想も145円です。こちらも対象期間のある会社方針であり、永遠の固定配当や、株価下落を防ぐ保証ではありません。
飯田グループはまた別です。前年の年間配当100円に対し、今期予想は92円。一見すると8円減りますが、前年100円には「大阪・関西万博」出展記念配当10円が含まれます。普通配当で比べると90円から92円へ2円増の予想です。
総額が減る事実はそのままです。ただし、前年の記念分がなくなることと、普通配当そのものを引き下げることは、継続的な配当の見方として区別できます。住友林業の53円→50円と、飯田グループの100円→92円を、同じ説明でまとめない理由です。
| 会社 | 前期実績→今期予想・現行株式換算 | 配当目的で確認する条件 |
|---|---|---|
| 積水ハウス | 144円→145円 | 第7次中計期間の年間145円下限。永久保証ではない |
| 大和ハウス工業 | 87.5円→89円 | 前期87.5円に記念分5円を含む。今期は分割をそろえて比較 |
| 住友林業 | 53円→50円 | 年間50円下限を守っても、前年より3円少ない予想 |
| 飯田グループHD | 100円→92円 | 前期に記念10円。普通配当は90円→92円の予想 |
出典:各社最新決算短信の配当欄、積水ハウス「株主還元」、住友林業「株主還元とIR活動」、同社10月掲載の個人投資家向け会社説明会資料33ページ。配当は会社予想であり、今後変更される可能性があります。
7.利益が出ていても、現金の確認を省かない
配当を続ける力は、当期の利益だけで決まるものではありません。買収、土地の仕入れ、借入の返済などにも資金が必要です。ただし、会社ごとに集計期間が違うまま、現金の多さや四半期の収支で安全性の順位を付けるのも避けます。
住友林業の1〜6月は、営業活動による現金の収支が453.29億円の支出超過、投資活動は5,141.73億円の支出超過。一方、財務活動は5,824.30億円の収入超過でした。投資の欄には子会社株式取得による支出4,781.62億円が記載され、財務の欄には短期借入金の純増加などが出ています。
これは「赤字決算だった」という意味ではありません。最終利益は黒字でも、現金の出入りは別の動きになります。また、買収支出が大きいからといって、営業収支の支出超過まで全部買収代金で説明してはいけません。別々の欄を分けて読みます。
飯田グループの1Q短信は四半期キャッシュフロー計算書を作成していないと明記しています。大和ハウスも同様です。「数字がないので営業収支はゼロ」とは扱えません。積水ハウスの今回の中間短信にもキャッシュフロー計算書の掲載はなく、この短信だけから金額を補いません。今回は住友林業の開示済み現金収支と、飯田グループの在庫・借入など、資料で確かめられる範囲を使っています。
ここで持ち帰りたいのは、「利益が増えたから配当は絶対大丈夫」でも「借入が増えたから即危険」でもない、という見方です。投資のための支出か、販売が滞った結果か、今後どれだけ利益と現金を生むかを確認します。借入の増加だけで減配を予告する記事にはしません。
出典:住友林業・中間決算短信の中間連結キャッシュフロー計算書、飯田グループ・大和ハウスの1Q短信注記、積水ハウス・中間決算短信の収録範囲。
8.結局、次の決算のどこを見る?
「どの会社にも注意点があります」で終わると、株選びに使えません。今回の資料から、次に自分の見方を変える場所を会社ごとに絞ります。以下は筆者の観察項目であって、会社が達成を保証した条件や、株価が上がる条件ではありません。
| 会社 | 次に確かめる場所 | 見方を慎重にする材料 |
|---|---|---|
| 積水ハウス | 国際事業の利益と、管理・改修・開発それぞれの利益 | 国際事業が弱いまま、国内の支えも弱くなる |
| 住友林業 | 買収後の費用・利息を含む利益、販売施策後の採算、現金収支 | 売上は増えても利益・資金が伴わない状態が続く |
| 大和ハウス工業 | 前年要因を分けた比較と、事業別の利益 | 前年の反動だけでは説明できない採算の弱さが広がる |
| 飯田グループHD | 販売・利益率、在庫と借入・資金 | 在庫が増える一方で、販売や採算が悪化する |
例えば積水ハウスで国際事業が持ち直しても、国内開発の利益が大きく減れば、全社の見え方は変わります。逆に国際事業が弱くても、国内の支えを具体的に確認できれば、全社の数字だけを見ていたときとは違う理解になります。
住友林業なら売上の増加率だけを見ず、費用を含めて利益がどれだけ残ったか。大和ハウスなら減益率だけを見ず、前年の比較対象を整える。飯田グループなら利益の伸びだけを見ず、売るために置いた資金まで追う。この「見る場所の違い」こそ、4社を並べる意味です。
また、今回の4社を全部持てば、必ず十分に分散できるとも言いません。会社名が違っても、住宅販売や金利環境など、確認する材料に重なりがあるためです。自分がすでに持つ株も含め、同じ条件で業績が動きやすい会社に偏っていないかを考える必要があります。
まとめ:買う前に、3つの質問に答えられるか
配当4%台という入口は分かりやすいものです。しかし、実際の候補選びでは、次の3問を残してください。
- この配当を支える利益は、どこから出ているか。売上の大きさや増益率だけで判断していないか。
- 配当額に記念分はあるか。下限の金額と期間、前年との違いを確認したか。
- 次の決算で何が変われば、自分の見方を変えるか。
今回の答えは「4社の中で利回りが最も高い会社を買う」ではありません。株価が下がった、会社の稼ぎが弱くなった、配当が減る。この3つを分け、資料から判断する順番を作ることです。
株の値札が下がっていても、中身の点検までセールにはできません。底値を当てる前に、その会社を選ぶ理由を自分の言葉で説明できるかを確かめておきたいですね。
このブログ・チャンネルでは、今後も利回りの数字だけでなく、その配当を支える利益と条件を確認していきます。次に別の業界の株を探すときにも、今回の3つの質問を使ってみてください。
※本記事は公開情報の整理と学習を目的とし、特定銘柄の購入・売却や利益を保証するものではありません。価格、業績予想、配当予想、会社方針は変わります。投資判断は最新資料を確認し、ご自身の資金計画とリスク許容度に照らして行ってください。